生涯学習音楽指導員

活動事例 生涯学習音楽指導員

【事例紹介】音楽呼吸療法を活用したストーリーテリング~医療従事者の子どもたちを対象としたストレスケア

生涯学習音楽指導員 Born free生涯学習音楽普及支援協会代表 神奈川県鎌倉市 千葉登世

■活動テーマ:音楽呼吸療法を活用したストーリーテリング~医療従事者の子どもたちを対象としたストレスケア~
音楽呼吸療法を活用したストーリーテリング
音楽呼吸療法を活用したストーリーテリング
■日時 2021年3月25日(木)10:00~11:00
■場所 神奈川県よこすか浦賀病院グリーンクラブ保育園
■対象 園児(3歳~6歳)・保育士ほか 計20名

■活動内容

1.活動を始めた背景

新型コロナウイルス感染症の拡大及び、緊急事態宣言に伴う行動制限等の対策により、感染に対する不安や行動変容に伴うストレスなど、人々の心理面に多大な影響を及ぼしています。そのような状況下、日々人々の命を守るために過酷な努力を続けている医療従事者や介護従事者の存在があります。

しかし、感染を恐れる理由からその方々の子供たちに対する虐めが社会問題となっています。虐めは心身の健全な成長及び人格の形成に重大な影響を与えることから、決してあってはならないことです。

この活動は、絵本を通して子どもたちの心に寄り添い、自らの気持ちをコントロールするための呼吸法を伝え、子どもたちが健やかで健全な心を育むための環境整備を目指しています。

Born free生涯学習音楽普及支援協会の目的

  1. 異世代及び地域間の交流を通じて、地域・社会からの孤立を防止し、互いの理解を深める
  2. 経済的格差による教育格差を防ぐ
  3. 音楽を通じて人々の健全な心身の発達を育む

●Born free生涯学習音楽普及支援協会
https://www.bornfree2018.com

2.目的

『どれみふぁすとーりー in 神奈川』は、昨今のコロナ禍で深刻な社会問題となっている「医療従事者及び、介護従事者の子どもたちへの虐め」の現状を鑑み、子どもたち自らが心のコントロールをできる呼吸法を身につけることを目的に、著名な演奏家の即興演奏による「マインドフルネス絵本」のストーリーテリングを繰り広げ、『音楽呼吸療法® 』(*1) のワークショップとともに、文化芸術に触れる機会を提供しました。

3.活動の概要

「音楽で楽しさを・呼吸で自律神経を・マインドフルネス(*2) で他者を思いやる心を・療法で癒しを」をコンセプトに、生涯学習音楽指導員・地域音楽コーディネーター・心療内科医・音楽療法士らが連携し研究開発した、音楽と呼吸を融合させた『音楽呼吸療法®』という療法分野における呼吸法を取入れた読み聞かせを行い、子どもたちの心と体の健全な育成を目指すものです。

なお本活動は、独立行政法人 国立青少年教育振興機構「子どもゆめ基金(読書活動)」を支援する助成活動です。

*1)音楽呼吸療法®とは、身体的及び精神的健康のための呼吸に関する療法で、音楽療法による治療及びセラピー・リハビリテーション・カウンセリングに含まれます。

*2)マインドフルネスとは、1970年代よりアメリカを中心に科学的・医学的な研究が進み効果が最も実証されているもので、ストレスや不安を取り除き心を休め生産力があがると実証されています。身体面では、免疫力の改善、血圧の低下、血中コレステロール、血糖値の低下などが検証され、交感神経と副交感神経のバランスを整える効果が期待できます。精神面では、緊張・うつ状態の緩和、不安の減少、ストレス耐性の向上が実証されています。脳機能面では、集中力・記憶力が向上し集中できるようになります。

