活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】感じる。楽しむ。つながる。『保育園でのリトミックと特別養護老人ホームでの音楽の集い』

(2022年08月30日公開)

地域音楽コーディネーター 山形県 高橋若菜さん

■活動テーマ:感じる。楽しむ。つながる。『保育園でのリトミックと特別養護老人ホームでの音楽の集い』
保育園でのリトミック
保育園でのリトミック
■日時:2007年から2020年(保育園)
2018年から2020年(特別養護老人ホーム)
■場所:山形市マリアこまくさ保育園、マリアこまくさ支援センター、特別養護老人ホームみこころの園
■対象:1歳から90代まで

■活動内容

Ⅰ.活動を始めたきっかけ

私は音楽大学在学中、ダルクローズ(*1)のリトミック(*2)を専攻していました。そこで音楽を感じることの大切さと、表現することの楽しさ、そして音楽を通して共感できる喜びを学びました。

現在幼児から大人まで幅広い層に対してピアノを指導しておりますが、その他に大学時代に学んだ事を活かし山形市内の保育園で「保育園講座」「育児講座」と、特別養護老人ホームで「音楽の集い」という三つの活動を行っています。普段、生の音楽に触れる機会が少ない方々と共に音楽を通して楽しむことができる事は私自身も暖かい気持ちにさせられる素敵な体験であり、また地域で社会貢献している一人として意義深く思います。今回その活動をご紹介いたします。

*1)ダルクローズ:1865年生まれのスイスの作曲家、音楽教育者で「ソルフェージュ」「リズム運動」「即興演奏」の3つの柱を基に作られたメソード。
*2)リトミック:リトミックは身体全体を使って自己表現する力を育成する。現在はダンス、音楽療法、障害教育にも応用されている。

Ⅱ.具体的な活動

1.保育園講座

(1)きっかけ

教会でボランティア活動をしていた知人が系列の保育園で、「保育に音楽を取り入れていきたいので、指導者を探している」という話を聞き、リトミックを学んできた私に声をかけてくれたのがきっかけです。

その頃の私は子育て真最中、ピアノを教える仕事はしていましたが、卒業後も学び続けてきたリトミックを実践できる機会はこの先ないだろうと思っていたところでしたので、不安な気持ちもありましたが良い機会だと思い引き受けました。それから毎回試行錯誤を繰り返しながら保育園の先生方、そして園児達に助けてもらいつつ、13年以上続いています。

(2)内容

対象は1歳児から6歳児で月1回行います。1、2歳児は20分以内、3歳児から6歳児は30分です。場所は保育園の部屋の中か、保育園にあるフローリングのホールを使用します。内容は園児の身体的、心理的な発達を考慮して変えています。
  1. 1歳児は部屋の中で、くまのぬいぐるみを扱って一緒に手を叩いたり歌ったり、また一人一人と歌で挨拶を行ったり、手遊び歌など歌を中心とした内容です。
  2. 2歳児はホールでピアノに合わせて歩いたり、走ったり、立ち止まったり、また動物になりきったりして、全身で音楽を感じて遊びます。
  3. 3歳児は、私が人気の絵本にピアノで即興的に音楽をつけ、子ども達はその音に合わせて自由に動き、絵本の世界に入り込み想像の世界で遊びます。音楽の強弱やニュアンスを感じてもらうのにも、絵本は効果的でした。
  4. 4歳児は今まで積み重ねてきたリトミックの動きのまとめと、楽器遊び、簡単な合奏も取り入れます。
  5. 5歳児はコミュニケーションを取り入れた内容のリトミックが中心です。音楽を聴いて2人組~4人組になって、友達の動きを真似します。その後ボールを使って2拍子、3拍子、4拍子を感じて動いてみたり、ピアニカ体験や卒園式の歌の練習もあったりと盛りだくさんの内容になります。


(3)反応

保育士の先生方が一緒に楽しみながら協力、フォローしていただけたお陰で安心して進めることができました。毎回講座終了後、担任の先生と反省会を行い次回に繋げていきます。これは月に1度の「ドレミで遊ぼ(ネーミング)」という時間は先生とのコミュニケーションと意思の疎通がとても重要です。先生方より普段の子ども達の様子を教えてもらう事は指導案を作成する上においてとても大きなヒントになります。

子ども達の反応は、面白ければ喜んで参加し、面白くなければ他の事を始める等正直そのものです。その時々の気候、体調、家庭での出来事等も大いに関係してきます。月にたった一度の時間ですが毎回違った反応が返ってくるので、こちらも即興的に対応を変えていく必要に迫られ大変でした。

