活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】笛あそびの楽しみ方を伝える活動から、地元の竹と出会い、ひろがる夢

(2022年11月05日公開)

地域音楽コーディネーター 笛あそび なよたけの会主宰 慶沢園横笛のつどい実行委員長
大阪府 鈴原美鶴さん

■活動テーマ:笛あそびの楽しみ方を伝える活動から、地元の竹と出会い、ひろがる夢
鈴原美鶴さん
鈴原美鶴さん
■活動開始時期:2001年~現在
■場所:近鉄文化サロン阿部野、大阪市慶沢園、堺市大仙公園日本庭園、岸和田市兵主神社、岸和田市ゆめみヶ丘
■対象:どなたでも

■活動内容

1.活動を始めたきっかけ

笛との出会いは地元だんじり祭(*1)です。岸和田市内で結婚し二男を授かりました。幼子の手をひいて、提灯に彩られた美しい地車の後を歩きながら、そのお囃子、特に笛の音色にうっとりする心地よさを感じました。将来鳴り物(囃子方)を目指してほしいという親心から、息子と一緒に笛の教室に見学に伺いました。ところが、彼らは笛に全く関心を示さないのです。そこで、私自身がプラスティック製の笛でお稽古をお願いすることにしました。初めは息も続かず、雑音だらけでしたが、楽しくて楽しくて、こんな楽しい楽器は、もっと地域の子供たちに広めたいと思いました。

*1)だんじり祭:江戸時代、岸和田城下町ではじまった祭礼。欅の彫刻を施した地車に綱をつけ、子どもから大人まで数百名で「そーりゃ、そーりゃ」と掛け声を合わせ引き回す。大太鼓(1名)・小太鼓(1名)・鉦(1名)・笛(2名)の囃子は、地車の曳行速度の緩急に合わせて変化する。

習い始めて4年後、2005年文化庁委嘱事業伝統文化こども教室に採択され、岸和田市だんじり会館において「だんじりの笛 工作と演奏のこども教室(20回)」を開催いたしました。講師に笛の吹き方の先生と、笛の作り方の先生をお招きし、地域の小学生が自分で笛を作って吹くという新しい試みでした。そのうち数名が青年団員としてだんじりの欄干で笛を吹いていることは大きな喜びです。将来、岸和田から笛師が誕生したらという夢も芽生えました。

また趣味として笛に親しむ大人も増えてきました。お稽古場を選ぶことは、楽器選び(*2)の次に大切だと思い、神社や町家の和室をお借りして練習させていただきました。笛の音色は空間によって響きが大きく変わりますから、自分自身の耳の力も育てることができたと思います。大ホールでの演奏の機会は、朗読劇団泉座(奈良市)から助演のご依頼を何度かいただきました。心に響く語りに合わせて笛を演奏することはとても学びの多い経験です。

*2)楽器選び:愛用の笛は「蜻蛉(あきつ)」銘(愛知県犬山市・山田藍山先生作)の篠笛。

2.具体的な活動

A.横笛のつどい

(1)きっかけ

2012年に独立し、3年後近鉄文化サロン阿倍野で講座を開くことができました。あべのハルカスから美しい日本庭園「慶沢園」(*3)が見える所です。さっそく公園事務所に「この庭で笛を吹かせていただくことはできますか?」と尋ねると担当者の連絡先を教えてくださいました。幸いにも庭園の入園者数を増やすためのイベントを考えておられたようで、後日、打ち合わせの日時も決まり、順調に計画が進んでいきました。

問題点としては、隣接する美術館の同意が得られるか、ということでした。マイクやスピーカーは使わないのですが、静かに絵画を観賞したい方の邪魔にならないか、音響テストを実施した結果「問題なし」ということで安堵しました。

当時、一緒に演奏活動をしていた「笛こるり」(*4)という三重奏ユニットで、何度かミニライブを開催しました。大阪市天王寺動物公園のイベントとしてプレス発表してくださり、入園者数も増えました。庭園の風景と笛の音色がとても調和していると高く評価していただきました。

同じころ、大仙公園日本庭園(堺市)や万博記念公園日本庭園(吹田市)などでも演奏の機会をいただき、恵まれた環境で活動できたことをたいへん光栄に存じます。教室の受講生さんたちも、素敵な庭園で演奏できる機会をつくることで良い目標となり益々笛を好きになるだろうと思いました。

*3)慶沢園:天王寺公園内にある純日本風の林泉回遊式庭園で、大正時代に大阪の豪商・住友家本邸の庭園として作られた。大阪市指定文化財。

*4)笛こるり:女性三名による篠笛三重奏ユニット
http://fuekoruri.blog.fc2.com/

(2)内容

もっと多くの方と日本庭園で演奏する楽しみを共有したいという思いを伝えると、横笛奏者の森美和子さん(篠笛)と豊嶋くるみさん(能管・龍笛)の賛同を得て、2018年6月「慶沢園 横笛のつどい」が実現しました。基本方針は和装であること、著作権フリーの曲であること、笛以外の楽器や音響設備は使わないことでした。新緑の木々、蓮や菖蒲の咲く池を背景に、31名の奏者たちも、今までに味わったことのない心地よさを実感し、多くのご来園者に園内に広がる笛の音を愉しんでいただくことができました。司会進行役も、笛に精通した適任者が素敵な雰囲気を作ってくれました。

