活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】バロック音楽の演奏活動を続けて気付いた「リコーダー」の魅力と可能性に注目!

地域音楽コーディネーター 大阪府柏原市 財前奈緒子さん

■活動タイトル:バロック音楽の演奏活動を続けて気付いた「リコーダー」の魅力と可能性に注目!
バロック音楽の演奏
バロック音楽の演奏
リコーダー
リコーダー
■日時:2021年9月23日
■場所:フェニーチェ堺 多目的室
■対象:一般 30名

■活動内容

1.活動を始めたきっかけと目的

リコーダーを始めたころはポピュラー音楽など親しみやすいジャンルのアンサンブルをすることが多かったのですが、そこでリコーダーの楽しさを知りました。専門的に学ぶうちに、この楽器の主要レパートリーはバロック音楽(*1)であることから古楽アンサンブルの活動が主になってきました。

古楽とはおおむね1400年頃~1800年の時代に作られた中世、ルネサンス音楽、バロック音楽の総称で、作曲された当時の楽器を用いて当時の演奏スタイルを基とします。楽器は時代と共に進化するため古楽器と呼ばれる当時の復元楽器を使用することが多いのですが、 現在私たちが知っているリコーダーは実は昔のままほぼ変わっていない古楽器です。

おかげで私たちは新しい演奏法を一から修得することなく、古楽を楽しむことができます。ヴァイオリン、フルート、オーボエ、チェロ、鍵盤楽器などそれぞれの古楽器を持った仲間と出会い、リコーダーの曲以外にも多く触れることができたことは私の世界観を大きく変えました。

*1)バロック音楽:1600年から1750年の音楽。作曲家ではA.スカルラッティ、テレマン、ヴィヴァルディ、ヘンデル、J.Sバッハが有名。作品として一般的に有名な曲は、ヴィヴァルディ作曲―ヴァイオリン協奏曲集作品8「和声と創意の試み」の中にある「四季」です。

2.古楽アンサンブル プチフールの設立

もっと深く音楽を考え沢山の曲に触れてみたいと思うようになり、バロックフルート=別名フラウト・トラヴェルソ(*2)、ヴィオラ・ダ・ガンバ(*3)、チェンバロ奏者に声をかけ「古楽アンサンブル プチフール」を設立し、演奏活動を始めるようになりました。

サロンコンサートや地域の文化公演の他、親鸞聖人の教えの朗読&説法と西洋古楽というミスマッチとも思えるイベントや、地域のパティシエを招いてお菓子作りについてお話を聞くスイーツと音楽のコラボレーション企画なども行いました。

結成から8年、年2回ペースのコンサートをメンバーが変わることなく続けていられることは、企画開催のための役割分担が適材適所、自然と行われたことが最も大きいと感じています。たとえ音楽的技術が優れていても人間関係で衝突することは言うまでもなくよくある話です。 このグループで学ぶことが、私のリコーダーの可能性を伝える他の活動にも繋がっています。

*2)バロックフルート(フラウト・トラヴェルソ):フルートの前身である横笛の木管楽器
*3)ヴィオラ・ダ・ガンバ:イタリア語で脚のヴィオールという意味。両脚に挟んで演奏する撥弦楽器で弦の数は6本。

3.コンサート内容と企画からコンサート当日までの流れ

17世紀フランス音楽とバロックダンスの共演。

2月:企画立案 

A.内容 

プログラムを作るにはテーマが必要です。そこで今回はバロックダンスを盛り込んだフランス音楽にしました。フランス音楽には独特の特徴があります。17世紀宮廷ではダンスは必須のたしなみであり、太陽王と呼ばれたフランス国王ルイ14世は自身も舞台に立つほど精通していました。

定期的に行ってきたコンサートなので奇をてらったタイトルは付けず、定番のタイトルとなっています。小規模なコンサートで古楽好きの方や趣味で楽器を演奏している方が来られると想定しています。

B.予算

予算計画としては、出演者の報酬は度外視しています。理由は一般受けする演目よりも私たちの演奏したい曲でプログラムを構成するため無名な作曲家の曲を取り上げることも多々あり、長年の経験から大規模な集客は難しいことを知っているからです。

