全国生涯学習音楽指導員協議会理事 北海道支部代表 シンポジウム担当 高橋和恵さん


- ■活動テーマ:
- 国際音楽の日2024シンポジウムin東京
いつでも♪どこでも♪誰とでも♪音楽でつながる♪
〜活動を応援!!!二刀流!!![子どもゆめ基金&ガバメントクラウドファンデイング]〜 - ■目次:
- ■活動開始時期:
- 2024年10月22日(日)13:00~16:45
- ■場所:
- 東京都日本青年館8階カンファレンスルーム(会議室)イエロー
- ■対象:
- 生涯学習音楽指導員協議会会員、生涯学習音楽指導員、地域音楽コーディネーター、その他一般
- ■主催:
- 全国生涯学習音楽指導員協議会
- ■主管:
- 「国際音楽の日2024シンポジウム東京」実行委員会
- ■活動内容
1.主旨
「音楽を通した社会貢献活動持続のために今、何が必要か?」をテーマに
① 資金調達方法に焦点を当て、成果と活用方法について考える
② 対面のシンポジウムならではの参加者同士の交流を持つ

音楽文化の振興と生涯音楽学習推進を目的として、2017年より全国生涯学習音楽指導員協議会(*1)主催で開催してきた研究会は今回で8回目を迎えました。今まではフォーラムとして各支部が主管となっていってまいりましたが、今回は全国協議会新役員理事で構成する実行委員会主管での開催となりました。コロナ禍の影響を受け、数年間オンラインで開催した時期もありましたが、再び私たちの活動を活性化させる方法を各支部会員と対面でディスカッションし、今後の活動に生かしたという願いの基、シンポジウム形式としました。また当日参加できない方々のために、申し込まれた方に期間限定でアーカイブ配信も試みました。
*1)全国生涯学習音楽指導員協議会:(公財)音楽文化創造主催の「生涯学習音楽指導員講習会(2020年より休止)を受講し、生涯学習音楽指導員として資格認定を受けた有志により2003年に設立した全国組織の任意団体です。現在22支部・会員約200名で組織され、会員は洋楽・邦楽の専門家で構成されています。各支部はそれぞれの専門分野を生かし、生涯学習の視点にたって幼児から高齢者、障がい者等を対象に地域の自治体・音楽団体・音楽家と連携し、音楽を通して地域活性化に貢献する活動を実践しています。
2.具体的な内容
今回は基調講演、全国生涯学習音楽指導員協議会の山口支部・愛媛支部・奈良支部の事例発表とパネルディスカッションで構成しました。

(1)基調講演【ファンドレイジング(*2)資金調達の第一歩~音楽活動の持続可能性を「お金」から考える~】
講師:認定ファンドレイザー川野辺雪菜氏


*2)ファンドレイジング:ファンドレイジングFundraisingはfund(資金・基金)とraising(集める)の造語で、NOP法人、非営利団体、大学などが個人、企業、法人などから会費、寄附金、助成金を集めること
活動において「人、モノ、カネ」は不可欠な三要素です。その中で私たちがあまり得手ではない資金調達について勉強が必要と考え、その道のプロである認定ファンドレーザーの川野辺雪菜氏を講師にお迎えし、下記の3点を中心にレクチャーをしていただきました。
- ファンドレイジングの定義
- なぜファンドレイジングをした方がよいのか?
- ファンドレイジングの始め方
単にお金のことを考えるのではなく、自分たちの活動の理解者、応援者を広げる活動の先に資金の調達があると言うことを理解できました。講演終了時には川野辺氏との質疑応答があり、講演内容を自身の問題として受けとめることのできるすばらしい講座でした。今後活動を進める上で自己意識を深め、目的を明確にすることの大切さを学びました。
(2)ガバメントクラウドファンディング事例発表
山口支部顧問廣田由実さん・山口支部代表阿部恭子さん


