生涯学習音楽指導員

活動事例 生涯学習音楽指導員

【事例紹介】コロナ禍のシニア世代のコーラス

(2020年11月11日公開)


コロナ禍のシニア世代のコーラス

生涯学習音楽指導員 神奈川県鎌倉市 向井多恵子さん

コロナ禍において、コーラスは感染拡大になる要素が多いため、なかなか再開できないでいます。緊急事態宣言が発表されてから約2か月の間、レッスン予定日だけでも各ご家庭で自主練できるように、練習方法を書いたプリントをお届けしておりました。しかし、みなさんの声は「一人ではやる気がおこらない」、「一人で歌うのは嫌だ」、「一人で歌っても意味がない」等でした。また、「生活が楽しくなくなった」、「誰とも喋らない日が多くなった」という声もたくさん聞きました。

家にいても一人で好きな時に楽しめ、誰かと一緒にいる感覚も得られるような何かが音楽を通じてできないかと考え、「メロディ歌えば2部合唱」を作成し、「健康維持の為の音楽体操」、「Zoomのオンラインコーラス」を実施することにしました。

【メロディ歌えば2部合唱とは】
伴奏とアルトを演奏・録音した動画を各ご家庭に配信し、コーラスのメンバーはその動画を見ながらメロディを歌うことで、誰でも簡単に二部合唱ができる動画です。

動画作成にはまず、伴奏、アルト、ソプラノすべてを自分で演奏・録音しました。
次に、音源と画像を編集し、歌詞付きの動画として作成しました。

初めはアルト+伴奏バージョンだけ作っていましたが、どうしてもメロディがアルトにつられて歌いにくいという声があり、二部合唱+伴奏バージョンも作るようになりました。

メロディを歌うと私と二部合唱になります。コーラスの皆様から「好きな時間に好きな場所で歌えるので楽しい」と声が上がっており、毎回配信を楽しみにされています。

動画の作成方法
色々な方法があると思いますが、私の使用した例で説明いたします。

  1. 1台のスマートフォンでもできますが、私は2台のスマートフォンを用意し、その両方にPCM録音 Liteというアプリをダウンロードします。
  2. 1台のスマートフォンにはメトロノームをかけながら弾いた「ピアノ伴奏」、「左手伴奏とソプラノ」、「左手伴奏とアルト」の3種類を録音します。パート用の伴奏では前奏、間奏すべて楽譜どおり弾きます。
  3. 2.で録音した「左手伴奏とソプラノ」、「左手伴奏とアルト」をイヤフォンで聴きながらもう1台のスマートフォンに録音します。

  4. すべての録音が終わったら、録音したデータをスマートフォンからコンピューターに入力します。
    色々な音声編集ソフトはありますが、初心者でも使いやすい無料のAudacityを使用しました。
    参考:Audacity(https://www.audacityteam.org/

    まず、コンピューターにコピーした音源をAudacityに貼ります


    上図は上がピアノ伴奏、真ん中がアルト 下がソプラノになっています。
    メトロノームをかけた演奏を聴きながら歌っていますが、なかなかピアノ伴奏、アルト、ソプラノが揃いません。波形を見ながら揃っていない箇所を拡大して、イヤフォンで音を聴きながら波形の調整をします。伴奏と歌の編集ができたら「アルト+伴奏バージョン」と「二部合唱+伴奏バージョン」の二つを保存します。

  5. 音源の編集が終わったら、次は画像収集をします。歌詞を見ながら何枚の画像を入れるか考え、著作権フリーの画像を探してコンピューターに保存します。著作権フリーの画像に該当していても、料金が必要な画像の場合があるのでよく調べる事が大事です。

    動画編集には無料の動画編集ソフトであるAviUtlを使用しました。
    参考:AviUtlのお部屋(http://spring-fragrance.mints.ne.jp/aviutl/

  6. AviUtlを起動したら、まず編集した音源を読み込みます。下の画面で赤い色の帯が音源です。
    次に、保存した画像を読み込みます。下の画面では青い色の帯が画像です。



  7. 必要な画像をすべて読み込み終わったら、最後に字幕で歌詞を入力します。


「メロディ歌えば2部合唱」の動画が完成しました。

<視聴用動画01>アルト+伴奏バージョン(画面左下の ▶ ボタンを押してご視聴ください)


<視聴用動画02>二部合唱+伴奏バージョン(画面左下の ▶ ボタンを押してご視聴ください)


【健康維持の為の音楽体操】
スマートフォンやコンピューターを持っていないコーラスメンバーの為に音楽で繋がれる方法を考えました。

講談社から出版されている、医学博士近藤真由先生の『音楽の力で脳トレ 自宅でカンタン脳イキイキ音楽療法』を参考にさせていただきました。この本に書かれている口腔体操や歌を歌いながらの異拍子指揮、パタカラ体操等々、音楽を用いた様々な体操を毎月の会報で紹介しました。
【Zoomのオンラインコーラス】
コーラスメンバーからZoomでコーラスをしたいという声があり、8月よりZoomを取り入れました。Zoomは、パソコンやスマートフォンを使って、セミナーやミーティングをオンラインで開催するために開発されたアプリケーションソフトです。

先ず、初めてのZoomでどういう事ができるのかを試行してみました。よく話題にのぼるタイムラグ。みんなで歌うと勝手に輪唱になってしまいました。

Zoomでコーラスはできないと落胆しましたが、画面越しにコーラスのメンバーと会ってたわいのないお喋りをしているだけでも、みんなは笑顔で楽しそうにしていました。Zoomを終えたメンバーの感想は、「楽しかった」、「ちょっと緊張したけれど普段の生活にはない緊張があってよかった」、「生活にメリハリができて続けたい」、「次回が待ち遠しい」等々でした。

そこで、どうしたら、タイムラグを気にせずZoomで楽しくできるかを考え、2つのアイデアを実践してみました。
1.みんなで歌いながら手を動かすリズム体操
映像のタイムラグでみんな同じ動きには映りませんが、みんなで一緒にやっているという実感を得られます。これは各自が歌って手を動かすことで自分の動作に集中できるため、人の事を気にせずみんなと一緒にリズム体操の場を楽しめるからです。

2.ピアノでの音取り
配信している「メロディ歌えば2部合唱」について、「メロディだけでなくアルトのパートも歌えるようになりたい」、「声だけでなくピアノの音が聴きたい」等の声が上がっていました。そこで、まずはZoomでピアノの音が相手のコンピューターにしっかり聞こえるか確認しました。
確認したところピアノはしっかり聞こえるようでしたので、次はパート練習をZoomですることにしました。
その結果、Zoomで練習したパートを配信した「メロディ歌えば2部合唱」に合わせて一緒に歌うと、今まで以上にしっかりハモって歌えるようになり、歌う事がもっと楽しくなっているとの声をいただきました。

Zoomの回数を重ねる毎に参加されるメンバーは増えています。コーラスのメンバーは当初、コーラスができなくなったことを嘆いてばかりいましたが、「メロディ歌えば2部合唱」を配信し、Zoomを取り入れたことによって新しいコーラスを受け入れ楽しめるようになりました。
生活のリズムの中に音楽が加わりコロナ禍でも豊かな心で過ごしてもらえるようになりました。

この取り組みは安全にコーラスを再開できるまで続けていき、少しでも多く音楽に触れあえる機会を増やしていきたいと考えています。

※この記事は、 生涯学習音楽指導員向井多恵子さんのご投稿により作成いたしました。皆さんのご投稿もお待ちしております。

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