活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】音を楽しむワークショップと絵本と音楽のコラボレーション

(2021年07月02日公開)

地域音楽コーディネータ― ピアノ講師&チェンバロ奏者 大阪府 岡本裕美さん

■ 活動テーマ:音を楽しむワークショップ ~中世の民族楽器ハンマーダルシマーを作ろう! & リコーダーとチェンバロによる古楽器コンサート~

■ 日時:1回目 2021年7月25日(日)、2回目 8月22日(日)
共に 10:00~12:00 ワークショップ 13:00~14:00 リコーダーとチェンバロによる古楽器コンサート
■ 場所:大阪府八尾市恩智町 茶吉庵米蔵ギャラリー(https://chakichian.co.jp/)
■ 対象:一般

■ 活動内容

今回は2021年7月、8月に開催予定の「ワークショップ & コンサート」と、今まで続けている「音絵巻 ~ものがたりとハーモニーのおくりもの~」の二つの活動をご紹介いたします。

【1.古楽に魅せられたきっかけ】

私は大学でピアノを学び、卒業後は幼少期より自分も通ったヤマハ音楽教室のシステム講師になりました。自分が教えるようになって「メヌエットって何?」という子どもたちの素朴な疑問に何と答えたら良いのかわからず、インターネット検索をしたところ山梨で行われていた古楽(*1)の音楽祭をたまたま知り、即座に申し込みました。

学生時代、バロック期(J.S.バッハやA.スカルラッティ等が活躍していた時代)の曲を演奏することは「好き」というよりむしろ「苦手」で、試験の度になんとかやり過ごしてきました。

何の予備知識も無くいきなり一人で飛び込んだ古楽の世界。初めて生で聴いたリュート(*2)や、ヴィオラ・ダ・ガンバ(*3)など古楽器(ピリオド楽器ともいう)の音色は素朴で優しく、全国から集まってきた古楽を愛する人たちとの交流もまた楽しいものでした。

そして、数字譜(コードネームのようなもの)を見ながら即興的に演奏する「通奏低音」に夢中になりました。作曲当時の楽器を用いて、国による違いや時代ごとの様式を重んじながら、そのうえで「楽譜に書かれていない音楽を自由に演奏する」面白さは、小さいころヤマハのグループレッスンで作曲やアンサンブルをしていた自分の音楽の原点に立ち返らせてくれるものでした。

しばらくの間チェンバロを弾くのは年に一度、音楽祭の期間中のみでしたが、徐々にアンサンブルの仲間も演奏の機会も増えていきました。それ以来、教会や小さなサロンなどでアンサンブルを中心とした演奏活動をしています。

*1.古楽:ヨーロッパの古い時代(1600年~1800年ごろ)の音楽を、当時の楽器を扱って演奏する。
*2.リュート:中世から18世紀に盛んに演奏された撥弦楽器(下記の写真を参照)
*3.ヴィオラ・ダ・ガンバ:16世紀から18世紀に盛んに演奏された擦弦楽器で両脚に挟んで演奏する(下記の写真を参照)

その中の活動の一つが、リコーダー奏者財前奈緒子とのユニット「グラ☆コロール」です。バロックの演奏会に足を運ぶことのない方にもリコーダーとチェンバロの魅力を感じてもらえるよう、演奏曲はバロック以外に日本の童謡やPOPS、オリジナル曲など多岐にわたります。

お客様からは「初めてチェンバロの音を聴きました」「ピアノと似てるのにギターみたいな音でびっくりした(小学校公演での感想文より)」「リコーダーってこんないい音がするんですね」と好評をいただいています。

【2.具体的な活動】

A. 音を楽しむワークショップ~中世の民族楽器ハンマーダルシマーを作ろう

(1)ワークショップ企画立案について

古楽器の製作をしている友人が、ある日「一般の人にも作れるようなハンマーダルシマー(*4)を考えてみた」というので見せてもらいました。その時はまだ「いかにも試作品」という外見でしたが、音を聴いてみると澄んだ美しい音色にびっくり! ちょうどその頃「グラ☆コロール」の公演を八尾市の茶吉庵でやってみたいね、という話をしていて、「ものづくり」と「音楽を楽しむこと」を結びつけるイベントができるのではないかと思いつき、企画にいたりました。

*4.ハンマーダルシマーとは
弦を叩いて音を出す「打弦楽器」です。同系の楽器に中欧のツィンバロム、インドのサントゥール、中国の揚琴などがあります。また発音の仕組みから「ピアノの先祖」とも言われます。

(2)内容

① ワークショップ
2時間×2日間で一人1台のハンマーダルシマーを製作します。切り出し済みの木材を使い楽器製作家が指導しますので、どなたにもチャレンジしていただけます。

② コンサート
7月の第1回目はJ.S.バッハのフルートソナタ、トリオ・ソナタなどの他、バッハが影響を受けたといわれる作曲家の作品など、300年前のヨーロッパの音楽を築250年の日本の古民家で演奏します。

8月の第2回目は「おなじみのメロディー」というテーマでJ.S.バッハのインベンション第1番、T.エステンのお人形の夢と目覚め等、よく知られた曲と、どこかで聴いたことのある曲をリコーダーとチェンバロのアンサンブルにアレンジして、原曲とはちょっと違った音の風景をお楽しみいただきます。どちらも休憩なし約1時間のコンサートです。