クラウドファンディング(*3)の事例発表として、山口県山陽小野田市を拠点として活動している山口支部が、昨年から取り組んだガバメントクラウドファンディング「生きる」をテーマとしたコンサートの報告がありました。
*3)クラウドファンディング:ファンドレイジングの一つでインターネット等を介して不特定多数の人々から資金調達をする仕組みで、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語
ガバメントクラウドファンディングとはふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」を活用して行うクラウドファンディングの一種で、自治体が抱える問題解決のため、ふるさと納税の寄附金の「使い道」をより具体的にプロジェクト化し、そのプロジェクトに共感した方から寄附金を募る仕組みです。活動の経緯の説明と、そこに至るまでの支部活動、行政との関わりの努力を痛感いたしました。活動実績を通して「熱意は必ず通じるものである」という信念が山口支部を支える原動力になっていると思います。今年も11月30日にガバメントクラウドファンディング「生きる」の2回目のコンサートが盛況に終了したそうです。内容については、添付のチラシをご覧ください。

次に一般的に知られているクラウドファンディングの参考事例2件の発表がありました。
(3)子どもゆめ基金(*4)事例発表
A.愛媛支部
愛媛支部代表豊田千恵子さん


*4)子どもゆめ基金:国と民間が協力して子どもの体験・読書活動などを応援し、子どもの健全育成の手助けをする基金です(文部科学省HPより)
最初に愛媛支部発足の経緯と発足当時から実施されている4事業の紹介がありました。その中の音楽ア・ラ・カルトチャレンジ体験!part7「リズムであそぼうチャ・チャ・チャ!!!」は子どもゆめ基金の助成を受けて行った全3回のシリーズです。対象は市内の小学生、定員30名、内容は箏とトーンチャイム、リズム楽器を加えてのディズニー メロデイのアンサンブルです。お互いの楽器の尊重、息の合った演奏を目指し、人との関わり、一体となる楽しさを体験することを目標に3日間を終えました。箏の指導においては昨今、楽器調達が困難になっている状況の中、箏体験指導が難しい問題を抱えながらも子どもたちの笑顔を大切にされている様子が分かりました。現在会員7名と小規模ながらも4事業を継続されているパワーに感動いたしました
B.奈良支部
奈良支部代表當内祥子さん・奈良支部幹事長辨天冨美子さん


奈良支部の子どもゆめ基金助成活動「絵本と仲良くなろう!Ⅳ&キッズワークショップ」は、子どもゆめ基金の申請の手順、ポイント、取り組みの事例をとても分かりやすい説明で、私たちのニーズにとてもマッチした事例発表でした。奈良支部は昨年奈良で開催されたフォーラムの主管をつとめられ、スペイン語講座と絵本の講座は10年にも及ぶロングランの助成活動です。子どもたちに輝きと願いをもった素晴らしい活動のご紹介でした。実際に絵本を展示して皆さんが手に取って見ることができ、対面でのシンポジウムならではの工夫がされておりましたことも印象的でした。
(4)パネルディスカッション
テーマ「地域の音楽活動と持続的資金調達の課題と可能性」

