活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】音楽をきっかけとした『誰もが心潤う居場所』をつくり続けたい

地域音楽コーディネーター 学校地域連携コーディネーター 埼玉県 木戸礼子さん

2018年3月『春のゆめコンサート』マリンバ・ヴィヴラフォン・打楽器≪地域と演奏家が一体となりリズムを楽しむ様子≫
2018年3月『春のゆめコンサート』マリンバ・ヴィヴラフォン・打楽器
≪地域と演奏家が一体となりリズムを楽しむ様子≫
会場:相模原市立中央公民館
主催:春のゆめコンサート実行委員会
協力:相模原音楽家連盟
■活動テーマ:
音楽をきっかけとした『誰もが心潤う居場所』をつくり続けたい
■目次:
■活動開始時期:
2009年~現在
■場所:
神奈川県相模原市・埼玉県さいたま市
■対象:
一般
■活動内容

1.地域音楽コーディネーターとの出会い

私は平成20年(2008年)から12年間、神奈川県相模原市で公民館職員として音楽を含めた様々なきっかけを始まりとする地域づくり、コミュニティづくりに努めてきました。令和4年(2022年)の春、老年期を迎えた両親のもとである埼玉県に転居し、現在はさいたま市立指扇北小学校で学校地域連携コーディネーターという職務を担っています。

現職に就いた頃、「地域連携」について知識を深めようといろいろと検索していたところ、偶然にこの『地域音楽コーディネーター』の資格に出会いました。長く公民館職員として地域と関わり、地域の温かさを知っている私の目にまず飛び込んできたのは、やはり『地域』の文字。そこへ「音楽とのコーディネート」という言葉にとても興味が惹(ひ)かれました。私にとっての地域とは「完成されたもの」というより「作りあげるもの」という広がるイメージを持っています。『音楽』の文字が飛び込んできた瞬間に、音楽をきっかけに人々が集まり、音楽を囲むことで地域コミュニティが作られる姿が浮かびました。このような風景がすぐに浮かびますのも、公民館の職務の中で直接肌を通して感じた経験が大きいと思います。

2.音楽をきっかけに始まるコミュニティ

相模原の公民館で勤務した日々の中では、いつも音楽があふれていました。歌声、ギター、三味線、箏などです。これらの音は地域の方々がサークル活動で音楽を楽しむ時間を過ごして奏でる音、その音に惹(ひ)かれて公民館を訪れ一緒に仲間として活動を始める方もいます。また、公民館の中では音楽を楽しむ機会はサークル活動だけではなく、地域の方々が自主的に企画・運営を行うイベントもあります。コンサート・講座・祭りなど、地域の方の目線で自主的に企画されたものだからこそ、そこに住む人たちの心に響き、そして親しみやすい空間が作られています。

このように、音楽をきっかけに始まるコミュニティを実現できることは公民館の醍醐味(だいごみ)です。12年間で強く感じたことは、音楽の力と地域の力に相乗効果が生まれることを確信しました。これは公民館に限らず、どのような場所でも実現することができると感じています。現在も今までの経験を生かし、音楽をきっかけとした地域づくりを実現したい思いで活動しています。

3.具体的な内容

私の公民館職員としての仕事は、

  • ① イベントや事業の企画立案(内容、予算編成)
  • ② 演奏協力を頂く相模原音楽家連盟等、各事業の講師・協力団体との交渉
  • ③ 地域の方々による実行委員会の運営サポート
  • ④ 行政機関との連絡・調整

等を行ってきました。担当したイベント・事業の中で、私にとって音楽とのつながりが深いものをご紹介します。

(1)春のゆめコンサート~地域のスパイスが加わる~

毎年3月中旬、公民館を会場に開催するクラシックの「春のゆめコンサート」は約20年間継続しているビッグイベントです。このコンサートが長年地域に愛される理由としては、

  1. 入場料はワンコイン(500円)で安価、高校生以下は無料
  2. 聴衆と演奏家は握手ができる距離(約2m)
  3. 運営は地域住民で組織された実行委員会 準備もすべて地域の方だから温かい雰囲気
  4. 乳幼児抱っこでも、車椅子の方でも誰でも楽しめる

