活動事例

新しい方角(邦楽) 活動事例

津軽三味線と温故知新

<新しい方角(邦楽:日本の伝統音楽)>


洗足学園音楽大学 現代邦楽コース在籍 津軽三味線奏者 横浜市 染谷美里さん
津軽三味線
津軽三味線

■活動タイトル:津軽三味線と温故知新

目次

■日時:2021年9月
■場所:洗足学園音楽大学内ホール他
■対象:一般

■活動内容

1.津軽三味線を始めたきっかけ

私が小学校4年生の時、叔父が津軽三味線の名取をとり、生徒を募集していました。祖母が興味を示しましたが、「自分には向いていないので、月謝を出してあげるから、お母さんと一緒に習ってみない?」と声をかけてきました。私は叔父が大好きだったため、二つ返事で了承しました。この様な環境が津軽三味線を始める一番大きなきっかけだったと思います。

習い始めた頃は、三味線が好きとか、カッコいいとは思いませんでした。しかし聴き馴染みのある曲から弾き始めたので取り組みやすく、又曲が弾けるようになると楽しいと思えるようになりました。

叔父もお稽古中「うまい!!」とか「それができたらプロだ!!」と私を褒めてくれたので、徐々に三味線が好きになっていきました。もし厳しい先生だったら今の自分はないかもしれません。

ここまで続けてこられたのは、三味線のお稽古に一緒に付き添ってくれた母、月謝を出してくれた祖母、優しく丁寧に教えてくれた叔父のおかげです。


2.音楽大学へ入学

その後、このまま三味線を続けていく転機になったのは、高校2年生の後期です。きっかけは「日本音楽発表会」というコンテストに出場し2年連続優勝した事でした。ここで賞をいただき「将来三味線でやっていけるかもしれない、専門的に勉強しよう」と思い洗足学園音楽大学入学を目指しました。

入学前に体験レッスンを何度か受け、そこでの津軽三味線の先生の津軽を思わせるようなカッコよく迫力のある演奏に衝撃を受けました。また津軽三味線の伝統である津軽民謡をしっかりと教えていただけるということで、より一層この大学に入りたいと強く思うようになりました。プロを目指すきっかけはこの時の演奏があったからだと思います。


3.他楽器他との協演

(1)ドラムスとのコラボレーション

ドラムとの協演のきっかけは、高校時代の部活の同じドラム担当(私はドラムも演奏していました)だった先輩が偶然にも洗足学園音楽大学ジャズ科に在籍していた事です。

当時からジャズが好きな方で、とても演奏が上手く三味線、ドラムとベースでセッションするために練習をしていたのですが披露する場が無かったため、いつかどこかで発表したいと思っていたのです。

今回卒業公演ができる機会を得たため、その時の事を思い出し声かけしてコラボする事になりました。曲をいろいろ探しましたが、三味線とドラム2つの楽器だけで演奏できる楽譜がありませんでした。自分達でオリジナルを作りたいと思い、テーマは津軽の要素を盛り込んだ曲にすることにしました。ジャズ科の先輩のおかげで私が作った原曲にドラムで即興的に合わせるといった形で曲が完成しました。

その自由な雰囲気が自然にジャズにも合いそうな曲調になり、津軽三味線の和楽器とドラムの洋楽器との協演から生まれるサウンドは非常に興味深いものでした。ジャズはよくわかりませんが、先輩からは「この曲はいい曲だね」とお褒めの言葉をいただき、一安心です。

とはいえ津軽三味線の要素も取り入れるため、その特有の奏法とジャズの曲調を上手に融合させるのには苦労いたしました。

(2)タップダンスとのコラボレーション

一年生の頃、授業が一緒で意気投合したミュージカルコースの友達がいました。「一緒に何かしたいね」とその頃から話していましたが、なかなか機会が有りませんでした。卒業公演で自由にキャスティングできる機会に恵まれ、真っ先にオファーし念願が叶いました。

彼女は私の曲に得意な日本舞踊の要素も取り入れながら独自の振り付けを考えてくれました。また衣装の浴衣や扇子なども使いミュージカルコース出身の彼女にしかできないストリー性がある作品に仕上がりました。タップダンスが専門ではありませんでしたが、私から演奏中にタップの音が欲しいという強い要望にも答えていただき、目でも、動きでも、音でも楽しめる作品になりました。

難しかった点は、恋人設定の物語で、私は動かない「静」、彼女は踊るので「動」というバランスの中、お互いの心情をどのように表現するのかです。

演奏中の顔の向きや表情など一つ一つの所作を彼女に指導していただき、演奏以外でも見せるという部分において、たくさんの刺激をいただきました。津軽三味線は即興で演奏を行う場合も多いため、打ち合わせを重ねることは新鮮でとても充実した時間でした。

(3)アニメソングコースとのコラボレーション

一度声優・アニメソングコースのゼミナール発表で伴奏を頼まれた事がきっかけで先輩と親しくなり、その方の卒業発表の際に朗読劇の伴奏を頼まれました。難しかった点は、空気を読みながら演奏する事です。

相手の話に合わせた間、スピード、強弱を意識し、朗読を盛り上げることは初めての経験で苦慮しました。浪曲のCDを沢山聴き、それらを参考にしてなんとか仕上げました。

今でもあれで良かったのかなと思うこともありますが、今回の経験で浪曲というものを初めて知り、とても心地よく奥が深いものだと魅力を感じました。


4.指導陣の講評

今までの学生は自主公演を企画して実践する事、作曲や構成を自ら行う人は少なかったので先生方は新鮮に感じ、多くのお褒めの言葉をいただきました。他の学生の皆さん沢山応援してくれました。

津軽三味線の先生からは特に音色を大切にした良いアレンジであったと好評をいただき、また卒業後、三味線を含めた様々なジャンルの仲間たちを大切にするようにとアドバイスを受けました。


5.今後の抱負

私は津軽民謡が大好きです。今後も津軽三味線の魅力を追い求め、様々な人の唄付けが即興できるようになりたいと思っています。しかし、それだけではなく日本伝統音楽を大事にしながらもいろいろなことにチャレンジし、新しい邦楽の世界を作っていきたいと思っています。

作曲や他の楽器とのコラボもしかりです。また人に教えることも好きなので将来、私が教わった叔父のように様々な世代の方に分かりすく、丁寧な指導を行えればと思っております。そのためには、まず自分自身のスキルを高め、目標に向けて頑張りたいと思います。




「新しい方角(邦楽)」は日本の伝統音楽の新しい道を探るコラムです。
新しく斬新な試みで邦楽(日本の伝統音楽)の世界に新しい息吹を吹き込んでいる邦楽演奏家の方やその活動などをご紹介し、邦楽の新しい方向性を皆さんと共に模索しています。

「新しい方角(邦楽)」
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