活動事例

地域音楽 コーディネーター 活動事例

【事例紹介】人生を豊かにする「まなび」との出会い

(2025年02月28日公開)

地域音楽コーディネーター 一般社団法人Fir-St-Art(ファーストスタート)代表理事 兵庫県 岡田嶺さん

Fir-St-Art(ファーストスタート)
Fir-St-Art(ファーストスタート)
■活動テーマ:
人生を豊かにする「まなび」との出会い
■目次:
■活動開始時期:
2023年~現在
■場所:
神戸市・明石市を中心に、兵庫県内で活動中
■対象:
小・中・高校生と、フリースクール(*1)などで活動する子どもたち

*1)フリースクール:一般に不登校の子供に対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設(文部科学省HPより)

■活動内容

1.きっかけ

不登校だった娘の影響もあり、「学ぶこと」に対して関心を持ちました。自分に何ができるか?と考えたときに、作編曲家・音楽指導者としての知識や技術・経験を生かし、子どもの頃から親しんできた音楽でなら何かできるかもしれないと思い、2023年から活動を始めました。2024年には、一般社団法人Fir-St-Art(ファーストスタート)を設立。現在、代表理事としていろいろな企画を作り活動しています。

2.一般社団法人Fir-St-Art(ファーストスタート)とは

(1)理念

『人生を豊かにする「まなび」との出会い』
音楽を軸とし、好きなこと、やってみたいことを見つけ、挑戦してみるきっかけを応援しています。

(2)団体名の意味

上記理念の基、音楽やアートなどのクリエイティブな分野の最初の一歩を応援したいという気持ちを込めて、「First」、「Start」と「Art」からとった造語です。

3.具体的な内容

主な活動として2つあります。

①クリエイティブな分野に特化したワークショップ活動

音楽を中心にした活動として、特にDTM(Desk Top Musicデスクトップミュージックの略。パソコンやスマートフォンなどで作る音楽の呼び名)、吹奏楽器、打楽器を中心とした活動で本物に触れる機会や音楽以外のクリエイティブな体験ができる場も作っています。(後述のE.「わくわくわ~くしょっぷ」など)

②不登校の子どもたちが過ごしている居場所(フリースクールなど)や多様な学びを提供している団体の拠点などに訪問

一緒に音楽をすることで親や教師でもない、「一人の大人」として子どもたちと関わっています。

次に5つの活動を具体的にご紹介いたします。

A.ステージフェスタ

ステージフェスタ2024開催記録

開催日 2024年6月29日

開催場所 ふたば学舎(神戸市長田区)

「ステージの部」出演 4団体

「体験ブース」出店 8団体

「イベントスタッフ体験」参加 3名

来場者数 119名

後援 神戸市教育委員会、長田区

あるフリースクールで一緒に音楽や対話をする中、バンドを立ち上げて発表したいという声が上がり、本イベントを企画しました。それは、ⅰ.彼らの発表の場をつくりたいⅱ.登校、不登校関係なくイキイキと過ごしている人たちがいることも知ってもらいたいということが目的です。

実施するにあたりFir-St-Artならではの特色を生かし、自分自身が音響の仕事をする際に子どもにも一緒に関わってもらうため、イベントスタッフの体験ワークショップを一般の子どもたちからも募りました。複数回のワークショップを通して音響機材や楽器の取扱い、ステージの裏方の仕事も体験してもらい、ステージをつくるためにいろいろな人が関わっていることも知ってもらうことができました。

イベント中、会場には子どもたちの姿をあたたかく応援する空気があり、最後は会場全員で音楽を楽しむことができました。更に一緒にイベントに参加した団体や来場者の間でもつながりが生まれたという声もありました。人と人とが「つながる場」であることが、Fir-St-Artらしさ、強み、大切にしたい思いだと再認識しました。

▼ステージフェスタ2024のまとめ

B.音楽サークル活動(軽音楽、吹奏楽)

