活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】『二胡演奏会 ~二胡とピアノ,エレクトーンによる二重奏』

(2023年08月10日公開)

地域音楽コーディネーター 会社員 奏楽団“ソノーレ”主宰 茨城県 萩原 里江子さん

2023年5月ショッピングセンター内での二胡演奏会
2023年5月ショッピングセンター内での二胡演奏会
■活動テーマ:
地域の音楽愛好家同士を繋ぎ、人と音の輪を拡げる
プロ・アマ問わず、演奏家や愛好家に“生”の音楽と触れ合う場を提供
『二胡演奏会 ~二胡とピアノ,エレクトーンによる二重奏』
■目次:
■活動開始時期:
2023年5月7日(日)13時開演
■場所:
茨城県古河市 ショッピングセンター あかやまJOY 中央広場
■対象:
一般
■活動内容

1.奏楽団“ソノーレ”設立のきっかけと目的

私の仕事柄(楽器店勤務)、地域の音楽愛好家と接する機会が多く、お話を聞くと生の音楽に触れる環境に飢えているとのことでした。その要因として情報が広く告知される媒体や機会が少なく、一般の愛好家の方々に閉鎖的だと感じました。この状況を改善するためには地域で開催されるイベントを集約して知らせることにより、興味のある人は多くの情報から選択でき主催者側にとっても集客が楽になるのではと考えました。

コンサート開催に慣れている演奏家の方は自主的に実施できますが、ノウハウを持たない方やもっと気楽に演奏したいと思っている人にとっては、最初の一歩を躊躇(ちゅうちょ)してしまいます。そこで地域に点在しているプロ・アマの方たちへ演奏機会や場所を提供できれば、演奏家同士の横の繋(つな)がりが生まれ、愛好家も生の演奏に触れ合えます。

具体的に団体設立のきっかけとなったのは、コロナ禍で音楽活動が激減した頃です。生の音楽に触れる機会がなくなっていきました。このようなときこそ音楽は人の心を癒(い)やせる力があり、誠に必要とされると強く感じ、地域で活動する演奏家とPAエンジニアに相談し、アドバイスを頂いて2022年12月に奏楽団“ソノーレ”を立ち上げました。

2.奏楽団“ソノーレ(sonore)”とは

楽団という名前が付いていますが所属する決まった団員はいません。『音楽が好きで演奏したい!』という想(おも)いがあればどなたでも企画に参加できます。地域の音楽愛好家同士を繋(つな)ぐ,その仲人的な存在がこの“ソノーレ”です。団体名の“ソノーレ(sonore)”は、音楽用語で「朗々と響かせて」という意味を持ち、地域の隅々にまで音楽を届けられる集団であるように との願いを込めました。

理念

理念はすべてこのロゴマークに集約されています。人と人を繋(つな)げる役割を果たしたい という意味で、音符をつなぐタイ(tie)を握手で表現。色とりどりの文字と五線は、プロ・アマチュア関係なく,様々な音楽愛好家を結び付ける(ハートリボン)という意味を示しています。

3.コンサート企画から当日まで

(1)企画立案-コンセプト,会場,演奏者

2023年1月、まず会場を市内ショッピングセンター内に設置された街角ピアノ『縁JOYピアノ』を使って何かコンサートはできないか?思案していました。この場所は定期的に“地域交流イベント”開催しており、市内の吹奏楽部や地元で活動するバンド演奏,演芸会,シルバーリハビリ体操などが行われているので、比較的認知度が高いのも魅力です。

2023年3月には街角エレクトーン『縁JOYエレクトーン』も設置されました。ちょうどその頃、二胡(*1)の演奏家の方と出会いました。近年、地域でも二胡人気の高まりを感じていたこともあり、ふだん興味のない方も足を止め買物ついでに聴けるので、二胡という楽器を知っていただくには最適な会場であると考え、縁JOYピアノとのコラボレーションを企画しました。

*1)二胡:中国の伝統楽器。2本の弦の間に挟んだ弓(馬の尾毛を張ったもの)で演奏する。

(2)日程設定

ショッピングセンター内ということもあり、営利目的での使用が不可なので、入場フリーの観覧無料です。開催日時は、ゴールデンウイークの外出が続いた後の最終日、地元での買物客が増えることを予想して設定しました。

(3)内容 『二胡演奏会 ~二胡とピアノ,エレクトーンによる二重奏』

二胡の魅力を存分に発揮できる曲(蘇州夜曲 他)やスタンダード(見上げてごらん夜の星を 他)などを選曲しました。2023年3月に街角エレクトーン『縁JOYエレクトーン』も設置されたこともあり、プログラムはエレクトーン(*2)の音色も聴いていただけるよう、ピアノ&エレクトーン,二胡&エレクトーンという変化のある組合せにしました。

