活動事例

新しい方角(邦楽) 活動事例

心が元気になる音楽をあなたに

(2022年08月09日公開)

<新しい方角(邦楽:日本の伝統音楽)>

箏演奏家、作曲家 横浜市 橋本みぎわさん
心が元気になる音楽をあなたに
心が元気になる音楽をあなたに

活動テーマ:心が元気になる音楽をあなたに

目次

■活動開始年:2004年~現在
■場所:日本及びアメリカ・フランス、中国等の海外
■対象:子どもから大人まで

■活動内容

Ⅰ.お箏との出会いから活動を始めたきっかけ

母が自宅で箏・三絃(三味線の別名)教室を開いており、幼い頃から普段の生活の中に自然と溶け込んでいる音でした。このような環境では美しいとか綺麗な音など意識したことはなかったのですが、稽古部屋から流れてくる音を聴くと、とても安心できたのを覚えています。6歳から地元の演奏会に出演していましたが、練習はあまり好きではなく、本番の舞台で演奏するのは大好きな子供でした。

高校生の頃、箏曲家沢井一恵(*1)先生のバックで演奏する若手を募集されており、参加させていただきました。そのコンサートでは先生と東京から賛助出演されていたプロの方たちの演奏はもちろん素晴らしかったですが、何より楽しそうに演奏されており、きらきら輝いていている姿を見て憧れの存在になりました。この体験がその後の私の演奏活動に大きな影響を与えてくれました。

東京藝術大学音楽学部邦楽科に入学し同期の仲間に恵まれ、皆でアンサンブルを作り上げる楽しさを知りました。時間を忘れ「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤しながら練習に没頭した4年間は私の宝物です。入学当時、卒業後はすぐに地元に帰郷しようと決めていましたが、仲間との演奏があまりに楽しく、東京でしばらく頑張ってみることにしました。

*1)沢井一恵:1979年、夫の沢井忠夫と共に沢井箏曲院を設立。現代邦楽の先駆者として国内外で活躍中です。一恵先生の演奏の中でも特に沢井忠夫作曲「独奏17弦と箏群のための焔」や「百花譜」など、十七絃を独奏楽器として確立し追求された17絃の響きに感動いたしました
沢井箏曲院の現会長「沢井比可琉」は長男。


Ⅱ.具体的な活動

1.「心花-kokohana-」ユニットの活動

大学卒業後、同期のななえという演奏家と箏を聴いたことのない人に機会を作り、その良さを広めていく事を目的に25絃箏ユニット「心花-kokohana-」を2004年に結成いたしました。この頃より心が暖かくなるような曲作りを目指して作曲も始めました。ユニット名「心花-kokohana-」は「心に花の咲くような音楽」を目指したいという思いで付けました。

従来、箏の演奏の場は赤毛氈に金屏風のイメージがあり、とっつきにくい印象を持たれる方が多いので、そこを払拭したく色々な場所で演奏を試みました。ショッピングセンターでの演奏から始まり野外の音楽祭、ライブハウス、コンサートホール、そして日本から飛び出しアメリカ、フランス、中国等の海外でも演奏しました。

25絃箏(*2)はまだ作られて年月が浅いことから、13絃の一般的な箏と比べ、既存の曲はまだ少なく、オリジナル曲中心の活動でした。初めて箏を聴く方々の多くは、「これが箏!?」と驚かれました。そもそも25絃箏を見たことのある方は少なく、通常の正座ではなく、スタンディングでの演奏スタイルと見た目からも興味を持っていただけました。

*2)25絃箏:1991年に箏奏者 野坂恵子が開発した楽器。25本の絃があり、箏の音域に低音域と高音域を加え3オクターブと3音と広く、より幅広い表現が可能。

<心花ユニットの演奏>


25絃箏ユニット・心花~kokohana~(25 strings Koto Unit)「春よ春よ」 – YouTube


心花~kokohana~(25 strings Koto Unit)「さくら(Sakura)」 – YouTube


心花 RSK「イブニングDonDon」 – YouTube


●二十五絃筝ユニット 心花 kokohana 公式サイト
https://kokohana5587.com/

2.龍星群について

「龍星群」は集英社が発行しているジャンプSQで連載中の『この音とまれ!』(*3)単行本5巻発売を記念しての企画で、作中に登場するオリジナル曲を再現するために作曲しました。実際、読者のほとんどが箏の生演奏を聴いたことのない方ばかりでしたので、ぜひ聴いてもらいたいとの作者アミューの想いもありました。

