活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】子どもたちと共に「見て、聴いて、楽しめるステージづくり」を目指して

地域音楽コーディネーター 日進児童合唱団事務局 愛知県 浅井淳子さん

第14回定期演奏会合唱ミュージカル「くるみ割り人形」
第14回定期演奏会合唱ミュージカル「くるみ割り人形」
■活動テーマ:
子どもたちと共に「見て、聴いて、楽しめるステージづくり」を目指して
■目次:
■活動開始時期:
1990年~現在
■場所:
愛知県日進市
■対象:
園児から高校生
■活動内容

1.日進児童合唱団設立のきっかけについて

日進児童合唱団は1990年、名古屋市のベットタウンとして急速な発展を遂げつつあった愛知県日進市(旧名は日進町)に誕生しました。当時私は小学生、子どもの頃に聖歌隊で歌っていたという母親に「入ってみたら」とすすめられ1期生として入団しました。卒団後は運営スタッフとして現在まで合唱団に関わり続けています。

合唱団は指揮者・音楽教育者である浅野仁美が「日進にも子どもの合唱団を」との強い想いで設立した私設団体で現在まで公的支援を受けずに自主独立の活動を続けています。1980年代後半~1990年代は学校の週休2日制の本格導入に伴い、子どもたちの学校外での過ごし方について注目が集まった時代です。その一つとして各地で少年少女合唱団が公設、私設問わず多く誕生した時代でもあり、日進児童合唱団もその流れの中で産声を上げました。

高校の音楽講師の傍ら、障害者音楽活動にも携わってきた指揮者自身の経験から、従来イメージされる合唱のスタイルを超えて、歌い手も聞き手も笑顔になれる「見て、聴いて、楽しめるステージづくり」を33年前の創立時より旗印としています。

2.合唱団の運営について

2023年現在、合唱団は未就学児から高校生まで約90人の団員で活動しています。幅広い年代の団員がそれぞれの音楽的成長とともに充実した合唱団生活を送れるように、様々な運営上の工夫をしています。

(1)合唱団卒団生である大学生アシスタントによる練習サポート

指揮者、ピアニスト、ダンス講師、演出家といった大人の指導者の他に、合唱団を卒団した大学生がアシスタントとして練習に参加しています。彼ら自身の合唱団での経験をもとに、指導者よりも団員に近い年齢・立場として、主に低学年のジュニア団員や新入団員のサポートをしてくれます。

(2)学年に応じたクラス分け

小学校高学年を境にシニアクラス、ジュニアクラスとクラス分けをしています。毎週の練習時間もジュニアクラスは3時間、シニアクラスは4~5時間と心身の成長に合わせて設定しており、時間差をつけた練習スケジュールで、クラスごとのダンスレッスンや歌唱練習を行い、合同練習の時間では合唱団全体で歌う曲に取り組めるようにしています。また中高生は混声合唱や男声合唱にも挑戦し、児童合唱の枠を超えて合唱の世界を楽しんでいます。

(3)ペア制度

ジュニア団員とシニア団員が固定のペアを組み、楽譜を一緒に見ながらの歌唱練習を進めていきます。これにより、シニア団員はジュニア団員が自分の声を頼りにしているという責任感で譜読みを行い、またジュニア団員はシニア団員の歌声を間近で聴きながら正しい音で歌えるようになることを期待しています。

(4)練習スケジュールを細分化してお知らせ

毎週の練習スケジュールは「何時から何時までどのような内容のレッスンをするか」を細かに予定表に書いてお知らせしています。例えば「15時~16時はダンスレッスン、16時~17時は(曲名)の譜読み、17時~18時は(曲名)の振付確認」といったように詳しく書くことで、学校行事や部活、塾や家庭の事情で最初から最後まで練習に参加できない日があっても、それぞれが「自分にとって外せない内容」を判断して、たとえ一部分でも都合をつけて練習に参加しようとする団員が増えました。

3.演奏活動について

合唱団のステージは恒例のものとして「定期演奏会」「愛知県少年少女合唱連盟合唱フェスティバル」「ミニコンサート」、その他に依頼を受けてのイベント等での演奏を随時行っています。

A.定期演奏会

2年に1度開催する定期演奏会では、合唱・ダンス・演技にこだわって作り上げる「合唱ミュージカル」を中心として、合唱組曲や愛唱歌ステージ、シニアクラスによるステージや企画ステージと、お客様に楽しんでいただくことを目指しており、毎回1,000席のホール満席のお客様にご来場いただいています。創立30周年記念演奏会では人気作曲家・信長貴富先生に作曲いただいた愛唱曲や、名古屋を中心に活躍される作曲家の遠藤秀安先生作曲の合唱組曲を初演、日進市から新しい音楽文化を発信することにも努めています。

B.合唱フェスティバル

毎年8月に、愛知県下の少年少女合唱団が一堂に会しての合唱フェスティバルが、愛知県芸術劇場コンサートホールで開催されます。日進児童合唱団は主催する愛知県少年少女合唱連盟発足時より参加しており、愛知県を代表する素晴らしいホールでの演奏は子どもたちにとって夏休みの貴重な体験となっています。

C.ミニコンサート

定期演奏会が2年に1度の開催であることから、間の年は「春を呼ぶミニミニコンサート」と題して、舞台設営、受付、司会進行と団員自身で行うミニコンサートを開催しています。演奏会が多くの人に支えられていることを子どもたちに実感してもらい、「演奏会ができるまで」を疑似体験してもらうために始めた企画で、定期演奏会では取り上げない練習曲や、保護者コーラスなど、手作りのアットホームな雰囲気を大切にしています。

4.コロナ禍を乗り越えて

合唱は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた芸術活動の最たるものでしょう。ごく初期のいくつかの合唱団でのクラスター報道や、大きな声を出すことそのものへの批判、練習会場の休館により、日進児童合唱団も一時活動休止を余儀なくされました。全日本合唱連盟のガイドラインをもとに少しずつ活動を再開し、団員間の距離を十分にとった座席配置や会場の消毒、換気の徹底等で今日まで歌い続けることができていますが、多くの児童合唱団がこの間に団員数の減少で苦境に立たされていることを知っていただきたいと思います。

5.今後の展望

合唱団としては創立時より変わらず「見て、聴いて、楽しめるステージづくり」を目指して活動を続けていくとともに、私設団体ゆえにこれまで行政とのつながりが少なかったことから、今後は市の事業などにも積極的に参画し、より一層地域に根差した合唱団となれるよう取り組んでいく予定です。

地域音楽コーディネーターとしては、合唱団を「ハブ」として、様々な音楽団体、市民団体との新しい交流を生むことを目指し、働きかけを行っていく他、2023年度より、日進児童合唱団だけでなく愛知県少年少女合唱連盟の事務局長にも就任したことで、日進市にとどまらず、愛知県下全域の児童合唱団の振興に力を入れていきたいと思っています。

少子化や習い事の多様化、勉強との両立の難しさ……様々な要因で、地域の児童合唱団を取り巻く環境はますます厳しさを増しています。一方、児童合唱団の意義や価値は、どれだけ世の中が変化しても薄れることはありません。それをどのように発信し、サポーターを増やしていけるか。次世代の子どもたちの歌声を守るために、是非多くの方のお知恵を借りながら取り組んでいきたいと思います。

日進児童合唱団事務局浅井淳子

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(2023年9月8日公開)

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