活動事例

地域音楽コーディネーター 声楽家 音楽療法士 千葉県 吉田美名さん

コンサートの様子
コンサートの様子
■活動テーマ:
人が音楽に出逢う場を作りたい
■目次:
■活動開始時期:
2000年頃~現在
■場所:
茅ヶ崎市民文化会館、神奈川県内施設等、千葉市美浜文化ホール、他
■対象:
一般(子どもから大人までどなたでも)
■活動内容

1.きっかけ

コンサートや発表会という音楽が披露される場所は、一般的に表舞台に目が行きがちですが、私にとってはその場の空間全体が「人が音楽に出逢う場」として見えている、そんなことに何年も活動を続けてきてから気付かされました。それが当たり前のことと思ってしまうと、気づけないものです。なぜそのように考えるようになったか、それは私にとって二つの経験が元になっているのかもしれません。

(1)大学時代のコンサート企画

一つは大学生のとき、学生が主体となってコンサートを企画するという経験をさせていただいたことです。1年次2年次にはそれぞれの学年にマネージャーとサブマネージャーが決められ、学年全員が広報、会計、舞台、受付など何かしらの役割を持って年数回ほどあるコンサート企画を一から立ち上げていました。もちろん先生方や周りのサポートを受けて行われるものですが、学生が主体となって継続的に行うということは当時まだ珍しいものだったようです。大学内で行われる小さいコンサートですが、場所を確保し、出演者を募集し、チラシを作成して、当日のスタッフの方をお願いする、そんな一連の流れを毎回全員で作り上げるのですから、画期的な取り組みだったのかもしれません。もちろん、自分自身は当たり前のことと思ってそんな学生生活を送っていました。

(2)茅ヶ崎市楽友協会での経験

もう一つは、学生時代から始め今に至る茅ヶ崎市楽友協会での仕事です。ここでは特にコンサート当日に起こる様々な流れを学び、今でも喜びを持って続けています。綺麗(きれい)に清掃された会館ホールに、出演者が来てお客様がいらっしゃる、時間に合わせてコンサートが始まり、最後はお客様にも出演者にも笑顔でお帰り頂く、これらの流れがスムーズにゆとりを持って進められるようスタッフは準備を怠りません。客としてコンサートに行けばゆったり時を過ごすなど当たり前のことかもしれませんが、ここにどれだけのスタッフが関わり、自分はその中でどんな役割をして、どう立ち回れば良いのか、それを考えうまく運んだとき、今日もまたここで人と音楽が出逢ったのだなあと幸せを感じます。今思えばこれらの経験が私の中で大きな礎となり、今の活動につながっているのかもしれません。こういった視点で行っている活動についてご紹介します。

2.具体的な内容

(1)コーラス団体の演奏会サポート

コール・シャンテは1980年に茅ヶ崎で発足した歴史のある団体で、私は2000年より4回に渡って定期演奏会のステージマネージャーをしてまいりました。当日だけでなくコンサートの前から密に連絡を取り合います。当日できるだけ心地よく皆様にステージ上の時間を過ごしていただけるよう配慮するためです。

仕事は下記のように多岐に渡ります。

  1. 会館受付
  2. 楽屋周りの雑用
  3. ステージ上備品(山台等)準備
  4. タイムキーパー
  5. 影アナ
  6. 撤収片付け等

中でも団員の皆様がステージへ向かわれるときには、ライトを浴びた瞬間にお一人お一人の笑顔が輝くようステージ袖でお声がけすることが非常に重要な私の役割と思っていました。本番はそのときその場所にしかない音楽に、出演者もお客様も出逢う場だからです。

年によってはコンサート全体をサポートさせていただいたこともありました。表側と言われるお客様との直接的な接点があるホワイエ(会場の入り口にある空間)の周辺のお仕事です。もちろん私1人の力では不可能で、仲間を募り実施しました。そうなるとより多角的にコンサートを捉えることとなり、お客様の視点、出演者の視点、スタッフの視点が交錯して演奏会全体が出来上がっていくプロセスをより身近に実感することができました。

(2)定期コンサートの開催 洋楽器と和楽器のコラボレーション

「さんにん寄れば〜歌・箏・ピアノのコンサート」

プロの演奏家として活動している、箏・十七絃奏者の池上亜佐佳さん、ピアニストの遠藤径子さんとともに始めたコンサートシリーズです。1年に1回のコンサートで、2025年に5年目を迎えます。ピアノは小さい頃から習う人がいたり、大人になってからのピアノ教室があったりなど、比較的身近な楽器かもしれませんが、昔は生活において身近だった邦楽器も現代では触れる機会が少ないように思われます。そこで邦楽と洋楽のアンサンブルにして、どちらの世界の音楽にも触れてほしい、音楽の境界線をなくしていきたい、という思いで始めました。

