活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】箏による純邦楽以外の演奏

(2021年10月15日公開)

地域音楽コーディネータ― 神奈川県川崎市 川田健太さん

■活動テーマ:箏による純邦楽以外の演奏
■日時:2015年〜現在
■場所:中之条ガーデンズ、赤城山古民家IRORI場、地球屋榛名、Café あすなろ 他
■対象:全世代

■活動内容

1.活動を始めた背景と目的

きっかけは私の地元である群馬県 前橋市の市の事業で行われていた子供向けの体験教室です。初めの師匠と山田流のお箏に出会う私の原点です。小学生からお稽古をしていましたが、童謡や古典曲の稽古をつけてもらう傍ら、ポップスを弾くことにも中学生くらいから目覚めました。今までにない感覚が新鮮で、爪の当て方や呼吸に至るまで古典曲を演奏するのとは異なる点がたくさんあります。

自分が好きで続けていたポップスの演奏ですが、高校生になってご縁がありジャズピアニストの方と演奏させていただいたのを皮切りに洋楽器とのコラボレーションを多く行うこととなりました。

邦楽の世界に身を置いて来た私は驚くことが多く、音楽業界の中でもさらにそれぞれ世界が違うということを肌で感じました。私の場合は、そう言った洋楽器とのデュオやソロでも演奏している目的の一つは、お箏に触れてもらうための入り口になればと思うからです。

    

2.具体的な活動内容

(1)活動内容

お箏のソロはもちろん、ピアノ、フルート、声楽、演歌、ヴァイオリン、アコーディオン等の洋楽器と一緒に、ジャンルを超えた曲を演奏してきました。その場に合った音楽を提供できるよう心がけています。

(2)企画・立案

A.会場

地域音楽コーディネーターという視点から、コンサートを行う会場は歴史的な建物や地域にゆかりのある施設を使うように心がけています。お客様も地域の方にいらしていただきやすく、馴染みのある場所で演奏すると皆さんが喜んでくださいます。

会場とのやりとりや運営をしていく中で自分もスタッフも地域との連携がしやすく、コミュニティを増やすきっかけにもなるのではないかと考えています。

B.演奏者、スタッフ

演奏者やスタッフを頼む際にも、地域で活動されている方にお願いして今まであまり縁がなかった人同士を繋ぐことも地域音楽コーディネーターの役割の一つではないかと私は考えています。

C.内容

会場が決まっていれば、その会場の雰囲気や近隣の地域に因んだもの、季節感のあるものを曲や演出に落とし込むようにしています。企画の回数を重ねていく上で一本調子にならず、飽きの来ないものを提供できるよう心がけています。

D.スケジュール

企画の規模や内容によって様々ですが、できる限り余裕を持ってアクシデントのバックアップが取れるように仕込みを行なっています。思わぬトラブルや当日にならないとわからないこともあるため、タイムスケジュールを作った後に何度も確認します。

E.広報宣伝

主にSNSを利用し、拡散をしていただけるように工夫しています。地方新聞の広告欄などに記載していただけることもあるので積極的に活用しています。

F.当日運営

当日の運営は基本となる「報告、連絡、相談」のしっかりできる知人の方にお願いしています。音楽活動をされている方も多いため、スタッフ同士で繋がりが増え、そこでも新たなコミュニティが生まれます。また、スタッフの経験は奏者がセルフプロデュースを行う勉強にもなると思います。

G.収支

コロナ禍では補助金等が多く出ているため活用しています。特にそれぞれの地域によって出ているものがあったり、地域に対してサポートしている自治体も多くあるためこまめに確認するようにしています。先ほど述べたように、地域にゆかりのある会場などは料金的にも借りやすい場所が多く重宝しています。

3.聴衆者や会場の反応

  • ・先入観のあったお箏の格式高いイメージが払拭された
  • ・お箏を会場で演奏する方がいなかったので新鮮だった
  • ・邦楽器の持つ倍音が心地よい
  • ・洋楽器との響きがこんなにも調和することに驚き
  

4.課題とその対策

邦楽業界の若手奏者と言われる世代は少しずつ年齢が上がってきています。つまり、若い奏者が少ないということです。近年では小学校や中学校の音楽の授業で邦楽器の演習が取り込まれていますが、年に1、2時間で少しの楽器に関する知識と『さくらさくら』を演奏することがゴールになっているイメージがあります。

楽器に触れるきっかけとしては義務教育の中にカリキュラムが組み込まれている事は大切なことと思いますが、そこから継続して習い事の一つとして楽器を続けていくかどうかとなると現状では難しいと思われます。

かつては「和」の習い事に関するお師匠さん達が町の中に自然と溶け込み、和楽器の音が町から聞こえてくるのが自然な時代もあったはずです。先ほども申し上げたように私は「邦楽器に触れるきっかけ」を作りたいため、ポップスやジャズを積極的に演奏しています。それは、生活の中にある音楽の中心が西洋音楽であることから自然に邦楽器の音を落とし込んで馴染んでいただけたらという思いもあります。

当然ながら、この様な課題を解決するにあたり事業を企画していかなければならないわけですが、現実には予算の問題や時間の制約などがあります。これらの問題をうまく解決していくためには一人ではなく、それぞれの専門家の力をお借りしたり、財団などの団体に資金面を支えていただくシステムをお願いしたりする必要があると考えています。広告ひとつとってもSNSではそれぞれの得意な宣伝方法や使っている世代、投稿する時間帯なども考慮していかなければなりません。

5.今後の抱負

若手奏者が増えることはもちろん、日本には古典曲にも素敵な曲がたくさんあります。私自身もまだまだ経験を積んで勉強し、山積みの課題から本当に正すべきものを見抜いていかなくてはなりません。古典だから、ポップスだからではなく、それぞれのジャンルを演奏する奏者達が得意不得意を理解し、補い合っていくことができれば、今まで以上に邦楽業界が潤うと考えています。これは邦楽のみならず西洋音楽の世界でも同じだと思います。

私が業界から引退する頃になっても邦楽業界が輝いていることを私は願っていますし、そうなれば演奏者冥利に尽きます。


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