地域音楽 コーディネーター

活動事例 地域音楽 コーディネーター

【事例紹介】地域を超えてつながる縁~合唱文化の普及と発展を目指して~

(2024年12月09日公開)

地域音楽コーディネーター 公務員 Q団長 熊本県 山内可奈水さん

熊本地震復興支援チャリティーコンサート熊本公演
熊本地震復興支援チャリティーコンサート熊本公演
■活動テーマ:
地域を超えてつながる縁~合唱文化の普及と発展を目指して~
■目次:
■活動開始時期:
2013年~現在
■場所:
熊本県を中心に九州県内のホール、教会、イベントスペースなど
■対象:
20代~30代
■活動内容

1.きっかけと目的

(1)マネージメントの基礎

小さい頃から音楽や歌が好きだった私が合唱を始めたのは、中学校の部活でした。そこから声を合わせて一つの作品を作り上げることのすばらしさに魅了され、高校、大学まで継続し、大学在学中には一般合唱団でも研鑽(けんさん)を積みました。特に感銘を受けたのは大学・一般合唱団です。先生に頼らず全てを自分たちで運営していく自由で自主的な方針でそれぞれが活動しているのを目の当たりにし、実際に渉外や広報などのマネージメントの経験をさせてもらったことが、今の私の活動の基礎になったのだと思っています。

(2)「九唱連フェスタ2009」開催

私が所属していた合唱団は、「九州地区大学合唱連盟」(九唱連)という九州地区の大学合唱団の集まりに参加していました。もともとはフェスタという合同演奏会を開催するための集まりだったそうですが、私が入団した際は交流合宿のみが残っている状態でした。合同演奏会をいつかやりたいという展望だけは何となく持っている人も多くいましたが、一度途切れてしまった伝統を復活させるにはエネルギーが要ります。皆、限りある大学生活の中で、なかなかそれを実現できていない状態でした。

ならばやってやろうじゃないか!と一念発起し、同じ大学、他大学の同級生や後輩たちと試行錯誤しながら「九唱連フェス2009」を福岡市で復活開催しました。仲間の絆(きずな)が深まったのはもちろんのこと、過去のフェスタに関わられた先輩方にも来場していただき、「懐かしかった、復活してくれてありがとう」などの有り難いお言葉を頂きました。フェスタはその後、後輩たちが2012年、2016年と歴史をつないでくれました。私を育ててくれた大学合唱と九唱連に感謝し、これからも大学合唱の文化と絆(きずな)が続いていくよう願っています。

2.具体的な内容

(1)Qの誕生と活動目的・スタイル

前記した九唱連フェスタがQへとつながることになります。九唱連フェスタ2012の開催後、「このまま終わるのはもったいない」「フェスタでつながった仲間ともっと歌いたい」との声を受けて、2013年2月に九唱連フェスタ2012メンバーを中心に新しい合唱団を立ち上げました。その名も九州の「Q」。「Q」という名前には、「九州から合唱文化を発信したい、九州の合唱文化を支える人材を育てたい」という思いを込めています。また団員の移動の不公平感をなくし、九州各地の方々とのご縁を大切にするため、あえて決まった拠点を持たず、九州各地で練習やコンサートを行っています。

(2)団員

団員は九州各地~本州という広域から集まっています。団員の転職・転勤による入れ替わりを経て、現在は20~30代で構成されています。会社員や公務員が多数でライフステージは独身から新婚、子どもがいる団員まで様々です。練習は皆が活動しやすいスケジューリングを目指して、結団当初は月1回日曜日日帰りとしていましたが、今年2024年から目的ステージを定めた集中合宿形式(1~2か月に1回、土日宿泊あり)に変更しました。

(3)活動履歴

○主な主催コンサート(他団体の賛助、一般公募含む)

①熊本地震復興支援チャリティコンサート

  • ・2017年9月鹿児島県鹿児島市
  • ・2017年11月 福岡県太宰府市
  • ・2018年2月熊本県益城町

②Q上天草公演2016

  • ・2016年2月熊本県上天草市
    熊本県の天草地方を題材にした合唱曲の地元初演
    (一般公募あり)
○九州各地の合唱団のコンサートへの賛助出演
  • ・2014年4月
    ザラストロ合唱団&へきらくコールジョイントコンサート熊本県人吉市
  • ・2016年8月
    作陽混声合唱団サマーコンサート宮崎県都城市
  • ・2019年2月
    合唱団からたち第33回定期演奏会熊本県八代市
○各地から合唱団が集まるコンサート
  • ・2016年11月コロ・フェスタ2016in水郷日田 大分県日田市
  • ・2023年7月コーラス・エクスポin鹿児島2023『沸る薩摩の合唱団たち』 鹿児島県鹿児島市
  • ・2023年10月コーラス・サミットin広島 広島県広島市
  • ・2024年9月コーラス・エクスポin鹿児島2024 〜西に沸る若き合唱団たち〜 鹿児島県鹿児島市

なお、2020年のコロナ禍ではすべてのコンサートが中止となり、また県堺を越えて集まることもままならず、結団依頼最大の危機を迎えましたが、策をいろいろ考え、何とか危機を乗り越えることができました。

(4)企画にあたって

Qでは、「こんな企画おもしろい!」「その時々の縁を大事にしたい」という思いから定期の演奏会は開催せず、全てその時々に企画・実行しています。既定路線に沿わない分、どのようなスタイルで進めるか苦労するときもありますが、それもこの団の醍醐味(だいごみ)。企画を進めているときはそれ以上にワクワクし、演奏会をやりきったときの達成感はひとしおです!

