活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】自分らしく、それぞれが独自の花を咲かせよう

地域音楽コーディネータ― 、桜梅桃李音楽教室主宰
厚生労働省管轄・独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構 障害者職業生活相談員、および企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)
一般財団法人発達障害支援アドバイザー協会認定・発達障害支援アドバイザー
神奈川県相模原市 松下秀也さん

■活動テーマ:自分らしく、それぞれが独自の花を咲かせよう
■日時:1985年~現在
■場所:相模原市にある主宰の音楽教室
■対象:幼児~大人の障がい者及び不登校、こもりびと(ひきこもり)
(対象者の保護者、兄弟姉妹同伴も可)

■活動内容

1.活動を始めた背景と目的

大学卒業後、小学校特別支援学級を経て、幼稚園教諭として携わってきた中で、障がい者(身体・知的・精神・発達・高次脳機能他)や不登校,ひきこもりの方へ自立して生きる力を支援したいと活動を始めたいと思ったのがきっかけです。

その手段の一つとして生涯にわたって楽しむことのできる音楽を選択し、教室「桜梅桃李(おうばいとうり)」(*注1)を開設、ピアノを中心とした音楽指導他地域で各支援活動をおこなっております。

*注1 桜梅桃李(おうばいとうり):鎌倉時代に編纂された日本三話集の一つ「古今著聞集」にあり、桜は桜、梅は梅、桃は桃,李は李として、「自分らしく、それぞれが独自の花を咲かせよう」という意味です。

2.具体的な内容

(1)目的 

ピアノ指導を中心に豊かな感性と自己表現力を育む他、下記の3点を大きな目的としています。
  1. 身辺自立
  2. 就労支援
  3. 自立支援

(2)内容

指導するにあたって様々な教材研究をしましたが、最終的に初心者、子ども、大人に関係なく「ヤマハNEWピアノスタディ」「ヤマハ大人のピアノスタディ」を扱っています。

選択理由としてはクラシックに偏らず幅広いジャンルから選曲されており、鍵盤楽器の優位性としての様々なハーモニーも味わえるカリキュラムになっているからです。受講者にとって無理なく弾き応え、達成感を味わえます。

またクラビノーバやポータブルキーボードも扱い、伴奏機能等を活用することにより、音楽の楽しさと幅が広がる様に工夫をしています。

(3)指導にあたっての留意点

音楽指導および、各支援には、「合理的配慮」と、「スローステップアップ等の個別配慮」をしています。

核にしているのは、
  1. リフレーミング(自分自身と他者を共に、自己肯定感でとらえて実践活動)
  2. ラポール(信頼関係)
  3. 地域の行政、福祉を始め専門多職種との連携

<合理的配慮・個別配慮について>
指導にあたっては、対象者の肉体的、精神的、知的様々な個人差がある事を認識し、その人に合った、その人が望む、そして達成感を感じる指導が重要です。

実際の指導の場面では、
  • ・個別配慮を考える時、その人が望む音楽と表現を尊重しながら、達成感への見通しを意識した、「個別的な音楽技術の提供」と、その人のこれまでの生活(人生)を傾聴し理解する事。
  • ・上記を踏まえた各支援を意識した、「個別的な各支援提案」という、二つの方向性があることを押さえて、それぞれに対応していく必要があると思っております。

さらに対象者理解に立った指導および各支援とは、
  • ①身体機能の把握のみでなく、心理・社会的側面からの音楽指導、各支援提案をする。
  • ②対象者への音楽指導の優位性立場から管理し支配するのではなく、対象者の気持ちに寄り添い、時に向き合って、その人のそれまでの生活(人生)を理解するようにして今、何が必要なのかを考え各支援提案をする。
以上の2つが要点だと思います。

3.受講者の反応と成果

受講者親子である、Iさんのお母さまに直接伺ってみました。
(お答えいただいたまま記します。)

Q1. 今まで続けて来て、Iさんの反応と成果は?

