活動事例

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NEW【事例紹介】イギリスと日本をオンライン音楽会で繋ぐ

地域音楽コーディネータ― ヴァイオリニスト
埼玉県所沢市 酒井奈央さん

■活動テーマ:イギリスと日本をオンライン音楽会で繋ぐ
オンラインおんがくかい
オンラインおんがくかい
■日時:2020年~現在
■場所:オンラインで日本国内外と所沢市内の小学校、病院、放課後デイサービスなど
■対象:イギリス在住の日本人、日本国内の音楽愛好者

■活動内容

Ⅰ.活動を始めたきっかけ

2017年7月から丸2年間、夫の転勤に帯同し、イギリスのロンドンで過ごしました。言葉での表現を越えた音楽の力は、私にとって初めての長期海外生活での支えとなりました。

帰国後2020年の春、連日新型コロナウィルス感染症の報道がやまない状況が続いていました。初めの頃はヨーロッパの様子が多く取り上げられ、ロンドン滞在中によく通っていたストリートや公園の映像など、あまりにも別世界の光景に大変複雑な思いで見ていました。

世界中が混乱の渦となっていた頃、私は「音楽で何かできることはないか」「ヴァイオリンだけで演奏を届ける方法はないか」と思い、オンラインでの演奏の可能性を考え実施に踏み切りました。これが『オンラインおんがくかい』の始まりです。現在ヴァイオリニストとして所沢市を中心に演奏活動も行っておりますが、今回はオンラインでの音楽活動をいくつかご紹介いたします。

Ⅱ.具体的な活動

2.ロンドンとのオンライン活動

(1)伴奏音源作成 2020年5月

この様な環境の中で、今までとは違った形での演奏方法を試行錯誤する日々が始まりました。弾き歌いで遊んでみたり、指人形や折り紙と音楽を組み合わせたり、歌や作曲にも挑戦しました。さらにオリジナル伴奏音源の作成を試みました。コンピューターで音を打ち込みピアノや管楽器、打楽器などの音色を足しながら、充実したサウンドになるように作ります。慣れると少しずつクオリティーが上がり、自由に音作りに夢中になりました。

それは新しい発見にも繋がり楽しいひとときでした。幸いなことに住宅環境にも恵まれていたため、夜遅くまで音出しができ、夫の理解にも大変感謝しています。

(2)最初のオンライン音楽会 2020年6月

在英日本人が利用する「MixB」という情報掲示板サイトでオンライン音楽会の告知をしました。今思うとロンドン滞在時、故郷である日本のことや日本に住む家族などを想う気持ちなど、どこか自分に重ね合わせていた様に思います。

そのサイトを通じて1組のイギリス在住の日本人親子から申し込みをいただきました。もちろんお会いしたことはなく、オンライン上での繋がりです。ヴァイオリンで日本の童謡や手遊びうたを演奏し、その親子には大変喜んでいただきました。私自身も新しい方法で音楽が伝えられる喜びを感じ、それが日々の活力に繋がりました。その時に味わった感情は忘れられません。この1対1でのオンライン演奏がきっかけとなり、その後のクリスマスの時期の企画などに役立ちました。

当時一番ユーザーが多い Zoom で行っていました。日本とロンドンでは時差があるので、どちらにも視聴可能な時間を設定します。先方には自宅のコンピューターやタブレット、またテレビなどの大きな画面などで視聴してもらいます。初心者には事前に個別でテスト配信を行い、手作りの使用方法の資料をお送りしました。自宅でリラックスできる環境にいるので、自由に飲み物を用意していただくこともお声掛けしていました。

(3)広報宣伝 2020年10月~

  1. チラシのアップロード
  2. YouTubeの告知動画を掲載
  3. 国内と海外からもアクセスできるチケットサイトの作成
  4. 知人へ音楽会の案内メール
  5. 所沢市内の情報サイトに登録
など。イギリスや日本各地(長野、東京、山口、福岡、長崎など)からも参加していただきました。

(4)ロンドンとのオンライン音楽会 2020年秋、冬

A.プレイグループ「北ロンドンなかよし会」2020年10月、12月
ロンドン在住時からチャリティー演奏をしていた在英日本人女性のためのプレイグループ「北ロンドンなかよし会」の依頼でオンライン演奏が実現しました。童謡や手遊びうたのほか、コロナ禍において、異国の地で子育てをする保護者の方々へ向けて日本の歌曲も選曲しました。その時も Zoom を使用しました。10組の親子が一緒に手をたたいて音楽に参加し、演奏後の拍手をしてくださる様子を画面を通して感じることができました。
B.リクエスト形式のプライベート音楽会 2020年12月
プログラムはレストランのメニューや、音楽の花束を作るようにお客様にリストアップした曲から自由に選曲してもらい、それを基に作成しました。曲の背景や作曲家についての話しも交えて演奏します。リクエスト形式にしたことで、「選曲が楽しいです。たくさんあるので悩みます」という声が届きました。皆それぞれのカラーがあり私自身も毎回楽しんで演奏することができました。

