地域音楽 コーディネーター

活動事例 地域音楽 コーディネーター

【事例紹介】心が動く瞬間をもっと身近に。生演奏を手の届く場所へ

(2026年01月22日公開)

地域音楽コーディネーター サクソフォニスト 指導者 大阪府 長澤花奈さん

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■活動テーマ:
心が動く瞬間をもっと身近に。生演奏を手の届く場所へ
■目次:
■活動開始時期:
2024年9月~現在
■場所:
大阪府のコンサートホール、音楽サロン、レストラン、生涯学習センター
■対象:
児童~一般

1.きっかけ

6年間のフランス留学を終え日本に帰国後、今後の演奏活動を考えていました。その頃、留学先で親しくなった北海道出身のサクソフォニストとパリで同郷と知ったピアニストをいれた3人で、約10日間の北海道演奏旅行を企画し、ご縁を頂いた、とある中学校を訪問し演奏会を行いました。

そこでは「生演奏を聴くのは初めて」「サックスを見るのも聴くのも初めて」という子どもたちに出会いました。休憩時間には楽器のそばまで来て、興味津々に目を輝かせていた姿がとても印象的で今も忘れられません。

もう一つは、とあるカフェで月1回開かれる交流会にも招いていただき、おいしい料理とともに演奏を楽しんでもらうという企画でした。休憩時間に地元の方々とおしゃべりしたり、北海道ならではの新じゃが料理をほおばった時間は、とても温かく思い出に残っています。

この北海道での経験を通して、日本にはまだ生演奏を聴く機会が少なく、またサックスも見たこともない人たちが多くいることを実感しました。フランスでは音楽をはじめ芸術が日常生活の中でいつも手の届くところにあります。日本でもそのような場所と機会を作っていきたいと始めたのが現在の活動の原点です。

2.具体的な内容

幸なことに地元大阪府にはホール主催のアウトリーチ事業やコンサート、演奏家クラブや協会など本格的なクラシックを演奏する場や学校など多数あります。しかし、一般の方々は気軽に出向く機会が少ないのが現状です。そこでパリで出会った3人と日本で企画のノウハウを培った音楽仲間たちと一緒に、クラシックの生演奏をより身近に、気軽に聴いていただける環境づくりに取り組んでいます。その一例をご紹介いたします。

A.0歳からのみんなで楽しいファミリーコンサート(2025年9月15日)

(1)目的

このコンサートは、0歳の赤ちゃんとそのご家族が一緒に楽しめる音楽の場をつくることが目的です。昨年から始まり今回2回目となる地元の演奏家クラブによる企画演奏会です。「泣いても大丈夫」というコンセプトを掲げ、子どもたちの自然な反応を温かく受け止めながら、ご家族がリラックスして音楽を味わえる時間を目指しました。クラシックコンサートというと「子どもを連れていくにはハードルが高い」「行っても大人が疲れてしまう」という声も多い中で、子どもも大人も笑顔になれる時間をつくりたいという企画者の思いが形になった公演です。

(2)会場

会場は駅直通のアクセスの良い地元の生涯学習センターの大会議室を使用いたしました。親子で気軽に来られる点を大きなメリットとし、ベビーカー置場や親子で座れるマット席を設置し、小さなお子様連れでも安心して過ごしていただける環境を整えました。

(3)内容

コンサート中は参加型のゲームや歌に楽しそうにしていた子どもたちも多く、親御さんたちだけでなく周りの大人たちも見守るような会場内はとても温かな雰囲気でした。個人的には演奏中、サックスの大きな音に驚いて泣いてしまうのではと心配しておりましたが、実際には演奏のすぐ目の前でスヤスヤ眠ってしまうお子さんもおり、それぞれのペースで音楽を受け止めてくれているように感じました。

後半の「動物の謝肉祭」(サン=サーンス作曲)では、音だけでなく視覚的にも楽しめる工夫を取り入れました。演奏者が頭に動物の絵をつけて登場したり、水の場面ではビニールテープで波をつくり、子どもたちの上で揺らして「水の中」を表現するなど、音楽と体験が合わさった演出を行いました。

(4)参加者の感想

終演後のお見送りでは、「楽しかったです!」という言葉や親子の明るい笑顔を見ることができ、私自身にとっても大きな励みとなりました。ファミリーコンサートとしての開催でしたが、実際にはクラシック音楽が初めてという地域の方々も来てくださいました。「音楽は詳しくないけれど楽しかった」「難しい説明がなくて私にはちょうどよかった」などの感想も頂き、年齢に関わらず楽しんでいただけたことをとてもうれしく思います。

B.レストランでのディナーライブ(2025年8月27日)

(1)目的

地元のレストランで開かれている月1ディナーライブで、お食事をしながら気軽に生演奏を聴くことのできる時間を過ごしていただき、心地よい時間をお届けすることです。

(2)会場

北海道演奏旅行に一緒に行った仲間と再共演を考えていたところ、大学の後輩がライブプロモーションを担当している地元のレストランでディナーライブを実現することができました。北海道でのカフェコンサートのレストラン版です。