4.具体的な内容

医療従事者の子どもたちが通っている保育園にて、「子どものためのマインドフルネス」絵本の音楽朗読会を開催しました。この絵本は、「気持ちを落ち着かせよう」「集中しよう」「イメージしよう」「元気を出そう」「リラックスしよう」など 5種類のマインドに対して6話ずつ描かれた全30話の短編物語です。

雲や木になってみたり、子ネコの背のびやクマさんの呼吸を真似てみたり……いつでもどこでも簡単にできる、楽しくて効果的な30のマインドフルネス・エクササイズを通じて、心と体をじょうずにコントロールする方法を身につけられるイギリスの絵本です。この物語の中から全15話を抜粋し、「音楽呼吸療法®」を取入れた60分のストーリーテリングを行いました。

具体的には、朗読者が読み進めるお話に合わせてマリンバの即興演奏を繰り広げながら、お話に登場する動物の気持ちについて話合い、その時の気持ちに合わせて「5秒-5秒」「3秒-7秒」など10秒単位の呼吸法の実践を取入れていきます。この呼吸法は、自身のマインドや自律神経を意図的にコントロールするための呼吸法で、目的に合わせて変化させます。

参加した園児たちは、一話毎に登場する動物たちにワクワクしながら、積極的に動物たちと一緒に呼吸を楽しみました。

キラ・ウィリー著
アンニ・ベッツ イラスト
大前 泰彦 訳

新型コロナウイルス感染拡大防止対策の観点から動画のWeb配信を行い、不特定多数の方々に視聴する機会を提供しました。


5.現状の調査結果

◆厚生労働省のインターネット調査
期  間:令和2(2020)年9月11日(金)~9月14日(月)
調査方法:インターネット
調査対象:一般の方々(15歳以上)
回収サンプル:10,981件
上記調査結果は、「不安の対象(上位3つ)」です。
不安の対象は、いずれの時期も「自分や家族の感染」への不安が6割以上と最も多くなっています。更に細分化した調査では、「自分や家族に感染したら人から批判や差別、嫌がらせをうけるかもしれない」32.3%という結果も報告されています。

その他、【不安やストレスをうまく発散・解消できているか】との問いに、「できている46.3%、どちらともいえない33.0%、できていない20.7%」と、 およそ半数は不安要因を含んでいます。

6.成果

ちょっとしたきっかけで、身体が反応して調子が悪くなってしまったとき、慌てずに深呼吸をすると気持ちが落ち着いてきます。子どものころに、そのような心のコントロールの方法を知ることができたら素晴らしいことです。

子どもたちが年齢に応じた感じ方で自身の心と向き合い、シーンに合わせた呼吸法を用いて自ら意図的に気持ちをコントロールする方法を知ることは、その場のみならず、今後の人生において沢山の試練を乗り越えていくための重要な要素と考えます。

登場する動物たちの情景と子どもたちの気持ちに合わせたマリンバの即興演奏は、より子どもたちのイメージを膨らませることに繋がり、更にストーリーテリングを手法としたことで、幼児期であっても『音楽呼吸療法』を取入れたワークショップを楽しむことができました。ハチになったり、クマになったり、ヘビになったり・・・元気一杯に参加してくれた園児たちの無邪気な笑顔に、今後継続的な活動の必要性を感じました。

7.今後の抱負

コロナウイルス感染症は変異を繰り返し、収束が見えない状況が続いています。自粛生活が続くなか社会生活の在り方も変化し、子どもたちのICT教育が急速に進むなど徐々に適応しながら形を変え始めています。

ZOOMを活用したオンライン授業など、変化に対応できる環境を整備しつつ、子どもたちが笑顔に溢れた生活を送れるよう、引続き『音楽呼吸療法』を取入れたストーリーテリングの音楽活動を全国は勿論世界へ発信し、 コロナ禍ストレスが原因と考えられるイジメや虐待・増加する自殺などの社会問題を側面から支援しつつ、音楽文化芸術の振興及び発展に関与すること目指します。

●Born free:生涯学習音楽普及支援協会
https://www.bornfree2018.com

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