(3)実施にあたってのロードマップ

  1. 2020年夏:企画及び演奏者及び協力者決定、会場調査
    八尾市に古民家を使ったアートスペースができるということを聞き、リコーダーの財前奈緒子とリノベーション中の茶吉庵を下見。オーナーの萩原氏から説明を聞く
  2. 2021年春:会場オーナーへ企画を提案、日程決定、会場予約
    一般の利用を開始したとの情報が入り、古楽器製作家の久保田夏男も加わり、5月に3人であらためてオーナーとの打ち合わせ。「楽器製作ワークショップと古楽器コンサート」と内容を決め、会場となる茶吉庵米蔵を予約。
  3. その後: 役割分担決定、広報宣伝、内容の詰め
    事前準備については、ワークショップの内容詳細は久保田、フライヤー(チラシ)デザイン&茶吉庵との連絡は財前、お客様からの問い合わせの対応(メール)は岡本、と3人で役割分担。コロナ禍以降、当日の受付での混雑を避けるため「事前予約制(料金は振り込み)」「先方の連絡先(メールアドレスなど)をあらかじめ把握」がデフォルトになり、今回もメールで仮予約→振込先お知らせ→振り込み確認後正式受付の連絡、という流れにし、チケットは作りませんでした
  4. 2021年7、8月:ワークショップ & コンサート開催

(4)期待したい事

茶吉庵にはアートやモノづくりに関心を持つ人が多く集ってくるということでしたので、今回のワークショップでは自作することで楽器に関心をもってもらい、普段聴くことのないチェンバロやリコーダーの音色に耳を傾けることで、古楽器の魅力を伝えられたらと願っています。

B. 音絵巻~ものがたりとハーモニーのおくりもの

2019年12月21日(土)豊中市の「ノワアコルデ音楽アートサロン」にて朗読とグラ☆コロールの演奏による「音絵巻~ものがたりとハーモニーのおくりもの」を行いました。

(1)企画立案について

2014年ごろ、リコーダーの財前奈緒子から「絵本と音楽のコラボレーションができないかな」と相談されたのがきっかけでした。絵本作家あおきひろえ作の『ハルコネコ』という絵本を、「読み聞かせと生演奏」というスタイルですることが決まりました。ただ、既成の曲を使うと絵本の世界と溶け込まないように感じ、私がオリジナル曲を作曲しました。

主人公の小さな女の子をイメージした『ハルコのテーマ』と、バロックの様式(ジーグ、シャコンヌ、シチリアーナなど)を取り入れたアレンジにすることで、リコーダーとチェンバロの音色と絵本の世界に統一感を持たせています。以降、『ハルコネコ』は地元の小学校を含め大阪府下で何度か公演する機会を得ました。この時が「音絵巻プロジェクト」5度目の公演でした。

(2)内容

今回はクリスマスの時期でしたので、『ハルコネコ』以外にO.ヘンリー作『賢者のおくりもの』を朗読の題材に選びました。

朗読は大阪を中心に子どもたちへの読み聞かせ活動をしている小林亜矢さんをお迎えし、演奏は初期バロックの作品からイギリスの現代作曲家J.ラターの『古風な組曲』まで幅広く選曲しました。

本公演に先立ち、11時半からは「0歳から楽しめる音絵巻」として、クリスマスの絵本の読み聞かせやクリスマスソングなど親子で楽しめる1時間弱のプログラムを開催しました。

(3)実施にあたってのロードマップ

  1. 2019年1月:財前・岡本の二人で企画立案、会場へ提案
    会場のノワアコルデ音楽アートサロンのオーナー平井氏からは、豊中市への後援申請など広報活動のアドバイスをいただく
  2. 2019年夏:朗読と音楽のタイミングなど、細かい内容の打ち合わせを重ねる
  3. 事前:会場でのリハーサル。事前に会場でリハーサルをすることで、楽器と朗読の声とのバランス、客席からの見え方などチェックができた
  4. 同年12月:実施

(4)聴衆者の反応

もともと「音絵巻」は子どもたちに絵本と音楽に親しんでもらう目的で始めたプロジェクトでした。いざ始めてみると大人の方の申し込みが多く、「人間の声と生の楽器の音に耳を傾ける」というシンプルな時間が、情報に溢れた現代には一種の「癒し」になっていると感じます。

その後、子ども向けの部を別に設けたことで、保護者の方もリラックスして音楽と絵本を楽しんでいました。シリアスなシーンでは子どもたちもジッと絵本のほうを見つめ、 楽しいクリスマスソングでは手足をバタバタしながら全身で音楽を楽しんでいる様子が演奏している私たちにも伝わってきて、幸せな気持になりました。

【3.課題と今後の抱負】

好評を得た「音絵巻」、これからも続編を・・・・と思った矢先のコロナ禍。緊急事態宣言が発令された大阪では、公共の場所でのイベント開催は以前に増して困難になり、学校の音楽の授業ではリコーダーや歌唱は授業内容から外されるなど、私たちの活動もストップせざるを得ませんでした。

しかし、疲れた心を癒し慰め、元気付けてくれる音楽はこれからもずっと必要であり続けると信じています。古楽器の演奏を聴くことが「一部の人の特別なもの」ではなく、すべての人にとって身近な存在に感じてもらえるよう、そして私自身憧れの「美しい音」を求めて今後も活動を続けていきたいと思っています。

音楽活動や日々の小さな出来事をブログに書いています。お読みいただけると幸いです。

●ケンバニストMusikatzeのひとりごと (ameblo.jp)
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