地域音楽コーディネーター 軽音楽指導者 教育ICT指導者 Fretless Bassist(The Wfm Trio等) 京都府 村田良さん

- ■活動テーマ:
- 大阪・関西万博2025への参加
~滋賀県デイ~びわ湖サマークルーズ~
「未来の街をけいおんがつなぐ 〜A Day in the Life 〜」 - ■目次:
- ■活動開始時期:
- 2025年7月24日(木) 第2部 開場15:00 開演16:00~19:00
17:00 県民団体ステージ - ■場所:
- 大阪・関西万博 東ゲートゾーン EXPOホール「シャインハット」
- ■対象:
- 一般
- ■活動内容
私どもが日常活動している「ストリートLIVE」(*1)が大阪・関西万博2025「滋賀県デイ」に採択されました。ステージで披露する機会を得たきっかけから、その準備と当日の内容をご紹介致します。
1.きっかけ
(1)(公財)びわ湖芸術文化財団よりの案内
大阪夢洲(ゆめしま)で4月13日から開催されている大阪・関西万博2025で会場のEXPOホール「シャインハット」において、滋賀県の魅力をお届けするステージイベント『滋賀県デイ~びわ湖サマークルーズ~』第2部で滋賀を代表する「県民団体ステージ」においてけいおんストリートLIVE実行委員会と、とよさと軽音楽甲子園実行委員会がタッグを組み、平素より行っているストリートLIVEの1日をステージで再現しました。
きっかけは、ふだん私どもの活動を深く理解されている(公財)びわ湖芸術文化財団の辻本氏より昨年9月、案内文書を頂き、実行委員会で協議の上応募を決定しました。

(2)エントリー
募集要項には、一般的な経費補助はなく、逆に出演負担金(33,000円)が必要と明記されていました。万博会場までの交通費や楽器輸送代等、必要経費がかなり嵩(かさ)むと予想されましたが、ストリートLIVEの回数を増やし、特別予算を組むことで対応可能と判断しました。また、こちらの企画が通らない場合は辞退することも確認し、期日までにエントリーしました。
(3)採択
年内に万博滋賀県イベントサポートデスクからヒアリングの電話がかかってきて、バンドコンテスト企画を取り入れ滋賀県デイの当日まで盛り上げてもらえないかという提案を受けましたが、当初の企画以外は実施しない方針を貫きました。一方で当日まで盛り上げてほしいという強い要望に対して、街の活性化を目的に湖南(大津市、草津市を含んだ地域)だけでなく湖北(長浜市、米原市を含んだ地域)でもストリートLIVEを実施することを約束しました。これが6月8日の「けいおんストリートLIVE 万博SP」につながりました。

