活動事例

新しい方角(邦楽) 活動事例

邦楽器と洋楽器の協演から生まれる新たな響きを求めて

<新しい方角(邦楽:日本の伝統音楽)>

箏演奏家 生田流 (公財)正派邦楽会箏曲師範 ピアノ講師  福井市 松村郁代さん
左:クラリネット奏者、右:箏奏者
左:クラリネット奏者、右:箏奏者

■活動タイトル:邦楽器と洋楽器の協演から生まれる新たな響きを求めて

目次

■日時:1980年頃~現在
■場所:福井新聞社風の森ホール、フェニックスプラザホール、ハーモニーホール福井、福井ケーブルテレビホール、金沢アートホール、加賀市美術館、橘曙覧記念館、さくらcafeなど
■対象:小学生~一般の方々

■活動内容

1.活動を始めたきっかけ

私は、幼少の頃よりお箏だけでなく、ピアノも一緒に学んできました。邦楽器と洋楽器の協演は、小学生の時.箏奏者である母、永田秀子と私のピアノで筝と尺八、ピアノのために作曲された「みずうみの詩」を演奏したのが始まりです。 その後、筝、ピアノのための二重奏「海の子守歌」「風の精」、山里の春」、筝、尺八、ピアノのための三重奏「月夜の古城」等演奏して来ました。今思い返してみると、この経験が、様々な音楽ジャンルや西洋の音との融合に対して垣根がなく、 自然に体に染みこんでいるという事に繋がっているのかもしれません。


2.箏奏者としての洋楽との協演のスタート

<2001年>合唱の伴奏

母校の仁愛女子短期大学音楽科定期公演で、柴田南雄作曲「女性合唱と箏の為の梁塵秘抄より、秋来ぬと」を演奏。

五線譜の楽譜でしたが、箏で五線譜を弾くには、音符の下に箏の絃の漢数字を書く必要があります。その方法を母に教わり演奏しました

<2002年>洋楽器、三味線との協演

学校担任の吉田とみ子先生が私と後輩がピアノの他に箏と三味線を演奏する事を知り、洋楽器と和楽器の協演を提案され、後輩のヴァイオリン、フルート、三味線と、私の二十絃箏で川崎絵都夫作曲の「歓びの樹」を演奏。

<2006年~現在まで>ピアノ曲を編曲して箏とピアノで

箏とピアノのために作曲された曲だけでなく、ピアノ曲を箏とピアノの二重奏に編曲して博物館、公民館等で演奏。


3.クラリネット奏者との協演

(1)出会いと初めての協演

2016年、高校音楽科の先輩であるクラリネット奏者の中曽根 有希さんが、私が出演している演奏会を聴いてピアノだけでなく箏も弾いているという事を知っていただき、福井ユネスコ協会で初めて協演する機会がありました。 演奏した曲目は、J.S.Bachのアリア『汝わがそばにあらば』イギリス民謡『グリーンスリーブス』『少年時代』等。演奏に際しては、ピアノパートを13絃の筝で弾けるように編曲しクラリネットのメロディーと調和する音を探りながら作り上げていきました。

(2)クラリネット奏者の思いは

彼女がなぜ、和楽器のお箏と協演したいと思ったのは、以下の3点でした。
  1. クラリネットの先生と箏との演奏「春の海」を聴いて、その音色の響きに魅力を感じた。
  2. 日本人に生まれたのに、なぜ和楽器を勉強しなかったのか後悔した。
  3. 着物を着て演奏するのも、せめてもの日本文化への敬愛の念、日本への憧れである。
それからは箏、三味線、笛、琵琶、太鼓、編鐘などと協演を重ねる内に和楽器は(の方が)包容力がある、柔軟に洋楽器に寄り添ってくれると感じるようになり、委ねることにしたのです!

(3)配信生ライブ  福井音楽ライブ 福井県文化課主催

その後、同年大野市黒谷観音星の下コンサート、2017年加賀市美術館森本仁平展での演奏、福井ケーブルテレビ出演、、2018年福井新聞社ちょっと素敵な音楽会、一乗谷朝倉氏遺跡星空ランタンコンサート、橘曙覧記念館での演奏と続けておりました。

コロナ禍になった2020年、お客さんの入った会場での演奏などが一切できない時期、6月に後輩で音響会社に勤めている石田公代さん(作曲家、演奏家でもある)から申し出があり無観客の配信生ライブに出演しました。

<プログラム>

1.ボレロ (M.ラヴェル曲)
2.朧月夜 (岡野貞一曲)
3.独奏さくらさくら(大平光美編曲)
4.筝の説明、クイズ
5.アイ・ガット・リズム(ジョージ・ガーシュイン曲)
6.ウィ・アー・オール・アローン(ボズ・スギャグス曲)
7.少年時代(井上陽水曲)
8.彼方の光(村松崇継曲)

