生涯学習音楽指導員

活動事例 生涯学習音楽指導員

【事例紹介】リズムを通して人間の可能性を最大限に引き出そう ~私たちのライフワーク ドラムサークル~

(2021年05月31日公開)

生涯学習音楽指導員 北海道札幌市 米澤倫子さん、愛媛県松山市 横田友子さん

■ 活動タイトル:リズムを通して人間の可能性を最大限に引き出そう
~私たちのライフワーク ドラムサークル~
■日時:2002年~現在に至る
■場所:愛媛、名古屋を中心に全国各地で展開
■対象:一般、音楽関係者、学校教育関係者、医療福祉関係者など

■活動内容

【1.出会いから法人を立ち上げるまでの経緯】(記:米澤)

(1)2002年秋「ヘルスリズム」研修受講

札幌と松山という全く違う地域に住んでいる私たちが出会ったのは、静岡県つま恋で行われたヤマハの健康増進プログラム「ヘルスリズムス」の研修でした。

ドラミングを通して行われる2泊3日の合宿型研修では、時間の経過とともに自分が解放されていき、言葉もない中でなぜか心が震え・高まり、全国から集まった受講者とのつながりも深く感じられるという、今まで体験したことのない素敵な時間でした。

最終日には初日より元気にチャージされて、充実した気持ちに足取りも軽く帰宅したことを覚えています。

(2)ライフワークとして活動開始

そしてこの研修の講師であったアメリカの音楽療法士「クリスティーン・スティ―ブンス」との出会いが、三原典子(当時仙台)横田友子(松山)米澤倫子(札幌)のドラムサークル(以下DCと略す)をライフワークとする始まりだったのです。ヘルスリズム研修後、意気投合した私たちはそれぞれの地元で活動しながらDCを知ることになりました。

DCに魅かれて活動を初めた私たちですが、当時DCは活動している人も少なく、悩みなどを相談する場もありませんでした。そこで音声・ビデオ通話を利用しての情報交換を始め、DC現場を撮影したビデオをみてフィードバックをしながら、それぞれの地域でのDC普及を続けました。また、地域での活動をお互いにサポートするために日本の空を往来するようになっていました。

*ドラムサークル(DC)とは
参加者が輪になりドラムやパーカッションを使って、即興的にアンサンブルを作っていくコミュニケーション・リズムイベントです。そこには年齢、音楽の経験、性別等は関係はありません。参加者全員で一体感を感じながら楽しい時間を共有していきます。

現代DCの基礎を築いたアーサー・ハルは、40年以上前、DCが一体感による楽しい時間の共有に止まらず、協調性の醸成、エンパワーメント、療法的アプローチによる健康増進、ストレス発散など、学校教育現場や医療福祉現場など、さまざまな対象者に合わせたDCを展開するためのDCファシリテーターというガイド役を考えだしました。それにより、ファシリテーターが存在するDCでは、誰もが安心安全にリズムを通して楽しむことができるようになりました。

詳しくはこちら 
https://www.vmcglobaljp.com/drumcircle

(3)2005年 アメリカ訪問と任意団体「オレンジブンブン」立上げ

活動をしながら3年経過した2005年。DC先進国アメリカの現場体験や、今までの悩みを相談するためにクリスティーンのいるアメリカに3人で訪問し、自分たちの進みたい道が同じであることをあらためて認め合い、ドラムサークルの普及を目指す任意団体「オレンジブンブン」を立ち上げました。

その後、「オレンジブンブン」は地域を超え定期的に情報交換を続け、クリスティーンの師である現代ドラムサークルの基礎を築いた「アーサー・ハル」の研修を何度も受講し、その理念に共感し、DCが私たちのライフワークとなったのです。


【2.一般社団法人設立にあたって】(記:横田)

(1)2012年DCファシリテーター養成講座主催

「オレンジブンブン」は、2012年初めてのDCファシリテーター養成研修をアーサー・ハル招聘のもと主催し、その後も本研修を2015年まで毎年継続開催してきました。この研修は、「プレイショップ」(楽しく演奏する研修)と呼ばれ、総受講生は、2016年時点で25か国1万人を超えています。

