活動事例

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【事例紹介】「童謡・唱歌」を歌って地域のシニアクラブと子ども世代をつなぐ

全国生涯学習音楽指導員協議会 静岡東部支部会員 後藤たかねさん

■活動テーマ:「童謡・唱歌」を歌って地域のシニアクラブと子ども世代をつなぐ

■日時:2005年~現在
■場所:富士宮市小泉六区区民館、富士根南公民館、富士宮市福祉会館、富士宮市民文化会館大ホール
■対象:2歳児から大人30代~90代まで  指導者5名

■活動内容

1. 活動を始めたきっかけ

この活動の原点は2003年、ヤマハ販売店講師会のグループ活動として鍵盤ハーモニカとアコーディオンを扱ったアンサンブル活動「ミュール」を始めた事から始まります。2005年にはピアノを習っている子どもたちに合奏の楽しさを伝えるために、子どもたちのグループ「プチミュール」を発足させました。

2010年、この活動を地域住民へ広げて行きたいという想いで、富士宮市の高齢者学級「小泉六区みのりシニアクラブ」の方々と触れ合う機会を得ました。その後このクラブへ高齢者と子どもたちが音楽を通して交流する企画を提案し、快諾していただき現在の活動が続いています。

*ミュールMUREのネーミングについて
英語のミューズ、ミュージック(Muse、Music)が基になっています。
ミューズとミュージックのMU、リード(REED)のR、とアンサンブ(Ensenble)のEを合わせて作りました。
たまたま、フランス語でミュールというのは円熟した、果物が熟すという意味もあります。

2. 目標

下記の三つを目標としています。
(1)日本の美しい童謡・唱歌を次世代へ歌い継いでいく。
(2)シニア世代と子どもたちが交流することにより多くの相乗効果を得る。
(3)幅広い世代の方々が共に集うことで、お互いを認め合い尊重しあうこと。

3. 具体的な内容とその効果

  1. 童謡と唱歌を扱った理由
    1. 私は、普段から童謡・唱歌の素晴らしさを感じており、それを題材に富士宮市の高齢者学級の講師として授業を進めていました。その中でシニアの方々から、私の知らない童謡・唱歌をたくさん教えていただきました。曲の数だけでなく、各曲が生まれた時代背景や作者(作詞者、作曲者)の想い等の知識を学ぶ事が出来、この財産を子どもたちへも伝えていきたいと思いました。
    2. 子どもたちに童謡・唱歌を知っているか尋ねると、あまり知らないことに気づきました。またその親世代もほどんど知らないのに驚きました。文部科学省の指導要領の改訂毎に、学校教育の現場で童謡・唱歌をあまり取り扱わなくなっている現状を知り、愕然とし「今伝える場がなかったら童謡・唱歌が消えてしまう」という使命感が芽生えました。
  2. 内容
    • 区民館などに集まり、世代ごとに分けて歌唱指導、振り付けや鍵盤ハーモニカ指導を行っています。
    • 毎年、テーマを決めます。(*C参照)そのテーマにあった童謡・唱歌を選びます。次に「歌詞カード作り」「楽曲の編曲」「楽譜作り」「音源作り」「CD製作」「振り付け」等の下準備をし、当日の指導に臨みます。
    • また、それぞれの世代の方々を繋ぐコーディネータ―の役割もしており、練習会場の手配や連絡も行っています。
  3. 扱った曲
    2019年度(外国曲で日本語の歌詞が付き親しまれている曲と戦時下の曲)
    『ピクニック』『鐘の鳴る丘』『線路は続くよどこまでも』
    2018年度(歌詞にどうぶつが歌われている曲)
    『めえめえこやぎ』『まつぼっくり』『うさぎ』『うさぎのダンス』
    2017年度(とりのうた)
    『すずめの学校』『赤い鳥小鳥』『浜千鳥』『ことりのうた』
    2016年度(うみのうた)
    『われは海の子』『うみ』『海』『かもめの水兵さん』
    2015年度
    『りんごのひとりごと』『山寺の和尚さん』『歌の町』
    2014年度
    『村祭り』『わらいかわせみに話すなよ』『手をたたきましょう』『いとまきのうた』
    2013年度
    『めだかの学校』『かわいい魚屋さん』『たきび』『冬の夜』『森の水車』『船頭さん』
    2012年度 
    『春が来た』『春よ来い』『赤い帽子白い帽子』『スキー』『雪』『母さんのうた』
  4. 相乗効果
    <子ども世代=2歳児から小学生>
    • 童謡・唱歌を通してその曲が生まれた背景を聞いて、よりリアルに童謡の世 界観が広がって、興味を持つようになりました。
    • シニア世代の当時の生活様式、学校での様子、子どもたちの遊び等を教えてもらい、子供達だけでなく、その親世代(20代~40代)も知る機会を得られました。
    <シニア世代=70代~90代>
    • 核家族化が進む中で、若い世代や子ども世代と積極的にふれあいを持つこと、また孫世代の学校の様子などに触れることが出来ました。
    • 人生経験を次世代へ伝えることによる満足感と達成感が芽生えました。
    • お孫さんと離れて暮らすおじいちゃん、おばあちゃんにとっては、練習の場が憩いの場になっています。