上記のように、どなたでも身近で気軽にクラシック音楽を楽しむことができるところに魅力があります。

このような特徴は20年間変わることなく継続し、住民からは「住んでいるすぐそばで生演奏を楽しめるなんて最高!」と評判も上々でした。地域の方が自ら編成やポスターのデザインから広報活動、本番の進行などすべて行うところも愛されるポイントです。参加する方はポスターを目にした瞬間からずっと温かい気持ちに満たされながら本番を迎えます。音楽、それだけでも優雅な気持ちになるのですが、そこへ地域の力というスパイスが加わることで、より一層居心地の良い居場所となるコンサートが実現します。コーディネーターとしての事務的なサポートと、住民による柔らかく温かい雰囲気を醸し出す力は音楽をより身近なものに感じる空間へと導きます。

(2)家庭教育支援事業~ヴァイオリニストの一言は新たな視点でした~

私にとって音楽をきっかけとした居場所づくりを気づかせてくれた事業をもう一つご紹介します。その事業は『家庭教育支援事業』というもので、核家族化による地縁的つながりの希薄化、いじめや不登校など、昨今の社会問題の中で子育てに悩む家庭、未来を担う子どもたちの支援に取り組む事業です。その一つで子どもの居場所づくりを担当しました。

このような子どもを取り巻く問題には、やはり地域の力が必要です。現在、文科省では学校と地域が連携し、地域の力が子どもたちを見守る体制『*コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)』を平成29年(2017年)施行し全国に推進しています。私が『家庭教育支援事業』を担当した当時、相模原市ではコミュニティ・スクール配置のスタート地点であったことから『子どもの居場所づくり』を地域課題と捉え、公民館も中心となって取り組むことにしました。

*)コミュニティ・スクール:学校運営協議会を設置した学校のことを指します。学校運営協議会とは、学校運営に地域の声を積極的に生かし、地域と一体となって特色ある学校づくりを進めていくことの協議を行う組織です。校長、保護者、地域住民等で構成され、学校運営とそのために必要な支援について熟議し、学校運営の改善と子どもの健全育成を目的としています。

しかし、地域内の学校数は小・中合わせて5校、多くの子どもの数と不透明な子どもの悩みに対応する課題は多く、

  1. 館区内のすべての子どもを受け入れられるのか
  2. 子どもや家庭が居場所に求めるものは何か、またその環境が整うのか
  3. 子どもの居場所を見守る地域の手は足りるのか

など、子どもの居場所づくりの課題に模索するうちに「誰でも!自由に!気軽に!」という公民館らしさよりも、居場所の環境を整えることばかりが優先されていました。ちょうどそのとき、「春のゆめコンサート」の演奏家との打合せが重なり、あるヴァイオリニストから驚くようなお言葉を頂いたのです。

「ヴァイオリンを生で聴く機会ってコンサートくらいしかないですよね。でも私は畳一畳分のスペースがあれば、そこで演奏できるだけでもいいのです。何げなく行ってみたらヴァイオリンを弾いている人がいて、楽しいから毎日通ってみた。そしたらここが居場所になった。…このように子どもが集まってくれたらいいなって思っています。」課題解決という堅苦るしさで頭がいっぱいの私に、柔らかい『音楽』という要素を組み入れることなど思いつかなかったのです。そのヴァイオリニストの一言は新たな視点でした。子どもたちにとって家庭や学校でもない第三の居場所で、音楽をきっかけに多くの人と交流できる光景が容易に想像できたことを今でも覚えています。

(3)学校地域連携コーディネーター~新たな地域との関りがスタート~

令和4年の春、私は埼玉県へ転居することになり、コロナ禍の影響から子どもの居場所づくりを実現させることができないまま公民館を退職しましたが、現在は、さいたま市で地域と関わる『学校地域連携コーディネーター』という職に就いています。これは学校と地域の連絡調整・情報の共有を担います。さいたま市でもコミュニティ・スクール制度が令和4年度から全市立学校で実施されています。

