地域音楽 コーディネーター

活動事例 地域音楽 コーディネーター

【事例紹介】“音楽の花束を”あなたのまちに。あなたの心に

(2024年12月02日公開)

地域音楽コーディネーター 声楽家 ソーシャルアート おとまち代表理事 東京都 宮澤順子さん

音楽劇「凛として生きる」出演者集合写真
音楽劇「凛として生きる」出演者集合写真
■活動テーマ:
“音楽の花束を”あなたのまちに。あなたの心に
■目次:
■活動開始時期:
2000年4月~現在
■場所:
台東区生涯学習センターミレニアムホールを中心に港区立精神障害支援センター、小学校他
■対象:
一般、乳幼児と親子、小中高生、高齢者、障がい者
■活動内容

1.きっかけ

2020年から新型コロナウイルスがまん延した期間、世の中では不安と孤独感等で命を落とす方がいました。大病経験がある私は、今ある命を大切にしてほしいとの願いより音楽で社会貢献できないかと構想を練りました。コンサートに出向くことも難しい高齢者や障がいのある方、社会的なつながりを持ちづらい方にも生の音楽をお届けし、いやしや楽しみを感じてもらうとともに、一緒に参加してもらうことで励みや喜び、自信になり、今日を生きる一歩になればとの思いからでした。声楽家だけでなく音楽療法士、精神保健福祉士、社会福祉士、行政書士、教師などの様々な資格と能力を持つメンバーとプロジェクトを結成し、2021年4月「ソーシャルアートおとまち」を設立しました。

2.具体的な内容

(1)ソーシャルアートおとまち

【目的】

クラシック音楽を主体とした声楽及び器楽の公演活動等を行うとともに、医療、保健、福祉、教育等の他分野との連携により地域社会の文化的社会資源としての音楽文化の振興を図り、我が国の地域社会における芸術文化の発展に寄与することを目的としています。

【活動】

私どもは幅広い年代と健常者、障がい者を対象に上記の目的の基、活動しております。その中のいくつかをご紹介します。

A.オリジナル音楽劇「凛として生きる」

コロナ禍の不安や孤独感でうつ状態になったり、自ら命をたってしまう方がいたため“今、生きている”ことの大切さや尊さをテーマに、オリジナル音楽劇「凛として生きる」を作成公演しました。台本は私が作成し、おとまちメンバーの金井田由実さんが作曲してくれました。
ダウン症児や障がい者、年齢、国籍などを越えた多様な出演者が一緒に合唱で参加しました。舞台やロビーには障がい者が描いた絵や作品を飾りました。同じ目的を持って参加することで参加者には相互理解や自信と喜びになり、また劇の内容や生の歌声のもつエネルギー、参加者の笑顔によって観客に大きな感動を与えました。

・2021年無観客トライアル公演 劇中歌“今、生きている“をYouTubeに公開

・2023年4月29日台東区生涯学習センターミレニアムホール

公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京の助成金を得て開催しました。

協力:インクルーシブなチアダンスチームHAPPY⭐︎ COLORS、高砂福祉会館デイサービス歌唱教室有志、おとまち合唱団
後援:台東区/公益財団法人台東区芸術文化財団

B.みんなでクリスマスコンサート

・2022年12月11日(日)台東区生涯学習センター ミレニアムホール

このコンサートは 文化庁のARTS for the future!2(コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援事業)補助金を得て2部構成で開催しました。

午前(10:30)は乳幼児、未就学児の親子で触れ合いながら楽しめるコンサートです。子どもたちが好きなディズニー曲やクリスマスの曲を聴くだけでなく、みんなで音楽に参加し楽しい時を過ごしてもらいました。

午後(14:00)は年齢を越えて3世代で楽しめるコンサートです。プロの声楽家、ヴァイオリニスト,ヴィオリスト、ピアニストによるクラシックの有名な曲からディズニー曲、クリスマス曲等を聴いていただき、生演奏の魅力を体感していただきました。

C.音楽劇「赤くんと青くん」 台東区生涯学習センターミレニアムホール

令和5年度(2023年)『台東区心の教育推進区民大会』において「友達の大切さ」をメインテーマとし、地域の絆やあいさつの重要性などを啓発する目的で行われた音楽劇です。

D.他

港区立精神障害支援センター「はーと音楽祭」や江戸川区立上小岩第二小学校創立50周年関連行事「北原白秋コンサート」にも参加しています。後者は詩人・童謡作家の北原白秋がこの学校の近くに住んでいた関係でこのコンサートを企画されたそうです。そこでは山田耕作と一緒に作った「待ちぼうけ」や「この道」を演奏しました。