嬉しいことに、リストアップしたレパートリー以外の曲を依頼してくれた方がいました。その曲は家族のお気に入りの曲ということで、お母さまから息子さんへの音楽のサプライズプレゼントの場面に立ち会えました。他にも曲への想いやエピソードをお伝えくださった方もおり、ヴァイオリンの音色を通して届けたいという気持ちが一層強くなりました。こちらも音楽の贈り物をいただいた温かいひとときでした。
C.週末のコンサート 2020年11月
日本とロンドンの時差は8時間あるので(日本の夜はイギリスでは昼間)、週末の日本時間の昼と夜の1日2公演を行いました。その時々で柔軟に変化していきました。

ひとりのお客さまから始まったオンライン音楽会は、その後各回約15名程の申し込みをいただくまでに少しずつ音楽の輪が広がっていきました。プログラムは、日本の季節感を感じられる童謡や唱歌を中心にイギリスの作曲家エルガー(*)他の作品も取り入れ、イギリスとの繋がりを大切に考え構成しました。

*)エルガー:1857~1934 威風堂々や愛の挨拶などが有名

  1. 自分が撮った季節の花や風景写真のスライドを背景に演奏
  2. オリジナル作品の紹介
  3. 参加型のコンサートとして画面越しに一緒に歌ったり、体を動かす
  4. 事前に楽譜を配布した曲で楽器の演奏で参加する

<参加者からのメッセージ>
  • 「間近で演奏を聴いている様に感じ、日本を思い出し大変懐かしい気持ちになりました」(イギリスからの参加者)
  • 「大学時代に歌った曲を画面越しでヴァイオリンと一緒歌うことができ、当時を思い出しました」(大学時代声楽を専攻された方)
  • 「またピアノを弾きたくなりました」(ピアノ経験者)
  • 「コンサートで使用した写真を送って欲しい」
などと多くのメッセージをいただき、音楽を通して季節を一緒に巡れたことやオリジナル作品にも取り組んだ今回の結果が次に繋がるエネルギーとなりました。

(5)YouTubeの限定配信 2021年6月

2020年12月から準備して、2021年6月に初めて YouTube の限定配信をしました。回を重ねるごとに質の良い音響環境を目指すようになり、そこで文化庁の補助金申請をして機材を揃え、徐々に設備が整っていきました。継続しながらさまざまな新しいことにトライするのは達成感や前に進む動機となり、またお客様にも好評でした。

その後音楽会後の毎回のアンケートなどから、YouTube の限定配信へと移行しました。実施する中で演奏以外の準備の大変さなどがありましたが、生演奏の良さというのをあらためて感じると同時にオンラインならではの新鮮さ、メリットなども実感しました。国境を越えて演奏を届け、音楽の喜びを共有できることはそのひとつです。

2.所沢市でのオンライン活動 2021年~2022年

(1)所沢市立山口小学校 特別支援学級 音楽療法の授業―ビデオレター

所沢市在住の音楽療法士の髙橋小絵先生とのご縁で、数年前より年に一度、ヴァイオリン演奏を行っています。今回授業を予定していた2022年1月は、コロナ禍で全国的にも学級閉鎖などが次々と続く時期でした。残念ながら対面での授業はかなわず、先生方の協力のもと3月にビデオレターでの配信に切り替え、取り組むこととなりました。

授業内容は、2部制で実施します。前半は1年を通して練習された合奏『ディズニー・メドレー』の曲に私も打楽器で参加することになりました。子どもたちが目の前にいることを想定し、声かけをしたり、画面越しで目線を合わせたり工夫しました。

後半は、ヴァイオリン演奏へと続きます。


  • ヴィヴァルディの『四季』より‘冬’ 第2楽章
  • 『鬼滅の刃』より紅蓮華
  • 『アラジン』よりホール・ニュー・ワールド
前半の『ディズニー・メドレー』に合わせて子ども達の好きな曲を加えた選曲とし、曲間ではヴァイオリンの説明や作曲家の背景、曲の雰囲気などを興味を持ってもらえる様に話しました。