    このようにして、子ども世代(2歳~12歳)、その親世代(20~40代)、私たち講師世代(50~60代)、シニア世代(70~90代)の4世代が童謡・唱歌を通して触れ合うきっかけができました。この活動を経験し、それぞれの世代がお互いのことを知りたいと考えている事、実感いたしました。

4. 「宮アットホーム」での活動

「プチミュール」は、主にお祭りやイベントなどの地域活動中心に、発表の場を設けていましたが、シニア世代が加わることによって、もう少し大きな舞台で発表したいということになりました。

当時「富士宮市童謡の集い」と「富士宮市昔話の集い」という2つの催しが一つにまとめられて、「宮あっとホーム」(富士宮市童謡・唱歌と昔話の集い)が出来ました。富士宮市シニアクラブ祭り、富士宮市民芸術祭でも発表しています。なお、当団体は、公益財団法人音楽文化創造2021年度「国際音楽の日」記念事業助成団体に採択されました。

私は、これらの催しに、数年前から出演者、実行委員として関わってきました。「宮あっとホーム」が発足して2年目に実行委員長を仰せつかり、その関係で「宮あっとホーム」への出演を打診したところ、シニア世代も子ども世代も快く賛成してくれました。また親世代は、子どもたちが積極的に地域活動に参加するのを望んでいます。

大きな舞台に参加することで、連帯感も生まれます。他のチームの活動を見聞きすることで、より深く地域活動を知ることもできます。また「宮あっとホーム」では、富士宮市の昔話が披露されますので、地域の地名由来などを知ることもできます。

(1)練習の進め方

まず親世代に覚えてもらい,そこから幼児に口伝えしていきます。また年長者から年少者へ、鍵盤ハーモニカの技術指導、歌唱指導なども行っていますので、子どもたちにとってお兄さんとお姉さんがあこがれの存在です。

一方、シニア世代は高い声が出しにくいため、音域を考慮して調性を設定する必要があります。曲の中で、歌う箇所を分けるなどして、工夫しています。曲によってはシニアが歌い、子供たちが見守ったり、リズムアンサンブルをしたりといった編曲をしています。

(2)参加者の反応

毎年参加するのを楽しみにしてくれています(昨年はコロナで中止になりました)。子どもたちは、上級生に憧れて、早く鍵盤ハーモニカを演奏するグループに入りたいと思っています。

保護者からは、家でもいつもその曲を歌っていますという声を聞きます。シニアからは、子どもたちの元気に歌う様子を見るのが、とても楽しみだと言ってくださいます。

5. 課題と今後の抱負

この活動を通して幅広い世代の多くの方々と交流することができました。今後継続していく上での課題は下記の三つです。

  • (1)子どたちの成長のスピードは早く、やっと楽器演奏ができるようになると中学生になり、対象年齢外になり参加できなくなってしまいます。
  • (2)シニア層の更なる高齢化により生活様式が変わり、元気で働いている方も増えていますが、逆に地域活動への参加が困難になったり、興味が薄れてしまう方も少なくはありません。 このような状況を良く把握し、参加者の楽しんでいる様子を発信していくことで、次の世代へのバトンタッチがスムーズにできるようにしていきたいと考えています。
  • (3)指導する講師側の高齢化も大きな課題です。次の世代の若い指導者を育てることも私たちの責務です。講師への謝礼が満足に支払えない現状では、若い先生方が興味を持つことは難しいと考えています。この問題に関して改善策を考え、先を見据えて、活動に参加してくれる環境づくりを目指したいと思います。

この様にいくつかの課題が山積しておりますが、今まで行ってきた私たちの活動実績を柱に今後も、より地域社会に根付き、皆が健康で明るい毎日を送れることに貢献できるように進めて行きたいと思っております。

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