活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】三線の音色を通して音楽の素晴らしさを分かち合おう

(2023年04月05日公開)

地域音楽コーディネーター 心療回想士 一般社団法人ロビーナ企画 福岡県 尾形龍美さん

■活動テーマ:三線の音色を通して音楽の素晴らしさを分かち合おう ■活動開始時期:2008年~現在
■場所:久留米市内、佐賀県東部地区のコミュニティーセンター、公民館、地域のイベント、佐賀県古湯の温泉ホテル他
■対象:60代以上中心

■具体的な内容

1.きっかけ

久留米市内のある楽器店で三線(*1)教室担当として勤めておりました。そのとき三線の音色の暖かさと南国の情景を思い浮かべるメロディに惹(ひ)かれ、広報活動の一つとして「三線ロビンズ(Vocal、三線、ベース)」というグループを結成し、沖縄音楽やわらべ歌を演奏していました。
その会場の一つに介護・認知症予防のための音楽を使ったトレーニングを取り入れた活動を行っている「久留米市メモリーケア」がありました。演奏している際、参加者を理解して対話することが大切だと感じ、日本回想療法学会(特定非営利活動法人)が主催する講座を受講し心療回想士の資格を取得しました。
心療回想士はクライアントに対して懐かしい思い出を話題にして楽しい気持ちを促すようにコミュニケーションをとります。このことで三線を使って幅広い活動ができるようになりました。
*1)三線:沖縄が琉球王国と言われていた時代に中国から伝来し、沖縄で改良された撥弦楽器。胴の両面に蛇皮が貼られ、(三味線は雌猫の皮)棹は黒檀又は紫檀でできており三味線よりも短く絃は太い。



2.一般社団法人ロビーナ企画設立

三線をより広く普及啓蒙(けいもう)し演奏のみならず地域に根差した活動を目的に、2022年5月に一般社団法人ロビーナ企画を設立しました。
法人にした理由は、以前地方行政の主催事業に応募しようとしたところ、法人の資格がないと不可と言われ信頼・信用度を持つことが必要と痛感いたしました。法人名称のロビーナとは我が家の愛犬の名前で、先のロビンズ(親犬)の娘です。


3.具体的な内容

(1)高齢者向け認知症予防講座

市内のある団体から認知症予防講座の依頼を受け、活動を始めました。参加者の嗜好(しこう)、望んでいるものを理解しながら実施しています。
<目的>
  1. 認知症予防とフレイル(*2)予防を音楽の効果を使って今の状態を保ち、参加者皆で楽しさを共有する。
    *2)フレイル:フレイルというのは虚弱という意味で、認知症の一歩手前の体も心も弱っている状態のこと。
  2. 楽器演奏した達成感と間違えたときでも笑い等で共有する。
<対象>各自治体の65歳以上
<会場>町のコミュニティーセンター、公民館、集会所、お寺など
<内容>1回60分~90分程度です。
  • 私のギター伴奏で簡単な打楽器、鍵盤楽器を演奏します。
  • バンブーパーカッション(竹製の健康足踏み器)を菜箸でたたき、曲を聴きながら合奏します。これはデュアルタスク〈一度に二つ以上の動作をする〉効果があると言われています。楽譜を見ながらたたくという動作も脳の活性化を促します。
  • 対象の年代を考慮して昭和時代の画像を作成し、プロジェクターで映写してカラオケで合唱します。このコーナーになると楽器演奏が苦手な人でも皆元気になります。曲間には各曲の時代背景、生活、歌手などを解説し参加者と対話します。皆、昔を懐かしみ 楽しい時間を過ごします。

(2)沖縄音楽講座

目的は認知症予防の枠組みではなく沖縄音楽・三線の魅力に楽しさと癒やしを感じてもらうため、一般の方々へ提供しています。内容的には沖縄の方言、文化などの話と「三線と歌とベースorギタ―」の生演奏を行います。
沖縄音楽は「芭蕉布」に代表される首里城の中で生まれた琉球古典音楽と「安里屋ユンタ」「てぃんさぐぬ花」「谷茶前」に代表される三線の伴奏で歌われる民謡に分かれます。
サウンドが特徴的なのは「ドミファソシ」という5音階でメロディーが作られた楽曲が多く(島唄、ハイサイおじさんなど)、またリズムに特徴が有ります。盛り上がってきたらそのリズムに合わせてカチャーシー(*3)を踊ります。
現代はBEGIN、夏川りみ、喜納昌吉、りんけんバンド等POP系のミュージシャンも生まれ、日本全国そして海外にも進出しています。
*3)カチャーシー:祝いの宴やお祭り等で喜びを表す沖縄の伝統的な踊り。カチャシーとは沖縄の方言で「かきまわす」という意味。

(3)スコップ三味線講座

現在一番人気がある回数の多い講座です。理由は音楽の中に参加できるという能動的な形であることと考えます。沖縄音楽講座との組合せもあります。
<目的>
  1. エアーギターと同じ感覚で楽器を演奏している気分にさせ楽しさを共有
  2. カラオケに合わせて演奏しデュアルタスクも経験できます。
<対象>高齢者 若い人たちや子供たちにも浸透させていきたいです。
<会場>自治体の施設
<内容>スコップを裏返しにして、栓抜(なるべく大きなもの)で曲にあわせてたたきます。基本的にはバンブーパーカッション講座と同じですが慣れてきたら簡単なボディーアクションを加えます。

4.課題と抱負

(1)課題

コロナ禍前は久留米市内の行政主催のコンサートや地域のお祭り、サロンなど、三線ロビンズ及び個人で三線の弾き語りや講座等盛んに活動していました。
しかしこの数年イベント、講座などの回数が極端に減りました。主催者や会場側も責任上の問題から開催をためらっていたと思います。昨今コロナ対策が緩和され講座も開催できそうですが、毎回収支のバランスが一番の課題です。
内容については再構築する必要が有ると感じています。参加者はエンターテインメントの要素が強くないと注目してくれないので、今までの経験を基にいろいろな手法を研究して進めていきます。

(2)抱負

直近の計画としてはスコップ三味線と沖縄講座のジョイントが好評なので継続、拡大しようと思います。
それと是非実現したいのが現在各地域に眠っているわらべ歌の復元と演奏活動です。良い子守唄、手まり唄などがあるのですが現在歌い継がれていないようです。地域の方々と協力して実施したいと思います。
今年はスタートとして久留米市草野町の子守唄〈賽の河原を眺むれば〉を地元の自治体と協力して講演演奏会を計画中です。
また数年後には沖縄中部の今仁村中央公民館にて沖縄と本州のわらべ歌交歓会を実施し、それぞれの地域のわらべ歌探索と伝承活動をしていきたいと考えています。
将来は現役の音楽家・地域音楽コーディネータ―として地域に認知症予防、フレイル(虚弱)予防を兼ねた話し相手がいる家を作り、音楽とともに豊かな時間を共有できることが夢です。


(2023年4月5日公開)


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