<新しい方角(邦楽:日本の伝統音楽)>
生田流正派師範 三味線演奏家 川崎市 大友美由奈さん■活動テーマ:三味線で音楽ジャンルの垣根を越えた挑戦!
目次■活動開始年:2015年~現在
■場所:第32回東京国際映画祭、豪華客船「飛鳥Ⅱ」、日光江戸村、お江戸日本橋亭、北野文芸座、帝国ホテル、青山スパイラルホール、幼稚園〜高など学校、神社、屋形船、銀座ヤマハホール、他
■対象:中学生~一般
■活動内容
Ⅰ.三味線を始めてから大学を卒業するまで
私は5歳の時に祖母が趣味で弾いていた地歌三味線(*1)の演奏を聞いて、「やりたい!」と思い三味線を始めたのがきっかけです。祖父によく「ホウキを持ってきて横で真似をしていたよ。」と言われますが、正直なところその時の記憶は無く、物心がついた時には弾いていたという感覚です。*1)地歌三味線:地歌は上方(西日本)を中心にお座敷で発展した三味線音楽。劇場とは関係なく準音楽として発展したため、劇的な表現は少ない。主に「中棹三味線」と呼ばれるものを使用する。「黒髪」は代表曲の一つ。
最初は祖母が習っていた北島雅杏先生に習い始めました。地歌三味線というジャンルはお箏と共に演奏して発展してきたので、中学生からお箏も始めました。この頃には将来は演奏家として活動したいという気持ちが芽生えていました。そこで古典だけではなくさまざまな洋楽器と演奏でき、また現代邦楽の第一人者である西潟昭子先生から直接学べる環境がある洗足学園音楽大学へ入学しました。
入学してからは地歌三味線(中棹三味線)では音量が小さく、例えば洋楽器とアンサンブルをしても音量的に負けてしまったりすることから、歌舞伎などで使用される細棹三味線も勉強するようになりました。
今まではしっとりと皮をなめるように演奏していたところから一転、撥や駒も変えて皮を叩く奏法に変わり戸惑ったのを覚えています。しかしその経験から音楽ジャンルに囚われずに、いろんな事に挑戦してみようと思いました。
大学や大学院では、オーケストラのソリストとして演奏したこと、邦楽ミュージカルといった洗足学園オリジナルミュージカルに奏者として出演したこと、ヴァイオリンの先生とデュオで演奏したことなど、数え切れないくらい沢山の経験をさせていただきました。また洋楽器や作曲の友達もでき、「卒業したらこんなことをやりたい!」と大きな夢を描いていました。
今思えば私の学生生活はとても重要なターニングポイントだったと思います。大学卒業後、いくつかのグループで活動しておりますが、今回は「ねのいろ」「和洋カルテットーShapiclute」「WA-SANBON」「邦楽創造集団―オーラj」の4つの活動をご紹介いたします。
Ⅱ.具体的な演奏活動
1.『ねのいろ』
『ねのいろ』は2008年三味線奏者山本ゆきの先生とその門下生により結成されました。現在メンバーは山本ゆきの、こうの紫、大友美由奈、浅野藍(以上三味線)、島村聖香(邦楽 囃子)、石高万紀子(笛)の6人です。細棹三味線を主とし「音(ね)」とそれぞれの「色(いろ)」=「音の色」にこだわりながら山本ゆきの先生オリジナル曲を中心に、古典から現代曲までジャンルを越えて三味線の楽しさを探究、発信すべく公演を重ねています。
主な活動は、年に一度本公演を行い、その他邦楽の普及のために毎年中学校への三味線指導、最近では和楽器体験教室なども始めさまざまな活動を行っています。メインターゲットの聴衆者は40代から60代が多いように感じます。
邦楽の世界を身近に感じて欲しいため、皆さんの聞き馴染みのある曲も演奏するように心がけており、長唄(*2)「勧進帳」、端唄(*3)「梅は咲いたか」、という既存の曲のみではなく、「紅蓮華」、「情熱大陸」、「カルメン」などさまざまなジャンルを演奏します。
お客様からは、「とても楽しかった!飽きずに聴けた!」「三味線で演奏するポップスもとてもかっこいい!」など、嬉しいお声を頂戴しております。
●ねのいろ
https://sites.google.com/view/nenoiro/