2.育児講座

(1)きっかけと内容

リトミックを保育園で始めて数年が経った頃、併設されているマリアこまくさ支援センターから声をかけていただいたのが始まりです。この講座は山形市内に住んでいる1歳から3歳の子どもとその保護者10組程度を対象として、半年に1回程のペース(1回45分)で開催しました。

内容は、「親子リズム遊び」「親子音楽遊び」「楽器体験」の三つです。「親子リズム遊び」は保護者と一緒に手遊び歌や保護者の膝の上で手を叩いたり、足踏み、ジャンプしながら行います。幼児という事でぬいぐるみ等を効果的に扱うと、とても集中してくれます。「親子音楽遊び」はストーリーを作り、ぬいぐるみを主人公に見立てて、ピアノのグリッサンド効果などを使用しながら保護者の身体を滑り台などにして興味を持たせます。「楽器体験」はタンバリン、カスタネット、鈴を扱います。ピアノの生演奏を聴いたり、大きな布を波に見立てて、ピアノに合わせてくぐって遊ぶなど全身で音楽を楽しんでもらう体験など盛りだくさんの内容です。

45分の短い時間の中で、瞬時にいろいろな事を親子で体験するので、最後まで飽きずに楽しんでくださっていました。同じ年頃の子どもを持つ保護者たちの気分転換にもなっていたと思います。


3.特別養護老人ホームでの「音楽の集い」

(1)きっかけ

月に1度、みこころの園(山形市内の特別養護老人ホーム)のホールで活動していました。きっかけは、保育園の卒園式などで顔を合わせていた同じキリスト教系列の老人福祉施設の施設長の先生のお声がけです。参加者の年代は、80代から90代の高齢者中心で40名くらいです。

(2)内容

月に1度1時間半行います。前半は、抒情歌や童謡等その時の季節の歌を私のピアノ弾き語り伴奏と一緒に歌います。その後、私のピアノソロ演奏コーナー、後半は思い出のヒットソングを歌う時間とリクエストコーナー、最後はみんなで県民の歌、最上川で締めくくります。リクエスト曲は当日その場で指定されるので、コード付きのメロディー譜を用意して即興的に伴奏します。

唱歌は耳に馴染んでいる方が多く、歌詞とメロディが美しく私も幼少の頃から親しんでいた音楽の原点でもあります。みんなで歌えるので、心を通わせることができたと思います。歌詞を覚えている方も多いですが、歌いやすい様に施設のスタッフの方が歌詞を超拡大コピーして黒板に貼ってくれました。

<扱った楽曲の一例>
唱歌より
  • 春:「春」「さくらさくら」「春の小川」「朧月夜」「春がきた」
  • 夏:「海」「かもめの水平さん」「夏の思い出」「浜辺の歌」「シャボン玉」
  • 秋:「ちいさい秋見つけた」「里の秋」「赤とんぼ」「夕焼け小焼け」「七つの子」
  • 冬:「雪」「浜千鳥」
  • 他:「月の砂漠」「荒城の月」「故郷」、「蛍の光」等

昭和歌謡より
「シクラメンのかほり」「見上げてごらん空の星を」「北国の春」「瀬戸の花嫁」「星影のワルツ」「上を向いて歩こう」「リンゴの唄」「宗谷岬」等

他ピアノソロはクラシック曲からジャズスタンダードまで

(3)反応

受講者の方は毎回楽しんでくれ盛り上がりました。「いい曲だね 」「懐かしいね」とか言葉に出してくれる方も多く、音楽を聴くと子どもだった頃や昔のことをあれこれ思い出すようで、表情が豊かになり会話も増えます。これこそ音楽の力です。

Ⅲ.課題と抱負

コロナ化で上記の活動は休止中です。日常生活の中で生の音楽に触れることが難しい状況の方々に演奏を通して音楽をお届けする活動をしてきましたがそれができない状況になってしまいました。オンラインという方法もありますが難しいと思います。なぜならどの活動もその場での空気感と対面が命です。今再開できる日を望んでいる所です。

今まで色々な活動を一人で十数年行ってきました。今後は演奏活動を軸に一人ではなく、共感してくれる方や音楽仲間を増やして輪を広げ、地域を一緒に盛り上げて行きたいと思います。まず第一歩として、今お世話になっている楽器店の方々と連携をさらに深め進めて行く事と考えています。




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