活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】チェロを通じた子供同士の交流と、地域との音楽交流

地域音楽コーディネータ― こどもカザルス会主宰 兵庫県 佐谷記世さん

■活動テーマ:チェロを通じた子供同士の交流と、地域との音楽交流
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■活動開始時期:2006年~現在
■場所:芦屋市を中心にした阪神間
■対象:幼稚園児~大学生

■活動内容

1.きっかけ

(1)チェロとの出会い

両親とも音楽とは無縁でしたが、7歳上の兄が近所のヴァイオリン教室で習っていた関係でレッスンについて行くうちに、私もヴァイオリンを習いたくなりました。そのとき、兄の先生より兄妹で違う楽器を習った方が広がりがあるのではないかとチェロの先生を紹介していただき、3歳からチェロを始めることになりました。
兄のレッスンを通じていろいろな曲を聴いて知って覚えていたこともあり比較的上達が容易でした。チェロの先生も優しく周囲の大人が褒め上手だったのもあって楽しく続けられました。これが今の活動の原点になりました。

(2)「こどもカザルス会」創設

一般的に子供の楽器習い事としてチェロを習わせる家庭は珍しく、その結果チェロ人口はピアノやヴァイオリンに比べ相対的に少ないです。このような状況でチェロを通して子供同士の交流する機会が少なく、演奏を聴いてもらう場所も限られているように思われます。
ジュニアオーケストラに入団する人はまだ良いのですが、多くは入っていないのが普通です。

そこで、師事している先生や地域等の垣根を越えて子供たちが一緒に演奏する場所を作りチェロを通じて交流し、同じ楽器を通じた共通の思い出ができればと考え、2006年に「こどもカザルス会」を創設しました。この名称は1876年スペインのカタルーニャ地方で生まれた世界的なチェリスト・指揮者でチェロの巨匠と呼ばれたパブロ・カザルスからとりました。


2.具体的な内容

地域の演奏者、聴衆の交流の場として発表会を企画し開催しています。

(1)発表会の目的

ⅰ.子どもたちの練習成果の発表の場
ⅱ.お互いの演奏を聴く事で今後の励み、目標とする
ⅲ. 地域の子供からシニア世代を含めて、子供たちのフレッシュな感性に満ちた演奏を聴いてもらいチェロに対する興味を持ってもらう(未就学児でも可能です)

(2)募集

第1回目は、私と知り合いの先生の生徒に呼びかけました。その後は当会経験者が自主的にチェロ教室やジュニアオーケストラの友達を誘ってくれるようになりました。現在は楽器を始めて間もない小さな子供たちから、10年以上も練習を続けてきた大学生や音大の在学生もいます。

(3)内容

2015年7月、二部制で構成しました。第一部は20代のゲストチェリスト奥田なな子さんの1時間程度の有料のミニリサイタルです。演奏曲目は事前に、参加する子供たちからアンケートをとり、プログラムに取り入れていただき、チェロの有名な曲が中心のリサイタルになりました。第二部は子供から大学生までの無料のチェロコンサートを開催する形式をとってきました。(下記チラシ参照)
尚このコンサートの名称「こどもカザルス会」は何年か前から中学生から「もう私たちはこどもではないのではないか…」という意見が出されていました。その後名称が「若きチェリストたちの演奏会」となりました。


2020年2月の開催以降はコロナ禍で休止。昨年(2022年)は定員100人の公民館の音楽室を借り、二部制にせず少人数の関係者だけで開催にこぎつけました。
このときは小学校2年生のときから当会に参加し、勉強のために東京に引っ越した仲間が久しぶりに来てくれましたので特別演奏してもらいました。高校3年生になり成長した演奏を聴かせてくれました。


(4)今年のコンサート

今年(2023年)は3年ぶりに5月14日(日)にルネサンス クラシックス芦屋ルナ・ホール(兵庫県芦屋市)で開催します。
再開にあたり時下の世界の状況を鑑みて、平和への活動に取り組んだことでも知られるパブロ・カザルス没後50年にあたるのでその偉業を顕彰するものにしたく、演奏会の名前を「若きチェリストたちの演奏会4〜カザルス没後50年〜音楽を通して平和への願いを込めて」としました。入場料として500円を頂戴し、収益は国連UNHCR協会(国連難民高等弁務官事務局)に寄附をします。
小学2年生から大学生までの16人の若きチェリストが出演します。今回はゲストチェリストのリサイタルはせず、コンサートの最初に参加者全員でカタルーニャ民謡「鳥の歌」(*1)とモーツァルト作曲「アヴェ・ヴェルム・コルプス ニ長調 K.618」(*2)をチェロアンサンブルすることになりました。

*1)カタルーニャ民謡「鳥の歌」:クリスマス・キャロルをカザルス自身が編曲し、良く演奏したことで世界中に有名になったチェロの名曲。
*2)モーツァルト作曲「アヴェ・ヴェルム・コルプス ニ長調 K.618」:原曲は混声4部合唱と弦楽・オルガンの編成の合唱曲

続いて16人それぞれが自ら選曲した、チェロの名曲を演奏します。
ドヴォルザークやハイドン作曲の協奏曲、ブラームスのチェロソナタや、カザルスの弟子だったチェリストカサドが、師のカザルスに贈った「親愛なる言葉」、19世紀のベルギーで活躍したチェロの名手セルヴェ、ハンガリーで活躍したチェリストで多くの華麗なチェロ曲と練習曲を作曲したポッパーの作品など、チェロの知られざる多種多様な魅力を知っていただけるプログラムになりました。
※詳しくはFacebookページhttps://www.facebook.com/casalskai

3.課題と抱負

課題としては、もっと地域の多くの方に敷居が高いと言われるクラシック音楽を気軽に聴きに足を運んでいただくためには様々な広報手法を用いること、そして今まで以上に魅力的なプログラミングを作る事と感じています。
チェロを演奏する子供たちが、演奏会の場で切磋琢磨(せっさたくま)し交流と友情を育んできました。当面の目標としては今年5月に開催の演奏会を演奏者・スタッフと協力し合い、良いものにできればと思います。今後この輪を更に広げ長く継続していく所存です。

(2023年3月31日公開)


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