活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】距離は離れてもコロナ渦で絆が深まったオンラインコーラス

(2022年04月12日公開)

地域音楽コーディネーター 東京都八王子市 難波まゆみさん

■活動タイトル 距離は離れてもコロナ渦で絆が深まったオンラインコーラス
オンライン風景
オンライン風景
■日時 2020年5月〜
■場所 東京都八王子市の自宅から国内外オンライン配信
国内:埼玉県、神奈川県、岐阜県、石川県、大阪府、東京都
海外:マレーシア、ニュージーランド、ハンガリー
■対象:
・マレーシアペナン島(*1)在住の日本人(子どもから大人まで)
・現地のマレーシア人や他の外国人(アメリカ人、フランス人等)
・日本へ帰国した人や他国の駐在員の配偶者
主に30〜40代の女性、計約20名

*1)マレーシアペナン島:マレー半島の西、マラッカ海峡に位置する観光地

■活動内容

1.活動を始めたきっかけ

2014年マレーシアの首都クアラルンプールからペナン島に引っ越しました。駐在員の妻として最初は現地の日本人コミュニティに何か関わりを持ちたく、また音楽に少しでも触れる場があればと探していたら女性コーラスグループがあることを知りました。音楽を続けたい希望が一致してこのグループに参加したのが最初のきっかけです。

このグループは2011年、ペナン島で歌が大好きな日本人駐在員の奥様が「日本語で歌を歌いたい人が集まったら楽しいだろうなぁ」という思いで発起人となり、国籍問わず会員を募集され発足されました。

ちょうどその年に東日本大震災のチャリティーのための「ペナンよさこいパレード」が始まりました。その出演を目指して練習をする事になったと聞いています。

初めて練習の日、伴奏者がちょうど帰国されたばかりでピアノを弾ける人を探していたとの事。音楽活動ができていなかったため、ちょうど良い機会と快く引き受けました。またこの頃、歌唱指導は声楽のプロがおりましたが、その後まもなく帰国されたため歌の指導も伴奏も一人で担当することになりました。

2.具体的な活動

(1)マレーシアにて

駐在員生活は華やかに見える一方、言葉、文化、慣習の違いがあり慣れない中、安堵感や充実感を味わえる場を望まれていました。ここに参加する人達は音楽や歌うのが好きで、情報交換も含めこの一時を楽しんで過ごされました。

当時は月に2回の練習を行っていました。ロヒンギャ(*2)や「テナガニータ」(*3)のためのチャリティコンサート、地域のイベント、マレーシアサインズ大学音楽科との交流などに声をかけていただきました。演奏を発表する機会が年に10本ほどあり、島内外でイベントに参加しました。

*2)ロヒンギャ:ミャンマーに住むベンガル民族
*3)テンガニータ:マレーシアの女性、移住労働者の人権NGO

下記の2曲はメディアで紹介されました。

〇『花は咲く』
取材を受け放映されました。

  • NHK 世界で花は咲く#7 2015年5月29日放送
  • NHK 明日へ1m #78 2015年6月25日放送
  • NHK 明日へ~支えあおう 2015年6月21日放送

〇『レット・イット・ゴー』
2017年、フジテレビ「アナと雪の女王」テレビ放送で一般公募のエンディングロール動画に採用されました。

レパートリーはその他、日本の歌メドレー、(春よ来い、ふるさと等)、スタジオジブリメドレー、『未来へ(中国語で)』、『You Rase Me Up』『ハナミズキ』、『瑠璃色の地球』、『風になりたい』ホームソングメドレーなど30曲くらいになりました。

(2)日本へ帰国後

2020年、私が帰国すると数日後にマレーシアがコロナ禍のためロックダウンになり、後任の伴奏者もクアラルンプールに引っ越してしまったために国内を行き来できず、コーラスの活動が休止されました。

同じく日本も緊急事態宣言下で未知のウイルスに皆不安を抱えていた時期、国内にいるメンバーは「顔を合わせて話をするだけでも良いから」ということで、Zoomを利用してオンラインコーラスをやってみよう! という案が浮かび、実践する運びとなりました。すると日本に帰国した多くの方々がグループ活動に戻って来られて久しぶりに画面上で再会することができました。

