生涯学習音楽指導員

活動事例 生涯学習音楽指導員

【事例紹介】障がいの有無に関わらず、共に学ぶ児童合唱団

生涯学習音楽指導員 神奈川県 矢野遥かさん

■ 活動テーマ:「障がいの有無に関わらず、共に学ぶ児童合唱団」
■日時:2018年7月~月1回60分(2020年3月以降コロナウィルスにより休止中)
■場所:横浜市内の音楽サロン
■対象:幼児~高校性 約15名

■活動内容

【1.活動を始めた背景】

近年、共生社会や*インクルーシブ教育という言葉がよく聞かれるようになりました。地域での文化芸術活動も盛んになってきている中、私もこの理念に基づき児童のための音楽活動の場を作りたいと思い、仲間の作業療法士、音楽療法士と一緒に、「多様性を重視しながら、様々な児童が共に学ぶ合唱団」を結成しました。

インクルーシブ教育とは、障害のある子どもと障害のない子どもが共に教育を受けることで、「共生社会」の実現に貢献しようという考え方です。

合唱団の目的は次の3つです。
  1. 合唱を通して歌う事の楽しさ、表現することの大切さ、豊かな心を育むと共に、生涯に渡って音楽を愛好する心情を育むこと。
  2. 人とのかかわり、音やリズムに合わせて協調していく力など、音楽を通して社会の中で適応していくために必要な力を学ぶこと。
  3. 一生懸命に取り組むこと、友達と一緒に歌う経験を通して自信を持って取り組める機会をもつこと。

【2.具体的な内容】

(1)全体構成と曲目

月に1回60分。「はじまりの歌」で始まり、前半はウォーミングアップ、音楽の基礎や季節の歌を取り入れ、 後半は「今月の歌」として1~3ヶ月かけて合唱曲に取り組み仕上げました。これまでに演奏した曲は、 『世界中のこどもたちが』『虹』『パプリカ』『さんぽ』『ジッパ・ディ・ドゥー・ダー』『赤鼻のトナカイ』 『負けないで』『友達はいいもんだ』『旅立ちの日に』など十数曲。児童からのリクエスト曲も取り入れました。

(2)指導にあたって

団員の中には、日常生活や発達段階において何らかの支援が必要な児童もいれば、そうでない児童もいます。そこで指導の留意点としては、 皆が一緒に音楽を楽しみ、達成感を味わえるよう、また一人ひとりとの関わりや声掛けを大切にし、周りの友達への理解や、相手を思いやり協力し合えるよう努めました。

作業療法士、音楽療法士と共にスタッフ3名で児童合唱活動に携わることは他の一般的な合唱団とは違ったスタイルと思います。 利点としては協働(コラボレーション)することで、何らかの支援が必要な児童への配慮、サポートが円滑に進んだことです。 また自分自身が当時、大学院在学中で音楽療法を学んでいた経験より音楽教育と音楽療法の両方の視点から児童達の指導法を考えることが出来、インクルーシブな合唱団として活動していくことができました。

(3)指導の成果

2年弱、20回のレッスンを通して、児童達には様々な変化が見られました。 指揮や伴奏をしてみたい人を募ったところ、児童の中で伴奏や指揮などの役割を担うようになったり、 その行動に触発されて他のメンバーも「この曲が歌いたい」「指揮をしたい」「伴奏を片手だけしてみたい」 と意欲的な活動が増えました。周りの仲間をサポートする姿も見られるようになり、指導者として嬉しく思います。

残念ながらコロナで活動休止となってしまった2020年に、保護者と児童にアンケートを行ったところ、 再開を望む声が多数聞かれ、合唱活動により育まれる仲間意識や繋がりも実感しました。

【3.課題と抱負】

合唱活動が児童に与える影響は、現状ではプラスの効果が目立つものの、ストレスやプレッシャーとならないよう配慮が必要と思います。現在、「合唱活動における新型コロナウイルス感染症拡大防止のガイドライン」は策定されているものの、社会的距離の確保等の事情により再開の目途が立たず、歯がゆい思いです。再開が叶ったら、今後は地域の公共施設などで発表会の機会を作り、 地域の方々にも合唱団の存在や活動に興味を持っていただきたいです。

今後もインクルーシブの理念(あらゆる人が孤立したり、排除されたりしないよう援護し、社会の構成員として包み、支え合う)を大切に、多様性を尊重していきたいです。将来の展望として、幼少期・児童期からの合唱経験を通し、団員らが大人になった時にも、一人一人の多様な人たちの存在が当たり前のこととして大切にされ、その空間を楽しめるものであって欲しいと考えています。

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