活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】けいおん(高校軽音楽部)の力で街を元気に!!

(2025年05月27日公開)

地域音楽コーディネーター 軽音楽指導者 教育ICT指導者 Fretless Bassist(The Wfm Trio , MHN&K他) 京都府 村田良さん

JR草津駅東口デッキ特設ステージ
JR草津駅東口デッキ特設ステージ
■活動テーマ:
けいおん(高校軽音楽部)の力で街を元気に!!
■目次:
■活動開始時期:
2024年11月19日(土)10:00~16:00
■場所:
JR草津駅東口デッキ特設ステージ
■対象:
一般
■主催:
けいおんストリートLive 実行委員会
■共催:
滋賀県高等学校軽音楽部会
■協力:
MUSIC WORKSHOP RITZ(滋賀県大津市の楽器店)
株式会社ヤマハミュージックジャパン
■後援:
滋賀県教育委員会
■活動内容

1.きっかけ

(1)第3回国際音楽の日記念コンサート

1996年に国際音楽の日(*1)記念コンサートが日本各地で開催される中、滋賀県では文化庁の補助金を受けて、1998年の滋賀県立草津文芸会館の開館とともに結成された地域の軽音楽クラブ「湖南ライトミュージックサークルKLMC」(高校生・大学生・社会人が65名参加)のメンバーが中心になってコンサートやセミナーを開催しておりました。

*1)国際音楽の日:“世界のすべての人々が自分の敵や反対者をも助け合い、憎しみを兄弟の愛に変えるよう努める日にしよう。そして、あらゆる国や地域の人々が様々な音楽表現を通して、暮らしの中の音楽のすばらしさを認識する機会を与えられるようにしよう。”という理念のもと定められた日。提唱者は故ヴァイオリニスト・指揮者のユーディ・メニューイン。日本では10月1日を「国際音楽日」と定めている。

しかし文化庁の補助金が2年でなくなったことから、私は第3回国際音楽の日記念コンサート開催に向けて新たなスポンサーを探すため、英国祭’98の公式イベントとして認可を受けようと企画を書き、英国大使館に送りました。結果、公式イベントとしてこの企画が採択され、1998年9月27日に実施し、盛況で幕を閉じました。

このイベントをきっかけに、日本からLIPA(*2)に留学したミミ肇さんというミュージシャンと知り合い、「村田さんのやっていることは、正にこれですね」とLIPAの入学案内を頂きました。

*2)LIPA:リヴァプール・インスティチュート・パフォーミング・アーツ(Liverpool Institute for Performing Arts)の通称。1996年にイギリスで元ビートルズのポール・マッカトニーが主になって設立した総合芸術大学。ポピュラー音楽・演劇・ダンス・音響技術等を総合的に学べる。詳細は下記を参照。

(2)コミュニティアート

そこで初めてコミュニティアート(市民とアーティストが協働して地域コミュニティの社会課題に対して解決する)というカリキュラムを知り、「自分が行っている活動は、イギリスの大学では授業になっているんだ!」と衝撃を受けました。私は長年高校で社会科の教師をしていた関係上、イギリスの都市問題に関心がありました。また21世紀に入れば日本の人口減少が始まるのもデータ的に見ていたので「将来、音楽が地域社会の役に立つ時代が来るのか?!」と半信半疑思っていた20世紀の終わりでした。

2.具体的な内容

A.JR大津駅前社会実験野外Live

時が流れ、滋賀の県庁所在地であるJR大津駅が寂れ、都市再生化の課題となっていました。そのような中、2012年の2月の終わりに街の活性化に取り組んでおられる龍谷大学の竺文彦教授が偶然、以下の新聞記事(京都新聞2012年2月12日朝刊)を読んで、「けいおんの力で是非とも街の活性化を!!」と熱いオファーを頂きました

当然すぐ快諾し、今までの軽音ネットワークを駆使して、予算0円でも高校軽音のためにボランティアで動いてくれる同士や卒業生を集め、「JR大津駅前社会実験野外Live」というイベント名をつけて、翌3月から準備をスタートさせました。メディアに積極的にアピールし新聞取材を受けたり、当日ビラ配布ができないことから、NTTドコモ関西支社とUSTREAM社(ストリーミング配信サービス)に協力を要請し、当時としては画期的な携帯4G 回線によるストリート演奏の生配信も行う段取りもつけ、宣伝告知をネットでも展開しました。