(3)具体的な内容

レストランでのライブはお客様との距離がとても近く、カフェとはまた違った雰囲気で、料理の香りや温かい空気とともに音楽が溶け込むような上品な雰囲気でした。「おいしい料理と音楽って、なんて幸せなんだろう」と思える時間でもありました。

また、レストランなのでお食事を取りながらBGM的にも聴いていただける瞬間もあったように思います。そのためクラシック作品も自由に選曲できたように思います。今回のディナーライブを通して、お客様との距離が近いコンサートならではの良さ、そして食事と音楽を一緒に楽しむ魅力を改めて感じました。

C.「Evening Café Concert〜お菓子と音楽で過ごす夕べ〜」(2025年10月13日)

(1)目的

これは2024年末に企画開催したコンサートがきっかけです。フランスでは街のいたるところにカフェがあり、私は練習の合間や出かけたときはよくカフェで休憩していました。フランスは世界でも有名な文化立国で、“音楽・芸術”は常に身近にあり、コンサートホールだけでなく教会、サロン、アトリエ、道端…本当にいろいろな場所にあふれていました。

この雰囲気を日本でも行ってみたいと考え、フランスから一時帰国する留学仲間にフランスのお菓子とお茶を買ってきてもらい、それらを机いっぱいに並べるコンサートをしました。20世紀フランスの作曲家・ピアニストであるフランシス・プーランクの「L’invitation au Château(城への招待)」という組曲を軸に、あいだに他の曲を演奏したりMCを入れたりして、少し変わったプログラミングしてみました。食べながら気軽に聴いてもらうこと、出演者がもてなす側(がわ)になってみること(タイトルの“招待”にもかけて)、既知曲とクラシック曲を混ぜて楽しんでもらうこと——そんな思いを込めていました。

これは別の音楽仲間との企画になります。8月にお世話になったレストランでのライブプロモーションをしている大学の後輩のピアニストが「オフ会みたいなコンサートをしてみたい」と提案があり、私自身も北海道での経験と昨年末のカフェコンサートが楽しかったことが忘れられず、その場で意気投合、数日後に開催が決定しました。

(2)会場

会場は大阪・福島駅近くのサロン・ド・ムネツグ(Salon de Munetsugu)を使わせていただきました。駅からのアクセスがよく、会場にはピアノがあり飲食可、席数は30ほどというカフェコンサートにはぴったりの条件でした。アンティーク家具や素敵な照明など、雰囲気も素敵です。

(3)内容

プログラムは皆が一度は聴いたことがあるクラシック曲、秋にピッタリなポップスや私たちが是非聴いてほしい曲など幅広い音楽ジャンルから選曲しました。この日は大阪・関西万博最終日ということもあり、アンコールには大阪・関西万博オフィシャルテーマソング「この地球の続きを」(曲:コブクロ)を演奏しました。今回はディナーライブに出演させていただいたレストランのパティシエさんにおいしいパウンドケーキをご準備いただきました。おかげで満席となり、第2回は2026年1月18日に開催が決定しています。

3.成果と課題

これまで企画、携わってきたコンサートは毎回満席となり、アンケートでも満足度が高く、とてもうれしく感じています。私はクラシックの前にまず「どのような音楽ジャンルでも生演奏を身近に感じてもらいたい」という思いを大切にしています。生活の中に自然に音楽が入り込んでいくためには、ふだんの暮らしと結びつきやすい“何か”と組み合わせることが、一つの方法ではないかと考えています。

「どう聴いたらいいのか分からない」「お金を払ってまで行くものなの?」と思っている方にも、ちょっと足を運んでみようと思ってもらえる“きっかけ”をつくりたいです。「Evening Café Concert〜お菓子と音楽で過ごす夕べ〜」をシリーズ化することになり、年4回開催を目指しています。

課題としては、今はスマホやパソコンで手軽に音楽を聴ける時代において、「生演奏っていいな」と思ってもらうための工夫は、今後も考え続けなければいけないです。コンサート後、「生演奏って“ふだん”聴かないから、すごく良かった」という声を100パーセントといってもいいほど頂きます。イベントや地域の場、食事と結びつけるなどの試みは続けていますが、更に幅広い世代に届ける方法や、継続できる仕組みづくりも引き続き必要だと感じています。

4.抱負

私にとって音楽は生きていく上で最も大切なものです。演奏家として聴衆が生演奏を聴いて心を揺さぶられることが1番大切な瞬間です。今後も①本格クラシックのコンサート②音楽をより身近に感じられるコンサート作りを目的にします。

身近なコンサートでは、聴く人の耳が自然と広がるようなプログラムづくりを心がけ、クラシックサックスの美しい音色やオリジナル曲も楽しめるように紹介し続けたいと思っています。

現代の日本は物質的に豊かになっていますが、フランスのような文化芸術に関しては、まだまだ寂しいと日々感じています。これからも仲間とともに一般市民が日常生活の中で音楽に気軽に出会える場と機会を創出し、活動を続けていきます。

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