生涯学習音楽指導員

活動事例 生涯学習音楽指導員

【事例紹介】人の歓び我が歓び~オカリナの響きを街へ

(2022年01月14日公開)

生涯学習音楽指導員 岡崎市 西本京子さん

■活動テーマ:人の歓び我が歓び~オカリナの響きを街へ
チャリティコンサート10周年記念コンサート集合写真
チャリティコンサート10周年記念コンサート集合写真
■日時:2008年10月~現在に至る
■活動場所:岡崎市図書館“りぶら”大ホール 、岡崎市公園内“能楽堂”、岡崎市民会館ホール、歴史的古民家しょうやの杜、福祉施設(約40カ所)
■対象:40代~70代が中心 最高年齢82歳 登録人数90名

■活動内容:

1.活動を始めたきっかけ

(1)オカリナ(Ocarina)との出会い

今から14年前(2008年)に私は膠原病と言う病気になりました。鍵盤楽器を演奏するには指や身体に無理が生じました。 フルートも吹いていましたが、その楽器でさえ支える力が無くなり「楽器を演奏することは二度とできない」と言う思いで子供の頃から手にしていた楽譜をかなり処分しました。

その様な状態の時に、オカリナ(*注1)と言う楽器に出会いました。一般的なオカリナであれば、握力の弱い自分でも持つ事ができ、指、体力の負担も軽く、どこでもバッグの中に入れて運ぶことができ、癒される楽器です。 中高年者にとっては最適な楽器となる事を発見しました。脳活、呼吸筋のトレーニング楽器としてNHKテレビ番組でも紹介されました。

*注1 陶土でできた吹き口が一つのシングル管の楽器です。オカリナという名称はイタリア語の「小さなガチョウ」からきています。種類はC管、F管、G管、B♭管、E♭管、ソプラノからコントラバス、 また、フルートの音域が演奏できる吹き口が2つのダブルオカリナと3つのトリプルオカリナ等々があります。

    

(2)岡崎オカリナ合奏団結成の成り立ち

当初は、私の音楽友達数名とオカリナを吹き初めました。オカリナ奏者の大沢聡氏が岡崎市でコンサートを開催されたので参加しました。その後、大沢氏から演奏の基本を学び、大沢聡認定講師となりました。

大沢氏の弟子7人でグループを作り、先生と一緒に中国“上海万博”オカリナコンサートに出演をしました。膠原病と言う病気で一時は歩行困難という時もあり、音楽から離れなくてはならない道を考えていましたが、 オカリナに出会い「本当に病気か?」と思う程の回復をし(長時間の練習やコンサート演奏は少しきついですが)音楽を再開できる様になりました。

この私の経験を活かして、2008年10月に岡崎市で市民活動団体「岡崎オカリナ合奏団」として結成しました。

2.活動の原点と目標

原点は「人の歓び我が歓び」です。生涯学習の理念の基、誰もが年齢を問わずに音楽と触れ合う機会を持ち、演奏を通して輝き喜んでいただきたいと言う想いで様々な活動を始めました。
目標は下記の3点です。
  1. 年齢に関係なく生涯にわたって、音楽を楽しむ。
  2. オカリナを使って、自由に演奏表現できることを目指す。
  3. ボランティア施設訪問で喜んでいただけること。
  4. 人前で演奏する歓びを持つ。

3. 指導にあたって

<グループ数>初心者から上級者まで計11グループ
<レッスン回数>月2回、月1回のグループレッスン
(月に3回の場合もあり)
<テキスト>・練習曲はオカリナ用テキストを使用
・曲は下記をポイントに私が選曲しオカリナ用に編曲します。
「楽しめる曲」、「懐かしい曲」、「個人的に演奏したい曲」等
(3オクターブの楽器を演奏される方々はフルートの音域のクラッシック曲を練習します。)
<練習方法>オカリナを楽しむ目的の方、身体のリハビリ目的の方、ボランティア活動ができるようになる目的の方、コンサート出演目的の方など、それぞれに応じて練習方法を変えます。

