活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】未来を担う子どもたちのために私たちができること

(2024年04月22日公開)

地域音楽コーディネーター 特定非営利活動法人みらいっこ理事長 愛知県 大府市 藤根由紀子さん

15周年記念コンサート ヴァィオリニスト ロマン・パトチェカ氏と一緒に
15周年記念コンサート ヴァィオリニスト ロマン・パトチェカ氏と一緒に
■活動テーマ:
未来を担う子どもたちのために私たちができること
■目次:
■活動開始時期:
2008年から現在
■場所:
愛知県大府市
■対象:
子どもに関わるすべての方
■活動内容

1.特定非営利活動法人「みらいっこ」立ち上げのきっかけ

私は以前ヤマハ音楽教室講師として幼児音楽教育に従事しており、一緒に働く生徒や保護者の方々から多くのことを学びました。①子どもは、「遊ぶ」「休む」「生きる」「話す」など様々な権利の主体者である②大人は、将来を担う子どもたちを支え、支援していく義務を負っていることに気付きました。時代は少子高齢化や女性の就労・社会参加の拡大に伴って、乳幼児を取り巻く子育ては大きく変わりつつあります。その中で子どもたちを取り巻く環境は決して豊かなものではありません。子どもの虐待、遊び場の減少、受験勉強の低年齢化、保護者の雇用不安といった社会状況の変化により生じている問題が多々あります。

国は、平成15年(2003年)に「次世代育成支援対策推進法」を公布し、子どもに関わる施策を充実させていく方向を明確に打ち出しています。一方、地方分権・地域内分権の推進により、子どもの施策充実を行政の取り組みのみに期待し待つだけでなく、地域住民が具体的に行動・実践し課題を提起していくことで、その内実を豊かにする市民の主体的な取り組みも必要となってきているのです。
私たちは愛知県大府市の子育て支援の環境づくりに着眼点を置き、公共施設(公民館等)の乳・幼児教室で演奏会の開催、音楽と心の関わりの場の提供や運動遊びをきっかけに活動を開始しました。

活動を進めていく中で異年齢集団による遊び、地域ぐるみで子どもの安全確保の重要性、子どもをきっかけとした保護者間の支え合いつくりの必要性などに気付かされました。これは子どもに限られたことではなく、地域全体の課題であると考えるようになりました。15年前の大府市内には、子どもを真正面から捉えたNPO法人がほとんどありませんでした。そこで私たちはすべての子どもが持つ権利を保障し、安全・安心に暮らせる社会の実現を目指し、2008年8月特定非営利活動法人「みらいっこ」を設立しました。子どもが安心して過ごせる場づくりを核としながら、子どもを中心にしたネットワークづくりや個別家庭支援などを、地域の信頼を得た永続的な取り組みとして進めています。

2.具体的な活動

「特定非営利法人みらいっこ」とは

  • (1)理念未来を担う子どもたちに私たちができること
  • (2)事業内容
    • ・子育て支援
    • ・指定管理者事業
    • ・保育事業(保育園・託児・病児保育事業含む)
    • ・児童福祉活動
    • ・多目的交流活動
    • ・イベント・コンサート企画・実施
    • ・音楽療法活動等

A.子どものための居場所作り

NPO法人と連携した「こどもの居場所づくり支援モデル事業委託」

(1)目的

すべての子どもたちに音楽の楽しさを体験できる居場所づくりのひとつとしてクラシック音楽を気軽に聴く機会を与え、みんなで音楽に参加し楽しむことの大切さを伝える

(2)対象

乳幼児~18歳までの健常者、障がい者とその家族

(3)場所

大府市児童老人福祉センター(弊財団が指定管理者)

(4)内容

<演奏会>

NPO法人響愛学園所属のバイオリニスト近藤楓佳氏と同法人所属、大府市ゆかりのピアニスト碇大知氏によるドボルザークの「ユモレスク」や、W.Aモーツァルトの「幻想曲K397ニ短調」をリラックスした雰囲気の中、あえて椅子のないフラットな状態で聴いてもらい、また楽器の紹介と体験(バイオリン演奏体験)・アンサンブル演奏を楽しみました。