開催日 毎月2回程度、平日と土曜日の夜

開催場所 神戸市垂水区、及び長田区

対象 神戸市内の小中学生

神戸市にある「労働者協働組合こども編集部」(*2)がサークル活動としてバンドをしたいとSNSで投稿をしているのを見つけ、当団体から声をかけたのがきっかけで始まりました。

*2)労働者協働組合こども編集部:学校や部活や家庭以外の10代の子どもたちの居場所(サードプレイス)でありそれを見守る大人を含めた地域コミュニティ(労働者協働組合こども編集部HP)

音楽サークル活動では、子どもたちが音楽を通して自由にのびのびと自己表現し、「できるようになった!」「挑戦してみた!」という自己肯定感の積み重ねをサポートしています。その中で大切にしていることは、

  1. 好きな気持ちが大きくなる場
  2. 音楽を中心にした人と「つながり」の場
  3. 年齢・肩書・障がい・所属なども関係ない「ごちゃまぜ交流」の場
  4. 将来に渡って楽しんでいける「基本的な技術・知識」が得られる場

であることです。

毎回参加するメンバーや演奏する曲、楽器も変わりますが、子どもたちの「やってみたい」という気持ちを大切にしています。主に小中学生を対象とし、大人や高校生などにもサポートしてもらっています。2025年1月に軽音部体験会を開催し、広く一般からもメンバーを募集しています。また、2025年9月に開催予定のステージフェスタ2025では軽音部としてのステージ発表も取り入れる計画になっています。吹奏楽サークルも2024年12月現在準備中で、2025年初頭から活動を始める予定です。こちらの活動もステージフェスタ2025で吹奏楽演奏の体験を実施する計画です。

C.音あそび空間

開催日時 毎月2回程度、平日の放課後

開催場所 神戸市垂水区及び長田区

対象 近隣に在住の小中学生

不登校の子どもたちがいる居場所などに訪問している内に、自分としても「誰でも」、「いつでも」、「ふらっと」立ち寄れる場所を作りたいと考えるようになりました。今まではスマホでDTMをしてみる日、ボーカロイド(*3)を体験できる日となっていて、その活動に興味がある方しか参加できませんでした。

*3)ボーカロイド:ボーカロイド(VOCALOID)とはヤマハ株式が2003年に開発した歌声合成ソフトのことをいいます。PCにメロディーと歌詞を入力して歌声を合成し伴奏データーを読み込んで音楽を完成させます。

「音あそび空間」は、スマホでのDTMやボーカロイド等、いろいろな体験ができる空間です。学校ではなかなか触れることができない管楽器(トランペット、フルートなど)、軽音楽器(ギター、ベース、ドラムスなど)やマイク、ミキサーなどの機材にも自由に触れる場所になるようにしています。音楽として演奏できることが主な目的ではなく、楽器を鳴らすことや「音」を使って一緒に遊ぶことを通して異年齢、他校の子どもとの交流が広がる居場所を作りたいと思っています。

D.居場所訪問ワークショップ

フリースクールや居場所などを訪問し、主に不登校や学校に行きづらい子を対象として音楽ワークショップを実施しています。ワークショップの内容は、拠点ごとに子どもたちの姿に合わせて流動的に組みながら、楽器に触れたりDTMに触れたりする機会を作っています。興味を持ったこと、やってみたいと思ったことに挑戦するきっかけづくりのワークショップとして位置づけ、音楽をツールとして子どもたちとの関係づくりも大切にしています。

E. わくわくわ~くしょっぷ

「わくわくわ~くしょっぷ」では、音楽以外のワークショップを通して子どもたちが、のびのびと自由な発想でチャレンジできる場を作っています。他団体とのつながりも生かし、団体同士の輪を広げ、Fir-St-Artとしてもコラボレーションの可能性を広げる活動となります。

DTM機材を使った作曲体験、PA機材を使ったアナウンス体験などの音楽に関わるワークショップを出店し、過去に3回開催し毎回200名近い来場者に楽しんでいただいています。参加者が興味を広げるとともに、出店者に対してワークショップに挑戦する場になるなど、いろいろな方の「きっかけ」を応援するイベントになっています。

