活動事例

新しい方角(邦楽) 活動事例

人々に影響を与える 和太鼓の鼓動

(2022年10月10日公開)

<新しい方角(邦楽:日本の伝統音楽)>

和太鼓奏者
東京都 宮崎県 小林太郎さん
小林太郎さん
小林太郎さん

■人々に影響を与える 和太鼓の鼓動

目次

■活動開始年:2000年~現在
■場所:東京浅草、宮崎を中心に国内外で活動、海外公演は10か国ほど
■対象:子どもから大人まで

■活動内容

1.和太鼓との出会いとその魅力

和太鼓との最初の出会いは町内会の盆踊りでした。当時はピアノを習っていたのですがシンプルな和太鼓の音、日本人らしい音楽に惹かれ、自分も打ってみたいという衝動にかられたのを覚えております。

当時ピアノを弾いている男子は、女々しいなどと言われ「いじめ」の対象となりやすかったのですが、中学校の「太鼓踊りクラブ」に入り、文化祭やイベントで演奏する度に周囲から「かっこよかった」と認められ、自分に対する評価が変わりました。

私は出身が名古屋市です。中学校の「太鼓踊りクラブ」の担任の先生が名古屋の民舞研究会の一員でした。その活動に参加させていただきました。以後、名古屋市の一般の団体にも参加するようになり、スペインへの海外公演も経験し、和太鼓で世界に羽ばたきたいという気持ちが強くなり、東京へ行くことを決心しました。

東京に行ってもどこに行ったらよいかわからず、プロ団体の練習を見学に行ったり、アマチュアチームの練習に参加したりしているうちに、浅草の神輿太鼓の老舗「宮本卯之助商店(*1)に邦楽教室があると知りました。

一般的な和太鼓教室は、いわゆる「曲」「流派」を教えてもらうこと多いのですが、そこでは和太鼓の仕組みや打ち方など、邦楽としての和太鼓の基礎を教えてもらえる唯一の場所でした。そこで出会った先生が助六太鼓創始者(*2)のひとりであり、藤舎流の鳴り物師でもあるので、和太鼓に関する考え方が学術的であったため、師事することになりました。

当時和太鼓のプロになる方法は、どこかのプロの団体の一員となることしかありませんでした。要するに将来独立すると「○○出身」という形になります。楽器屋さんの邦楽教室出身であれば、将来的に縛られることなく自由さが得られると考えました。これが私の後の活動を始める大きなターニングポイントとなりました。

*1)宮本卯之助商店:神輿と太鼓の老舗です。神輿は三社祭等お祭りで神様のシンボルとして担がれる日本の行事で、御神輿とお囃子(太鼓・笛・鉦)が街を練り歩きます。

*2)助六太鼓創始者:東京で結成された初のプロ団体です。盆踊りの太鼓(東京独自のナナメ打法)をモチーフに組太鼓(数人で打つ太鼓)を作りました。日本のみならず世界でその打法は使われています。


2.活動を始めたきっかけ

始めは浅草の邦楽教室の中で結成された「日本太鼓道場」というチームで和太鼓のみの活動でした。当時は和太鼓とほかの楽器のユニットという概念もなく、前例がほとんどない時代でした。

和太鼓のソリストを目指していた自分としては、永遠に団体の中で活動することに疑問を感じておりました。まだ一般的にない事をしたいという思いが強くなり、いろいろなジャンルの方々と試行錯誤し、お祭りやイベントだけでなく世間一般の音楽に混ざれるようにしたらどうしたらよいのかを考えました。

最初のうちは、音を届けたいというより、和太鼓のプロとしての形をどうしたらよいのか悩みが尽きませんでした。始めは小さなライブハウスの対バンライブ(*3)からスタートし、そこからイベンターや企業様とのご縁をいただき、大勢の前で演奏する機会を少しずつもらえるようになりました。

*3)対バンライブ:ライブイベントにおいて複数の出演者が入れ替わる形でステージに立ち、共演すること。

いろいろな場所で演奏していると、自分が中学校の時に感じたような「変わる瞬間」を他人も感じてくれたことに驚きました。「元気が出た」、「もう一度頑張ろうと思った」、「勇気が出た」などの感想をいただき、和太鼓を通じて「気」を届けていきたいと思いました。

