地域音楽 コーディネーター

活動事例 地域音楽 コーディネーター

【事例紹介】ピアノdeコミュニケーション

(2023年05月17日公開)

地域音楽コーディネータ― ピアニスト、ボイストレーナー、音楽療法士 富山県 池端 愛さん

■活動テーマ:
ピアノdeコミュニケーション
■目次:
■活動開始時期:
2013年~現在
■場所:
富山県内の特別養護老人ホーム、コミュニティーセンター他
■対象:
高齢者 70~90歳
■活動内容

1.きっかけと目的

東京で音楽活動後、生まれ故郷の富山に戻り設計事務所へ勤めました。仕事以外に、音楽活動を再開したいと思っていた頃、勤務先で高齢者福祉施設の設計に携わり現地を訪問しました。新しい建物で快適に暮らす入居者の皆さんへ私の今までの音楽経験を活(い)かし、生活が更に楽しく送られるようにしてあげたいという気持ちで慰問演奏をしたのがきっかけとなりました。施設長に電子ピアノを贈与するので定期的に通わせてほしいと提案し快諾していただきました。進めていく中で普通の演奏会だけでは何か物足りないと気づきました。そこから音楽療法を学び、自身のプログラム「ピアノdeコミュニケーション」を生み出しました。目的は高齢者の認知機能向上、認知症予防又はその進行の抑制です。

2.具体的な内容

A.高齢者施設

(1)内容

参加者20名ほど、1回の時間は60分です。
1回のメニューは前記の目的の基、下記の4つで構成しています。

  1. 体操
    運動機能の維持と改善のため、ボイストレーニング同様に腹式呼吸を取り入れたストレッチ体操です。横隔膜をしっかり腹筋と背筋を使い動かすことで、体にも脳にも酸素を送り動きやすい体にします。
  2. 脳トレ
    童謡を用いて簡単な脳トレを行います。例えば文部科学省唱歌の「たきび」(詞:巽聖歌 曲:渡辺 茂)の歌詞
    ♪かきねの、かきねの、まがりかど
    たきびだ、たきびだ、おちばたき~
    「た」と「か」のところで手を打ってもらいます。歌いながらの作業なので頭を使います。
    他に扱う曲としては「春の小川」「もみじ」「海」等
  3. 回想タイム
    参加者の年齢層に合わせた楽曲を流して、当時の思い出を語っていただく時間も設けています。高齢者はその時代時代に接した曲の記憶を呼び覚まします。「川の流れのように」「東京ブギウギ」「銀座カンカン娘」等どを流すと、戦時戦後のお話をされる方が多くいらっしゃいます。苦難な思い出だけではなく、そこに楽しかった思い出や、うれしかった思い出もあるのです。
  4. ヒーリングタイム
    プログラムの最後には頭と体を使って疲れたところでヒーリングタイムと称し、私から弾き語りで1曲プレゼントをします。「涙そうそう」「瀬戸の花嫁」は大人気です。

(2)活動にあたっての留意点と効果

高齢者なので身体的、精神的な部分を十分考慮します。まず「無理なく参加してもらう」ところは常に念頭に置いています。つらそうな方には「手は休めて。声だけ出してみよう!」等声がけをします。プログラムの内容もそのときの参加者のレベルに合わせて臨機応変に変更します。そうすることで、「私にもできるんだ」「もうちょっと足動かしてみようかな」など喜びや向上心が生まれます。

(3)参加者や施設スタッフの反応

  • ・「次はどんなお題?」と興味を示しやる気にみなぎる
  • ・声を出して歌う事により発散出来て気持ち良かった
  • ・スタッフも一緒に脳トレで楽しめます
  • ・プログラム中は、先生にお任せ出来るのでその時間、職員が別作業に充てられて助かります

B.ピアノdeコミュニケーション

高齢者や障害者の心身の機能低下や認知症の進行に困っている方に向けた参加型の音楽療法教室です。主に特別養護老人ホームやデイサービス、公民館で高齢者対象にシナプソロジーやボイストレーニングを一部取り入れた音楽療法を提供しています。腹式呼吸や発声法、連想ゲームやお手玉ゲームなど自宅でもできる手指遊びで楽しんでいただいております。

また近年では、自治体や民間企業、社交団体の催しに出向くこともあります。交渉のポイントとしては、慰問演奏との違いを十分に理解してもらうことです。また下記の内容が確たる裏付け(エビデンス)を持って行っていることも説明します。

  1. 体操は腹式呼吸を取り入れ、脳の活性化につながる動作を行う。
  2. 合唱では一つの動作を加えながら歌い、意欲の向上へつなげる。

認知症の潜伏期間は20年とされている今日、高齢者だけではなく現役の働く世代にも認知機能へアプローチをかけて元気な日々を過ごしていただきたいと思っています。その方々へは高齢者プログラムよりレベルの高いものを提供します。また対象年齢によっては手指動作のバリエーションを増やし、複合動作を加えてみたりします。使用する曲のテンポは速めてみたりします。

3.課題と抱負

(1)課題

この活動をより多くの地域の方々に知っていただくことです。何度も訪問している所でも、まだボランティアと思われてしまいます。そこが大きな課題です。内容的には定期的に参加者の認知機能レベルを見直すことです。いつも心がけてはいるものの、毎月顔を合わせていると変化に気づきにくいです。絶えずお声がけを忘れずにして参加者からの生の声を聴き状態を把握しながら進めるべきだと考えています。

(2)抱負

いろいろな施設に出向いて多くの高齢者を対象に活動しています。特に初めて訪問する場所においては、お互い初対面でスタートするので多少なりとも表情は硬く様子を伺う姿勢となります。そこにピアノdeコミュニケーションのプログラムを実施していくと、懐かしい歌を聴いて歌って楽しくなったり、シナプソロジーで手指の動きが上手(うま)くできなくて悔しがったりはにかんでみたり、少しずつ表情が豊かになっていく瞬間が私は大好きです。音楽の力で健康寿命をのばすことができることを世間に周知させていきたいです。人と音は切り離すことができません。人間は生まれてくる前から母親の胎動=ビートを聴いています。この世に生まれて自我が芽生え、言葉を覚え、五感が働き、感情を表現して、歌や踊りができたのだと私は思います。楽しい気持ち、和む感覚、心が癒(い)やされていくと次なる意欲が湧いてきます。

私の目指す音楽療法は、音楽で多くの人に元気を提供してコミュニティを広げ、笑顔を増やすことです。地域音楽コーディネーターとしては地域の小さなコミュニティから音楽アプローチをかけて、小さな子供から高齢者まで誰もが楽しめる環境づくりに努めます。また相手の声をキャッチできる範囲を保って音楽を共有できたら良いと思います。そのためには今後私一人では限界があるので同じ志のある方を募って一緒にグループを形成し活動を増やす計画です。

(2023年5月17日公開)

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「地域音楽コーディネーター」

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