活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】音楽をハブにして“人”を“街”を元気にする

(2023年03月23日公開)

地域音楽コーディネーター―株式会社スマートシンフォニー代表
神戸市 田中幸成さん

■活動テーマ:音楽をハブにして“人”を“街”を元気にする
2022年クリスマスイベントより
2022年クリスマスイベントより
■活動開始時期:2018年~現在
■場所:関西圏を中心にコンサートホール、ピアノサロン、地域のイベントスペースなど
■対象:一般

■活動内容

Ⅰ.株式会社スマートシンフォニー設立にあたって

昔からクラシック音楽が好きだったのですが、約30年間一般企業での勤務の後に、あるご縁があり2014年より関西にあるプロオーケストラでマネージメントのお仕事をさせていただくことになりました。

そこでビジネスとしてのクラシック音楽の厳しさを痛感し業界の衰退を防ぐためにできることはないか、これは携わる人はみんな危機感を抱いていることであり各所で様々なトライアルが行われていることも事実。その中で自らが果たす役割は何かを考えた末に、お客様の裾野を広げるために下記3つの柱を設定しました
  1. 個々の演奏家のファン層を広げる
  2. 生演奏の感動を伝える
  3. 生活の身近なところに音楽があるという状況を作る
そのために、小規模サロンでお客様と近い距離感でのコンサートを開催する、地域での様々な音楽イベント企画提案していくという考え方で2018年6月に会社を設立いたしました。

★ホームページ:https://smart-sym.co.jp/

Ⅱ.具体的な内容

1.音楽を通じた地域活性プロモーション

A.豊南市場サウンドステーション(大阪府豊中市)

(1)背景と目的
豊中市は以前より「音楽あふれるまち豊中」というキャッチフレーズで行政が旗ふり役を果たしながらイベントを展開しています。

これは市内に大阪音楽大学やプロオーケストラである日本センチュリー交響楽団の本拠地があるという利点を生かし様々な連携をしながら「豊中音楽月間」「豊中まちなかクラシック」や音大と市教育委員会が連携した「サウンドスクール」などを実施しています。

市内南部地域に豊南市場(ほうなんいちば)と言われる大規模な市場があります。ここは市民の台所とも言われていますが、やはり産業構造の変化の波は押し寄せていて閉店する店舗もあり空きテナントが増えてまいりました。

そこで地元の豊中南ライオンズクラブが空きテントを活用してストリートピアノを設置し新たな賑わいづくりをして行こうということで「サウンドステーションin豊南市場」を開設。ピアノは大阪音楽大学から寄贈、運営・管理はライオンズクラブが担うということでスタートしました。

(2)推進にあたって
賑わいづくりのためには単にピアノを置いていて“誰でも弾いてくださいね”というスタンスでは効果がなく主体的にイベントを仕掛けていくプロジェクト組織が必要です。そこでライオンズクラブからの呼びかけで自治体職員の方や音大学生や職員の方、地元のイベント仕掛け人などと共に推進メンバーの一員に選出されました。

主体的にイベントを開催することもあれば、撮影や誘導などのお手伝い役にまわることもあります。

またホールの貸館のように、ここでイベントをやりたいということで一般の方からお問合せを頂くこともあります。

  • 使用料は無料です。ただし大きな音がでる演奏はNGとなります。(市場の業務並びに近隣住民への配慮)また物販や金銭のやりとりが発生する内容もNGです
  • 2022年総来場者数約5000名  出演者数約600名


(3)弊社が取り組んだ内容
①市場ピアノで音楽会~ピアニストと仲間たち

市場に設置してあるピアノにスポットをあて、様々な楽器とピアノとのデュオコンサートを開催し音楽の広がりを感じていただくイベントを企画。計7回シリーズでヴァイオリン、サックス、オーボエ、クラリネット、フルート、連弾ピアノ、チェロとのデュオコンサートを開催。また豊中市まちづくりにぎわい助成金の交付も受けました。

<概要>
第1回:立川正美(サックス)岡部桂永子(ピアノ)
第2回:横山亜美(ヴァイオリン)楊美希(ピアノ)
第3回:山口真希(クラリネット)橋本幸枝(ピアノ)
第4回:田畑裕美(フルート)杉原沙羅(ピアノ)
第5回:畑田華穂(オーボエ)若林里紗(ピアノ)
第6回:西恵里夏(ピアノ)北出英里(ピアノ)
第7回:渡邉弾楽(チェロ)松浦愛美(ピアノ)

地元豊中の演奏家だけでなく関西の他地域の演奏家も出演。遠方からのファンも誘引し豊南市場を知っていただきお買物にご利用いただくことができました。小さいながらも音楽がもたらす経済効果だと思っています。

②クリスマスイベント:2台ピアノで聴く第九

2021年12月25日
ピアノ演奏:松浦愛美、宇治澤一光

豊中市では地域の学校の統廃合などで余剰となったピアノに子供たちによるアートペインティングを施しペイントピアノとして市内を巡回しています。

クリスマスのタイミングでペイントピアノを豊南市場に持ってきてサウンドステーションに2台グランドピアノの登場が実現しました。市場にグランドピアノ2台出現は全国でも珍しいと思われます。