また、アーサー・ハルは、自らが生み出したVMCティーチング理論を次世代につなぐため、2017年世界11か国から16人をトレーナーと認定し、現在では、アメリカなどのトレーナーも加わり16か国計32人のトレーナーが、VMCグローバルチームとして共に活動しています。

私が、日本代表トレーナーとして認定された責任は想像以上に重く、個人の立場で活動することよりも、社会的信頼の下で日本でもVMCティーチング理論を次世代へ継承するとの使命を果たすためには、法人格を持った団体として活動することが必須と考えるにいたりました。

(2)2017年「一般社団法人VMCグローバルジャパン・ドラムサークルファシリテーター研修所」設立

私たちはこの研修を利益追求型の組織主導としてではなく、あくまでも今まで培ってきた日本での研修の場を継承する団体が主催するものとして確立するため、一般社団法人としての活動を目指すことを決断しました。

一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」を根拠に設立される非営利法人のことであり、この法人化により、研修で使用する教材や運営のノウハウ、ホームページ、アーカイブなども、法人に帰属することにより次世代に続く共有財産となりうるものと考えました。

そこで、私が日本人認定トレーナーになった2017年、VMCの創設者でもあるアーサー・ハル、アーサー・ハルの右腕でありVMCグローバルチームのジム・ボノウ、キャメロン・タメル3者の賛同を得、横田友子と共に4人が理事、米澤倫子が監事となり、「一般社団法人VMCグローバルジャパン・ドラムサークルファシリテーター研修所」を立ち上げました。

法人の設立場所としては、開催場所が一都市集中型ではなく、研修生が日本全国から集まることから、理事横田友子の居住地である愛媛県としました。設立にあたり、登記の方法、税務処理、またウェブサイト開設は、それぞれ司法書士、税理士、ITデザイナーなど専門家に相談の上、諸手続等に遺漏のないよう確認の上行うこととしました。

●一般社団法人VMCグローバルジャパン・ドラムサークルファシリテーター研修所
https://www.vmcglobaljp.com

【3.VMCの理念】(記:横田)

  1. 人間の可能性を最大限に引き出す(Facilitating Human Potential)です。
    年齢・性別・職業・健康状態など、ともすれば一般社会において人と人との間の壁ともなり得る条件をすべて取り払い、どのような状況においても互いに認め合い、コミュニケーションを大切にする心を育てたいと考えています。
  2. 世界共通のことばである「リズム」を通じて各個人がその垣根を越え、互いにつながり支え合い、ネットワークのような小さな社会(コミュニティ)をかたちづくることの大切さを学ぶ“体験型学習の場”です。
VMCグローバルジャパン・ドラムサークルファシリテーター研修所は、日本初のVMC認定DCファシリテーター養成研修所として一歩を踏み出しました。国内のみならず海外ともつながり、将来を担う子どもたちをはじめ多くの人々と「共に生きる」喜びを分かち合いたいと考えています。

【4.事業内容】(記:米澤)

主な事業の柱は、下記の3つです。
  1. 日本人講師によるベーシック研修
  2. 海外講師による研修及びイベント
  3. オンライン講座
一般社団法人になってからの3日間ベーシック研修は東京・名古屋の2会場で実施し、約50名の研修生が全国各地から集まり研修終了後それぞれの地元で活動を広げています。参加される方は学生からシニアまで年齢を問わず、音楽関係者、教育関係者、医療福祉関係者等と様々な職種の方々が集まっています。

創設以来、会員の特典として、海外のDCファシリテーターを講師に招き、通訳を介した無料で受講できるWEBクラスを開催し、その数は2021年4月時点で33クラスに及びました。

昨年からは、一般の方を対象に気軽に自宅で学習できるように、一般向けオンライン講座も始めました。

そして、3期目のメインイベントとして、7月週末2日間12人の海外&日本人講師によるオンラインでのドラムサークル三昧「オンライン万歳!!」の開催を予定しています。実際の活動レポートはVMCのホームページをご覧ください。