結果、2025年1月24日、出演者公表第1弾として発表されました。

2.具体的な内容
(1)タイトル
まず、ステージのタイトルを「未来の街をけいおんがつなぐ 〜A Day in the Life 〜」と名付けました。現在の高校軽音楽部の姿を世界に発信し、その活動が未来へと続いていくことを願い、それも「特別な1日」ではなく日常の「ある1日」を表現することにこだわり、The Beatlesの名曲「A Day in the Life」(*2)をあえて引用することにしました。
大阪・関西万博2025は、開催前の段階ではその全体像が見えにくく、1970年の大阪万博の映像と比較されることが多くありました。前回は高度経済成長期で未来への期待が高まる中、おりしもThe Beatlesの登場により、ロックを通じて若者文化が社会に影響を与えるようになりました。
1970年にThe Beatlesは解散しましたが、その後もロックは拡大再生産を繰り返しながら55年の歳月を経て現在に至っています。その間、日本の高校生はロックを聴いて育ち、世代を超えてバンド活動も盛んになりました。また、日本ではアニメ『けいおん』というサブカルチャーが生まれ、滋賀では高校軽音楽部が街の活性化に貢献する独自のコミュニティアートも芽生えました。
(2)企画に当たって
企画の柱は、以下の三つです。
- 高校軽音楽部の日常をテーマにオリジナル曲を2曲制作する。
- 曲をけいおんストリートLIVEの「ある1日」を再現する形で、準備・本番・後片付けまでを含む20分の舞台演出で披露する。
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「とよさと軽音楽甲子園」(*3)と初のコラボを行い、両地域の取り組みを紹介する。またステージ上部の大型スクリーンに日常やストリートLIVEの映像を投影する。
*3)とよさと軽音楽甲子園:全国の現役高校生を対象とした軽音楽コンテストで、滋賀県にある豊郷小学校旧校舎群講堂で開催される。
(3)スタッフ体制
主要スタッフはエントリー時に決定しておりました。
・プロデューサー:村田良(軽音楽指導者、教育ICT指導者、地域音楽コーディネーター)
・脚本・演出:壇良一(滋賀県立大津高等学校軽音楽部顧問)
・舞台監督:辻本長(びわ湖芸術文化財団)
・映像制作:泉太雄(とよさと軽音楽甲子園プロデューサー)
・演奏指導:西川武司(MUSIC WORKSHOP RITZ)
(4)キャストとメンバー
キャストも同様、エントリー時に決まっており、けいおんストリートLIVEの前身のJR大津駅前社会実験野外LIVEから最多出場及びスタッフとして頑張ってくれている滋賀県立大津高等学校軽音楽部にお願いしました。そして、2月に告知し3月にメンバー決定し、4月5日の万博お披露目(ひろめ)LIVE終了後に初の出場者ミーティングを行い、GW後にはデモ音源を制作という目標を立てました。ステージの幕が閉じるまでを時系列で書くと以下の通りです。
(5)2025年7月24日大阪・関西万博2025出演までの流れ
・4月5日けいおんストリートLive 万博 Special at 大津駅前
*企画告知と募金スタート、終了後第一回目ミーティング


・5月3日けいおんストリートLive Vol.16
*万博滋賀県デイの宣伝と募金を募る。また当日流す映像や写真を撮影。


・5月17&18日オリジナル曲完成・バンド練習スタート・映像撮影スタート
1曲目:エピローグレス(作詞・作曲:吉田もみじ、田中涼土)
2曲目:Play My Sound!(作詞・作曲:濵端彩衣、西口栞里)
・5月24日事務局にデモ音源提出
*ピアノ弾き語り音源と歌詞カード
・6月8日けいおんストリートLive 万博 SP in 長浜バイオ大学
*万博滋賀県デイの宣伝と募金を募る。
・6月23日事務局にデモ映像提出
*バンド演奏音源による当日ステージに投影する映像
・7月21&22日最終映像と演出を取り入れた最終リハ


滋賀の高校軽音は歴史があります。大津高校軽音楽部は、組織として指導体制が整っているということもあり、ほぼ計画通り進みました。一方で6月には滋賀県の軽音楽連盟主催のコンテストや学園祭が重なり、3年生には進路のことを含めかなり負担をかけたと思いますが、よく頑張ってくれました。また、大津高校軽音楽部顧問の壇先生の提案で、時々コラボをしている大津清陵高校通信部の部員も参加することになり、両者の学校も万博滋賀県デイのための協力体制もできて、本番を迎えることになりました。
・7月23日EXPOホール(シャインハット)にてリハーサル

限られた20分間という短いリハーサル時間に不安を感じていましたが、偶然、大津高校軽音楽部の卒業生が舞台スタッフとして2名も現場にいてくれたおかげで、空き時間を活用した打合せや事前準備のサポートが可能となりました。今回の舞台演出における大きな課題であった「準備・後片付け」の問題も、卒業生のおかげですべて解決し、非常に有意義なリハーサルとなりました。また、台本の最終調整もこのタイミングで完了し、万全の体制で本番を迎えることができました。
・7月24日 17時第2部県民団体ステージ
1900名のEXPOホール(シャインハット)は、この第2部のトリを務める滋賀県出身の歌手西川貴教さんのファンの影響もあって朝から整理券を並ぶ長蛇の列となり、満席でした。