<音楽の参加>

音楽療法でも使用する楽器トーンチャイム(*1)を一本ずつ持っていただき音のキャッチボールを体験。見えないものが見える創造の世界へ。トーンチャイムのハーモニー体験でレクチャーした後は、会場全員参加型のアンサンブル(きらきら星・茶色の小瓶等)を演奏。エンディング曲は一部で演奏したバイオリニストと一緒にコラボダンスをしました。

*1)トーンチャイム:アルミ合金製のパイプを叩いて共鳴させる楽器。やわらかい美しい響きの音色が魅力。

(5)成果

すばらしい演奏者による贅沢(ぜいたく)なく時間の中で、音楽は心のスパイスだけでなく、健常と障がいという言葉を消し去ってしまったのかと思える空間と目に見えない力がありました。コンサートの始まる前は大人たちが子どもの行動に目配り気配りが絶えませんでした。たった一つのトーンチャイムの音が『ポーン』と鳴り響くとその音は宙を舞い会場の親子のもとへ。音のキャッチボール。このことをきっかけに音楽を楽しめる空間に変化し、温かい気持ちがあふれる会場と化しました。

B.市民の憩いの場

2022年度から指定管理者として市内にある児童老人福祉センター(行政施設)の運営管理を任させることになりました。子育て支援だけを行っていた私たちでしたが、このたびこのセンターの運営管理をきっかけに高齢者を含めたすべての世代へ利用満足度が提供できるように日々従事しています。新規事業計画3つの提案を掲げました。

  • ①『バイオリンの里を目指して』音楽体験ができる施設
  • ②市民カフェ(ミニ講座・サロンライブ)で心豊かに健康で
  • ③SDGs事業
(1)目的
  • ⅰ.住まいの近くで気軽にクラシックの生演奏を聴く場の提供と地域で支え合う環境作り
  • ⅱ.収益を寄附として困窮家庭救済事業に充てるシステム作り(SDGs事業)
(2)対象

一般

(3)場所

施設内常設カフェふらっと

(4)内容

ⅰ.『バイオリンの里を目指して』音楽体験
地域で活動している音楽家にご協力いただき、バイオリンの体験レッスンの実施。20分程度の基礎レッスン

ⅱ.市民カフェ(ミニ講座・サロンライブ)
施設内に常設のカフェを作り、お茶とお菓子を楽しみながら音楽ライブを気軽に聴いていただき、心豊かなひと時を過ごしてもらう
20分程度(3・4曲)演奏とおしゃべり×2回と30分の休憩含む
今までの演奏会バイオリン、フルート、ピアノ演奏

告知については高齢者が多い地域なので、回覧でゆっくり情報を確認できる方法と、SNSやインスタグラム等で周知しています。

(5)成果

参加された方々からは
「ここが公共の施設とは思えない」
「リーズナブルな価格でクラシック演奏が聴けることは大変うれしい」
「クラシックの生演奏は今まで聴く機会がなかったので良かった」
「子育て中はコンサートホールに行くことができないので近所で聴けることができよかった」
等の感想を頂き、我々の目的を達成できたことは主催者としてうれしく思います。

C.音楽のおもちゃ箱とサマーコンサート企画

15周年記念のコンサート企画として、チェコ在住プラハ交響楽団
コンサートマスターロマン・パトチェカ氏を招聘(しょうへい)し、0歳から聴けるクラシックコンサートを企画しました。大府市は鈴木バイオリン製造工場があったこともあり、『バイオリンの里』を目指しています。ウクライナの紛争のため大府市内に移住したご家族の紹介や地域産業の紹介もこのコンサートの狙いです。コンサートはこども向けの「音楽のおもちゃ箱」と大人向けの「サマーコンサート」の2部制で開催し300人入れ替え制で行いました。

内容はミュージックストーリーや音楽体験、巨匠とコラボなど、子供たちが飽きないようにプログラミングしました。23年間お世話になったヤマハ音楽教育システム教室の講師として培った知識と経験・企画力が功(こう)を奏したのか、今回この一部の内容に役立てることができました。

