活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】音楽がもたらす生きる力

(2022年11月09日公開)

地域音楽コーディネーター ドラマー バンドリーダー、作編曲家
東京都 赤池立弥さん

■活動テーマ:音楽がもたらす生きる力
生徒の発表LIVE
■活動開始年:1980〜現在
■場所:原宿クロコダイル、三軒茶屋pf、恵比寿天窓、学芸大学メイプルハウス、大岡山Good stock Tokyo
■対象:10代〜80代

■活動内容

1.バンドを始めたきっかけと得たこと

生家の家業が社交ダンス教室だったこともあり、土日は生バンドによるダンスパーティーが開催され、多くのお客様が集まり「生バンド」をバックにダンスを楽しんでいました。幼少の頃よりダンス音楽やバンドの音の中で生まれ育ってきた環境の中で自然に楽器にも触れるようになりました。

最初は小学生の時にエレクトーン教室に通ったのをきっかけに楽器で曲を演奏する事にも興味を持ち、ギターを演奏することで自分の気持ちを代弁して昇華できることを知ると、次第に音楽にのめり込んでいきました。そして11才の時、兄の所属しているベンチャーズコピーバンドにドラムで加入、その後、兄と兄の友達と共にロックバンド「オーディン」を結成、アマチュアバンドコンテストで優勝する等、自分の生活の中にバンド活動が常にあるようになりました。

その後は上京してヤマハ音楽院に入学、在学中よりヤマハイベント、「ポプコン」(*1)のオーケストラ『サウンドスクランブル』に加入、フジテレビ「コッキーポップ」(*2)に出演、また有名な歌手のバックバンドを経験し「新宿ピットイン」、「原宿クロコダイル」、「新宿ロフト」、「渋谷屋根裏」などのライブハウスで演奏活動を続けました。それと並行してヤマハポピュラーミュージックスクールの講師となりました。

この様に常に音楽と向き合った人生の中で仕事としてバンド活動をしてきました。「好きな音楽ジャンルを演奏したくて始めました」というきっかけではなかったので、自然とプロとしてオールマイティーに演奏する事が身につきました。その中で得たのはジャンル問わず心を込めて演奏することの大切さで、白いキャンパスに色々な絵の具で絵を描くようなイメージで音を受け止めて、新鮮な気持ちでいるように絶えず心がけることでした。そういう経験を昨年の(2021)NHK朝ドラマ「エール」の音楽指導担当でも生かす事ができました。音楽の道を歩んでいなければそういう学びはなかったかもしれません。

*1)ポプコン:正式名称は「ヤマハポピュラーソングコンテスト」一般財団法人ヤマハ音楽振興会の主催で1969年~1986年まで開催された音楽コンテストで、アマチュアのプロへの登竜門であった。ここからプロデビューした主な歌手としては、中島みゆき、八神純子、世良公則&ツイスト、チャゲ&飛鳥などがいる。

*2)コッキーポップ:日本放送のラジオ番組でポプコンと連動した番組。1971年~1986年にフジテレビでも放送され、大石吾郎がパーソナリティー


2.具体的な活動

A.イベントの企画

(1)きっかけ

ヤマハでの最初のレッスンは「レディースバンドメイトコース」というバンドレッスンでした。楽器を持ったことのない女性達に11回のレッスンで渋谷エピキュラスホールのライブステージに立たせるという目標の企画でした。数年に渡り楽器が弾けない女性達を3ヶ月でライズステージに立たせるという貴重な経験を続けさせていただきました。その後はバンドコースの他にドラム、ベースギター、ジュニアドラム講師養成講座のレッスンも受け持ち、都内の販売店でレッスンが徐々に増えていきました。

そうして講師活動も数年過ぎたころ、某販売店にドラム講師として新たに赴任し、その販売店で発表会を開催しようと販売店側にお願いしました。ところが予算上の都合で開催が不可能になりました。生徒達にとって練習の成果を発表できる発表会はモチベーションをあげるのに非常に重要な要素と目標なので自主的に企画して開催しようと行動を起こしました。

それがこの後のライブイベントを行うきっかけとなりました。

<企画のポイントは>
  1. 発表会という従来の緊張感ある堅いイメージより「ライブ体験」というイベントにする。
  2. プロが出演するような本格的なライブハウスが必須。本格的というのはプロ用のPA(音響機材)や照明が完備しているライブハウス。いつも自分のライブでお世話になっている「原宿クロコダイル」に依頼。
  3. 現役で活躍しているアーティストで、生徒にアカデミックにアドバイスできる方に御願いし、演奏ではミュージシャンとしてサポートもしてもらう。

(2)成果

<参加者>
イベントでは生徒達が緊張の面持ちでステージに立ちます。演奏が始まると皆汗びっしょりになって演奏します。この日のための衣装も考えてきていました。イベント終了後、みんなの表情は笑顔でいっぱいでした。「こんなに喜んで貰えるなんてなんて素晴らしいことだろう!」と感慨深いものがありました。生徒にとってはこの機会が喜びになり、また生きがいになることもイベントを通して気づきました。

