活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】若者の楽しい和楽器ライフのお手伝い

(2023年08月02日公開)

地域音楽コーディネータ― 会社員 都山流尺八師範 東京都 瀬藤乃介(瀬藤円山)さん

七夕コンサート
七夕コンサート
■活動テーマ:
若者の楽しい和楽器ライフのお手伝い
■目次:
■活動開始時期:
2014年~現在
■場所:
茨城県つくば市内
■対象:
子供から大学生まで
■活動内容

1.きっかけ

(1)尺八との出会い

2014年、大学入学時のサークル勧誘でたまたま声をかけていただいたのがきっかけです。それまで楽器経験はほぼなく、楽器を手に取るとは考えもしていませんでした。
先輩に教えてもらいながら初めて音を出したとき、先輩のようにキレイな音が出ない、どうしたら良い音が出せるのだろう、と思いました。同じ楽器なのにこんなにも音の違いがあるんだと感心し、どうやったら先輩のような音が出せるのだろうと考え練習しているうちに一気にのめりこんでいきました。

(2)教えるきっかけ

自分が後輩たちに教える立場になったとき、なかなかうまく教えられないことにモヤモヤし、どう教えたら後輩にも伝わるだろうかと考えていました。そのうちに「自分で演奏する」ことに加え「教える」ことにも興味が出始めました。大学院2年生になった4月頃、卒業後も尺八を続けながら学生たちに教えたいと本格的に思い始めました。
当時大学に教えに来てくださっていた二代𠮷田暹山先生にそのことを相談すると、「おお、良いねえ~。よし、一緒に来い!」と快諾してくださいました。卒業後から先生と一緒に教え始められると思っていた矢先、先生がご病気により突然お亡くなりになりました。そこで急きょ想定より早く、2019年大学院2年生の6月頃から後輩たちに教え始めました。

2.具体的な内容

A.大学サークルでの指導

母校の筑波大学邦楽部(サークル)では、箏・地唄三味線(*1)・尺八の3種類の楽器をメインに、他にも津軽三味線・二胡(中国の伝統楽器)も演奏することができます。部員は20名程度で基本的には週3日練習日があります。私はそのうち月2~3回大学に赴き稽古をつけています。1人あたり約1時間の稽古で現在は2年生~4年生の4名に教えつつ、新入生の勧誘も行っているところです。

*1)地唄三味線:三味線には細棹、中棹、太棹の3種類がある。地唄三味線はその中の中棹を指し、地唄・民謡・端唄などで使用される。

稽古では、古曲・新曲・都山流(*2)本曲を中心に教えています。いわゆる「昔ながらの尺八の曲」という感じです。更にもう少し新しい現代曲と呼ばれるジャンルや、J-POPなども学生の要望に応じて教えています。

*2)都山流:大阪で生まれた中尾都山が1896年に創設した流派の一つ。中尾都山が作曲した作品を本曲と呼ぶ。その中の「岩清水」「八千代」「紅葉」「木枯」は代表作とされている。他の大きな流派として琴古流がある。

古曲・新曲・都山流本曲は、正直一般的な大学生にはウケが良いとは言えません。今どきのアップテンポの楽曲とは異なり、俗的に言えば「和っぽい」雰囲気の曲だからです。しかし尺八を吹くからには、まず尺八のために書かれた古典を知るべきです。これら基礎となる曲を習得した上で現代曲やJ-POPのような曲を演奏するとより深みが出ると考え、稽古では基礎を中心に教えるようにしています。

B.地域での演奏活動

<七夕コンサート>

大学生に教える傍ら、つくば市内で地域の方々と演奏活動もしています。演奏会は主に7月の七夕コンサート、9月の筑波山神社での奉納演奏、お箏教室の発表会の賛助演奏などです。また、国際交流の場での演奏・交流なども経験してきました。一番力を入れているのは七夕コンサートです。企画、運営、広報、演奏のすべてを自分たちだけで行っています。参加者は地域で活動するお箏の団体、尺八の団体を中心メンバーとし、筑波大学邦楽部も参加させていただいています。また、このコンサートにはつくば市立高崎中学校箏曲部の生徒たちも参加し、中学3年生にとっては部活動の締めくくりの演奏会です。
七夕コンサートでは「コラボレーション」を多く行っています。ふだんは各々で活動している箏の団体や尺八の団体が複数集まりJ-POPを演奏したり、フラダンス教室の子供たちにも参加していただき、箏・尺八の演奏に合わせてダンスしてもらったりしています。また、中学生と大学生が一緒に演奏する曲もあり、中学生にとって良い刺激となる舞台を作っています。このように団体や年代、活動内容の枠を超えて様々なコラボレーションを行うことで、より多くの方々に邦楽の魅力を伝えたいと思っています。演奏を聴きに来てくださった方からは大変ご好評頂いています。

<筑波山神社での奉納演奏>

9月の中秋の名月の時期に「観月祭」と銘打って行っています。「奉納」演奏ということで、神様に対して演奏を行うためお客様を背に演奏するという、ふだんの演奏会とは異なるスタイルです。七夕コンサートのように楽しくワイワイという演奏会とは異なり、厳かな雰囲気の中心を鎮めて演奏させていただいており、大変貴重な演奏の機会だと感じます。(以下の動画)

C.自己研鑽

大学生に教えたり地域で演奏したりするに当たり、自分自身の技術も磨いていかなければなりません。そこで大学を卒業し社会人になったタイミングで新しい師匠について稽古を受けるようになりました。現在は月に1度1時間程度という短い時間ではありますが、内容の濃い稽古をしていただいています。平日は会社員として働いているので、仕事の合間を縫って練習をしたり稽古を受けたりしています。時間が余り取れない中、大変ではありますが年に一度開催される都山流尺八本曲コンクールへの出場で自分の実力を試しながら、技術を磨くために日々勉強を続けています。

D.つくば和楽器会―WAGAKU―の立ち上げ

小学生~高校生を対象として和楽器の魅力を伝えるため、現在団体の立ち上げに向けて動いているところです。活動としては、小学生~高校生をメインターゲットとした楽器体験会や演奏会を考えています。若い世代の人たちに和楽器に触れてもらい、興味を持ってもらいたいという想(おも)いのもと活動を目指します。

3.課題

和楽器の若手人口は少ないと感じます。高校の箏曲部や大学のサークルで箏や尺八を始める人は一定数いますが、社会人になると時間やお金の制約から続けることが難しい状況になります。また、尺八は持ち歩きしやすくカラオケで練習することも可能ですが、お箏の場合は楽器が大きく運搬が大変であるためなかなかそういうわけにもいきません。練習場所がない、というのも学生が社会人になって楽器を続けることが難しい一因だと感じます。

4.抱負

一番は、若い人たちが【楽しく】和楽器を演奏できるようにサポートしていきたいです。

  • ① 今まで和楽器を知る機会がなかった子供たちに、和楽器に触れ演奏してもらう
  • ② 中学生・高校生・大学生に様々な楽曲を深く知ってもらい、異なる世代の人と交流してもらう
  • ③ 和楽器を始めた人たちが社会人になってからも続けてもらう環境作りをする

社会人になった学生が和楽器を演奏する、というのは何も師匠について練習や演奏会に明け暮れるということが全てではありません。ふだんは仕事やプライベートで忙しくしていても、たまに楽器に触れて演奏する、息抜きや趣味のような形でも良いと私は思っています。そうやって和楽器がみんなの生活の小さな一部になってもらえたらという想(おも)いを持って、これからも活動を続けていきたいと思います。

(2023年8月2日公開)

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