活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】ジャズの楽しさを通じて子ども達の豊かな感性を育むコンサートを

(2024年02月13日公開)

地域音楽コーディネーター シンガー ボイストレーナー 愛知県 山口沙織さん

プチジャズバンドラブル~☆
プチジャズバンドラブル~☆
■活動テーマ:
ジャズの楽しさを通じて子ども達の豊かな感性を育むコンサートを
■目次:
■活動開始時期:
2011年~現在
■場所:
東海地域の保育園、幼稚園、小・中学校
■対象:
幼児から中学生
■活動内容

1.きっかけ

音大声楽科でクラシックを学んでおりましたが、一つのジャンルに固定されることに違和感を持ちゴスペルクワイア(黒人教会の礼拝で歌われる曲を歌う合唱団)に参加しました。そこでソリストに選ばれたことがきっかけでジャンルレス(クラシック、POPS、ラテン音楽等の音楽ジャンルの境界を超える)のシンガーとしての活動をスタートしました。
その活動の一つとして2011年にプチジャズバンド「ラブル〜☆」を結成しました。大学の同級生でジャズサックス奏者の小島勇司氏が、ニューヨーク在住中にジャズライブが日本よりも気軽に身近に楽しめる環境に感銘を受けた事で、日本でジャズをより普及するためには小さい頃から身近に触れる機会を持つことが大切と考え、子ども向けのジャズバンドを作りたいと発案しました。2011年は、一緒に活動していた大切な音楽仲間が他界したり、東日本大震災があったり、音楽との向き合い方に無力さや迷いを感じていた年でした。私はジャズシンガーではなかったのですが、意義のある取り組みに心動かされ、挑戦の思いでボーカルを引き受けました。

2.具体的な活動

(1)メンバー

演奏活動を通じて出会った信頼のおける地元ミュージシャン達の協力を得ながら構成しています。基本はボーカル、サックス、キーボード、ベース、ドラムの五人編成ですが、依頼内容によってはホーン隊(*1)を入れるビッグバンド編成やデュオスタイルなど臨機応変に対応しています。

*1)ホーン隊:トランペット、トロンボーン、サックスの金管楽器

(2)目的

保育園児から中学生までを対象に

  1. 生演奏に触れ音楽の素晴らしさを体験させたい
  2. 子どもたちの自由な発想や豊かな感性を伸ばしてあげたい
  3. ジャズの魅力の一つ即興演奏の楽しさと自由さを味わさせたい

ジャズは、お酒を飲みながら大人が楽しむ音楽、難しい音楽などと固定観念に囚われている人々が多いと思いますが、元々はアメリカ南部ニュー・オーリンズのブラスバンドのマーチが母体となり、1930年のダンスミュージック(*2)で黄金時代を迎え、今でも世代問わずウキウキ楽しめる音楽です。私なりの解釈なのですが、ジャズは難しいというよりも懐の深いジャンルなのではないかと。この点が子ども達の純粋無垢な感性や、自由な発想を大切に受けとめたい想いにも繋がって活動と向き合っています。

*2)ダンスミュージック:スウィングと言われる4ビートのリズムが発生し、その音楽で踊るダンス。ベニー・グッドマン(クラリネット奏者)楽団やグレーン・ミラー(トロンボーン奏者)楽団、カウント・ベーシー(ピアノ奏者)・オーケストラが有名

(3)内容

ジャズは自由に楽しむ音楽であることを伝えます。内容は訪問する場所(保育園、幼稚園、小学校、中学校)と事前に打ち合わせを行い、対象児に合った案を作ります。特に選曲については先方のリクエスト曲を教えて頂くことが重要です。聴き馴染みのある童謡、アニメソング、季節にちなんだ曲、流行り曲を取り入れます。この素材を基にジャズの特徴でもある即興演奏で自由にアレンジします。子どもたちの豊かな反応を受けとめ、私たちも演奏中にリズムを変えてみたり、曲のサイズを広げてみたりその場で変化していきます。一緒になって1曲を描いていくようなスタイルです。
この様な自由なコンサートを体感して「自分は自分でいいんだ!」と主体的に肯定感を感じられるような思いにも繋がることを願って取り組んでいます。子どもたちに運動会で踊った思い出の曲など知っている曲をジャズアレンジで聴いてもらい、普段と違って聴こえる変化に驚きや発見を感じていただけることを心がけています。反応としては