(5)指揮者とピアニスト、及び楽曲について

九州の合唱文化を支える人材の育成に寄与する観点から、Qの指揮者及びピアニストは発足当初から、九唱連関係者の意欲がある者として鹿児島大学混声合唱団ポリフォニー・コール元学生指揮者の曽木時人氏、宮崎大学ブルースカイ合唱団の元学生ピアニスト黒木沙織氏に依頼しています。指揮者は現在プロに転向し、鹿児島県内でジュニア~シニアまで幅広く9団体の指揮者として活躍する一方、鹿児島国際大学非常勤講師(合唱)、認定NPO法人かごしまアートネットワーク理事、鹿児島県内小中学校の外部講師(合唱)も務めています。また、九州ユース合唱団でも指揮者として後進の育成に力を入れています。ピアニストは鹿児島の合唱団でピアニストとして活躍しつつ、子育てにも奮闘する頼もしいママ仲間でもあります。
取り扱う楽曲は邦人曲が多く、高田三郎、木下牧子、信長貴富、千原英喜各氏の作品などで技術力を磨いています。

3.成果と課題

(1)成果

団の仲間とともに思い切り楽しみ、悩み、ひたすら前に進んできた10年余りでした。もうそんなにたったのかと思う一方、振り返れば一つ一つの演奏会が懐かしく思い出されます。九州各地を巡る中で、幸運にもたくさんの合唱団と舞台でご一緒する機会に恵まれ、横のつながりが育まれました。そのつながりが、更に次の舞台のご縁につながってきました。決してQだけでは成しえない企画に快く応じてくださった皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。結団時の「九州から合唱文化を発信したい、九州の合唱文化を支える人材を育てたい」という目標はまだまだ道半ばですが、一つ一つの機会を大事に、これからもQらしく歩みたいと思っています。

(2)課題

○知名度

各地を巡るということは、たくさんの合唱団とつながれるというすばらしいメリットを生みますが、反面、訪問先での知名度が低く集客に苦戦するという大きなデメリットも生じます。演奏会のチラシの配布やSNSでの宣伝などは行っていますが、宣伝方法についてはまだ改善の余地はたくさんあると思っています。

○団員数の維持と財政面

上述2.具体的な内容(3)活動履歴しましたとおり、コロナ禍の影響と団員の転勤等のため団員数が劇的に減り、音楽の質的にも財政的にも結団以来の大ピンチを迎えています。加えて、ライフステージが様々な団員たちが集う中で皆が満足できる環境を整えたいと思いつつ、思うように対応できていない焦りがあります。

合唱団に関わらず、この年代の団体は活動を継続していくのは難しいです。差し当たり、やんちゃ盛りの団員の子どもたちをどうするか(託児か、いっそ合唱活動に取り込むか…)、喫緊の課題です。試しに一度子どもたちを歌い手に巻き込んで行う企画として、2024年12月22日に熊本県益城町で「森のめぐみの音楽会」(一般客参加あり)を開催する予定です。

財政的な面では、これまで団費や年会費等を収入源に運営してきましたが、今年度から補助金や助成金の応募を始めました。今までもトライしたことはあったものの、決定には至りませんでしたので諦め気味だったのですが、団にとってプラスになることならば積極的に動いてみようと思っています。

4.抱負

結団から10年を超え、団員の転職・転勤による入れ替わりや結婚・出産を経て、団員のライフステージも多様化してきました。この年代で活動を継続していくことはなかなか難しいと肌で感じています。皆が活動しやすいよう、一部活動形態等を見直しつつも、私たちだからこそできる活動は何かを日々模索しています。

Qの運営には悩ましい点もあり、心が折れそうになるときも多々ありましたが、それ以上に一緒に活動してくれる団員、ご縁をいただいた合唱仲間の皆さまのことを思うと、更にもうひとつ心躍る企画を作らずにはいられないのです。Qは正に私の原動力、ライフワークそのもの。これからもワクワクをひとつずつ積み重ね、その軌跡を振り返ったときに、もっとたくさんの団員やご縁をつなぐことができた合唱仲間の皆さまとともに、新たな10年、20年を刻んでいたら素敵だなぁと思っています。

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