地域音楽コーディネーター 神奈川県 宮下毬奈さん
- ■活動テーマ:
- Chill Cafe ~ピアノを弾いて、集いの場をつくる~
- ■目次:
- ■活動開始時期:
- 2023年5月23日~現在
- ■場所:
- 地域福祉施設「本牧原地域ケアプラザ」
- ■対象:
- 一般
1.きっかけ
音楽大学卒業後ピアノ講師をしていましたが、ある日、一身上の都合で音楽の仕事に区切りをつけ、2022年10月、真夜中の病院内の売店で働き始めました。
その病院の方より、社会福祉法人横浜市サービス協会が管理している地域福祉施設「本牧原地域ケアプラザ」を紹介していただいたことが現在の活動のきっかけです。面接時の履歴書にピアノ講師の経歴を書いていたため、私の力を生かせる場所があるのではないかということでした。そして、ケアプラザの職員の方と相談し、ピアノの生演奏が流れる「Chill Cafe」を開催することになりました。
私は音楽とピアノが大好きですが、大勢のお客様の前で演奏したり、音楽で自己表現することが苦手でした。そんな私でも「カフェのBGMとしてピアノを演奏をすることで、地域社会に必要なあたたかい場所をつくることならできるかもしれない」という思いで、活動を続けています。
2.具体的な内容
(1)目的
「本牧原地域ケアプラザ」は、高齢者、子ども、障がいのある人など、誰もが地域で安心して暮らせるよう、様々な取組を行っています。
私たちが開催しているChill Cafeは、ピアノの生演奏をバックに、挽(ひ)き立てのコーヒーを飲みながら、誰もがおしゃべりを楽しめるカフェです。Chill(チル)には「居心地の良い」「くつろぐ」という意味があります。
音楽が好きであれば、元気なシニアの方から、軽度の認知症の方、病気療養中の方、障がいのある方まで、誰もが安心して過ごすことができます。
最近は地元の中学生や大学生がお手伝いに来てくれるようになったため、世代を超えた交流が生まれています。子どもたちの学校以外の活躍の場所になることを目指しています。
▼Chill Cafeの様子
(2)開催日
奇数月の第4金曜日(13:30〜15:00)に開催しています。8月にはChill Cafe 夏祭り、12月にはChill Cafeクリスマスパーティーを開催、地域の子育てサロンや高齢者向けの施設で出張開催することもあります。
(3)内容
Chill Cafeでは挽(ひ)きたてのコーヒーを飲みながら、ピアノの生演奏をお楽しみいただけます。コーヒーはなんと100円!おかわり自由!お菓子付きです!
お客様のリクエストに応じて、昭和歌謡、洋楽、シャンソン、ジャズ・スタンダードなど、幅広いジャンルの曲を演奏します。通常のコンサートのようにかしこまった雰囲気ではなく、コーヒーを片手に、気軽におしゃべりを楽しみながらお聴きいただけます。
私は音楽大学でクラッシックピアノを専攻しましたが、大学4年次に副科でポピュラーピアノを学んだことが、現在の活動にいきています。
コード譜(C―Am―Dm―G等)を読みながら自由に演奏するテクニックを習得したことで、幅広いレパートリーを持てるようになり、1回の開催で100曲以上を演奏したこともあります。
多くのお客様に喜んでいただくことができているのは、当時のポピュラーピアノの先生のおかげです。とても感謝しています。
(4)来訪者
開催時間が平日の昼間のため、シニアの方が多く集まります。一人暮らしのお父様をお連れになるお客様や、認知症のお友達と一緒に来てくださるお客様もいらっしゃいます。
お一人で来られても常連のお客様が仲間に入れてくださいますし、カフェのスタッフであるバリスタやウェイトレスと一緒におしゃべりを楽しむこともできます。もちろん、お一人でゆったりとピアノの音色に耳を傾けたり、本を読まれるお客様もいらっしゃいます。
8月のChill Cafe夏祭りは、多世代が集う特別な日です。ピアノの生演奏が流れる空間で、シニアの方々はコーヒーを片手にくつろぎ、子どもたちはかき氷や射的、スーパーボールすくいに夢中になります。シニアの方と子どもたちが昔の遊びを一緒に楽しめるコーナーもあり、世代を超えた交流が自然に生まれています。
(5)スタッフ
本牧原地域ケアプラザにボランティア登録をされている方が、バリスタやウェイトレス、受付など、カフェのスタッフとして活動してくださっています。お客様にスマートフォンの操作方法を教えてくれるスタッフや、シニアの住まいや暮らしに関する知識を持つスタッフもいらっしゃいます。
学校が休みの時期になると、中学生や大学生、リトル・ピアニストのゆまちゃんや、妹のりおちゃんがお手伝いに来てくれます。
ゆまちゃんは全盲のため楽譜を使わず、みなさんのお好きな懐かしい曲を、耳でよく聴いたり鍵盤を弾いた感覚で覚え、あっという間に弾きこなしてしまいます。「上を向いて歩こう」や「ブルー・ライト・ヨコハマ」を上手に演奏してくれます。
りおちゃんはお客様みんなのアイドルです!コーヒーに添えるお菓子を配ってくれます。「りおちゃんが来てくれるなら、夏祭りのお手伝いをしようかな」と言ってくださったお客様もいらっしゃいました。
中学生や大学生たちは、お洒落な看板を描いてくれたり、ウェイトレスとしてお客様とお話しをしてくれます。Chill Cafeが大人だけではつくることのできない、新芽が芽吹いたような雰囲気になります。シニアのお客様は「子どもたちがいるだけで華やかになる」と、とてもうれしそうにされています。
▼ゆまちゃんの演奏
3.成果と課題
デジタル時代と言われる世の中ですが、生演奏が流れる空間、人と人との間にある優しさであふれる場所、誰かと顔を合わせて話すことができる場所、そのようなあたたかい居場所をつくることができているのではないかと感じています。
お客様が楽しそうにしている姿や、笑顔で帰宅される姿を見ると、音楽の力で地域社会にどれだけ貢献できるのか、とてもわくわくした気持ちになります。
課題は運営費の工面です。誰もが利用しやすい低価格での運営を目指しています。現在はカフェ(一杯100円×人数)の売上と、中区社会福祉協議会から「なかくふれあい助成金」を得て運営しています。助成金を申請するための書類作成では、活動目的や内容、抱えている課題を文章だけで明確に伝えなければならないため、そこに難しさを感じています。
4.抱負
Chill Cafeがシニアのお客様にとって、憩いの場でありつづけることが目標です。美味しいコーヒーを淹(い)れてくれるバリスタチーム、お客様に気さくに話しかけてくれる受付チームやウェイトレスチームに足並みをそろえられるよう、私は演奏曲のレパートリーを増やすことを頑張りたいです!
また、子どもたちにとっての「自分の得意なことを見つけられる場所」にしていきたいと考えています。最近の子どもたちは、自分に自信を持てなかったり、自分の良いところに気付いていない子が多いなと感じます。得意なことって何も勉強や運動ができることだけではないと、私はそう思っています。「お客様と笑顔で話せたなぁ」とか「看板が上手に描けたなぁ」とか「お客様と話すことは苦手でも、カフェの準備は段取りよくできたかも」とか……自分の素敵なところをたくさん見つけてほしいですし、たくさん伝えられるようにしたいです。
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