  • クラリネットと筝との協演は回数を重ねていく内に新たな発見がありました。それぞれの楽器の良さを取り入れたアレンジの仕方を、合わせをしていく中、自分達で見つけたり、その面白さ等を感じるようになっていきました。 また曲によっては筝でパーカッションの要素も少し取り入れたり、トレモロ奏法等を扱って(筝の音は減衰していくので)メロディー、伴奏等に変化を付け、プログラムは聴取者に楽しんでもらえる様、幅広い音楽ジャンルから選曲しました。

(4)2021年10月30日 福井ミュージックアートコンサート

会場:福井新聞社風の森ホール
主催:福井県文化課
この時期はまだコロナ禍ではありましたが、福井県が音楽や芸術は人々にとって必要なもの、と考えてくださり色々なジャンルの音楽を県民の皆さんに聴いて楽しんで欲しいとの主旨で行われました。

  • 演奏するにあたって心掛けた事は、聞いてくださるお客様に楽しんでもらえる事、自分達も楽しんで演奏する事です。
  • 聴衆の反応は、とても楽しかった、演奏がきけてよかったと、喜んでもらえました。初めて、クラリネットと筝の演奏を聴いた方からは、意外な組み合わせだったが、すごくあうね、癒されたといった感想もありました。その感想をきき、自分達の演奏が会場の聴衆へ音楽の楽しさや喜びを少しでも伝える事ができたと嬉しく思っています。

<プログラム>

1.ラヴェル:ボレロ(クラリネット、箏)
2.竹田の子守唄による変奏曲(クラリネット、ピアノ)
3.ガーシュイン:アイ・ガット・リズム(クラリネット、箏)
4.ロドリゴ:アランフェス(クラリネット、箏、/ピアノ、筝)
5.ドビュッシー:ゴリーヴォーグのケークウォーク(クラリネット、ピアノ)
6.秋のメドレー 枯葉から、里の秋(ピアノ、箏、/クラリネット、箏)

福井ミュージックアートコンサート

(5)2021年12月18日

カフェさくら通りで、カフェDEクリスマスコンサートに出演しました。

<プログラム>

一部
1.恋人がサンタクロース(松任谷由実曲)
2.アヴェ・マリア(カッチーニ曲)
3.御使いうたいて(クリスマスキャロル)
4.組曲「惑星」よりジュピター(ホルスト曲)
二部
1.シチリアーノ(J.Sバッハ曲)
2.雪の華(松本良喜曲)
3.戦場のメリークリスマス(坂本龍一曲)
4.ウィンター ソング(吉田美和・中村正人曲)


4.小中学校での和楽器体験

小中学校での和楽器体験と邦楽鑑賞授業に毎年各学校をまわっています。また地域の児童館、公民館に於いても、子どもたちへ箏の指導他 ピアノと筝との演奏も取り入れ洋楽器とのアンサンブルの楽しさを伝えています。


5.今後の抱負

私は冒頭で述べました様に、幼少からの体験より和楽器と洋楽器で協演することは自然な事だと思っています。又年齢を重ねる事で和楽器の音色の良さをあらためて感じています。ピアノ、筝それぞれの楽器に素晴らしい魅力があると思います。 筝、尺八などの和楽器を知らない方、反対に、ピアノ、クラリネット 等の洋楽器を知らない方に、こんなに素敵な楽器があるんだと知っていただける為にも、そして、演奏する自分達も、 それぞれの楽器の魅力と音楽を理解しジャンルを超えた演奏を多くの方々へ聴いてもらう機会を作る事が大切だと思います。

今まで演奏活動を続けてこれたのは今まで出会ってきた方とのご縁のおかげだと感じています。今後も感謝の気持ちを忘れず、新たな響きの可能性を求めて進んで行きたいと思います。

〇2022年6月のコンサート「ちょっと素敵な音楽会」
中曽根有希theくらりねっと其の三クラリネット×箏+ピアノ÷2
中曽根有希(クラリネット、ピアノ)
松村郁代(箏、ピアノ)
日時:2022年6月17日金曜日
会場:福井新聞社風の森ホール
曲目:福井市出身の作曲家千秋次郎氏作曲の「クラリネットとピアノのためのソナチネ」、「フルートと筝の為の空色の初夏」、ドビュッシー「月の光」、「情熱大陸」等です。



「新しい方角(邦楽)」は日本の伝統音楽の新しい道を探るコラムです。
新しく斬新な試みで邦楽(日本の伝統音楽)の世界に新しい息吹を吹き込んでいる邦楽演奏家の方やその活動などをご紹介し、邦楽の新しい方向性を皆さんと共に模索しています。

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