4.具体的な内容

A.ボランティア活動

結成当初は施設訪問などの「ボランティア活動」を通して喜んでいただきたい、と言う願いでメンバーを作り(参加希望者のみ)活動しています。「先方の方々が喜んでいただく事が自分達の歓びになる」と団員の生きがいにもなりました。 訪問スケジュールが半年先、一年先になっても良いから来て欲しい、と依頼されるようになり、活動の幅が広がり増えて行きました。

訪問先には、音楽に詳しい方、演奏経験のある方が来られる場合もあり、内容が参加者と一致しないと仕方なく聴いていただく事になってしまいますので、アマチュアでも高い演奏力が求められます。
(コロナ禍の今,施設訪問は全くできません。)

B.コンサート活動

ボランティア活動の経験より演奏力を向上できるよう、目標の一つとしてコンサート出演を設定しました。出演の機会は私が依頼されるコンサート(*注2)等になるべく合奏団も参加できるように依頼者と交渉し、今では様々な所で参加できる様になりました。

参加するには、実績を認めてもらう事が大切です。メンバーは出演の機会が増え、目的ができる事で練習量も増え、演奏力が向上して行きました。

注2 “ポルトボヌール”と言う名前のグループは私のオカリナを中心にチェロ、ピアノ、ハープ、ギター、ヴァイオリン等々の仲間で構成されている。

<他のコンサート出演>

〇岡崎市“能楽堂コンサート
春と秋の催しに呼んでいただきます。お声が掛からない時は私の方から事情をお聞きし、接点が切れないように心がけています。
〇「しょうやの杜」(*注3)コンサート
知人からの紹介で私の演奏の機会をいただいたきっかけで、その中で合奏団も参加できるように年2回のコンサートとして定例化しています。
注3 岡崎市の江戸時代から続いた庄屋さんの建物を、庭の探索とお茶をいただきながら音楽演奏が聞ける場所として開放している。
〇岡崎市図書館のイヴェント
私が図書館スタジオでオカリナ指導をしている関係上、図書館の方からお声を掛けていただいたりして演奏の機会を与えられています。通常のコミュニケーションが大切です

〇岡崎グランドポップスオーケストラとの共演(予定)
1973年から現在に至るまでコンサート活動をしているアマチュアでは日本で唯一のストリングス・ポップス・オーケストラとして活動しています。このオーケストラとの共演を来年度2021年度に予定をしております。

コンサートの演奏内容はオカリナアンサンブル合奏が主ですが、最近ではソロ演奏を希望する方が出て来ました。なるべく参加できるようにお声掛けをします。

生涯学習の場として、人生で色々な体験をして喜んでいただくことも私の歓びのテーマです。50~80歳前後代の方々が大きな会場にてコンサート経験をする事により「この歳で舞台に立って演奏ができるなんて本当に嬉しい」と言っていただけるようになり、 私の願いである「人の歓び我が歓び」を実感しました。

C.コンクール体験

もう一つの目標としてコンクールの体験をさせて上げたいと思い企画しました。団員の方々は初めての経験であり大きなチャレンジとなりましたが、10名の方が「参加することに意義あり」と納得していただき「岐阜国際音楽コンクール・クラシックアンサンブル部門」に申し込みをしました。
(コンクール曲:ルロイ・アンダーソン作曲「トランペットの休日」)

メンバーの練習は勿論のこと、励ましながらの指導も大変でした。幸いにも予選が通り本選へと進む結果となり、最終的に「入賞」と言う結果をいただく事になりました。 皆「この歳で、こんな経験ができるなんて本当に信じられない」と感動をされ、人が歓びを経験することを目にするのは、本当に素晴らしいことです。指導者として参加して良かったと思います。

5.参加者の反応

〇参加者Aさん

2018年4月に能楽堂での岡崎オカリナ合奏団の演奏を聴いて入会しました。自分のレベルにあったクラスで練習ができ、仲間と楽しんで吹けたことが一番でした。 音楽からは長年離れていたので、初歩的なこともわからない時がありましたが、先生や仲間が丁寧に教えてくれました。色々な演奏会に出て失敗もありましたが、大勢で一つの曲を合わせて演奏する楽しさや難しさも知り、励みになりました。 音楽を通して仲間との交流等、楽しい時間を過ごさせていただいています。

