「下北 Jr.ウインドオーケストラ」、略して「シモジュニ」は下北文化会館を活動場所として、青森県下北地方の小学生1年~6年の子どもたちを対象にした新しい学びの場です。その活動を支援している地域音楽コーディネーターで、青森県むつ市の楽器店株式会社東京堂文化創造事業部長の長津亜紀江さんにお話しを伺いました。
国主導で取り組んでいる働き方改革に伴い、むつ市では教職員の勤務時間の見直しの一環で、2018年度に小学校の部活動が廃止になりました。
運動系部活動は、経験のある保護者が主体となりスポーツ少年団への移行が比較的スムーズに行われたようですが、文化系部活動、特に音楽に関しては、 指導者の問題、楽器の問題、練習場所の問題とあらゆる面でクリアにならず、子どもたちの活動の場を継続することができずにいました。
そこで、地域の問題を地域で解決できないかと、下北文化会館、東京堂、地元吹奏楽団、吹奏楽連盟、海上自衛隊大湊音楽隊などの地元の皆さんが協力して、下北 Jr.ウインドオーケストラの設立を計画しました。
東京堂は、むつ市の公共ホール「下北文化会館」の指定管理をしています。学校の垣根を超えて、地域の音楽を学びたい子どもたちが一同に会せる場所として、下北文化会館を活動場所にすることにしました。下北文化会館の事業としても、地域の吹奏楽団を作ることは、子どもの活動の場としてだけでなく、公共ホール利用の高齢化問題にも明るい兆しを灯せるのではないかとも考えました。
そして長津さんは東京堂の担当者としてではなく、下北文化会館の指定管理者という立場で、それぞれの団体に支援を依頼して協力を得ました。さらにはむつ市長と直接お話する機会を得て、市長が全面的に応援したいと言ってくれたことが、推進力となったということです。
むつ市教育委員会経由で全小学校児童に参加者募集チラシを配布してもらいました。そのおかげで、現在、53名の小学1年生から6年生までの子どもたちが週1回下北文化会館に集まり練習に励んでいます。長津さんは「当初は廃止になった文化部の受け皿と考え、15名での予算組をしておりましたが、少子化が進む中、53名のこどもたちが音楽を学びに来てくれていることが本当にうれしいです。」と喜んでいます。
多くの地元企業、団体から応援していただき、 寄付金も想像を上回る額で集まったそうです。行政も補正予算で支援をしています。
楽器は教育委員会が、地元の小学校から借り、東京堂のリペアスタッフが、改修し使用しています。楽器倉庫は下北文化会館が提供しています。
指導者の体制はボランティアではなく、有償指導としています。 地元吹奏楽団、吹奏楽連盟、海上自衛隊大湊音楽隊などから各パートの指導者を派遣してもらい、学校を退職した音楽の先生も手伝っています。参加者からは、月毎の参加料を徴収し、下北文化会館から各指導者に支払いをしています。
各楽器の奏法練習のほかに、鑑賞タイムをもうけて名曲にふれたり、曲の成り立ちを教えたりしています。鑑賞した曲にリズムをつけて手拍子で曲に参加する体験もしています。 公立文化施設らしい取り組みとしては、演劇の公演にあわせて、役者からダンスと歌のワークショップを受けています。さらに音楽〇×クイズなど、遊びの中に学びを取り入れて指導しています。
9月22日には初ステージ、次いで10月5日には大ホールでのお披露目演奏となりました。初回の6月9日には、名前も知らない、音も聞いたことがないという楽器を目にした子どもたちが、4ヶ月でステージに立つ経験をしたのです。今後の成長が楽しみということです。
※写真は、活動初日の様子
11月は地元テレビ局からの取材、12月はライオンズクラブのクリスマス会でのコンサートでの演奏や、海上自衛隊大湊音楽隊主催のコンサート鑑賞へ招待いただくなど、活動の幅が拡がっています。
青森県吹奏楽連盟及び下北地区吹奏楽連盟は、これまで学校単位のみの加盟受け入れだったものを、加盟団体として地域バンドである下北 Jr.ウインドオーケストラも迎え入れてくれる働きかけをしてくれました。その結果、全日本アンサンブルコンテスト下北地区大会へ出場することが決まりました。
長津さんから、「初年度ということもあり、まだまだ手探りではありますが、地域の理解もあり、地域の皆さんのご協力をありがたく実感しています。本州最北のむつ市だからこそ、早く問題に直面してしまった少子化ですが、同じ問題に直面する他の地域の方にも、明るい兆しとしてお知らせできれば幸いです。」と全国の地域音楽コーディネーターの皆さんへのメッセージをいただきました。
教員の負担軽減を図るため、小中学校の部活動を廃止する動きが全国的に広がっています。子どもたちの文化創造の活動を絶やさないためにも、この事例のように、地域で一体となってさまざまな形で支援していくことがますます重要になっていくでしょう。その中核として地域音楽コーディネーターが、地域の人たち、団体、楽器店をつないで、活躍していくことが期待されています。
●下北 Jr.ウインドオーケストラ/下北文化会館ホームページ
http://shimobun.com/publics/index/91/
※ 音楽文化創造では、地域音楽コーディネーターの活動を取材して「活動ノオト」として掲載いたします。「活動ノート」で紹介する「活動の音」をご覧ください。全国の地域音楽コーディネーターの皆さんの活動の参考にしていただければと存じます。