○ファシリテーター久保田慶一氏
公益財団法人音楽文化創造理事、東京経済大学客員教授、放送大学非常勤講師
○コメンテーター
・渡邊剛志氏 独立行政法人国立青少年教育振興機構助成課課長
・川野辺雪菜氏 認定ファンドレイザー
○パネリスト
・山口支部 廣田由美氏
・愛媛支部 豊田千恵子氏
・奈良支部 辨天富美子氏
・鬼澤良子 全国生涯学習音楽指導員協議会代表理事
パネルディスカッションは、継続的な活動に必要な資金確保を中心に、ファシリテーターの久保田先生の進行で、活発な意見交換が行われました。
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久保田理事より
テーマ説明と生涯音楽学習の意義と指導員の役割 -
鬼澤代表理事より
コロナ禍を経た各支部のいろいろな現状報告と課題の提示があり、また「困難はあっても音楽を使って心を豊かにする事業を支部の枠を越えて行いましょう」という今後の活動指針を示されました。 -
事例発表を行った3支部(山口・愛媛・奈良)より
資金面での苦労や解決・克服したことなどの質疑回答、また私たちの活動で関わりの多い「子どもゆめ基金助成事業」についての補足説明。 -
子どもゆめ基金助成課長の渡邊氏より
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・子ども夢基金の主旨と現状
現在の年間予算は10億〜15億円、実施件数は7千件ほどとのこと。しかし年々予算や申請件数は減少傾向であるが、今後も是非申請を続けていただきたいとの要望があり、申請方法を個人的に1対1で聞けるサイトの紹介も教えていただきました。 - ・申請方法及び報告書の書き方の諸注意
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・事前アンケートの回答の説明
これらの説明を受け、距離感をもっていた支部の方々とのハードルは下げられ、今後活用してみようという気持ちになりました。
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・子ども夢基金の主旨と現状
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質疑応答
川野辺雪菜氏の基調講演の内容、渡邊剛志氏の子どもゆめ基金助成事業の説明、3つの支部が行ってきた活動との関連を久保田先生のスムーズな主導のもと、質疑応答・共通点・共感点を得てパネルディスカッションが行われました。意見を集約すると
① 今後、活動するにはいろいろなチームとのグループ化が必要で、そのためには生涯学習音楽指導員の活動を多くの組織に理解して、賛同していただくことが重要である。
② 基調講演の川野辺氏はファンドレイジング講座を受講する方は仲間を求めているので、そのような方々と知り合いになることも一考。大切なことは誠意と信頼、そして人と人のつながりである。
パネルディスカッションは、いろいろな分野で活動している方々から私たちが活動するために必要な気づきを与えてくれたと思います。会の終わりは、協賛の公益財団法人音楽文化創造常務理事・事務局長の揚石明男氏により今後の協議会活動への激励のメッセージを頂き、シンポジウムの幕を閉じました。参加者は当日79名、アーカイブ配信申込みで見られた方は53名、計132名に参加していただきました。
3.成果と課題
(1)成果
限られた時間の中で大きなテーマに取り組んだシンポジウム、まだまだ導入部分ではありますが、私達のこれからの活動の火付けになったように思えます。今回は対面の話合いの場が持てたことと各支部会員同士の絆を深めることが何よりの収穫でした。現在、協議会の姿が魅力あるものであれば若い世代の心を捉えることも可能であると思います。今後地域音楽コーディネータ(*5)の方々、ジャンルを越えた生涯学習に関わる方々更に支部同士の連携などが必要になると思います。
*5)地域音楽コーディネーター:子どもから高齢者にいたるまで地域の人々に音楽の素晴らしさ、楽しさを経験できる機会を創出し、地域における音楽による文化振興を推進するために、音楽家や地域住民、さらに地方自治体や学校、企業、民間団体などの諸機関との連携を推進する役目を担うプロフェッショナルです。
(2)課題
- シンポジウムで得た刺激や人のつながりをいかに発展させていくか?
- 活動の継続のために今私たちがすべきことは何か?
- 私たちの活動の着地点は?など
彷徨(さまよ)いながらも次世代につなげていくすべを、全国協議会として、各支部としてどのように取り組んでいくべきなのか一朝一夕には出ない結論です。
ついつい、活動計画というと何か大きなイベントをしなくてはいけないと思いがちですが、大切なことはもっと身近なところに潜んでいるのではないでしょうか。ビッグイベントはいろいろな団体が数限りなく行っています。私たち生涯学習音楽指導員の特色を生かし、地域に密着した小さいながらもきめ細やかな講座やイベントの活動の持続、継続がますます必要な世の中になってくることは間違いありません。
4.抱負
少子化、高齢化の波は変えようがありませんが、その時代を生きる人たちの意識を変えることは可能です。音楽という媒体はそれを可能にする最大の武器とも言えます。そして、今までの実績がある私たちに、渦巻のように賛同者が集まってくることを信じていきたいと思います。音楽は決して特別な人たちがするものではなく、皆が気軽に楽しめる生活の基盤作りができたら良いですね。夜空にあがる大きな花火はすばらしいですが、誰もが手にして楽しめる線香花火のきらめきは味わい深いものです。世代を越えて、いまだに人々の心に感動をもたらす小さな花火が、音楽の持つ効能にふと重なりました。
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