3.オンラインコーラスへの試み

(1)1年目 1、2ヶ月に1回開催

<Step1>

Zoomを繋ぐと音声にタイムラグが生じるのでミュートにし、私のピアノに合わせて歌ってもらうところからスタートしました。しかし、コーラスとしての実感が湧かず、声を合わせたい願望が広がりました。

<Step2>

ヤマハのSYNCROOM(*4)の前身であるNET DUETを試すことになりコンピューター(音)と携帯(映像)を繋いで練習することを試しました。インターネットの速度の問題で有線や無線などいろいろ挑戦してみましたが、なかなか上手く繋がらない方もおり、バランスの調整が難しくハウリングもおこりがちでうまく調整できませんでした。

*4)SYNCROOM:ヤマハが開発した、遠く離れた人とリアルタイムに音楽セッションができるアプリです。ネットワークの「音の遅れ」によるストレスを減らし、遠く離れている人たちと気軽に音楽を愉しめます。

<Step3>

その後、Clubhouse(*5)で歌うことにも挑戦しました。こちらもタイムラグがあることには変わらず(Zoomよりは音も良かったですが)こちらも断念。

結果、Zoomで行う結論に達し、過去に撮影してあった皆が歌っている動画を共有画面で流し、ミュートの状態で合わせて歌うということが一番満足感を得られることに落ち着きました。歌っている顔が見られるということが一番の安心感につながるそうです。

*5)Clubhouse:2020年4月にアメリカでアプリケーションのサービスを開始した音声配信に特化したSNS(ソーシャルメディア)

(2)2年目の挑戦

現在マレーシアが再びロックダウンとなり、子供たちがオンライン授業が終了してからではないとお母さんたちがコーラスする時間が取れなくなっているため、3、4ヶ月に一度になっている状況です。

そのため、課題を出してパートごとの音源を送り、楽譜をGoogleドキュメントで共有して各自練習、そして動画の課題提出をしていただき編集、リモートコーラスの作品を作りYouTubeにアップして楽しんでいます。

また、子供たちのコーラスグループでは、3回で1曲仕上げる内容のイベントを開催しました。

手順としては、最初に課題動画を共有してそれに向かって練習します。そして最後に歌唱の動画を提出してもらい編集して一本の動画を完成させるという流れです。前回は「鬼滅の刃メドレー」を仕上げました。

(3)現在

リモートコーラスでは、仕上がった曲をYouTubeにアップし(非公開)自分達や家族で観て楽しんでいます。今のところ外部にオープンにして行うイベントは特にありませんが、来年結成10周年としてオンラインイベントを行う予定があり、スタッフ一同で準備中です。

4.参加者の反応

ペナン島内にいる人同士も全く会うことができず、また日本に一旦帰国した人たちも、もうきっと会えないだろうというくらいの気持ちだったようです。しかしこのオンライン方式を活用する事によりフラストレーションが解消され、気軽に参加することが可能になりました。離れていても心は音楽で繋がっている事を実感されているようです。

コーラスグループ内では皆仲が良くて家族のように親密にお付き合いをされている方達なので画面の中で会えることがとても嬉しいと感じてくれています。

5.課題

Zoomを活用すると移動することなく、リアルタイムに手軽に世界と繋がる事ができるのが大きな利点です。

ただ会員の駐在国が増えるとそれぞれの国によって時差があるので(特にヨーロッパ)集合する時間を合わせるのが難しくなってきてしまうかもしれません。

6.今後の抱負

時差があるとはいえ、これから世界各国にいる駐在員が音楽で繋がれるようなコミュニティができる事を望みます。・・・きっとマレーシア以外でもロックダウンの影響により、不安を抱えている日本人は多くいるはずです。

また日本人に限らず、日本語で歌いたい海外在住の外国人の方にも美しい日本の歌を知っていただける場を作って行けたら楽しいと思います。

(執筆日2021年12月)



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