コロナ禍でベートーヴェン交響曲第九番(通称第九)の演奏会がほぼ中止されていたこの年、せめてピアノだけでも第九を楽しんでいただきたいという主旨で2台ピアノによる第九(第4楽章)を演奏いたしました。クリスマスイベントの1プログラムとしての演奏でしたがこの第九目当てでお越しいただいたお客様も多く大変なにぎわいとなりました。





B.地元公民館の手作りイベントのお手伝い「千里音楽祭」

(1)背景と目的
大阪府豊中市北部に位置する千里地区において地元の公民館が毎年音楽イベントを開催しています。どうしても地域スタッフだけでは限界があるので出演アーティストのブッキング(演奏家の選出や出演交渉など)、進行管理などで手伝ってほしい旨のお話があり第7回(2019年)から関わらせていただきました。そしてコロナで2年間中止となり昨年2022年無事第8回目を開催できました。

都市部において地域住民の交流少なくなっている昨今、コミュニティが一丸となって取り組んでいるイベントで今後も継続していってほしい企画です。


(2)取り組み内容と今後
第8回千里音楽祭 2022年9月11日(日)
入場無料  場所:豊中市千里文化センター「コラボ」

今回は出演アーティストのブッキング、司会進行の役割を担いました。

市長、教育長にもお越しいただき100名以上のお客様が来場されました。

演奏:吉原千景(ピアノ)
   山口真希(クラリネット)橋本幸枝(ピアノ)

地域のボランティアスタッフによる椅子並べ、案内、受付など完全な手作りイベントで非常に温かい雰囲気の中でのコンサートとなりました。継続開催できるための寄附金集めを積極的に行っています。

運営側は今後もっとこの音楽祭のブランド価値を高め近隣地区とのコラボで規模を大きくし、『このイベントに出演したい!』と地域の演奏家に慕われるようなイベントにしていきたいとの抱負があり引き続きフォローしていきたいと思います。



2.アーティストサポート

課題山積みのクラシック音楽マーケットですが、毎年音楽大学・大学院からはプロを目指して多数の学生が輩出されます。また数年間のドイツやウィーン、パリなどでの音楽留学生活を終えて夢をかかえて帰国してきます。しかしながら現実は厳しく帰国後自主公演でコンサートを開催しても音楽で生活基盤を築くことが難しい現状です。

そんな優秀な才能をもっと世に発信して行くために、彼ら彼女らの仕事をつくり舞台をつくる、そして一緒に内容や宣伝方法、ファンづくりに取り組む。そんな思いで毎日コンサート制作を行っています。

チラシ制作、PVの撮影、広報活動、お問合せ対応、当日の受付、精算、記録業務(撮影や録音)などアーティスト自主公演ならばこれらすべてのことに携わらなければなりません。奏者ができるだけ演奏に専念できるように配慮しいわゆる裏方業務のすべてを担います。

目指すは裏方のプロフェッショナルです!

現在ピアノソロやヴァイオリンリサイタル、室内楽など年間約40公演を主催しています。




Ⅲ.課題と抱負

(1)課題

大きな視点でいえば、この業界では鑑賞者の高齢化、実演団体を支える行政や財界の厳しい状況、地域間格差など様々な課題が存在します。

しかしながら人気の若手ピアニストやメディア露出の多い指揮者などの公演は、完売が続出し高齢者だけでなくあらゆる世代のお客様や従来のクラシックファン以外のお客様も来られています。潜在需要はあるということですので、どのようにマーケットに提案していくかということだと思います。

音楽による地域の活性化という文脈で捉えれば、今私がお手伝いしている豊中市だけなく地域のコミュニティが音楽や文化イベントを推進しているところは全国に多数存在します。そこでの課題としては、やはり資金面、人材面、制作や集客などのノウハウ、行政との関係などがあげられます。

また各地域での横のつながりが少ないということも言えます。同じ自治体でも他のコミュニティがどんな企画を行いどのように制作・運営に携わっているのか、どんな成功事例があるのかなどの情報共有が必要です。まさに点と点を線に、そして面にしていかなければなりません。

(2)抱負

地域音楽コーディネーターの役割として個々のイベントへの関わりだけでなく、前項の課題のところで述べた地域での点としての活動を線にして面にしていき相互にノウハウの共有を行う。

そして行政や公共ホールなどの施設、教育機関や地域の経済界に各コミュニティの要望や意見を伝え課題の解決策を提案していく、更に国内他地域と連携して双方で活動するアーティストを紹介し文化の懸け橋の役割を果たす。

そんな仕事を進めていきたいと思います。行政からもコミュニティからも欠かせない存在になりたいですね。下記に私の考える地域音楽コーディネーターのあるべき姿についてチャートにしました。



(2023年3月23日公開)


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※ 音楽文化創造では、地域音楽コーディネーター資格取得の養成講座を実施しております。詳しくは下記をご覧ください。
「地域音楽コーディネーター」

#音楽祭、コンサート

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