在籍している、さいたま市立指扇北小学校での職務の中では、登下校の見守りを担う防犯ボランティア、主任児童委員、その他PTAや青少年育成会など、地域の子どもを見守り育てる多くの地域の方々とつながっています。この地域の方の力により、のびのびと安心して過ごしている子どもたちの姿に触れるたびに、「子どもたちは、街を歩いていても、学校以外で遊んでいても、のびのびと安全に暮らしていけるのだ。」と、改めてコミュニティ・スクール制度の必要性を感じています。

(4)チャレンジスクールで地域の子どもを地域が育てる

■チャレンジスクール推進事業(放課後子ども教室)とは…

さいたま市では地域の方で構成された実行委員によって、放課後と土曜日に学校の余裕教室等を活用して様々な活動を行っています。目的は「子どもたちが地域社会の中で心豊かで健やかに育まれる環境づくりの推進」です。これをチャレンジスクール推進事業と言い、さいたま市立小・中学校全校で実施しています(中学校は土曜チャレンジスクールのみ)。内容はスポーツ、文化活動、地域住民との交流活動、また自主的な学習(補習・宿題等)等のサポートです。

指扇北小学校チャレンジスクール実行委員会の連絡調整を行い、児童がチャレンジスクールを楽しくかつ安全に行うための運営支援に努めることも私の仕事です。子どものそばに地域がある安心感を子どもたちの表情や笑い声を聞くだけで感じとることができます。

4.成果と課題

平成20年(2008年)から現在まで、二つの地域と深く関わったことで感じることがあります。

  1. 地域の人が集い交流を持つことは、その地域の課題解決や地域コミュニティの活性化が実現する
  2. 地域とは、何かをきっかけに新たな魅力を持ったコミュニティが生まれる

そのあるものをきっかけとするスタートから、コミュニティや地域が形成されるまでの流れを段階的に進める経験を積んだことは、私自身の大きな成果であると思っています。

また、相模原市とさいたま市、両市とも政令指定都市であり、ある住民意識データでは地域交流や街並み雰囲気などほぼ相違のない環境ですが、私が感じる両市の特徴としては、さいたま市はコミュニティ・スクール制度が全市立学校配置をされていることにより、学校を核とした地域ネットワークが形成されています。対してコミュニティ・スクール制度化が発展途上である相模原市の地域ネットワークの核は公民館であると感じています。このような地域の特徴をとらえながら地域づくりにつなげることが今後の課題であると考えています。

5.今後の抱負

現在二つの展望を抱いています。

①現在勤めている小学校の地域の方々で作られる『音楽を楽しむ場所』を企画することです。それは、今現在音楽に触れている方や以前音楽を楽しまれていた方、今後の趣味としたい方も参加可能な場所です。この場所ができると、

  1. 音楽に触れたい子どもが集まれば子どもの居場所へも広がる
  2. 地域活動だけでなく、音楽も楽しめることで地域力が高まり、地域協力者も増えることが望める
  3. 中学校の部活動地域移行の取り組みに及ぶ参考例になる

さいたま市立指扇北小学校は、目指す学校像として『地域に根差した信頼される学校』『美しい歌声が響く学校』とうたわれるほど、音楽とのふれあいが広がっている学校です。ここで地域の方々も音楽に親しむことができれば、学校を核とした地域ネットワークが音楽をきっかけに潤う環境につながります。

②子どもから大人まで誰でも可能な居場所を広げる

さいたま市の公園や広場、どこでも可能なスペースを利用し、音楽が趣味の人、ある楽器を始めた人、歌が得意な人が奏でる音色で人が集まり、コミュニティが形成され、誰でも可能な居場所を作りたいと思います。これはストリートピアノとヴァイオリニストの言葉を掛け合わせたものです。

「何となく行ってみたら、そこに音楽があった」「音楽があるから行ってみた」これがきっかけに温かい地域や居場所ができる…このような地域像を心にもって活動して行きます。

(2024年4月4日公開)

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