活動事例

地域音楽コーディネーター 作曲家 東京室内管弦楽団トランペット奏者 桜美林大学非常勤講師 東京都 三澤慶さん
地域音楽コーディネーター 国分寺市職員 東京都 田中博さん
地域音楽コーディネーター 音楽療法士 東京都 石塚愛美さん

集合写真 ゲネプロ
■活動テーマ:
みんなのファミリーコンサート
■目次:
■活動開始時期:
2024年1月27日(土)16:00
■場所:
国分寺市いずみホール
■対象:
一般
■活動内容

1.「こくぶんじ吹奏楽プロジェクト」結成目的

こくぶんじ吹奏楽プロジェクト」は、2023年2月、地域のプロ・アマチュア音楽家が垣根を越えてネットワークを構築し、音楽の力で地域を元気にしたいという目的の基、作曲家でトランペット奏者である三澤と国分寺市職員でアマチュア・テューバ奏者である田中を中心に立ち上げました。

国分寺市は都内通勤圏としてのベッドタウンであり、また近隣市には有名音楽大学もあるため、プロ・アマ問わず音楽家人口は決して少なくありません。しかし音楽家同士の「接点」は少なく、地域の中に音楽・吹奏楽でつながれる人がどのくらいいるのか知る手立てがないのが現状です。そこで我々は様々な媒体を利用して地域の音楽・吹奏楽愛好家、プロの掘り起こしを行うことをもう一つの目的とし、ひいては出来上がったコミュニティーの中に小学生からシルバー世代までを巻き込み、「地域吹奏楽の輪」を形成しようとしています。「少子高齢化」や「部活動の地域移行」を絡めた話に限って行っているわけではなく、結果的に社会課題の解決の一翼を担えるのでないかと感じています。

2.国分寺市いずみホールとの連携

活動を開始した折、国分寺市立いずみホールの企画担当者より、ホールの2023年度(4月から2024年3月末)主催事業として、地域の愛好家を対象とした吹奏楽ワークショップへの協力を依頼されました。伺えば、担当者が前赴任地のホールで吹奏楽ワークショップを開催し、大変好評だったことから「国分寺市でも是非!」と思っていたそうです。しかし、いざ企画を立案する段になって、地域の中に吹奏楽の世界に明るい協力者が見つからず、ご苦労をされていたところ「こくぶんじ吹奏楽プロジェクト」を知っていてくださり私たちの方へ声をかけられたとのことでした。

国分寺市は吹奏楽・器楽に関して組織的、積極的にコミュニティー作りを担う方があまりいません。我々もちょうど、地域での吹奏楽愛好家のコミュニティー作りを始めたところで方向性が一致していたので、「協力団体」としてこのイベントへの協力を決めました。担当者の思い描く新企画のイメージと我々の活動の趣旨が非常に近いこともあり、企画内容の設計に関してはとてもスムーズに運びました。

3.具体的な内容―「にしこく吹奏楽部!2023」

(1)募集

イベントの最初の告知を2023年5月に「国分寺市報」やホールのウェブサイトを活用し、募集期間(2023年6月18日〜7月17日)内に参加応募フォームから参加者の募集を行いました。対象を「小学生以上の市内在住・在学・在勤・国分寺(西国分寺)駅利用者・通勤通学時の駅通過、国分寺が好きな方」とし、国分寺市域のみならず、近隣市関係者などにも広く参加可能になるようにしました。

また演奏での参加のみならず、楽器は演奏できなくてもコンサートの運営サポートとして協力していただける方も募集し、最終的に小学生からシルバー世代までの総勢43名(演奏参加37名、スタッフ6名)が集まりました。このメンバーに加え「プロサポーター」として、地域にゆかりのある5名のプロ演奏家に指導・演奏サポートを依頼し、更に音楽監督として三澤を加えた49名での活動となりました。

(2)活動スケジュール

2023年8月19日に国分寺市いずみホールにて開講式・説明会を開催し、以降おおよそ月一回計7回の練習日を経て、2024年1月27日に最終ゴールとなる「みんなのファミリーコンサート」への出演をもって、解散となりました。

(3)コンサート内容

「合奏ステージ」「アンサンブルステージ」「コラボステージ」の3部構成で行いました。曲は吹奏楽の響きを楽しめる曲、ファミリーコンサートでの演奏にふさわしい楽しい曲、また地域の音楽資源でありながら、今まで紹介されることが少なかった「国分寺市の歌」を三澤が吹奏楽用に編曲したものを選びました。