(2)マミーシンガーズ

マミーシンガーズは、日本最大の声楽家団体「公益財団法人東京二期会」の会員で構成されたグループでブロック活動の一つです。2000年にオペラなどの大きな公演だけではなく、歌で社会貢献につながる活動を目的に東京二期会による会員への声掛けによって有志で集まり結成されました。歌手であり母親であるメンバーやその趣旨に賛同してくださった方々で編成されており、私もそのメンバーの一人として参加しています。

主な活動は子供たちの参加型コンサートを開催しています。プログラムは童謡・唱歌、ミュージカルから本格的なオペラ、オリジナル音楽劇まで幅広いレパートリーで構成され、生の音楽を通して多くの人々に夢と感動を届けています。子供たちの健全育成を願い公演する姿勢が好評を博しています。

○2024年度の公演
・東京都主催:健全育成音楽劇全4回(都内小学校)「勇気を出して~万引きをしない・させない・見逃さない~」
・東京都主催:音楽劇「あいさつは魔法の力」全12回(都内小学校)

(3)シニア世代へ

子育てが一段落してきた今、高齢の家族の認知症や病について考える機会が増えました。今まで子供を対象に広く活動してきましたが、シニアについては理解不足だったので区内の養成講座を受講し、認知症サポーター、認知症予防音楽ケア体操指導員の資格を取得しました。そこでは現在の日本の高齢者問題について考えさせられました。そこで出会ったすばらしい方々と虹音というグループを作り特別養護老人ホームなどにボランティアに行っています。

また、デイサービスなどにも行けない方、行かない方など社会とつながりづらい方を音楽でつなげる、お見守りするために地元の友達とアンダンテというグループを作りました。アンダンテは社会福祉法人台東区社会福祉協議会とつながりができ、ご協力を得て主人の経営している酒屋で小さな歌の会を試みました。

特養では挨拶しても表情もなく返事もなかった方が、歌を通して感情があふれ笑顔になる方、怒り出す方、泣き出す方などいらっしゃいましたが、(それが脳の活性化には良いということ)帰りには笑顔で挨拶をしてくださるほどになり、施設の方もその笑顔をご家族に見せたいとおっしゃっていました。また酒屋での歌の会は大変盛り上がり、遠くまでいけないからうれしい、楽しいという声をたくさん頂きました。

3.成果と課題

(1)成果

コロナ禍で文化庁などからの助成もあり、団体を立ち上げ思いを形にすることができました。ただ自分で録画録音編集、ユーチューブなどに配信、SNSでの広告などパソコン、スマホを使って音楽を届けることは全く経験がなかったので、試行錯誤の連続でしたが学ぶことができました。現代社会の変化に対応して新しい音楽の発信は必要で更に勉強せねばならないと思っています。

(2)課題

障がいをお持ちの方と一緒に作った公演は、参加された皆さんの心からの喜びや笑顔にこちらも大変力を頂きましたが、継続していく上にはいくつかの課題があります。1点目はチケット料金設定と観客動員です。素人も参加するという公演ではチケットを高く設定することはできません。お客様の動員もアカデミックなものより難しいと感じました。よって会場は大きなホールだけでなく小さな場所でもできるように改善する必要があります。

2点目は収支面です。ご協力いただくプロの方は演奏で生計を立てているのでボランティアでは申し訳なく、プロデューサーとしてどのように収入を得、謝金をお渡しできるか考慮しなくてはなりません。

3点目は運営体制です。助成金を申請する際、慣れない事務量が膨大なので私自身の練習する時間も限られてしまいます。そのバランスが難しく今後は体制をしっかり作ることが望まれます。

4.抱負

今後、年齢を重ね今までと同じようにできなくなってくる不安があります。しかし長年歌をライフワークとしてきた私は、私の歌で一人でも喜んでいただける方がいらっしゃるなら、少しでも成長できるよう研鑽(けんさん)を積んでいきたいと思っております。

人々が庭や街角にきれいに咲いた花を見て、ふと笑顔になるように何げない音楽があふれた街は、きっと笑顔もあふれていると思います。音楽を通して出会った方とその日その時だけでも、いつもと違う色が人生につき楽しく生きることができたらすばらしいと思います。音楽家として地域音楽コーディネーターとして音楽の花束を抱え、街を心を笑顔にするお手伝いを目指します。

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