活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】音楽を通して人と人がつながる

(2023年06月12日公開)

地域音楽コーディネータ― ピアニスト、ヴォーカリスト カワベミュージックアトリエ代表 東京都 川辺美沙さん

アトリエ祭り
■活動テーマ:
音楽を通して人と人がつながる
■目次:
■活動開始時期:
2015年~現在
■場所:
東京都内の公共施設など
■対象:
子供から高齢者まで
■活動内容

1.きっかけ

6歳よりピアノを始め中学で吹奏楽部に所属し、また合唱コンクールの伴奏等様々な音楽経験を経て高校大学はピアノと声楽を専攻しました。現在20年以上ピアノ講師をしております。2015年頃、立川市民体育館に勤務していた関係で私の経歴を知った教室担当者から「普段体育館に来ない層にも来てもらえるような教室を作りたい、音楽と運動のコラボができないか」という提案がありました。

そこで「歌って健康になろう」というコンセプトの基、良い声をつくるために表情筋の体や身体のストレッチなどを組み合わせ、参加者が思い切り声を出して歌うという内容の「声楽ストレッチ」というクラスを始めたのが現在の活動の原点です。この活動を通して地域の方々と出会い、住民同士が音楽によって新しいコミュニティができていく姿に遭遇しました。私の活動テーマ「音楽を通して人と人がつながる」は、ここから生まれました。現在の様々な活動の中より3つをご紹介いたします。

2.具体的な内容

A.「楽しく歌おう&体操」

(1)内容

立川で始めた「声楽ストレッチ」クラスのお一人が国分寺市内の公共施設で働かれていたご縁から、2020年に国分寺市の生きがいセンター(地域の高齢者の憩いの場)で新しい講座「楽しく歌おう&体操」を開講しました。これはセンターが2年ごとに企画している事業で対象者は市内の65歳以上の方々です。ちょうどコロナ禍と重なり高齢者を対象とした事業ということもあり、人数制限をして(部屋の定員の半分15名)期毎抽選にするなど施設の方も苦心しながら進めてくださいました。

毎週1時間30分程度の開催です。扱う曲は年齢層を考慮し季節に合った童謡、唱歌、日本・世界の名曲です。

(2)成果

印象的だったのは1年たった頃、初めて受講されたご高齢の方が帰り際に私のところへ来られ、涙をいっぱい溜(た)め「声を出して、歌を歌えてとてもうれしかった。本当にありがとうございます。こうやって皆で会話すること自体が久しぶりです。家に一人でいると声を出すことがなかったから・・」と言われたことでした。うれしかったというよりも、ショックで胸が締め付けられました。日本の高齢者のひとり暮らしの現状を身近に感じたのと同時に音楽の力を再認識しました。ここでの2年間の契約は終えましたが今後も続けてほしいとの要望があり、有志の方々が新しく市の団体として立ち上げ継続中です。現在は立川市・西東京市・西多摩郡瑞穂町の地域団体、国立市のシルバーマンション、中野区立総合体育館等、活動地域が広がりました。

B.本わ歌

(1)内容

本わ歌と書いて「ほんわか」と読みます。子供のサッカーを通して知り合ったフリーのアナウンサーで読み聞かせや朗読、音訳等の活動をされている中村真奈紀さん(菅家真奈紀さん)と、彼女の知人ソプラノ歌手の福島美穂さん3人で、国分寺駅近くの「絵本とおはなしの店―おばあさんの知恵袋」*1という絵本屋さんで活動を始めました。目的は小さな子供と日々子育てに励むお母さまへ、3人の特色を活(い)かして絵本や紙芝居、音楽を使い楽しいひと時をお届けすることです。子供は泣いても動いても良いように自由にしてもらいます。

(2)対象と開催日

毎週「絵本屋」に遊びに来てくれる未就園児の子供とお母様を対象に月一回、金曜日の午前中に開催しています。

(3)内容

中村さんの読む絵本、紙芝居に私がピアノで音楽を付けます。題材は未就園児や小さい子にもわかりやすいものを選びます。一例として「きんぎょが にげた」(作:五味太郎)「きぜつライオン」(作:ねじめ正一作 絵:村上康成)等、プレゼンにおいては下記の流れで企画、実施します。

  • ①題材の選択
  • ②それぞれの場面にどのような音楽を挿入するか、お話担当の中村さんから提案してもらう
  • ③その提案に対し雰囲気に合った音楽を選曲しタイミングを決定する童謡や唱歌をはじめとして、そのときによく耳にするタイムリーな音楽(TV等で耳にするフレーズ、流行(はやり)のアニメやPOPSなど)をアレンジして入れます。
  • ④最後に歌手の福島さんが雰囲気に合った曲を歌い、私がBGMを入れることもあります。時には一緒に手遊(あそ)びもします。

この内容はその後小学校の放課後子供プランや、発達支援の学童、デイサービス、特別養護老人ホームなど様々な場所に出向きお届けするようになりました。しかしコロナ禍をきっかけに一旦休止しています。特に高齢者向けの施設では感染防止の観点からいまだに外部の人を招けません。1日も早く再開できることを願っています。