(1)目的

未来に担う子どもたちとそのご家族へ本物の音楽を

(2)場所

大府市文化交流の杜こもれびホール

(3)対象

0歳~18歳までとその家族(無料)

(4)内容

1部は子ども向け2部は大人向けの2部構成

【1部】音楽のおもちゃ箱

バイオリニストのロマンパトチュカ氏とドイツから帰国したピアニストの岡里歌子氏伴奏によるクラシックコンサート。
ドボルザーク「ユモレスク」やブラームス「ハンガリー舞曲第5番」の演奏を楽しみました。ロマン氏によるバイオリン紹介やその魅力とともに、大府市の宝でもある最古の鈴木バイオリンとイタリア製(200年前)のヴァイオリンとのコラボ演奏。
おやこ遊びの時間では、会場から子どもたちを選出。その場で一緒にレクチャーから会場全員とコラボするなど音楽リトミックやカラーリングを使って視覚的効果と聴覚的効果を狙いました。

【2部】サマーコンサート

ドボルザークのロマンティックな小品や無伴奏でバイオリンの音色聴かせる時間もあり、クラシックファンにはたまらない時間と空間となりました。日本の曲で鈴木バイオリン(蔵出し楽器)の演奏もあり大府市の市長・県会議員・市会議員の方々にもご来場していただき、地域貢献に役立てることができました。

3.課題

私たちは昨年15周年を迎え団体運営は軌道に乗り、人材も現時点では特に問題はないように思っていました。しかし、時のたつのは早く社員の平均年齢は50代前半になりました。この事業を継続発展するには、未来に向けて人材育成と後継者作りが課題です。今だからこそ若い世代へ安心できる運営管理体制作りをせねばならない時期と考えています。「どう育てていくのか?」「思いはどう伝わるのか?」コミュニケーションを取りながら一緒に考え共感し、伝えていく(継承)事が大切だと感じました。

しかし、これからの若い原動力が必要とされているこの事業には、次世代の担い手(リーダー)が生まれにくいことが大きな課題となっています。それは事業自体の活動は周知されているにも関わらず、「NPO法人という組織自体の認識がまだ低く、「ボランティアではないのか?」と間違った情報がながれてしまうことも原因の一つです。NPO法人はNPO(非営利組織全体をさす)とは違いNPO法に基づいて設立した会社です。だからこそ社員(正会員)一人一人の家庭を守ることも責任を持って取り組んでいます。それぞれの運営方針によって支給額の変動はありますが、社員を増やし、目指す着地点にむかって課題を一つ一つクリアすることも、社員という仲間がいるからこそできることだと信じています。下記にNPO法人の設立とそのメリットについて(公財)音楽文化創造のホームページに詳しく紹介しておりますのでご覧ください。

4.今後の抱負

特定非営利活動法人みらいっこ代表としての今後は、10年計画もふくめ、数えきれないほどあります。以前の私は思いが強すぎてどのように動いてよいか、仲間もいなく一人では身動きが取れないこともありました。このように思っている方が今も多くいると思います。団体を設立する前と今とでは全く違い、見える景色が変わりました。支援事業を丁寧にこなすことと時系列の逆算で今やるべきことを一つ一つ取り組んでいます。
子育て支援事業・音楽事業・地域貢献事業等は今、地域だけで行うものではなく、いろいろな方々(個人・団体企業)と連携し、社会全体で支援できる時代になってきました。私たちもこの波に乗ってNPO法人
だからこそできる支援を推進していきたいです。地域音楽コーディネーターの私としては、子どもたちにスポットが当たるような機会を提供できるように企画し、行政と一緒に学校教育の一つになるように働きかけをしています。これからの子どもたちに未来が描ける、必要とされる存在意識の開拓につながるのではないかと考えています。有言実行できるように野望は大きくいきましょう。まずは1万人のリトルミュージシャン計画を発動していきます。

(2024年4月22日公開)

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