B.「LIVE!LIVE!LIVE!」内容

年に2回、健常者(児童から高齢者まで)に限らず、障がい者も入れて発表ライブ「LIVE!LIVE!LIVE!」というライブ企画を開催しています。場所はライブハウスでライブパフォーマンスとして行います。

(1)主旨

  1. 世代や健常者、障がい者の垣根を越えて一緒に音楽を楽しめる機会の創出と良い環境を作る。
  2. 年齢や身体的なハードル等を心配させずに、アマチュアである参加者をアーティストとして位置付ける。
  3. プロのミュージシャンのサポートにより、バンドアンサンブルの面白さを体験してもらう。
  4. バンドメンバーと聴衆とのコミュニケーションの一体感を共有する。

(2)音楽合宿

バンドアンサンブルの体験を良い環境で充分に楽しみながら学んでいただくために、年2回の都内近郊の合宿所を借りて音楽合宿「ワクワク音楽合宿」(一泊二日)を開催しています。

内容としては講師の模範演奏を聴いて楽しむことや、練習と参加者とのコミュニケーション、美味しい食事での語らいも満喫でき、参加者の日常生活の潤いとして役立ていただいています。

またレコーディング体験も行います。これはプロと同じ本格的なレコーディングを体験する企画です。実際には通常のレッスンで本格的な録音をする機会を得る事は無いので非常に未知で貴重な経験となります。参加者にとっては自分の音を良い音で残すことができるので練習の一つの目標になり、完成した時は思い出の一つとなります。

またこの作品を作り上げた事により、達成感と満足感を得、仕事にもポジティブになれると参加者からの感想があります。この様に、地域の方々には非日常的な時と空間「ライブ」、「合宿」、「レコーディング」に参加していただくことで喜びを得てもらえる事を主催者として嬉しく思います。

<選曲>
参加者が演奏したい曲は、参加者の青春時代に影響を受けたミュージシャンや楽曲に顕著に表れます。
  • 60年代は、ベンチャーズ(ダイヤモンド・ヘッド、キャラバン)、ビートルズ(抱きしめたい、The end 、Get back、など)サディスティックミカバンド(タイムマシン)、等
  • 70年代、80年代は、ディープパープル(Smoke on the water、ハイウェイスター、など)、AC/DC(Black in black)、エアロスミス(Jaded、Mama kin、など)のハードロック、RCサクセション(雨上がりの夜空に)等
  • 90年代は生徒は少なく、その時代の選曲での参加が少ない傾向にあります。
  • 2000年代以降は圧倒的に希望曲がJ-POPにシフトします。嵐(One love、Love so sweet他)、スピッツ(ロビンソン、チェリー他)ゆず(栄光の架け橋他)、Mr.Children(イノセントワールド、恋はシーソーゲーム他)、等

選曲のジャンルは多岐に渡りますが、青春時代の思い出の曲というのは終生胸の中で鳴っていて消えないもので、そういう思いを大事にしたレッスンが講師としてのスキルに繋がることもイベントを通して学べました。

3.課題と抱負

今年は地域音楽コーディネーターの資格認定を受け、新しい世界に飛び込むことになりました。緊張感と希望を併せ持ち頑張る所存です。今後の抱負としては二つ考えています。

一つは今まで経験したことを礎にして新たな企画を立て実行して実績を積みたいと思います。具体的な案としては企業の協賛を得て「誰でも参加できるコンサート」を実現したいと思っています。健常者、障がい者も、そして小中高生から大学生、高齢者と世代を超えて音楽を一緒に楽しみ、人生の生きがいにしてもらう事が大きな目的です。

もう一つは「無料音楽スクール」です。現在、閉塞感のある世の中で仕事を失い何もできない状態になることや不登校の子ども達等、行き場のない人々が昔に比べて増えているとニュースやインターネットで頻繁に目にします。このような困って行き詰まっている人々の一時休憩所として、無料の音楽スクールを設けて自由に楽器に触れ、習う事ができる環境作りをしたいと思います。楽器に触れる機会を持つことで少しは気が紛れるに違いありません。またコミュニケーション広場としてハローワークのような仕事紹介や、学校の授業にサポートする方々にも来ていただき、必要な情報交換や勉強もできる心地良い場所を作れたらどんなに良いかと構想を描いています。

地域コーディネーターとして活動を継続していくのには音楽家、指導者として自己研鑽している事が必要です。音楽家としては永年残るような曲を作り上げ、多くの皆様に聴いてもらえることも夢です。指導者としてはドラムとバンドアンサンブルの教則本を出版することが今年の自己課題となっています。


(2022年11月9日公開)

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#音楽祭、コンサート

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