一方で生徒たちは、終始落ち着いた状況で本番前でもステージを楽しむという感じに満ちあふれ、こちらも何の不安もなく、楽屋から舞台袖まで送り出しました。

3.大阪・関西万博 東ゲートゾーン EXPOホール「シャインハット」での本番司会者が登場し、楽器のステージ設営スタート!アニメ『けいおん』に合わせてあえて制服で出演しました。

準備が完了し、1曲目のエピローグレスがスタート満員のお客さんです。

豊郷小学校の講堂も映ります。

1曲目が終わり、2曲目のメンバーチェンジの間、いつものけいおんストリートLIVEのようにMCがつなぎます。

準備が完了し、2曲目の「Play My Music!」がスタートします。大津高校の文化祭のステージで初お披露目(ひろめ)した映像も流れました。
最後のサビで全員がステージに上がり、会場を盛り上げます。


拍手だけでなく身を乗り出してくださる観客も少なくありませんでした。


そして、Liveの締めの言葉で決めて、いざ後片付けへ


ステージ上には何もなくなり、最後に全員で挨拶して終了!

3.大阪・関西万博出演の成果
(1)観客に深い感動を与えられた
本番終了後、総合司会の方が感動で涙ぐみ、「親目線で見ていると途中から涙が止まらなくなった」という感想を述べられました。もらい泣きしたという声も多く、1900名満席の観客に深い感動を与えたことが伺えます。20分という短いステージでしたが、単に2曲を演奏するだけでなく、セッティング準備から片付けまでを含む「けいおんストリートLIVE」スタイルが好評でした。また、アニメ『けいおん』の聖地である豊郷旧小学校の映像も滋賀らしさを強くアピールし、反応は非常に良好でした。
(2)大津高校軽音楽部の部長の感想
出演生徒を代表して大津高校軽音楽部の部長は次のように語っています。
・『大阪・関西万博滋賀県デイ』という大舞台で演奏でき、本当に楽しかった。
・滋賀県を代表して万博のステージに立てたことは一生忘れられない思い出です。
・『高校生の日常』をテーマにした2曲を自信を持って披露でき、音楽の楽しさや人と人をつなぐ力を実感しました。これからも高校軽音楽部の魅力を多くの方に届けたいです。
4月からの舞台制作を通じて、生徒たちは自己肯定感を高め、音楽を通じて社会と関わる意義を学べたと感じております。
4.課題と成果
一方で、JV(共同企業体)方式による運営では、統括や指示系統が不明確で無駄な時間が発生。情報が小出しで出され、舞台担当との打合せもなく前日リハを迎えるなど準備は苦労しました。また、そもそも広報担当が存在せず情報公開が制限され、寄附集めも難航しました。
それでも、ストリートLIVEでの募金や寄附で20万円以上を集め、補助金なしで経費を賄うことができました。地域の応援を実感し、「高校軽音で街を活性化する」という取り組みが住民に根付き、次世代へ継承できる確信を得られたことは、大きな成果といえます。
5.抱負
(1)軽音楽専門部の誕生
今年の夏に実施された第12回全国高等学校軽音楽コンテストの参加都道府県は27に増え47都道府県の過半数を超えました。これにより、高校文化連盟における念願の軽音楽専門部の誕生も間近だと感じています。しかし、今回「万博滋賀県デイ」という晴れの舞台で県代表として認めていただいた一方で、いまだに軽音楽クラブの存在自体が認められていない学校も少なくありません。また、人口減少に伴い音楽人口も減少しています。
(2)「けいおんで街の活性化」継続
今回、私たちは「けいおんで街の活性化」という取り組みを今後も継続することを宣言しました。この活動は、未来の理想的な社会に向けた種まきだと考えています。2012年のスタート時に参加した高校生は、今や30歳となり立派な社会人として成長しました。滋賀を離れても自分の住む街の課題を考え続けてくれています。多感な思春期に大好きな音楽活動を通じて社会的課題を知り、体験した意義は非常に大きいと感じています。まだ滋賀県だけの取り組みかもしれませんが、軽音楽部の社会貢献活動を更に広げ、継続・発展させることで、音楽の社会的意義の理解が深まり、音楽人口の減少を食い止めるだけでなく、未来をより良く楽しい方向に変えられると信じています。
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