生涯学習音楽指導員

活動事例 生涯学習音楽指導員

【事例紹介】芸術の力による心の復興支援事業「音楽サロンで心に栄養を」の活動を通して

(2021年02月05日公開)

生涯学習音楽指導員 宮城県 千葉淳子さん

ドラムサークルの様子

■活動テーマ:宮城県 芸術の力による心の復興支援事業「音楽サロンで心に栄養を」の活動を通して
■期間:2018年6月~2021年現在
■場所:宮城県気仙沼市、南三陸町(2018、2019)、松島町、登米市(2020)
■対象:幼児〜高齢者まで

■活動内容:

【1.活動の背景】

東日本大震災からもうすぐ10年です。宮城県内の災害公営住宅や防災集団移転事業などは100%完成していますが、気仙沼市の災害公営住宅の高齢化率は42%、高齢者単身世帯は3割近い状況です。インフラ整備は、ほぼ目処がつきましたが移転後のコミュニティづくり、被災者の心のケア、孤立化防止がさらなる課題となっています。

私は、みやぎ生協地域代表理事として仮設住宅や災害公営住宅でのサロン活動など被災された方々に寄り添う活動に取り組んできました。活動中に、自治会組織が確立していない営住宅でのコミュニケーションをどのように取ったらよいか、既存の自治会になじめないなどの悩みの声を多く聞きました。

そのような中で「ふれあい喫茶」というサロン活動は、地域の「居場所づくり」として人との繋がりを生む場所となっています。人間関係が希薄になりがちな中では「誰でも気軽に集まる、参加できる地域の憩いの場」が大切なのだと実感しました。

理事退任後の2018年6月からは、みやぎ生協ボランティアセンターと協力し、『宮城県芸術の力による心の復興支援事業』の助成金事業として採択していただいた“音楽サロンで心に栄養を”という事業を通して活動を継続しています。2019年度からは、要望が多かった「親子リトミック」を子育て支援として開催しています。

2020年度も、災害公営住宅自治会やボランティアセンターからの要望が多く、継続開催する予定でしたが、コロナ禍の影響で気仙沼でのサロン活動の受け入れが難しくなってしまいました。開催数は減りましたが、新たな開催場所として松島医療生協“ハッピー会”さんが開催している「お茶会」、登米市地域づくりPJ事業、登米市子育て支援事業と協力し、コロナ感染予防対策をした上で行っています。

お茶会は、女性の参加者が多いので男性は参加しづらいという声を聞きますが、「音楽サロン」は体験型ということもあり、男性も気軽に参加しやすいという意見があります。そこで、音楽講師として活かせる「音楽リズム遊び(ドラムサークル)」や「大人のリトミック」をプログラムに取り入れたところ、初めての方も気軽に参加してくれます。今回は、下記の5つの活動をご紹介いたします。


【2.具体的な活動内容】

NO.1 ドラムサークル

開催場所:気仙沼市南町災害公営住宅集会室、幸町災害公営住宅集会室、内ノ脇コミュニティセンター、気仙沼市長磯浜ふれあい館、南三陸町災害公営住宅集会室、東松島町長田避難所、登米市石森ふれあいセンター

ドラムサークルは、災害公営住宅における住民同士の交流や公営住宅の住民と近隣住人の新たなつながりをつくるきっかけとして有効です。ドラムサークルとは、参加者全員が輪(サークル)になり、各自が様々な楽器を鳴らします。“リズムの力”で様々な人間関係の基本となるコミュニケーション能力を高めます。「音のコミュニケーション」により、皆でアンサンブルを作り出す楽しさと一体感を味わうことができます。ストレス発散、音楽の一体感や共感を得られるため、地域の世代間交流、コミュニケーションづくりに効果があります。打楽器という簡単に誰でも音が出せる楽器を使うことで自由に表現する楽しさや互いの表現を認めることや自己肯定感・自信に繋げることも期待できます。また、ウェルネスとしてストレスの軽減、心と身体のエクササイズとして、健康維持にも効果的です。自身もメンバーである「東北ドラムサークル」の協力を得て開催しました。

●参加した人の声

  • 始めは難しそうと思ったが、音を出すうちにリズムに乗れ、とても楽しい時間を過ごせた。
  • 脳トレにもなり、身体も温まった。
  • 参加者の笑顔が良かった。