*2)エレクトーン:ヤマハ株式会社が製造販売する電子オルガンの商品名。上鍵盤,下鍵盤,ペダル鍵盤にエクスプレッションペダルを備えている。

演奏家のお二人には趣旨をご理解いただき、無報酬でも快くお引き受けいただきました。裏方業務(会場との打合せ,機材準備,広報宣伝 等)は私が行い、演奏者にはパフォーマンスに集中していただける環境づくりにも気を配りました。

(4)広報宣伝

  • ・当団体のSNS(Twitter,Instagram)
  • ・会場担当のあかやまJOYさん,縁JOYピアノさんのSNS(Twitter,Instagram,LINE,Facebook)での告知
  • ・(公財)音楽文化創造ホームページ(イベント告知欄)に掲載
  • ・あかやまJOY内でのポスター掲示、チラシ広告への掲載
  • ・チラシ配布(近隣音楽教室や楽器店来店客へ)

(5)演奏会当日-2023年5月7日(日)

開演時間になると、一斉館内放送で演奏会開演の告知アナウンスが流れ、オープニングにピアノ&エレクトーンデュオ「星に願いを」でスタートしました。途中、エレクトーンや二胡の紹介を入れながら、ピアノ&二胡,エレクトーン&二胡による二重奏を約40分間のプログラムでお楽しみいただきました。当日は地元ケーブルテレビに取材に入ってもらい、翌週末に1日6回 演奏会の模様をダイジェスト放映していただきました。

終演後は、3月に設置された街角エレクトーンの宣伝も兼ねて、エレクトーンに触れていただく体験会を行いました。大人の方から子供たちまで、鍵盤を弾(ひ)いたり、レジストレーションボタンを触ったりと興味を持っていただけました。

4.感想

(1)聴衆

二胡やエレクトーンの楽器を初めて見た方や生演奏を聴いたことがなかった方には「音色が素敵でした」「初めて生演奏が聴けて感動しました」と好評でした。また、実際に演奏の姿を見て、その楽器ならではの奏法にとても興味深く感じてくださった方も多く、「私も演奏してみたい!」と話される方もおり、楽器に対する認知度が上がったと感じました。今日の演奏会を知らず、たまたま買い物に来たら音が聴こえてきて立ち寄ったという方もおり、これこそがショッピングセンターで開催する大きな意義だと感じました。

(2)会場側

担当者の方いわく、今までのイベントの中で一番多い集客だったようで、エレクトーンや二胡への聴衆の食いつきの良さに「是非また企画してください」と嬉(うれ)しいお言葉を頂戴しました。

(3)演奏家

当初どのくらい人が集まるか不安だったようですが、立ち見で溢(あふ)れかえる様子を見て、本番を楽しんでくれました。「演奏会のために来た」という方も大勢いて、とても励みになったと思います。早速次回企画に意欲を示してくださりうれしい限りです。

5.成果と課題

成果

ショッピングセンターでの開催なので、営利目的ではないこと(音楽教室の宣伝,他の有料コンサートの告知は不可)を強く求められますが、商業施設のオープンスペースという強みも十分に活(い)かせました。

  1. センター側が集客に協力的
  2. 興味がなかった人にもアプローチしやすかった
  3. 備品を完備している

これらは成功への大きな後押しでした。また、地元ケーブルテレビでの放映で当団体の活動についてクローズアップしていただき、団体の認知度も上がりました。何より、多くの方に二胡やピアノ,エレクトーンの魅力をお伝えできたことが一番の成果であると感じています。

課題

1.音響面

吹き抜けのオープンスペース+近隣店舗のBGM+通りがかる人の声 で音響的には劣悪な環境であったことから、楽器の音が隅々のお客様まで届きにくかったことが悔やまれます。

2.臨機応変の対応

想定外のリクエストがあったときに事前準備がうまく機能せず、お客様をお待たせしてしまった部分も多々見られ、充実した音響機器と綿密な会場リハーサルが必要と痛感しました。

3.収支面

今回は演奏者のご厚意で謝礼なしでの開催でしたが、今後入場無料で開催する場合の経費の工面(協賛金 等)が大きな課題です。

6.今後の抱負

市内のプロ・アマチュア演奏家同士の出会いの場を提供できるよう、今回のようなオープンスペース(一般に広く開放され気軽に立ち寄れる場所)での演奏披露の機会を積極的に作っていきたいと思います。また、音楽家だけでなく、他分野(ダンス,書道,体操,バトン など)とのコラボレーション企画も提案できたら、更に地域文化の普及に貢献できるのでは?と考えています。

現在、市内には音楽専用ホールがありません。それを逆手にとって街中のいたるところから生演奏が聴こえてくるような,そんな演奏スペースを地域と協力して設置できたら良いと思っています。その名の通り、音楽が溢(あふ)れる街づくり“ソノーレ(sonore)”な活動が私たちの目標です。

(2023年8月10日公開)

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