活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例
【事例紹介】誰もが自分の人生を奏でられる社会を創る

地域音楽コーディネータ― 一般社団法人VIDEcrew代表
 兵庫県 京極真衣さん

■活動テーマ:誰もが自分の人生を奏でられる社会を創る
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■活動開始時期:2014年~現在
■場所:保育園、高齢者施設、市のイベント他
■対象:幼児から高齢者まで

■活動内容

1.きっかけ

学生時代、吹奏楽部に所属していました。社会人になってもその魅力が忘れられず、吹奏楽バンドに入り音楽活動を続けました。
バンドは年数回の大きな演奏会に向け週2回夜の練習がありました。出産後、小さな子供を連れての活動は難しく音楽とは離れた生活をしていました。
私にとっては音楽のない生活はとてもストレスが大きく、音楽活動を続けるにはどうしたら良いのかと考えたときに、自ら「母親の日常生活に合ったバンドを作ってしまえばいい」と思いつき2014年、子連れママバンド「comodo姫」を立ち上げました。
立ち上げ後は任意団体として地域での活動を続けていましたが、活動の幅が広がってきたこともあり、一般社団法人VIDEcrewを2020年に設立し、その法人の事業の一つとして組み込みました。
誰かの「できない」を支援する法人として活動しており、音楽事業であるcomodo姫の他に、地域の方の居場所づくりのお手伝いなどをしています。


2.具体的な内容

(1)子連れママバンド「comodo姫」とは

音楽好きのお母さんが集まり、5人でスタートしました。
メンバーは正社員で働いている人・育休中の人・個人事業主・パート等、立場はそれぞれですが、共通しているのは全員子育て中のお母さんたちで、子供は乳幼児から小学生低学年までいます。
バンド名のcomodoはイタリア語で「気楽な」を意味する音楽用語です。「大人も子供も、みんなで一緒に気楽に音楽を楽しもうよ!」という意味が込められています。2023年現在メンバーは13名で活動中です。

(2)活動の目的

ビジョン:「誰もが自分の人生を奏でられる社会を創る」
母親に限らずですが、「○○だから・・・」と、行動を我慢している場面は多くあります。私たち母親は、やはり子供のことが最優先になります。
子供をつれて夜に出かけるのは難しいですし、預けるとしても預け先がなかったりします。また、子供が体調を崩すと周りに迷惑をかけてしまうからと、自分のことは後回しになりがちです。
私自身、夜に子供を預けて練習に行ったこともありましたが、子供が泣いてなかなか寝てくれなかったことなどがあり、この形での音楽活動は難しいなと、その後活動を辞めました。
こういった経験から、少し視点の違う受皿を作ることで、誰かが自分らしく生きていける手助けができるのではと活動を続けています。
大人も子供も年齢に関係なく、自分の好きなことをしているとこんなに楽しいよ!という点を、いつでもどこでも心から楽しんで演奏する姿を見せることで伝えていきたいと思っています。

(3)内容

楽器はトランペット、サックス、トロンボーン等の管楽器の他にキーボード(ピアノ)、シンセサイザー、ピアニカ、ベースギター、ドラム、カホン、小物打楽器という編成です。
ここではメンバーが演奏できる楽器なら何でも受け入れます。練習は月に2回程度、平日の午前中を中心に、市の施設等を借りて練習しています。
コロナ前は年間60回ほど、高齢者施設や教育機関、市や地域のイベントなどから依頼を受けて演奏をしていました。
その時々の聴衆に合わせて、子供向け・高齢者向け・季節の曲などを選曲しています。アニメ音楽や童謡、昭和歌謡は得意なレパートリーです。
前述のとおり、いろいろな立場の母親たちの集まりなので、仕事や子供の予定、体調不良などで毎回メンバー全員が参加することはできません。その時々の状況に対して「ステージに出られるメンバーと担当楽器」を確認し、足りないところは補い合いながら臨機応変にバンドを編成し活動しています。
母親たちが演奏しているとき、子供たちには自由にさせています。ステージに上がって真顔で楽器を演奏し続ける子、ひたすらステージを走り回る子、おんぶで寝ている子など様々です。
静かな場面で鳴り響いてしまうおもちゃのラッパの音や、子供たちが思うままに奏でている打楽器も私たちの音楽の魅力の一つです。

<演奏活動の様子>

(オリジナル曲)

(子供がお母さんとボーカルにチャレンジした演奏)

(4)バンドメンバーの感想

  • ・子育ては思い通りにいかなく悩むことも多いですが、それを相談し分かち合える仲間がいると心強いです。
  • ・自分とメンバーの子供含めて成長を間近で感じることができ、このバンドに出会えたからこそ発見する喜びが有ります。
  • ・母親になって子供中心の生活になっていましたが、子供がいても自分の好きなことを行っても良いと受け入れてもらえる場所に出会えた気がします。
    そして同じ母親でありながら、それぞれに自分を持っているメンバーにたくさん刺激をもらっています。
  • ・「ママ」であることは変わりないのですが、ママではない、「バンドメンバー」という違った一面を子供たちに見てもらえるのがうれしいです。
  • ・楽しいことを思い切り楽しむ大人を我が子に感じてもらえる機会はなかなか少ないので、それを一緒に体感してもらえるのが幸せだと思います。
  • ・ピンチをチャンスに変え、少しずつでも変わっていく自分を楽しめるのはこのバンドならではだと思います。

3.課題と抱負

(1)課題

人数の多い子連れのバンドという性質もあり、コロナ禍をきっかけに演奏機会がぐっと少なくなりました。
依頼者側だけではなく、バンドメンバー自身の生活様式や家庭環境もこの三年で大きく変わり、演奏活動が難しいなと感じることが多くなりました。このような状況の中、リモート演奏やライブ配信など「自分たちにできること」にチャレンジしてきました。
結果、今後の活動スタイルなどを少しずつ変えていく必要があると課題が見えてきました。

また地域音楽コーディネーター講座の中で改めて感じたことがありまた。音楽に触れることは老若男女問わず、生活を豊かにし人々の支えになること、その一方で音楽は敷居が高いイメージがあることです。
クラシック音楽に限らず、楽譜が読めなければ楽器を演奏してはいけない、という考えや、うまくないから、人に聞かせられるほどではないから・・・という声を耳にすることがよくあります。
音楽は「できる人のもの」というイメージが少なからずあるのではないでしょうか。もちろん、音楽は「聞くこと」で楽しむこともできますが、私は一緒に「演奏すること」ができれば、もっと心を通わせることができるのにと日々感じています。

特にコロナ禍の影響でイベントが中止になり、生の音楽に触れる機会が激減しています。
comodo姫としてより多くの人々が気軽に音楽を楽しめる機会を作っていくためには、音楽というツールを通して地域の人とのつながりを作り交流を深め、地域課題の解決のための活動もしていかなければならないとも考えています。

(2)抱負

子供が成長するにつれ、「子連れママバンド」という割にはステージに子供がいない状況が増えてきました。子供たちと一緒にステージに立ってきた私たちにとっては少し寂しい気もしますが、その分、彼らが演奏者の一員となり参加します。
子供の中には大人顔負け演奏ができる子もいます。先日の演奏会ではライブ配信のカメラを子供たちに任せてみました。(子供たちの「やってみたい」が大前提です)comodo姫が母親だけでなく、子供たちのチャレンジする場にもなれば良いと思っています。
そして将来、子連れママバンドではなく「孫連れバババンド」と名乗れるよう地域を巻き込みながら末永く活動を続けていきたいと思います。


(2023年3月13日公開)


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