C.KOTO×PIANO 和洋折衷

(1)グループ結成に至るまで

私が通っていた高校の芸術コースクラスでは、音楽・美術を専攻する個性的な生徒がおり、その中で唯一の箏を専攻していたのが「KOTO×PIANO 和洋折衷」としてユニットを組む岡戸朋子さんです。岡戸さんは箏・十七絃・三味線、そして現在では奏者の少ない日本胡弓も演奏する和楽器奏者であり、2013年(平成25年)には20年に一度の伊勢神宮の式年遷宮において、伊勢神宮外宮にて箏の独奏で奉納演奏も務めました。現在では和楽器奏者として海外でも積極的に演奏活動を行うほか、後進の指導と多岐にわたり活躍しています。

一緒に演奏するようになったのは15年以上前、岡戸さんがモンゴルで演奏活動をする際にアンコールで「赤とんぼ」(山田耕筰曲)を弾(ひ)きたいが手元に楽譜がないという状況の中、私のことを真っ先に思い出し電話連絡をくれたのがきっかけでした。当時は子育て中で自由に音楽活動ができなく(ピアノ講師は続けていましたが)卑屈に思っていた時期でした。この1本の電話が私の自信と意欲を取り戻してくれ、和楽器とピアノという当時では異色のコラボレーションが誕生しました。

松本英明作曲 「BLOOM」

(2)目的

  1. 生演奏を気楽に聴きに来てもらい楽しい空間を共有してもらう
  2. 箏や胡弓等の和楽器のすばらしい音色を多くの方に知っていただく
  3. ピアノとコラボレーションすることで新しい響きの体験とそれぞれの楽器の魅力を感じてもらう

何より私自身が岡戸さんの奏でるお箏や胡弓の音色が大好きで、一緒に演奏をしている際には心から楽しく幸せを感じます。このユニットでの活動が自分にとってご褒美となり、あのとき音楽を辞めないで続けてきて良かったと感じています。

(3)内容

A.熊本でのチャリティコンサート

2016年(平成28年)4月の熊本地震の際、私たちが音楽を通してできることは何か?という思いから瑞穂町の耕心館(社会教育施設)にてチャリティコンサートを開催しました。地元の皆様を中心にチラシを配布し、たくさんの方にお越しいただけるよう入れ替え制の2回公演にしましたが、いずれも満員の大盛況となりました。

チケット料金は社会教育施設のため、有料ではなく無料公演として開催し、私たちの演奏を聴いていただき、皆様のお気持ちを当日募金という形でお預かりいたしました。おかげさまで地元新聞やケーブルテレビに取り上げていただき、お越しくださった皆様のお気持ちのつまった募金を熊本市にお送りすることができました。

B.ドラマーとの共演

毎年和楽器とピアノに加えて思いがけないご縁で出会ったドラマーの高田康則さんをお迎えして、新たな異色のコラボレーションでクリスマスコンサートを開催しています。年の瀬に集まってくれた皆様においしいお酒と食事を楽しみながら、ちょっとオシャレな音楽を聴いていただき「来てよかった、楽しかった」という笑顔が見たい思いで演奏しています。

曲目は「サンタが街にやってくる」「ラストクリスマス」のようなクリスマスの定番から「Moon River」「Fly Me to the Moon」などのスタンダードJazz、「荒城の月」「りんご追分」など日本の名曲、小学校でよく歌われる「Believe」、胡弓の音色で聴く「アメイジンググレイス」等、色々な音楽ジャンルの曲を用意し幅広い年代の方にも楽しんで頂けるように曲をアレンジして演奏します。

3.抱負

今までの活動を振り返ると、私の人生は「音楽と人」に彩られていると感じます。音楽を通してすばらしい人たちに恵まれ、ご縁のおかげで演奏や音楽の仕事を続けてくることができました。これまでお世話になった皆様への感謝の思いと、精一杯のご恩返しをしなければならない、という思いが日々の活動の原動力となっています。私と一緒に音楽に参加してくださる皆様にもライフワークとして一生楽しんでいただくのが目標です。

そのためにはⅰ.私自身が心身ともに健康でいることⅱ.自分のスキルに適切な価値をつける=仕事として対価を頂けるよう、社会的な地位を確立することが大切だと考え、2022年に音楽教室や音楽活動等を主とした個人事業「カワベミュージックアトリエ」を立ち上げました。今はオンラインやSNS等で一人でもいろいろな趣味を楽しめる時代で音楽もそのひとつです。何か楽器の一つでも演奏できたなら一生のお供になり、また素敵な音楽に出会えればきっと心の支えになると思います。

音楽は多くの人と一緒に楽しむことができ、笑顔が生まれ人と人がつながることのできる重要なツールでもあると私は確信しています。今後も平和な毎日に感謝を忘れず、地域に根差した活動を地道に続けていきます。これが地域音楽コーディネーターとしての私の使命だと思っています。

(2023年6月12日公開)

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