  • ・着席していた子ども達も自然と立ち上がり素敵な即興ダンスを披露してくれる。
  • ・大合唱が始まる
  • ・一人で手拍子を打つのではなく、お友達同士でハイタッチをしながらリズムとる
  • ・手を繋いでグループダンスが始まる。等

私たちも驚く発想の受け止め方を表現し、子ども達の持つ純粋無垢な感性は私たちが教えられ刺激を受けることばかりです。

A.幼稚園・保育園

幼稚園や保育園などでよく歌われている曲を中心に選曲します。童謡を用いて曲中にリズムやテンポを変えて手遊びも加えたり、オリジナルのリトミックジャズを取り入れます。

B.小学校

即興演奏(アドリブ)を実際にどの様に行うのか演奏やMCを交えて紹介します。また楽器の名称や由来、ジャズの歴史などをクイズ形式にして取り入れたりもしています。運動会で披露したダンスの曲をコンサートに選曲として入れて一緒に踊ってみるなどは、子ども達の方からの希望で行う機会も多いです。

C.中学校

音楽の歴史背景・ジャズの知識・楽器の成り立ちなどの話を演奏の合間に交えたり、プログラムにジャズスタンダード(*3)も取り入れます。吹奏楽部とのコラボや、学校の先生方もゲストとして招き一緒に歌って参加してもらいます。小学校同様、校歌をジャズアレンジして全校生徒とコラボしたりもしています。これは皆さんにとって身近な上、非常に新鮮で喜ばれています。

*3)ジャズスタンダード:
・Smile (スマイル) 1936年、チャールズ・チャップリンの映画「モダン・タイムス」のテーマ曲。作曲はチャップリン自身
・On the Sunny side of the street(明るい表通りで) 2021年NHK朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の挿入曲としても有名
・When you wish upon a star(星に願いを) 1940年ディズニー映画「ピノキオ」の主題歌。数あるディズニー楽曲の中でも一番有名な曲

3.先生・保護者の方達からの反応

  • ・キラキラ星があんなに感動する曲になるとは思わなくてびっくりした
  • ・サザエさんの主題歌がとてもかっこよくて大人でも楽しめました
  • ・アンパンマンの歌の歌詞の意味がよく伝わって感動しました
  • ・子ども達の楽しんでいる姿に涙が出てきました
  • ・子どもを連れてコンサートを楽しむことが難しいので嬉しかった
  • ・子ども向けだけでなく大人もコンサートを楽しめる内容だった
  • ・子ども達に興味を持たせるステージングが勉強になった
  • ・子ども達との向き合い方に保育の現場で心がけている思いと共感しあらためて大切を感じ感動した
  • ・子ども達の好きな曲を沢山取り入れてもらえて嬉しかった

4.課題

内容に関しては聴衆が楽しんでもらうためには①何が一番大切なのか②自分達のこう聴かせたいという思いよりも聴衆を優先に考える等、トライし続けることが課題です。最新の曲を取り入れていくこともバンドの課題においておりますが、昔に比べて子ども達に人気の曲がボカロ(*4)曲だったり自分のルーツとはまた違う歌唱アプローチの挑戦なども年々ハードルが上がっていく難しさと楽しさを感じています。

*4)ボカロ:ボーカロイド(VOCALOIDO)の略。ヤマハが開発した歌声合成技術。初音ミクはその代表的なキャラクター。千本桜は有名な曲の一つ

運営面に関しては、多くの方に活動を認知していただくことが一番の課題と感じています。興味をいただくきっかけを作るのは私たち発信者側の行動と感じているので、積極的に直接足を運び、またSNSを活用したり様々な工夫が必要と感じています。

5.今後の抱負

音楽を通じた出会いの中で、他ではなかなか感じることのできない感動や救われる経験を沢山経てきました。「ただ歌が好きだから」、「音楽が楽しいからと」いう自己満足だけでなく、ミュージシャンとして地域の社会貢献や社会包摂の意識を持って多くの方達に音楽を通じて得た心の学びや感動を伝えていく取り組みに励み、子ども達の豊かな感性を大切に育んでいきます。

(2024年2月13日公開)

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