◆2018年9月 気仙沼市幸町災害公営住宅

◆2019年10月 気仙沼市長磯浜ふれあい館

◆2020年10月 東松島長田避難所



NO.2 大人のリトミック

開催場所:気仙沼市表松川災害公営住宅切通コミュニティセンター、四反田住宅談話室、気仙沼市南町災害公営住宅集会室、みやぎ生協気仙沼こ~ぷ委員会集会室

リトミックとは、音楽で遊びながら基本的な音楽能力を伸ばす音楽教育です。スイス音楽教育家で作曲家のエミール・ジャック・ダルクローズがメソードを開発しました。遊びを大人向けに展開することで、脳トレ、認知症予防、コミュニケーションづくりとしても有効です。実際に「脳トレに良い」、「久しぶりに大声で笑った」などの感想が多く聞かれました。

◆2018年12月 気仙沼市切通コミュニティセンター

◆2019年7月 みやぎ生協気仙沼こ~ぷ委員会集会室



NO.3 親子リトミック

開催場所:みやぎ生協気仙沼こ~ぷ委員会集会室、登米市子育て支援センター

親子が触れあい楽しむ場がまだまだ少ないということで、親子リトミックを開催しました。リトミック初体験の方やコロナ禍で外出を控え、出かける場が少ない中、リフレッシュできた等の意見が多かったです。

●参加した人の声

  • 子どもが笑顔で参加しているのを見て、来て良かったと思った。
  • 初めてのリトミックは新鮮で楽しかった。
  • 親子のふれあいの場がとても良かった。

◆2019年12月 みやぎ生協気仙沼こ~ぷ委員会集会室「子育てひろば」

◆2020年11月 登米市子育て支援センター「リトミックひろば」



No.4 フラダンス

開催場所:気仙沼市南町災害公営住宅コミュニティセンター

フラダンスの演奏会では体験コーナーが喜ばれました。

●参加した人の声

  • 『ハナミズキ』『涙そうそう』『糸』『涙そうそう』『見上げてごらん夜の星を』などのなじみの曲をはじめ 11 曲も用意してくれて見ごたえがあった。
  • 手に持って踊っていた木の実で作られた楽器のような物や、飾りの花、首飾りなどにも興味を持とことができ楽しかった。
  • 体験も、参加の皆さんは恥ずかしがらず、フラ・アロハさんが用意してくださったスカートをはいて、ノリノリで踊っていた。
  • 楽しかった~

◆2019年8月 気仙沼南町災害公営住宅コミュニティセンターcadocco



No.5 ハンドベル

開催場所:南三陸町災害公営住宅コミュニティセンター

天使の歌声、癒やしの音と言われるハンドベルの演奏会も開催した際には、きれいな音色に癒やされ、初めてハンドベルを鳴らす経験もでき、良い時間を過ごせたと好評でした。

演奏曲:ジブリ曲♪君をのせて、チキチキバンバン、オーバーザレインボウ、さくら、ハナミズキ、クリスマスソング数曲

●参加した人の声

  • 初めてハンドベルを鳴らして楽しかった。
  • 暗い気持ちで生活している中でハンドベルの演奏を聴き、癒された。
  • こういう人が集まる機会は大切。また、来てね。
  • 実際に鳴らしてみる機会はなかなか無いので体験できて良かった。
  • 素敵でした。良かったです。

◆2018年12月 志津川東住宅第2集会所



【3.課題と抱負】

震災から10年を迎えようとしていますが、宮城の復興は途上にあります。仮設住宅の居住者はゼロになり、新しい環境での生活は各々、安定しているように見えますが、地域との繋がり方、独り暮らしの孤独感など、心の問題はそれぞれ違います。
サロンのような「人が集まる機会」の必要性は大きいと感じます。特に心のケアへの支援では、コミュニケーションづくりやふれあいの場、癒やしの空間、ストレス発散などが大切です。どの活動も開催した折には、「楽しかった」「ストレス発散」になったという多くの声が聞かれ、「音楽」での心の復興の必然性と可能性の広がりを感じます。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、人が集まること、人と接することが非常に難しい状況です。このような社会状況になり、あらためて、コミュニケーションをとることで生活を生き生きさせることに繋がるということがよくわかりました。今後も新しい生活様式の中で、「心に栄養」を与えられる安全、安心な音楽活動を工夫していきたいと思います。

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