【部活動の廃止と下北 Jr.ウインドオーケストラが設立された経緯】
国主導で取り組んでいる働き方改革に伴い、むつ市では教職員の勤務時間の見直しの一環で、2018年度に小学校の部活動が廃止になりました。
運動系部活動は、経験のある保護者が主体となりスポーツ少年団への移行が比較的スムーズに行われたようですが、文化系部活動、特に音楽に関しては、 指導者の問題、楽器の問題、練習場所の問題とあらゆる面でクリアにならず、子どもたちの活動の場を継続することができずにいました。
そこで、地域の問題を地域で解決できないかと、下北文化会館、東京堂、地元吹奏楽団、吹奏楽連盟、海上自衛隊大湊音楽隊などの地元の皆さんが協力して、下北 Jr.ウインドオーケストラの設立を計画しました。
東京堂は、むつ市の公共ホール「下北文化会館」の指定管理をしています。学校の垣根を超えて、地域の音楽を学びたい子どもたちが一同に会せる場所として、下北文化会館を活動場所にすることにしました。下北文化会館の事業としても、地域の吹奏楽団を作ることは、子どもの活動の場としてだけでなく、公共ホール利用の高齢化問題にも明るい兆しを灯せるのではないかとも考えました。
そして長津さんは東京堂の担当者としてではなく、下北文化会館の指定管理者という立場で、それぞれの団体に支援を依頼して協力を得ました。さらにはむつ市長と直接お話する機会を得て、市長が全面的に応援したいと言ってくれたことが、推進力となったということです。
【活動の様子】
むつ市教育委員会経由で全小学校児童に参加者募集チラシを配布してもらいました。そのおかげで、現在、53名の小学1年生から6年生までの子どもたちが週1回下北文化会館に集まり練習に励んでいます。長津さんは「当初は廃止になった文化部の受け皿と考え、15名での予算組をしておりましたが、少子化が進む中、53名のこどもたちが音楽を学びに来てくれていることが本当にうれしいです。」と喜んでいます。
多くの地元企業、団体から応援していただき、 寄付金も想像を上回る額で集まったそうです。行政も補正予算で支援をしています。
楽器は教育委員会が、地元の小学校から借り、東京堂のリペアスタッフが、改修し使用しています。楽器倉庫は下北文化会館が提供しています。
指導者の体制はボランティアではなく、有償指導としています。 地元吹奏楽団、吹奏楽連盟、海上自衛隊大湊音楽隊などから各パートの指導者を派遣してもらい、学校を退職した音楽の先生も手伝っています。参加者からは、月毎の参加料を徴収し、下北文化会館から各指導者に支払いをしています。
各楽器の奏法練習のほかに、鑑賞タイムをもうけて名曲にふれたり、曲の成り立ちを教えたりしています。鑑賞した曲にリズムをつけて手拍子で曲に参加する体験もしています。 公立文化施設らしい取り組みとしては、演劇の公演にあわせて、役者からダンスと歌のワークショップを受けています。さらに音楽〇×クイズなど、遊びの中に学びを取り入れて指導しています。
9月22日には初ステージ、次いで10月5日には大ホールでのお披露目演奏となりました。初回の6月9日には、名前も知らない、音も聞いたことがないという楽器を目にした子どもたちが、4ヶ月でステージに立つ経験をしたのです。今後の成長が楽しみということです。
※写真は、活動初日の様子
【今後の活動】
11月は地元テレビ局からの取材、12月はライオンズクラブのクリスマス会でのコンサートでの演奏や、海上自衛隊大湊音楽隊主催のコンサート鑑賞へ招待いただくなど、活動の幅が拡がっています。
青森県吹奏楽連盟及び下北地区吹奏楽連盟は、これまで学校単位のみの加盟受け入れだったものを、加盟団体として地域バンドである下北 Jr.ウインドオーケストラも迎え入れてくれる働きかけをしてくれました。その結果、全日本アンサンブルコンテスト下北地区大会へ出場することが決まりました。
長津さんから、「初年度ということもあり、まだまだ手探りではありますが、地域の理解もあり、地域の皆さんのご協力をありがたく実感しています。本州最北のむつ市だからこそ、早く問題に直面してしまった少子化ですが、同じ問題に直面する他の地域の方にも、明るい兆しとしてお知らせできれば幸いです。」と全国の地域音楽コーディネーターの皆さんへのメッセージをいただきました。
教員の負担軽減を図るため、小中学校の部活動を廃止する動きが全国的に広がっています。子どもたちの文化創造の活動を絶やさないためにも、この事例のように、地域で一体となってさまざまな形で支援していくことがますます重要になっていくでしょう。その中核として地域音楽コーディネーターが、地域の人たち、団体、楽器店をつないで、活躍していくことが期待されています。
●下北 Jr.ウインドオーケストラ/下北文化会館ホームページ
http://shimobun.com/publics/index/91/
※ 音楽文化創造では、地域音楽コーディネーターの活動を取材して「活動ノオト」として掲載いたします。「活動ノート」で紹介する「活動の音」をご覧ください。全国の地域音楽コーディネーターの皆さんの活動の参考にしていただければと存じます。