活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】音楽を愛する皆さんを応援したい

(2023年07月07日公開)

地域音楽コーディネータ― 指揮者 YTJミュージック代表 愛知県 堺 武弥さん

自由演奏会2
■活動テーマ:
音楽を愛する皆さんを応援したい
■目次:
■活動開始時期:
2001年~現在
■場所:
国内外のコンサートホール
■対象:
年少の子供から大人まで
■活動内容

1.きっかけ

プロの指揮者としてオランダで活動し始めた頃、イエナプラン(*1)という音楽教育プログラムに出会いました。そのビジョンに賛同し幼稚園、小学校、中学校のワークショップにも指揮者として参加したことがきっかけです。

*1)イエナプラン:ドイツの教育学者ペーター・ペーターセンが1927年創設した教育プログラム。一人一人を尊重しながら自律と共生を学ぶことを理念としている。オランダにもこのプログラムが広まり、日本では2010年に「日本イエナプラン教育協会」が結成される。

国内外で指揮活動をしていると、日本ではクラシック音楽がまだまだ限られた人々だけのものになっているように感じます。その原因の一つはクラシック音楽が「~はしちゃいけない」「~はだめ」など自由がない場面に多く遭遇します。例えば友人に演奏会の案内をしたところ「服装は何を着ていけばよいのか?」など聞かれたり、音楽教室でもクラシックは静かに聴くものだと事前指導されているところを見たからです。このような堅苦しいイメージが続くとクラシック音楽を楽しむ聴衆は少なくなっていきます。

地域格差、ホールの運営状況、公的な予算補助の有無など、いろいろな問題点も山積しています。これらを解決し音楽の裾野を広げていかないと、将来クラシック音楽が本当のクラシック(古典)になり忘れ去られていく日が来るのではないかと危惧しています。そこで音楽家・指揮者の一人として「音楽に不自由をなくそう!」という理念の基、溝を埋め普及していくのが私のライフワークだと思っています。今までの主な3つの活動をご紹介いたします。

2.具体的な内容

A.企業とタイアップしたワークショップ

70年以上の歴史があり地元に根づいている市川交響楽団とは何度か客演の機会がありました。あるとき、代表の方から“オーケストラとあそぼう~0歳児からおじいちゃん・おばあちゃんまで参加できる体験型コンサート”打診があり、私が日頃行いたいことと同じでしたので協力することになりました。

私の座右の銘に著名な音楽家 故レナード・バーンスタイン(*2)の言葉「音楽は与えるものではなく共有するものだ」があります。ただ聴いてもらうのではなく、音楽に参加して楽しんでもらうということです。

*2)音楽家 故レナード・バーンスタイン:元ベルリンフィルの指揮者 故ヘルベルト・フォン・カラヤンと共に20世紀のクラシック音楽界を牽引した指揮者・作曲家・ピアニスト・音楽教育者。交響曲他純クラシックの作品も多数あるが、ミュージカル「ウエストサイド物語」が一番知られている。1990年には札幌で国際教育音楽祭「パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)を創設し現在も続いている。

この私の考え方を企画した人(地域音楽コーディネーター)に提案したところ、楽器を作成後、その楽器を使って参加者と一緒に音楽をしようというアイデアが生まれました。そこで思いついたのがヤクルトの空容器です。早速ヤクルトの方にお願いしたところ、本社を通して空容器1,600個を協賛していただきました。ヤクルトの容器はお手製マラカスに!とても楽しい演奏会になりました。いつも忙しく大変な母親や子供たちの笑顔がとても印象的でした。

B.地域に根差したオペラの全国展開

日本にはすばらしい伝承文化があります。その伝承をオペラという形にして伝えて楽しんでいただこうという取り組みを始めています。作曲を新進気鋭の声楽家であり作曲家の齋藤大輝さんにお願いし、2022年にはフルオーケストラでの演奏も実現しました。

各地域に伝わるお話を脚本化して音楽を制作し、オペラとして地域の方々に聴いていただくことが目的です。狙いは地方でも頑張っている歌手や演奏者への仕事の提供と一般の方にオペラの敷居を下げることへの活動も大切と思い企画しました。

C.自由演奏会

自由演奏会とは年齢・演奏レベル・楽器の種類を問わず、どなたでも合奏に参加できるイベントです。楽器を持ち寄りただ合奏をするだけではなく、リハーサルからコンサートまで1日で行います。日本では残念ながら、学校の部活や習い事で音楽を経験していながら、様々な事情で音楽から離れている人が多いのが現状です。このような音楽を続けたくても仕事や家庭の都合でできないという方々へ家族で気軽に参加でき、そして1日で完結するという演奏会を楽しんでもらう機会を提供し、少しでも音楽の裾野が広がればという願いを込めています。

3.企画に当たってのポイント

先の3つの活動を通して企画する際に下記の4つがあることを学びました。

  1. 良い仲間とネットワークを作る
  2. 資金調達とスタッフの確保(公的補助、スポンサー等)
  3. 助成金は継続性が難しいので自転できるシステムを構築する
  4. 企画に合った外部異業種の連携相手を模索し、可能性が低そうでも積極的にアプローチする

4.抱負

音楽イベントの企画運営など幅広い活動を通じて、地域住民や観光客にも音楽の魅力を伝え地域に貢献したいと思います。そのためには若手音楽家の育成と音楽ホールの活性化が必要不可欠です。また地域の歴史や文化に根ざした音楽の普及や、地域の課題解決に音楽的アプローチを取り入れることを目指します。

(2023年7月7日公開)

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