果たして2012年4月29日の当日、嘉田滋賀県知事や越大津市長も駆けつけ応援をしてくださり、無許可のストリートLiveでしたが、大成功に終わりました。その際、知事と私が口頭で交わした街の活性化の約束を大々的にUSTREAMで配信されたことから、県の文化振興課が実行委員会の事務局を引き受け、行政からの支援が受けられることになりました。

結果、5年が過ぎて大津駅の駅舎も新しくなり、JR大津駅前社会実験野外Live実行委員会は、社会実験を外して、「けいおんストリートLIVE」と名称を変えて、大津駅だけでなく、商店街・公園・港等の施設で街の活性化のために出向くことになりました。そして今回、大津エリアから初めて草津エリアに呼ばれたのが、「けいおんストリートLive VOL.15」でした。

B.「けいおんストリートLIVE VOL.15」IN草津2024

(1)立ち上げ

草津市在住の方からJR大津駅前のようなストリートLiveができたらな、、、と言う要望を聞いて、早速、草津市都市地域戦略課に赴き、JR草津駅前の現状を聞かせていただきました。そこで、「今、草津まちづくり株式会社主催で『KUSATSUまちなかクロッキー会議』という企画を展開していて、そこで高校生たちがいろんな意見を出してくれたらな」と話が飛び出したので、早速、滋賀県高等学校軽音楽部会に情報を流した結果、草津市在住の高校生が参加してくれました。果たして高校生の意見として「クロッキー会議社会実験」として採用され、音響予算も工面していただき、高校生主体で大人がサポートする、従来の主旨通りのストリートLiveが草津市でも実現しました。

(2)主旨

JR大津駅前の、かつての街のにぎわいを復活させる主旨で5年間開催した「けいおんJR大津駅前社会実験野外Live」の力を更に飛躍させようと、コロナ禍においてはストリートでの安全な運営方法を提案しました。また大津駅前公園では騒音問題に対する音量実験等にも携わり、新たな課題にも積極的に対応し成果をあげてきましたが、今回は大津を離れ、初のJR草津駅前東口デッキでストリートLiveを実現することになりました。

<企画のポイント>
  1. 高校軽音楽クラブの力による街の活性化を主目的におきながら同時に青少年を育む
  2. 教育的意義を持たせ近隣コミュニティにも愛されるライブを目標に実施する
  3. このイベントを継続的に続けることで、高校軽音楽部による社会貢献を、全国的に広める

高校軽音楽部のネットワークを最大限に活用し、21世紀の課題である都市の再生化問題を、未来を担う高校生に考えてもらえればと願っております。

(3)内容

今回も共催の滋賀県高等学校軽音楽部会を通して募集をかけていただき、10校36バンドが参加しました。ちょうど1週間に2Daysの「第2回滋賀県秋季高等学校軽音楽大会」が、とよさと小学校で実施されていたこともあり、各校準備万端で参加していただきました。また、今回はストリートで足を止めて聞いてもらえるようにと、コピー曲が8割を締めて(大半がJ-Pop系、一部洋楽カバー)、残り2割がオリジナル曲でした。そして、バンド編成は、弾き語り系はなく、全てバンド構成で3ピースから最大6名のバンドまで様々でした。

ホスト校は地元の草津東高校軽音楽部が務めてくれました。実は2年生は午前中が模試で参加できない分、1年生が機材搬入や準備、そしてオープニングの総合司会まで担当し、本当によく頑張ってくれました。また、会場のスペースの問題で(次の(4)出演者と観客の写真を参照)、できるだけ聴衆に見ていただこうと、各校は時差で集合し演奏終了後、次の学校の出演枠に運営資金を集める募金活動を行い、それが終わったら学校に戻ると言う流れで、当日、各校の部員たちは聴衆重視で動いておりました。

(4)出演者と観客の反応

演奏場所は下記の写真のようにJR草津駅東口から各施設への動線を確保するために小さなスペースでしたが、少ないときでもこの写真の状態でした。多いときでは、この倍ぐらいの人数があり、来場者数の公式発表は約1200名でした。