〇参加者Bさん

高齢者の方々が、私たちの演奏を聴くだけでなく、楽しそうに身体を動かしたり、演奏に合わせて歌って下さったりする姿に自身も元気をもらい、施設の方々との会話にも生きがいを感じています。

〇参加者Cさん

サークル仲間の友人から誘われ、オカリナ教室に入会したのがこの楽器との最初の出逢いでした。元々、音楽は好きで色々なジャンルに興味を持っていました。 以前からこの楽器は好きで特に若い頃、初めて聴いた印象深い曲「コンドルは飛んで行く」は美しい情景、気高いメロディー、大好きな一曲です。当初は「吹けるまで」で良いと思って参加しておりましたが、今ではコンサートに出るようになり三年が経ちます。 私の歴史の中に又、一つ勲章ができた気がします。

6.課題と対策

(1)地域連携と広報宣伝

地域に活動が定着するには実績と知名度が必要不可欠です。
その対策として岡崎市が開催している“街ゼミ”(*注4)に私の経営する 音楽教 室名で毎年参加し、「オカリナ体験講座」を図書館内スタジオで開催し募集しています。
注4 街ゼミとは岡崎市から始まった“得する街のゼミナール

現在は全国的に街の「お客様」「お店」「地域」の“三方よし“の活性化事業と発展し、商店街のお店が講師となり、プロならではの専門的知識や情報、コツを無料で受講者(お客様)にお伝えする少人数制3~10人のゼミです。 街ゼミの参加者は、おもに50~70歳代の方々が多いです。現在はリハビリ楽器として80歳前後の方々も楽しんで来てくださいます。

岡崎文化協会会員にもなっており、地域との連携ができやすく活動に大きく寄与していると思います。2年に1度の芸能祭では市民会館で演奏をしており、又、岡崎市公園内の公園文化祭で『能楽堂』でコンサートにも参加しています。
現在は私自身が企画を含めて中心となっていますので、今後は人材の確保と育成が大きな課題です。
最近は、メンバーの中でオンライン会議をし、それぞれに役割を担っていただけるようになり、縁の下の力持ちが増え、心強い思いに感謝しかありません。

(2)内容面

ボランティア、コンサート、コンクールそれぞれの活動において、幅広いレパートリー作りと、それに基づく多くの企画内容を構築する事、そして演奏面ではレベル向上のためにはグループ演奏のみとせずに、ソロ演奏の場を設ける事です。

(3)指導者

現在指導者は私一人なので、この活動を長く継続できる様に指導者の層を厚くするため、メンバーの数名に指導ができるように育成していきたいと思います。

(4)収支面

活動を継続して行くには、資金の負担を減らす為に助成金や補助金を受ける為の市民活動団体を作る必要が生じました。そこで、まず市の助成金情報を調べ、申請書を作成、プレゼンテーションをした結果、何度も助成金を受け必要備品の購入をしました。 (市民活動団体の助成金は自立ができるように補助金が出されています。)
コンサート会場、スタジオ等も市民活動団体ですと割引され、活動の幅も広がりました。(現在の合奏団は既に自立しているとみなされ、助成金申請を申請する資格はなくなりました。)

7.今後の抱負

今まで合奏団の原点「人の歓び我が歓び」を地域にどのように反映させるか?と言う事を大きなテーマとして活動を続けてきました。コロナ禍で本来のボランティア活動が一切できず、その代わりにコンサート活動しかできませんでした。

実績の基、更に地域貢献できる事を見つけて行きたいと思います。又、人々が生涯を通じて生き甲斐を持って歩めるように、お手伝いをさせていただける事が私の歓びとなります。 その為には幹となる自分自身を、太くしっかりとした土台を築いて行く事が大切だと思います。多くの力を一つにして幹を皆さんと一緒に太く固めて行きます。

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