「アンサンブルステージ」では各セクション別に小アンサンブル(フルートアンサンブル、クラリネットアンサンブル、サックスアンサンブル、金管アンサンブル)にも取り組みました。そのため、短い時間の中に様々な管・打楽器の魅力の詰まったバラエティに富んだコンサートになりました。「コラボステージ」では別事業のダンスワークショップ「生演奏で踊ってみよう」とのコラボとして、地域の子どもたちのダンスと生演奏の共演も行いました。

「みんなのファミリーコンサート」ダイジェスト映像

4.成果

(1)聴衆

ステージ上からは、お客様の終始笑顔で非常に和やかに楽しまれている様子が伺えました。客席は一般のお客様に加え、吹奏楽・ダンス両ワークショップ参加者のご家族や関係者が多かったこともあり、会場は満席でステージ・客席とホールが一体となり楽しい時間・空間を共有できました。実際に多くのお客様から「とても楽しかった」と直接お声がけを頂きました。

(2)参加した演奏者

今回のメンバーは「ワークショップ参加者」で、それぞれが満足感・達成感を得たことは価値がありました。また演奏会終了後の打ち上げは参加者同士で自主的に企画し、ほとんどの方が参加され参加者同士の交流の輪が広がりました。今回の成功により、小・中学生から大学生、大人の方々からも「次はいつになるのか?」とか「来年も開催してほしい」などのお声を多数伺いうれしく思います。

5.課題

本ワークショップ事業につき、主に小学生の参加について下記の3点の課題がありました。

  1. 普段の学校での活動との違いに戸惑われた
  2. 年長者や大人との技術的な面やコミュニケーションのとりかた等で萎縮してしまいうまくなじめなかった
  3. 保護者の判断で参加した子どもが、希望のパート(楽器)から外れてしまったことを理由に途中で活動を辞退された

6.学校部活動の地域移行

現在、国の政策である学校部活動の地域移行につき、現場では解決しなければならない課題が多々あります。我々は自治体とともに「地域での音楽コミュニティーの形成」や「地域での音楽活動の受皿作り」のリサーチを行い、実践しながら成功事例を作ることを求められていると思います。吹奏楽活動のメリットは大勢の人で一つの音楽を作り上げることです。皆で音楽を奏でる上においては、お互いの譲り合いや配慮が不可欠であるため、特に中高生世代での社会性の育成に非常に大きく寄与する側面があります。しかしその一方で、過度に我慢を強いられたり、ストレスを感じたりする状況では楽しく音楽をすることは難しいということも当然理解できることです。

また地域の多世代での活動メリットは

  1. 地域の大人が地域の子どもたちを支え育てる社会の形成、いわば「地域共生社会の実現」に向けた大きな取り組みになる可能性を秘めている
  2. 大人の愛好家も「生涯学習」として、また「余暇の趣味活動」として純粋に音楽を楽しむことも重要な要素です。

要するに「子ども世代の満足」と「大人の満足」のギャップをどういう形で埋めていくか、また人それぞれ趣向に違いのある中で皆がある程度許容し合いながら楽しめる活動をどう作っていくかが検討テーマと感じています。

7.抱負

今後も更に加速する少子化を踏まえて、地域レベルで音楽文化の衰退を防ぐための仕組み作りを我々世代が試行錯誤しながら、次の世代に受け継いでいくことがとても重要です。戦後日本でこれだけ盛んになった吹奏楽文化を維持発展していくためには

  1. 今まで学校単位、楽団単位等縦割りの傾向をあらゆる場面で崩し、音楽活動を「地域コミュニティー」という区分に広げる
  2. 「プロ・アマチュア」、「大人・子ども」といった垣根を取り払い、皆が地域の音楽文化の担い手として一緒に活動することで地域での音楽・吹奏楽のムーブメントを新たな形で作る
  3. 人が気軽に集う場を作り「音楽での社会貢献」のきっかけとなる機会を増やす

将来的には地域の人々はもとより、公立・私立の学校、音楽団体、民間企業や行政と連携を強化し、音楽家としてより大きな目線の中で地域に貢献していきたいと思っています。

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