終盤には橋川渉草津市長も応援スピーチに駆けつけてくださり、この取り組みを大いに評価していただきました。

ストリートLiveの運営資金となる寄附募金は、出演した生徒がステージを降りてすぐに回ってくれたこともあり、3万7,192円も集まり次回に向けての手応えは十分ありました。

3.成果と課題

(1)成果

まず、有り難いことに日本も以前に比べ確実にロック音楽が社会に浸透し、イギリスのようなコミュティアートとして社会に貢献できる時代に入ったということを実感しています。自己満足が甚だしいかもしれませんが、20世紀から軽音楽部顧問としてこのような高校生のイベントを長く続けさせていただいた成果と考えております。また退職して外部指導員となっても、各校の顧問の先生方との連携をとりながら、順調に運営できるということは、それだけイベントが定着していると感じております。

(2)課題

やはり音の問題が大きいです。音が65dbを超えるときが多々あり、ストリートの限界値としてキープしながらも不快な反響音が出るのは事実であり、それを住民の方々がどう捉えてくださるのかが来年度に向けての検討課題となると思います。これは地域によって相違があります。

2012年から実施しているJR大津駅前は基本、官庁街なので駅前に住んでおられる方が少ないという環境下にあります。その上で住民の方々は、街の活性化を気にかけておられたのも事実で、高齢者たちが「今日は若い子がいっぱい来てくれて、、、」って好意的に見に来てくださっていたのも印象的でした。行政のスタンスも、未来の地域社会を担う高校生の教育のためなら、という当初からの立ち位置で支援していただいております。

一方、JR草津駅前は駅前にマンションが建ち並び、大津市と住環境も違います。今回の初めての企画は、「クロッキー会議社会実験」と位置づけられており、その実験結果は、まだ報告いただいていない状況です。今後、行政としてどう対応なされるのか?と思っております。

4.抱負

第3回国際音楽の日記念コンサートで初めて知ったコミュニティ・アートが日本でも普通にできる環境になってきました。一方で日本もイギリスのように人口が減少し、都市の再生化や地方創生が大きな社会問題になっています。実行委員会で掲げている「けいおん(高校軽音楽部)の力で街を元気に!!」というキャッチフレーズは、高校軽音楽部が人を集め、軽快なロックやポップスで街にワクワク活気を与えるという、その日だけのお祭りイベントでは決してありません。

若い高校生が街の活性化を訴えることで、住民も自分の街のことを考えてもらえる一方、高校生自身も学校で学ぶ地方創生をフィールドワーク的に体験でき、この社会課題の解決に向けて、いち早く取り組む姿勢やスキルを身につけられます。当然、この取り組みは、社会にとって必要な事業(授業)であり、地域と学校が協働で取り組むべき内容と確信しております。ズバリ、コミュニティ・アートとして、学校のクラブを考えていただけると「地域移行」がうまく進んでいけるのではないでしょうか?!

○結論

(1)地域がクラブを運営

より良いコミュニティを創るために

  1. 地域がクラブを運営
  2. 未来のために子どもたちを育み支援、目的を達成する
  3. 学校は地域のために施設を開放

そうすればおのずと地域が学校に協力依頼し、顧問も義務ではなく自分の意志で契約が可能となり、今までと全く逆のスタイルが出来上がります。

(2)地域クラブの主体を明確化

ただし大きな阻害要因があります。現在、部活動改革に伴う学習指導要領解説の見直しが進められています。(*3)しかし「学習指導要領に基づくクラブ活動(部活動)」=「学校教育活動」という図式は、なかなか変われません。学校の仕事が多いということは、逆に見ると文科省の初等中等教育局の管轄が多すぎるというのも事実です。またその中でも特にクラブ活動(部活動)は、学校教育の枠組みから外した方がいろいろな可能性が見いだせます。まずは初等中等教育局の管轄をリセットさせて、地方創生の観点から、地域クラブの主体を明確にしてクラブ活動(部活動)を再構築できれば、一気に前に進めるのではないかと考えます。

*3)部活動改革に伴う学習指導要領解説の見直し(通知・概要・新旧対照表):

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