*3)『この音とまれ!』:釧路出身の漫画家アミューの作品。箏を題材とした高校箏曲部の漫画で2019年秋に出版される。

曲作りにあたっては作品の意図、内容、ストーリーの流れなどを把握し書き始めましたが苦労しました。なぜなら漫画は絵の世界で音を表現しているのに、そこに「実際の箏の音色をのせて違和感を持たれないか」、また「幻滅されないか」、本当に不安でした。作者のアミューのイメージに限りなく近づけるよう、デモ音源を確認してもらいながらの作曲となりました。

最初、この曲はYouTube配信となり想像以上の反響で再生回数もあっという間に伸びていき驚きました。また期間限定で楽譜が無料ダウンロードとなり、YouTubeを通して「龍星群コンクール」も実施されました。今では高校箏曲部の方々を始め、箏を習われているたくさんの方が幅広く演奏してくださり、『この音とまれ!』をきっかけに箏を始めた方のお話も耳にし、嬉しい限りです。

その後、オリジナル曲「天泣」も作曲することになり、CD「この音とまれ!~時瀬高等学校箏曲部~」に収録され、楽譜集も発売になりました。さらにこのCDは、「第72回 文化庁芸術祭賞 レコード部門優秀賞」、「第32回 日本ゴールドディスク大賞 純邦楽・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞することができました。

2017年には草月ホールで「この音とまれコンサート」が満員の中開催されました。お客様はほとんどが箏曲コンサートは初めての方ばかりで、事前にジャンプSQ本誌の中で、コンサートのマナーを学ぶコーナーができたほどです。

この音とまれ! 作中オリジナル楽曲「龍星群」 – YouTube


神奈川県予選大会 「天泣」 (演奏:時瀬高等学校箏曲部) | この音とまれ! – YouTube


3.その他の活動

2020年全国邦楽器組合連合会から依頼され、箏三重奏曲「翊-あくるひ-」を作曲しました。ちょうどコロナ禍での作品作りのため「今を生きる人たちの未来が明るい世界でありますように」との想いで作りました。また、都内の小学校での学校公演やベビーコンサート、大学同期のコンサート、CDのレコーディングなど行っています。

【箏三重奏】翊-あくるひ-(作曲:橋本みぎわ)/木村麻耶 橋本みぎわ 光原大樹 – YouTube


●翊 −あくるひ− 橋本みぎわ 作曲 | 全国邦楽器組合連合会
https://zenhouren.jp/page-1290

Ⅲ.課題

これまで、普段箏を聴く機会がない方々へ箏の音色の美しさ、あたたかさを知っていただきたいため、ショッピングセンターや野外で行われる音楽祭などで気軽に聴けるように演奏して来ました。ところが、今までの活動とは違い、漫画によって箏の世界に惹き込まれた方が非常に多く大きな影響力がありました。

漫画からのアプローチとは、私には考えもつきませんでした。国内だけではなく、日本の漫画やアニメは海外でも人気があり、世界中で愛される漫画になっていると同時に箏や日本の和楽器に興味を持ってくださる方も増えました。「龍星群」の視聴者も海外の方はとても多いです。この経験により他の領域とのコラボレーションの重要さを実感いたしました。


Ⅳ.今後の抱負

今はコロナ禍にあり、簡単に楽器体験などができない現状です。しかし、少しでも興味を持った方が気軽に体験できる場所を国内外に作っていけたらと思います。テレビではストリートピアノの特集が放映されていますが実はストリート箏も設置されている場所もあるそうです。

コロナ禍は悪いことだけではなく、プロアマ問わず現代のテクノロジーを活用して演奏の配信も増えております。時代と共に、箏に触れやすい環境に変わりつつありますので、時代の変化を注視しながら箏曲界の更なる発展につなげたいと考えています。

先ほど配信の話をしましたが、箏の魅力は何といっても生演奏が一番伝わると思います。コンサートではマイクを通さず、会場の空気より生の箏の音、弦の響きに肌で触れていただき、生音でしか感じることができない感動を伝えたいと思います。漫画を通して国内外で箏に興味を持ってくださる方が増えました。これをきっかけに海外での箏文化の理解・発展につなげるため、漫画とのコラボレーションコンサートを企画し開催したいと思います。

(2022年8月9日公開)

「新しい方角(邦楽)」は日本の伝統音楽の新しい道を探るコラムです。
新しく斬新な試みで邦楽(日本の伝統音楽)の世界に新しい息吹を吹き込んでいる邦楽演奏家の方やその活動などをご紹介し、邦楽の新しい方向性を皆さんと共に模索しています。

「新しい方角(邦楽)」
#コラボレーション

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