C.会場予約と日程決め

しかし会場費・広告費等実費は収入で賄えるようにしなくでは継続していくことは困難になるので、それを踏まえた会場探しをします。楽器の特性から多くで30~40名くらい、立地やホールの響きを重視しています。 今回はダンスがあるため、その分広いスペースが必要でした。小規模なホールは大阪市内にはあまりなく、いつも頭を悩ませるところです。本番の日程は、前日に会場でダンスのリハーサルをすることを想定して日曜の午後、6ヶ月前に会場予約、チェンバロレンタル予約をしました。

7月:広報 チラシ作成

チラシは自作し、古楽系のコンサートでの挟み込み、SNSでの宣伝が主な広報手段です。ちなみにメンバーの主な役割分担はこのようになっています。
  • ①チラシ・プログラム製作、コンサート構成・選曲、当日進行
  • ②広報、集客
  • ③楽器運搬、調律、録画記録
  • ④メルマガ配信、アンケート集計

8月:

当日受付のお手伝いのお願い、リハーサル・当日のスケジュール確認。
~練習期間~
基本的に月1回メンバー宅で練習します。コロナ禍のため広い場所を借りることもありました。

9月:コンサート当日

午前中に会場に集合。チェンバロ設置。楽器が会場の気温に馴染んで落ち着くまで時間がかかるため、調律するまでの間に会場セッティングを行いました。開場30分前にリハーサルを終え、受付お手伝い到着。休憩、着替えをして本番。

4.課題

(1)内容面

編成上トリオ・ソナタ(*4)を軸とし、それに各楽器のソロ曲も交えたプログラムにしています。リコーダーとバロックフルートは仲間のような楽器ですが、実はこの二つの楽器が指定されたトリオはあまり無いため、 バロックフルート二本の曲や楽器指定のない作品、ヴァイオリンの曲を演奏することもあります。

演奏会で取り上げられることが殆どなくCDも出ていないような曲でも美しい曲はたくさんあるので、その様な曲を積極的に取り組んでいます。お客様からは「選曲が良い」という感想をよくいただきます。 毎回新曲でのプログラムを組み、未知の曲に出会うことは私たち自身も大きな楽しみであり、それがメンバーのモチベーションにもなっています。

過去にはヴァイオリンや歌などのゲストを迎えた企画も行いました。また、ランチ付きコンサート、平日午後のコンサート、お茶やワインを楽しみながらなど、コロナ禍では敬遠された企画もできるようになることを願っています。

*4)トリオ・ソナタ:バロック時代の室内楽の形式。コレルリ、ヴィヴァルディ、ヘンデル、J.Sバッハなどに多くの作品がある。

(2)運営面

ご来場いただいたお客様でアンケートに連絡先を記入してくださった方には、お礼のメールや不定期メールマガジンでご案内等をお送りしています。今回初めてアンケートの電子化を試みましたが、回収率はよくありませんでした。 お客様の年代が高めのこともありますが、後日わざわざアクセスしてアンケートに答えるより、演奏会直後にその場で書く方が良いようです。

先にも書いたように活動の一番の目的は収益ではなく、音楽の追求であることは結成当初からの共通認識ですが、長く続けるために実費経費は収入で賄うことは理想です。しかし楽器を借りたりゲストをお迎えすると厳しい事は否めません。

チケット代を大幅に上げるということも難しいと考えるので、依頼演奏等で得た収入をコンサートの費用として充てる場合もあります。助成金などの利用も視野に入れることが運営面での課題かもしれません。

5.今後の抱負

「リコーダーの可能性について」

吹けば誰でも音が出る楽器、小学生の学習のための楽器と思われがちなリコーダー。バロック音楽のコンサートを通して芸術的表現ができる楽器であることを知っていただくことも続けていきたいとは思いますが、それとは別に気軽るに手にすることができる楽器の特性を生かす活動に注目しています。

カルチャースクール等でレッスンも担当していると、実際音楽と全く無縁だった高齢の方が音楽のある生活を始められたり、できなかった事ができるようになる喜びを感じられたり、誰かと合奏する楽しさを知ったりするご様子を目の当たりにして嬉しくなります。

何か楽器を習いたいと思った時に、リコーダーは導入楽器として他楽器に比べて安価です。楽譜を読み、リズムをとり、指を動かし、音を聞き、舌を使い、息を出す。何よりメロディーが鳴って楽しい等、高齢化社会のアンチエイジングのアイテムとしては最適だと思います。 この部分をもっとアピールすることができる企画を今後も考えていきたいと思っています。




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