3.具体的な活動

(1)和楽器ユニット「わをん」 2005年~

<メンバー>
和太鼓―小林太郎
尺八、篠笛―佃康史
津軽三味線―中嶋広貴
<場所>
全国
<内容>
企業イベントベースに活動。祝賀会・業績発表会・忘年会など

(2)和太鼓チーム「浅草たいこばん」 2007年~

<メンバー>
代表 和太鼓小林太郎ほか8名ほど
<場所>
地元浅草を中心に国内外
<内容>
浅草サンバカーニバル前座、スカイツリーオープニングイベント、雷門盆踊り、三社祭など海外公演(ハワイ、ロシアーイルクーツク、ハバロフスク)



(3)和太鼓DUO輝日 2019年~

<メンバー>
小林太郎 梨央の師弟ユニット
<場所>
国内外
<内容>
和太鼓のみならず電子和太鼓も駆使してのステージを作る



〇ドバイ万博日本館映像作品に参加

ディレクション 株式会社モンタージュ
時期:2021年12月から2022年2月
場所:ドバイ万博日本館内
内容:日本を紹介する映像作品への参加 大太鼓演奏を撮影


〇カザフスタン公演

団体 和楽器アンサンブルJAPAN (ウォーターネット)
時期:2018年7月
場所:国際音楽フェスティバルに参加


(4)和太鼓&篠笛ユニット「かんがみぞ」 2022年~

<メンバー>
和太鼓―小林太郎 篠笛―物部聖子
<場所>
宮崎県
<内容>
霧島のふもとにある「神々溝」から命名。「神楽」をモチーフに宮崎らしい音楽を作ってライブ活動を行っている。




4.海外の方の反応

ハワイには太鼓のチームがあり、フラダンスとの融合をしています。

アメリカ本土ではヒップホップやジャズとの融合などその地域の音楽と融合がとても面白く、独特な和太鼓文化が作られていました。皮や太鼓の銅の素材も、日本製とは若干異なり、その地域の気候に合うような楽器の育ち方をしております。そのような中、私たちが行くと「本物が来た!」というような目で見られます。日本のシンプルなリズムが海外の方にはとても新鮮なようで、厳かな雰囲気、神々しい雰囲気、日本の景色を想像できるようなリズムなど、興味津々で聴いてくださいます。

ロシアにはあまり太鼓の団体は聞いたことがないのですが、私たちが行った極東方面は日本とも近く、日本に憧れすごく勉強している方が多かったです。基本的にアニメについて聞かれることが多かったですが、日本を想像できたと言ってくださいました。

中東や中央アジアにも和太鼓の団体があり、交流があります。毎年日本に習いに来てくれます。コロナ禍初期、ドバイの生徒とその仲間の音楽家と共に、ビデオ共演をしました。



5.課題と抱負

今や和太鼓はたくさんの方々に楽しんでもらえる楽器となり多くの教室や発表会など開催され、ある程度一般的に広がってきたと思います。しかし誰にでも音が鳴る楽器であるがために、演奏者の技量、奥深さは失われつつあります。それは地域のお祭りや神事の意味が伝わらずに、カルチャースクール面だけが広がった事にあると思います。

今は子供のお祭り離れも進んでおり、音を鳴らせる場所も少なくなり、ますますお祭りの意味を伝える人が少なくなってきました。日本人として地元の神様や地域のお祭りを支えられるような、仕組みつくりが必要だと思っております。

演奏家として斬新的な事を取り入れつつ、地元の子供たちに興味をもってもらい、地元のお祭りに笛や太鼓で参加したくなるような取り組みをしていきたいと思います。


(2022年10月10日公開)

「新しい方角(邦楽)」は日本の伝統音楽の新しい道を探るコラムです。
新しく斬新な試みで邦楽(日本の伝統音楽)の世界に新しい息吹を吹き込んでいる邦楽演奏家の方やその活動などをご紹介し、邦楽の新しい方向性を皆さんと共に模索しています。

「新しい方角(邦楽)」
#コラボレーション
#海外活動

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