またプログラムの曲目は、邦楽器と洋楽器が交わる時点で新しいサウンドが生まれることが想像できましたので、ジャンルを問わずチャレンジしてきました。このコンサートではお客様の声をアンケートで頂戴し、そこにお書きいただいたリクエストに少しずつお答えしていくという企画も実践しています。お客様からの声とのキャッチボールで、私たちのレパートリーはますます広がっていきます。

前回のコンサートでは、唱歌、古き良き歌謡曲、映画音楽なども演奏しましたが、最終曲ではG.ビゼー作曲オペラ「カルメン」の曲をメドレーでお届けしました。たった3人のオペラでしたが、3人だからこその演奏が実現できたように思います。この選曲は正に、その前の年のお客様からのリクエストで実現したことでした。お客様が気軽にいらっしゃれて、コンサート会場で音楽と出逢い、そこで終わってしまうのではなくお客様ご自身の意見を会場に置き土産として残していただき、また次へつながる、そんな地域とつながる循環型のコンサートを目指して継続しています。

3.成果と課題

(1)成果

上記活動の他にも、様々なコンセプトのコンサート、例えば施設や病院への出張コンサート、自治会などとタイアップしたお客様も歌や楽器で参加できる参加型コンサート、ホームコンサートのデリバリーなどを行ってきました。またコンサートスタッフとして多くの企画運営に携わり、サポート側からコンサートを作り出すことにも力を注(そそ)いできました。それら全てに共通するのは、音楽を人に届けたい、人が音楽に出会ってくれたら、という思いです。私にとっては、「サポートする立場で音楽の場を作ること」と、「自分自身が音楽を奏でて音楽の場を作ること」は、人と音楽が出逢う場を作るという意味では同じことと感じます。裏方や表方という言い方もありますが、もっと多面的な立場が複雑に組み合わさって一つのものを作り上げるプロセスをたくさん見てきました。地域には人がいて、その人たちが音楽と出会う場を作る、そのためのツールになり得るのは、こういった考え方、コンセプトではないかと私は経験から実感しています。

(2)課題

○広告宣伝

こういった活動の中で一際難しさを感じるのは周知についてです。チラシはどこに置くのか、誰に来ていただくものなのか、チラシ以外にどんなものがその地域にとっての周知のツールとなるのか、また私がまだ知らないツールは何なのか、これからも様々な視点での勉強が必要だと考えています。

○資金面

またもう一点挙げるとすれば、運営の難しさです。実行という意味での運営には経験がありますが、規模が大きくなれば、また回数を重ねていけば、資金の問題からも目をそらせなくなってきます。これから継続的に続けていく上では、向き合っていかなければいけない問題と捉えています。

4.抱負

○人と音楽が「出逢う」ということを大切に

人と音楽には様々な出逢いがあると考えます。ふとした瞬間、耳にして引っかかって離れない曲、コンサートで聴いた曲、楽器や歌のレッスンで演奏にチャレンジした曲、ある日ふと思い出した曲、そのどの瞬間もが、一つ一つの出逢いです。その出逢いを作りたいという私の行ってきた一連の活動は、私の音楽療法士としてのアイデンティティも大きく関わっていると考えます。そういった自分の個性を大切にしながら音楽療法士としての自分も生かしつつ、しかしこれからもあまり肩書にこだわることなく、地域やそこに住む人により近い活動をしていきたいと思っています。

○将来の展望

近い将来への展望は、こういった機会をもっと増やすべく、新しい企画を一つずつ地域に立ち上げていくことです。また、夢物語かもしれませんが遠い将来への展望を考えたときに思い浮かぶのは、音楽と人との出逢いが増え、年齢や障害やその他様々な壁のようなものに遮られることなく、音楽を必要とする人のところに音楽が届く、そんな未来の一助になりたいという望みもあります。音楽が地域にあって、気軽に興味の赴くままに足を運べ、行ったその場所で豊かな時間を過ごせること、これまで長い時をかけて音楽に携わってきた者として、これからもそんな循環が生まれる地域に根ざした音楽の世界を目指していきたいと思います。

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