【5.課題と対策】(記:横田)

(1)コロナ対策

2021年4月現在、新型コロナ感染症の蔓延により世界中が未曾有の危機下にあり、感染予防対策、生活の基盤となる経済活動が優先され、音楽など芸術文化に関するイベントや研修は、”不要不急“のものとして開催できない状況となっています。

元々、任意団体「オレンジブンブン」から始まった私たちの活動は、受講生としてVMCに関わったものでした。そこで、私たちは非営利団体である一般社団法人を主体として立ち上げることで、会員登録料や受講料をなるべく安価に抑えることを心掛けてきました。

そのため、法人立ち上げ時の初期費用などの回収は5~6年の期間を設定していましたが、実際の実地研修が1年以上開催できない現状の上、生活に直結しない音楽を主とする団体には、対象となる助成金や補助金制度も限られており、不本意ながら事業運営的にはとても厳しい状況であると言わざるを得ません。

しかし、コロナ禍においての光明としては、オンラインが急速に普及したことで、当法人のオンライン研修の試みが結実しつつあるという点が挙げられます。

(2)世界を繋ぐオンライン研修

VMCは世界22か国にトレーナーが存在し、アメリカやイギリスなどDC先進国をはじめ、インド、オーストラリアなど優秀な講師陣は30人以上に及びます。さらに、90人を超えるプロフェッショナルDCファシリテーターがVMCグローバルファミリーとしてワールドワイドに繋がっています。

資料を翻訳し、ライブ研修では通訳を介し、日本人が海外のDC事情を始めDC研究事例などを直接学ぶ機会をこの3年で確立することができました。

オンライン研修は、当初、本法人会員のためにのみ開講していましたが、2020年6月からは非会員も受講できる講座を設け、今年7月には週末2日間10講座、7か国12人の講師(アメリカ、カナダ、インド、日本、イギリス、イタリア、オーストラリア)によるオンラインセミナーを「オンライン万歳!!」と題して開催することになりました。

テーマは「人間の可能性を引き出そう」とし、ドラムサークル、ファシリテーションという枠を取り払い、より多くの方に興味を持ってもらえるように企画しました。また、2か月間という長期間にわたり動画配信することで、当日参加できない方にも講座が視聴できるよう配慮しました。

当法人を支えるチームのメンバーは国内外を問わず、それぞれが自分の住む町に拠点を有します。この多極分散であることを利点とし、各々が一つのプロジェクトを多視点から支え、共同参画する形態が採られうることがオンラインでの事業運営の特徴的主旨となるものと考えています。

このセミナーに係わる運営スタッフも、同様の考えで日本全国からサポートしています。オンラインセミナーの強化により、コロナ禍を乗り切りたいと考えています。

【6.今後の夢 ~未来を担う子供たちに~】

ワクチン接種が進み、パンデミックのコントロールが成され、再度実地での研修が開催可能となった日、それをより良いものとするための準備として、ドラムサークル・ファシリテーターを子供たちにも体験学習できるキッズテキストを作成しました。

2020年度からの教育指導要領は、「主体的で対話的な深い学び」をキーワードに編纂されています。リズムでの非言語コミュニケーションをはかるファシリテーターの体験学習を通し、未来を担う子供たちが音楽の分野にとどまらず、人と人との関わりについて学び、次世代のDCファシリテーターとして社会で活躍する日を夢見ています。(記:横田)

2002年に出会い活動を始めてかれこれ20年。当時まだ元気に活動していた私達も壮齢を過ぎようとしています。これからのDCの広がりを考えた時に、同じような気持ちを持った若い同志を育てていくことが今後の課題になります。

まずは第一歩、DCファシリテーターの入り口を大きく広げていく活動をはじめています。そのための講師育成も始めています。この種まきが数年後にドラムサークルという花を大きく咲かすことを夢見ています。私たちが初めてDCに出会った時の感動をたくさんの人に伝えるため、そして未来につながる活動になるように、いま私たちができる限りのことを地道に続けていこうと思います。(記:米澤)

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