▼2023年9月30日開催、わくわくわ~くしょっぷVol.1のまとめ

▼2024年2月12日開催、わくわくわ~くしょっぷVol.2のまとめ

4.成果と課題

活動を始めた当初は、ワークショップに絶対的なプログラムが必要と思っていましたが、その場で子どもたちと「一緒に作り上げる」ことに意味があると気付きました。自分にとって音楽はコミュニケーション・つながりづくりのツールでもあるのだと思うようになりました。音楽を通して子どもたちの自由な発想を伸ばすことが、自己肯定感を育むのに大切であると感じます。

団体としての成果は着実にファンが増えていることです。いつもイベントに来てくれる方も、「Fir-St-Artらしい、あたたかい雰囲気」と言ってくれます。また、協力してくれる方一人一人と対話を重ねることを大切にしており、お互いに理解しあうことを目指しているおかげで、皆さん無理のない範囲で協力してくださっています。新たなつながりやコラボレーションが生まれることもたくさんあります。

課題としては、草の根活動であるが故に、認知度を上げる工夫が必要と考えています。音楽を通した仲間づくりに関心のある方に届く広報をしていければと考えています。

5.抱負

子どもたちに豊かな体験の機会を広げていけるよう、一緒に活動してくださる仲間を増やしながら活動を継続・発展していきたいと考えています。楽器や機材を寄附してくださる方、演奏面や運営面でサポートしてくださる方、練習場所をご提供いただける方などと、どんどんつながっていければうれしいです。興味のある方のご連絡をお待ちしています。

地域音楽コーディネーターや生涯学習音楽指導員として皆さまの活動を掲載しませんか?
活動紹介やイベント告知をご希望の方は、下記のページをご覧ください

音楽文化創造では、地域音楽コーディネーター資格取得の養成講座を実施しております。
詳しくは下記をご覧ください。

その他の記事

               
地域音楽 コーディネーター
こどもゆめひろば 中学生地域バンド2025年申し込み(4/13)
地域音楽 コーディネーター
【事例紹介】一人一人が輝ける音楽あふれる街を目指して!
地域文化クラブ応援
枚方市地域文化クラブ 2024年度実証事業 デジタル部活動(吹奏楽部)の可能性
国際音楽の日
【活動報告】あだちで楽しもう!歌とサンバと盆踊り[2024年度助成事業]
国際音楽の日
【活動報告】おさんぽクリスマスファミリーコンサート[2024年度助成事業]
地域音楽 コーディネーター
【事例紹介】人生を豊かにする「まなび」との出会い
地域文化クラブ応援
部活動地域移行/地域文化クラブ シンポジウム アーカイブ動画ノーカット版公開
協議会
[終了]みんなdeジャズ~0歳からすべての人に~(3/16)
地域音楽 コーディネーター
[終了]第320回逗子童謡の会(3/6)
地域音楽 コーディネーター
【事例紹介】バンド活動支援で世代を超えたコミュニケーションを実現
国際音楽の日
【活動報告】子ども食堂音楽会[2024年度助成事業]
地域音楽 コーディネーター
[終了]第2回 舞鶴子どもコーラスコンサート(3/9)
協議会
【事例紹介】国際音楽の日2024シンポジウムin東京 いつでも♪どこでも♪誰とでも♪音楽でつながる♪
協議会
【事例紹介】音楽の楽しみ方「モーツアルトってどんな人?」
地域音楽 コーディネーター
【事例紹介】音楽で丹念に価値を探求する
地域音楽 コーディネーター
【事例紹介】「楽しんだもん勝ち!ツナがろう!」
地域音楽 コーディネーター
【事例紹介】地域社会とのつながりを大切にし、音楽を通じて地域の文化を豊かに
新しい方角(邦楽)
邦楽普及と音楽ビジネス