地域音楽コーディネーター トランペッター 吹奏楽指導者 東京都 小林聡子さん
- ■活動テーマ:
- すべての人をつなぎ地域の垣根を超えた音楽を広めたい
- ■目次:
- ■活動開始時期:
- 2009年~現在
- ■場所:
- 都内の小学校、中学校など
- ■対象:
- 小学4年生~中学3年生
- ■活動内容
1.きっかけ
学生時代の友人の小学校教師(管楽器専攻)から「赴任先の学校に金管バンド(*1)があるので、せっかくなら子供たちにプロから正しい演奏法を学ばせたい」と言う依頼があり、外部講師として引き受けたのがきっかけです。1人の講師で全楽器を教えるのではなく、各楽器の専門講師が担当して手厚く教えるという考えの基、指導陣を集め活動を始めました。その後、顧問の先生(音楽や数学の先生他)が代わっても保護者の方々のご協力もあり、幸いにこの体制を維持して活動を続けています。
*1)金管バンド:トランペット(コルネット)・アルトホルン・トローンボーン・ユーフォ二アム・チューバの金管楽器と打楽器の編成
2.具体的な内容
(1)吹奏楽部目的と活動
部員は年度により違いますが男女比は女子の方が多く現在40人ほどです。ほとんどの児童、生徒は学校の備品の楽器を使用しています。2011年度は新入部員も多かったため金管バンドとして良いバランス編成を組めました。年間活動としては春のソロコンサートから始まり運動会、夏のコンクールは全国大会を目標に、地域のお祭り、アンサンブルコンテスト、卒業コンサートでは卒業生との演奏など地域にも密着した部活動をしています。曲目は金管バンド用に作曲されたものから吹奏楽、流行(りゅうこう)のポップスや懐かしのメロディなどをステージに合わせて選曲し演奏しています。
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・センチュリア序曲
アメリカの作曲家ジェイムズ・スウェアリンジェンの曲で日本のバンドで愛され一番演奏される機会が多い名曲 -
・宝島(和泉宏隆曲)
JAZZフュージョンバンド「T-SQUARE」のメンバー和泉氏の曲で吹奏楽曲の定番 - ・ディズニーメドレー他
(2)外部講師として
コロナ禍以前は週に一回(90分)程度、夏休みは3時間行っていました。ここ1~2年は月に1〜2回程度しか行えなかったため、コミュニケーションを取るのは大変でした。外部講師としての留意点とは
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生徒との信頼関係を築く
指導の合間の短い時間に生徒達の話(学校の先生には言えないような話など)をよく聞き他愛のない話をしながら仲良くなれるように接する。 -
学校の先生とコミュニケーションを密にとる
外部講師は学校の先生と違い部活の場だけなので、立場上先生方に生徒たちの学校生活の情報を聞き把握することにより、その子の性格にあった教え方を考えできるだけ楽しく過ごせるよう心がける。 -
生徒の意志を尊重する
新入生の入部時には各生徒に演奏したい楽器の希望を取り、いろいろな楽器を体験した後になるべく希望に添えるようにする。講師たちがそれぞれの生徒に向いていると思われる楽器を選ぶが、最終的にはメンタルケア(*2)なども含めて顧問の先生方が決定する。
生徒の声が一番多いのは「違う楽器がやりたかった」「兄弟と一緒の楽器は嫌だ」「仲の良い友達とやりたかった」等に対して細やかに対応する。 -
生徒の状況に合わせて対応
興味と意欲だけで選んだ楽器が、後々吹けないなどの不具合が出てくることも少なくない。その場合、専門講師が見ることで子供の状態に合わせて個人レッスンで補講したり他の楽器に変更するなど対応できるのが強み。
生徒にとってこの貴重な時間、現体制は音楽普及につながるとても良い取り組みだと思います。
(3)生徒・教職員・保護者・卒業生の反応
〇生徒
- ・楽しかった。喜んでもらえて幸せだった。
- ・やっと人前で演奏できてドキドキした。
- ・みんなで練習をして一つのものを作り上げた達成感がうれしかった。
〇教職員
- ・子供たちの一生懸命な様子を見られて元気が出た。
- ・子供たちが司会進行や準備など自主的に計画して行動できるようになっていく成長を見ることに心を打たれる。
〇保護者
- ・いつ演奏を聴いても涙が出るほど感動します。
- ・先生や指導者の方々のご苦労と運営される保護者の方々のご協力に感謝いたします。
- ・メンバーが代わっても伝統が受け継がれていることはすばらしいです。
〇卒業生
- ・卒業後時間がたっても自分たちと同じように頑張っている後輩の演奏を見ることができ、いろいろ思い出せた。
- ・卒業生が一緒に演奏できるコーナーがあり、音楽でつながっている感じがした。
3.課題と抱負
昨今の国の働き改革政策の基、学校のクラブ活動は変革期に入っています。しかし現在下記の2点が最も大きな課題と感じます。
(1)安心・安全面
先生や保護者の協力、少子化等これからの部活動の維持は大変だと思います。保護者の方にお話を伺うと「学校だから安心して子供たちを任せられると思ったが、外部指導員が来るのなら身元がしっかりしていなければ心配」などの声も聞きます。私もニ児の母である立場上、その気持ちはよくわかります。生徒・保護者・学校側の三者にとって、指導者資格制度と派遣システムについては行政と民間がどのように組み立てていくか鍵だと思います。
(2)予算面
公立学校では予算確保が難しく、外部講師を招聘(しょうへい)するのに生徒から部費を徴収しなければなりません。そのため金銭的に部活ができないので指導者には「格安のボランティアで行ってほしい」などのお声がけもあります。演奏者側から見るとプロに依頼するのであれば、それ相応な対価が必要です。将来生徒たちが音楽家を目指すとき「音楽家は稼げない。ボランティアばかりだよ」と思われるより、「音楽を仕事にして生活できる!」という夢を持ってほしいと願っています。
上記の課題からコンクールや部活動の在り方もこれからいろいろと変わってくると思います。演奏家、指導者として部活に関わっていくことで子供たちに一度しかない学校生活を後悔なく楽しく過ごさせてあげ、将来の音楽に対する夢や楽しさを育てていくことを目指します。
(2023年9月4日公開)
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