*2)長唄:歌舞伎舞踊の伴奏音楽として発展したジャンル。三味線は繊細なメロディーを演奏するのに適している「細棹」と呼ばれる種類を使用する。代表曲として「越後獅子」「娘道成寺」も有名。
*3)端唄:江戸の一般庶民で流行した三味線伴奏の短い歌曲。現在の歌謡曲やポップスの原点とも言える。曲調が多彩。「春雨」「奴さん」も有名。
2.和洋カルテット『Shapiclute』(洋楽器とのコラボレーション)
洗足学園音楽大学の同級生で卒業後に結成されたグループで、編成は三味線、ピアノ、クラリネット、フルートの4人編成です。年に一度公演を行い、その他には企業のパーティーで演奏したり、小学校への出前講座を行ったりしています。主にオリジナル曲や、既存の曲を4人編成へ編曲して演奏しています。三味線は音の持続性がないのですが、その点をクラリネットやフルートがカバーしてくれるので新しいハーモニーが作り出せると思っています。お客様からも「違和感なく聴けた!」「意外に相性がいいね!」などお声を頂戴しております。
3.『WA-SANBON』(津軽三味線とのコラボレーション)
洗足学園音学大学時代の先輩、後輩で結成されたグループ。編成は三味線と津軽三味線という形で、年に一度ライブを行ったり神社で演奏したりしています。中々この二種の楽器編成は珍しく曲選びなども大変ですが、他にないオリジナルなサウンドをお届けしています。4.邦楽創造集団『オーラJ』(新しい邦楽作品の開発)
『オーラJ』は日本の各種伝統楽器による新しい作品を作るため1998年に創立した日本国内外で国際的に活動している専門的な創造集団です。また邦楽器に限らず、他の民族楽器とも自由に連携し、世界のさまざまな民族音楽を吸収しつつ、今までにない新たな音楽の創造開発と演奏活動を展開しようとしています。この集団の名称は人のエネルギーが発せられるオーラ(Aura)とJapanのJから付けられた名ですが、JoinやJoyも意味する民族の共生共楽を願って、21世紀の先駆者たらんと意気高く行動しています。
創立以来、年間2~3回の定期演奏会を開催してきました。定期演奏会以外でも、日本各地での公演活動の他、文化庁「本物の舞台芸術体験事業」に参加、2006年に創立された「北杜 国際音楽祭」の一角を担う演奏団体としての活動、また「全国現代邦楽合奏団コンヴェンション」を主催しつつ、アマチュア合奏団興隆へのホスト団体として重要な役割を果たしつつあります。主に現代作品を取り扱っており、三木稔作品を始め現代の作曲家に数多く委嘱しています。
Ⅲ.課題と抱負
三味線演奏家として、今後の課題は新規のお客様にまず知っていただく事です。狭い業界のためコンサートを開催しても会場に足を運んでくれる方は習っている人が中心で限られています。広報宣伝の方法はとても重要だと感じ、今回の『ねのいろ』の和楽器体験の新事業では初めてSNS広告にチャレンジし、その結果新規のお客様獲得に繋がりました。今後集客に際しては現代に合った方法を検討していくことが大切だと実感しました。
また事業やコンサートの内容面でも、既存の古典曲の良いところは残した上で、親しみやすい曲なども大いに取り入れていくことが新規のお客様の獲得につながると思います。
最後に今後邦楽器の普及活動していく上で、次の二つをテーマに考えていきたいと思います。
一つは海外の観光客や日本の旅行客に向けて、日本の和文化を楽しんでいただけるイベントとプログラムなどを企画する事、
二つ目は着物事業や、屋形船、和食料理店、日本舞踊などの他の業界の方々とのコラボレーションしながら、和楽器業界だけでなく複合的なイベントとして和文化全体を盛り上げる事です。
●大友美由奈 official web
https://sites.google.com/view/miyunaotomo/profile
「新しい方角(邦楽)」は日本の伝統音楽の新しい道を探るコラムです。
新しく斬新な試みで邦楽(日本の伝統音楽)の世界に新しい息吹を吹き込んでいる邦楽演奏家の方やその活動などをご紹介し、邦楽の新しい方向性を皆さんと共に模索しています。
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