  1. 「始めから音楽に興味を示した訳ではありません。でもパターンを受け入れ定着させ、決まったことをしっかり覚えるという彼の持つ障害の特性から音符と鍵盤を繋ぎ、そこに音が生じる規則性は入りやすかった音楽の入り口だったと思います。

    とは言っても基本的な技術は日々の積み重ねでしか生じません。毎日一回で良いから練習する・・・という、松下先生との約束で少しずつ進んでいく、進歩が分かる。そのような積み重ねが10年20年30年と続き、自分自身もできたと思える事に繋がったのだと思います。

    履歴書の趣味特技欄にピアノと記載し、『ピアノを卒業します、止めます』と、 言わなくなったのはいつだったか、よく覚えていませんが、10年を過ぎた頃でしょうか。松下先生の目標を見据えて、無理強いはしないけど妥協しないという姿勢が、やがて自分の趣味と言えるまで生活の一部として定着できたと思います。」

Q2. Iさんが、仕事とピアノ(音楽)を両立できている工夫等は?

  1. 決まった事をきちんとする・・・という生活のパターンが自分の中にでき上がって、そこにピアノのレッスンが組み入れられていれば、何時なにをするのかは、自分でスケジュールを考えています。

    通常、平日はグループホームで仕事中心の生活時間帯に、出勤前の一時、また週末、仕事を終え自宅に帰宅した時は、夕食までの時間前に自らピアノに向かっています。ピアノの練習を親が促したことはありません。

Q3. 近年、30年近くレッスンで愛用したヤマハのアップライトピアノから、クラビノーバに変えて良かったことは?

(私は個別配慮の一つとして、加齢に伴う身体機能衰退や集中力低下等を考慮して、クラビノーバやポータブルキーボード(ファミリーキーボード)等の、伴奏スタイルでの演奏を提案、取り入れています。)

  1. 音楽の幅が広がった事、何と言っても楽しみ方に広がりができました。伴奏スタイル機能を使い、メロディーが弾ければ、そしてコードネームが添えられれば、様々な楽曲の音源にも雰囲気を近づけ、音楽の世界が広がっていきます。またメロディーとコードネームが弾ければ柔軟に、ジャンルの違う伴奏スタイル機能でさらに音楽の世界が広がりますね。

    ピアノで、色々な表現を弾きこなそうとすれば必要なテクニックも、伴奏スタイル機能があれば、楽しんで満足できる事も、そう難しくないと思えます。「音楽を楽しむ事、楽しめる事それが何より大事」だと思います。

    現在、Iさんは、中級~上級の様々なジャンルのピアノ曲を演奏しています。今、羽田健太郎さん編曲の「スターダスト」と、毎月グループホームで演奏披露するために、その月にあった曲を、伴奏スタイル機能を使って練習しています。

    Iさんのお母さまは、ブルクミュラーや、ポピュラーの曲を伴奏スタイル機能を使い練習しています。Iさん親子は、先述のお母さまの核心をついた言葉通り継続されている事、指導者として嬉しく思います。

4.課題とその対策

障がい児、障がい者、不登校、こもりびと(ひきこもり)の皆さんは、百人百様です。指導者は、そのことを踏まえて、個別的な合理的配慮をすることが肝要です。

この様な対象者の皆さんへ、ピアノを始め音楽指導をされている先生方も多いと思います。保護者の方々は「音楽を楽しんで欲しい」と思うことはもちろんですが、将来に対して、見通しが立たない不安を常に抱えています。

私は音楽を通して「音楽は楽しい!」を実感できるように指導を行っております。それと共に大目的である、対象者の【身辺自立、就労支援、自立支援】を意識して対象者および保護者に対し、必要に応じて提案をしております。 また音楽教室での指導以外の行政、福祉等の同行支援も行っております。

5.今後の抱負

音楽を通して、複合的な経験・体験を一緒に積み重ねて行きたいです。また、ご縁のある地域音楽コーディネーター及び各音楽指導者の先生と一緒に音楽の持つ力と、各支援方法を共有していきたいです。

現在は、コロナ禍で、依頼はございませんが、今後も、地域の公民館、子ども会や、子育てサークル、セルフヘルプグループ等からの伴奏依頼や、おはなし(読み聞かせ)会の効果音の依頼は、続けていこうと思います。 カラオケ、CD活用や手拍子等も良いですが、生伴奏での歌や、アンサンブルならびにポータブルキーボードでの演奏・効果音付けは、私も新たな気づきや学びがありワクワクして楽しいです。

●「桜梅桃李音楽教室」ホームページ
https://www.suganami.com/support/teachers/shutoken/lesson-information/teachers10241



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