翌年には、出演者は40名となり、演奏場所も四阿<あずまや>(*5)では客席数に限りがあるため、広々とした州浜<すはま>でも演奏することにしました。間近で録画や撮影されるカメラマンも大勢いらっしゃいましたので、急遽、一本橋の上で演奏することを思いつき、写真のような演奏風景が残りました。

大都会の真ん中とは思えない贅沢な心地でした。翌年も開催のご要望をいただき企画しておりましたが、新型コロナ感染症拡大により断念し、まだ再演できていない状況です。

*5)四阿<あずまや>:庭園内に休息や眺望を目的として造られた建屋

B.岸和田市での竹笛楽器

(1)きっかけ

笛づくりも趣味として続けていました。著名な笛師さんをお招きしてワークショップを開催したり、神楽師の方に教わったり、漆教室に通ったり・・・お蔭で私のような不器用者でも、好みの音色の笛を作ることができました。現在、岸和田祭で使われている笛は、ほとんど関東の笛師さんが製作された笛のようです。昔はお父ちゃんが作っていた、という同級生の話も聞いたことがあるので、きっと、地元に笛の材料となるメダケが生えていたのだろうと思っていました。

しかし、私が伐採できる安全な場所には見つけることができませんでした。ところが2021年11月に開催された「白浜アドベンチャーワールド ハッピーパンダミュージックフェス」の出演をきっかけに、急展開がありました。浜家のパンダたちは岸和田の竹が大好物という情報をお聞きしたのです。折しも、岸和田では「初代竹大使」に川崎亜沙美さん(*6)が就任されて、竹ステージ(滋賀県立大学陶器研究室)でのイベント「ゆめみヶ丘まちびらきフェスタ」が準備されていました。市役所に問い合わせると、孟宗竹林の横に、メダケも生えているとの情報!すぐに許可をいただき、数本のメダケを伐採させていただきました。

*6)川崎亜沙美:岸和田在住の女優 (NHKドラマ「カーネーション」直子役)・シンガーソングライター 元プロレスラー

(2)演奏会について

まちびらきフェスタ(*7)で「竹笛づくりワークショップ」ブースを開かせていただきました。地元産のメダケを材料に、だんじりの笛を製作するという内容です。フェスタをきっかけに「つどいの場 たんぽぽ」を運営する琴真弓さんと白草広江さんに出会いました。岸和田市の古民家を活用し、若年性認知症の方とご家族をサポートする活動を続けておられるお二人が「竹あかりと篠笛の夕べ」というイベントを企画してくださいました。竹あかりを広める活動をされている「Nut’s Work’s(ナッツワークス)」さんのご協力のもと、手作り竹あかりの灯る素敵な空間で篠笛演奏の機会をいただきました。

*7)まちびらきフェスタ:岸和田の新しいまち「ゆめみヶ丘」の誕生と地域資源の竹の魅力を宣伝し地域交流を図るイベント

わらべうたを吹くとお客様が一緒に歌ってくださり、盆踊り囃子では手拍子を打ってくれました。またオリジナル曲「なよたけ」「鶴」は必ず演奏する代表曲です。大阪府南部の泉州地域には、だんじりの他にも「やぐら」という山車のお囃子や「淡輪盆踊り囃子」など魅力的な竹笛の旋律が残っていることも広く伝えていきたいと考えています。

(3)竹での楽器つくりについて

竹あかりのイベントをきっかけに、「孟宗竹」を活用した打楽器を作ることができると知り、竹製の打楽器を自作して「竹楽器バンド(バンブーバンド)」を結成したいと思うようになりました。

3.今後の抱負

竹の音を楽しむ新しい音楽を創りたいと夢をふくらませています。従来、篠笛が活躍する場面は、神楽、獅子舞、盆踊りなどの民俗芸能であったり、歌舞伎音楽や和太鼓などの舞台芸能でした。最近はピアノやヴァイオリンなどとのコラボもあるようです。しかし、いずれも熟練者でなければお客様に聴いていただくのは難しいというのが現実的な感想です。

地域住民がいつでも気軽に竹の音楽を楽しむ機会をつくる活動を、演奏家、地域音楽コーディネーターとして取り組もうという目標ができました。地域で育った竹を生かした音楽づくりを目指しています。そのための課題は、魅力的なオリジナル楽曲を創ること、竹楽器の種類を増やすことです。無理なく続けることができる協力者とバンドメンバーを募集中です。

20数年の間には、時々困った出来事もありましたが、いつも笛を楽しむ方法を探して、出会った方に助けていただき続けることができました。

地域音楽コーディネーターの講座をきっかけに、あらためて自分を振り返り見つめなおす機会を得られたことに大変感謝しています。新しいまちづくりの過程で、人と人をつなぐために、音楽が担う役割は大きいでしょう。竹の響きによってやさしいコミュニティが生まれることを期待できると思っています。

●笛あそび なよたけの会
http://nayotakenokai.web.fc2.com/

(2022年11月5日公開)

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「地域音楽コーディネーター」

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