後半は、ヴァイオリン演奏へと続きます。

今回ビデオレターのため、動画ができ上がってから皆の反応や感想を聞くまでしばらく時間があります。その間授業の様子を思い浮かべたり、「今共演している頃かな」と思いを寄せるのも特別な時間でした。その後、授業に参加した支援学級の20名から寄せ書きと、先生方からは「いつもの授業のように合奏ができたこと、子ども達も先生方もみんなで聴き入りました」と温かいメッセージが届きました。

離れた場所でも音楽の喜びを共有することができ、大変嬉しかったです。これまでのオンライン活動が活かされ、演奏や編集などでも積極的に参加でき、活動のモチベーションにも繋がりました。地域の方へ音楽の素晴らしさを届けたいという気持ちを持ち、大切にしていきたい活動のひとつとなっています。

(2)新所沢清和病院「敬老会」―オンライン

オンラインでの演奏の活動範囲を広げるため、地域の病院やデイサービスなどにメールを送ったことがきっかけで、近くの新所沢清和病院とご縁ができました。院内のイベントに制限があるため、「敬老会」ではオンライン方式を提案し、快く承諾していただきました。実施するにあたり、演奏データを事前に渡し、視聴してくださる患者さんや職員の皆さんへ向けて、演奏でのビデオメッセージの様なイメージで行いました。トークを交えながら、秋の曲からはじまり、おそらく初めてかなと思う曲では新鮮さも味わっていただきました。

後半では、ヴァイオリンの音色に合う「昭和歌謡曲」(『川の流れのように』、『見上げてごらん夜の星を』)を演奏しました。音楽に参加できる歌や、身体を動かすプログラムなども、患者さんや職員の皆さんに喜んでいただきました。懐かしい気持ちになったり、音楽がきっかけでおしゃべりが弾むなど、日常からほんの少し離れたひとときをお届けすることができ、音楽家として意義があったと強く感じました。

(3)放課後デイサービス

キッズサポートにじいろ狭山、キッズサポートにじいろ入間

この施設は、所沢市内の公民館の読み聞かせの会でご一緒した方とのご縁で繋がりました。内容的には子ども達へ手遊びうた、ヴァイオリンの楽器紹介や秋の曲、オリジナルの「おなまえよびますよ」など、Zoomならではの音楽でのコミュニケーションが私にとっても心温まるひとときでした。

<オンラインの利点>
  1. 演奏者の私にとって、子ども達それぞれの演奏時の顔と表情の変化が良く把握できる。
  2. 視聴者は演奏中ミュートにし「ブラボー♪」や「すごい!」といったその時々の感動を直ぐにメッセージ用紙に書きカメラに向けて何度も見せ伝えることができる
プログラムを締めくくる『さよならバイバイ』という曲では音楽に合わせて、おおきくゆっくりと手を振ってくださる様子が印象に残りました。ゆったりとした気持ちで音楽会の終わりが近づいていることを一緒に感じました。いつか目の前で演奏できる日が来るといいなと願っています。

Ⅲ.課題と抱負

(1)課題

オンライン環境ならではのトラブルがあることが、演奏以外の面で気を配ることです。何か問題が起こっても、柔軟に対応できる様に準備をひとつひとつていねいにしていかねばなりません。またすべて私ひとりで行っているので、オンライン演奏での限界を感じることも正直な感想です。今までのオンライン演奏と生演奏のそれぞれの良さとバランスを考慮しながら継続していくことが大切だと感じています。今後、オンラインでの演奏を一緒に作れるような音楽仲間の繋がりを広げて行くことは大きな課題と考えています。

(2)抱負

オンライン演奏では、嬉しいことにリピーターになってくださる方が多くいます。今年も病院の「敬老会」でのオンライン演奏の依頼をいただきました。いま関わっているお客様とのご縁を大切にしていきたいと思います。この2年間、コンピューターの画面越しにひとりで演奏する機会が多かったですが、今度は同じ場所から生演奏を届けたいと強く思うようになりました。自宅でのホームコンサートも計画中です。また近くにはひとりでお住まいのご高齢の方が多くいらっしゃいます。まずはご近所の方にお声掛けからはじめて、音楽に集うような、ほっとできる場所を作っていきたいです。

今回『地域音楽コーディネーター』の講座を受講したことがきっかけで、演奏以外の面で音楽に携わることについて興味が出てきました。そのひとつが「所沢 空飛ぶ音楽祭2023」の実行委員に応募したことです。先日、第一回目の会議があり顔合わせがありました。さまざまなバックグラウンドをお持ちの方ばかりで刺激を受けています。音楽が好きな仲間と一緒にモノづくりできる喜びや、感動を共有していきたいと思っています。今後、また日本を離れて海外に行くことがあるかもしれません。置かれた場所で自分にできることや、また得意な音楽を通して社会に貢献できることを目指していきます。

(2022年9月13日公開)

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