活動事例

新しい方角(邦楽) 活動事例

琉球箏曲と共に〜飛龍〜

<新しい方角(邦楽:日本の伝統音楽)>

琉球伝統箏曲琉絃会師範 沖縄県那覇市 池間北斗さん

■活動テーマ:琉球箏曲と共に〜飛龍〜

目次
■活動開始時期:1997年〜現在
■場所:県内外や国外の劇場、コンサートホール
■対象:一般、ワークショップは小中高生など

■活動内容

1.琉球箏曲を始めたきっかけ

琉球芸能が好きな母の影響で、兄弟皆小さい頃から琉球舞踊や三線などの沖縄の芸能を習っていました。
4人兄弟の末っ子である私も太鼓や三線を習い初め、8歳の頃に琉球伝統箏曲琉絃会師範の又吉貞子先生との出会いが琉球箏曲の道に入っていくきっかけになりました。そして現在私にとってライフワークとなっています。

(1)琉球箏曲とは

琉球箏曲は沖縄が琉球と呼ばれていた時代、18世紀初頭に稲嶺盛淳翁が薩摩で箏曲を学び持ち帰ったのが始まりとされています。
琉球箏曲には段物7曲【瀧落菅攪】【地菅攪】【江戸菅攪】【拍子菅攪】【佐武也菅攪】【六段菅攪】【七段菅攪】があり、小唄物3曲【船頭節】【対馬節】【源氏節】合わせて計10曲が伝承、継承されており、琉球古典箏曲とも言われています。
沖縄以外の地域では現在、上記の10曲はほとんど伝承が途絶えており、箏曲の歴史を知る上ではとても貴重とされています。和箏との違いは奏法や使用している爪、絃の張り具合などが大きく挙げられます。琉球箏曲は三線の伴奏楽器としても舞台などで欠かす事のできない役割を担っております。

(2)琉球箏曲の世界へ

又吉貞子先生からは奏法や技術、琉球芸能に携わっていく中での心構えなどをご教示いただきました。
その後、県内唯一郷土の文化を学べるコースがある沖縄県立南風原高等学校郷土文化コースに進学し、在学中に国の重要無形文化財であり世界遺産にも登録されている組踊(*1)を学ぶため、国立劇場おきなわ第一期組踊研修生となりました。
高校卒業後は沖縄県立芸術大学琉球芸能専攻琉球古典音楽コースへと進学し、更に琉球箏曲の世界へ深く入っていきます。組踊研修や県立芸術大学で人間国宝の先生方をはじめ、長年第一線でご活躍されている先生方にご教示いただき、更に切磋琢磨できる仲間や周りの方々に支えられ、数々の舞台に携わっていくことができました。
これから先ずっと継続していくとは思ってもいなかった芸能が、組踊研修や進学を機に私の人生となっていきました。

*1)首里王府(琉球の統治組織)の命を受けて1719年、玉城朝薫によって中国皇帝の使者を歓待するために作られた歌舞劇。有名な演目は「二童敵討」「執心鐘入」


2.活動の軌跡

箏曲家として転換を迎えた2017年からの活動
国立劇場おきなわ主催公演、東京国立劇場、各地の劇場やコンサートホール、海外での琉球芸能公演に地謡として参加している一方で、2016年頃から自分の芸能への向き合い方を考えることが多くなりました。

【2017年】
沖縄タイムス社主催の芸術選賞にて最高賞、琉球伝統箏曲琉絃会の師範免許を拝受、12月に福岡県にて開催された第24回賢順記念全国箏曲コンクールにて賢順賞を受賞しました。賢順コンクールはたまたま読んだ邦楽誌で新進箏曲家の登竜門と知り、その際「琉球箏曲でどこまで戦えるのかを試したい」「琉球箏曲の音を多くの人に聞いてもらいたい」という思いから応募したのを覚えています。

【2018年】
県内での演奏はもちろんのこと、和箏の演奏家の方々との交流や、2018年にNHK Eテレ「にっぽんの芸能〜今かがやく若手たち〜」に箏独奏で出演させていただいたり、琉球箏曲を更に世に周知することが出来たのではないかと思うことが出来ました。その後、他ジャンルとのコラボや二十五絃奏者中井智弥さんと県内外での演奏会などを積極的に行うようになりました。

【2019年】
琉球笛の入嵩西諭さん、胡弓の森田夏子さん、私の3人で琉球器楽の可能性や魅力を深掘りしたいという考えから「琉球器楽の会」を発足し公演を行い、多くのお客様にご来場いただき喜んでいただきました。

【2020年以降】
2020年はコロナの影響で舞台が制限されたこともありYouTubeにて自らを発信するという活動も始めました。2021年5月には、「琉球器楽の会」の活動を評価していただき、第25回日本伝統文化振興財団賞を受賞させていただきました。2022年2月には2回目の琉球器楽の会として胡弓の又吉恭平さん、箏の町田倫士さんを加えた5人の新体制で公演を打つことが出来ました。




3.課題と抱負~古典の魅力を更に多くの人へ~

色々なジャンルのコラボレーションや多くの舞台を経験させていただく中で、古典音楽が自らの主であり、更にこの音楽の奥深さを再認識させられることが多くあります。先人達が受け継ぎ守ってきたものを、私たちが次の世代に繋いでいくということは使命です。
しかし現在、沖縄県内でも芸能人口の低下、若年層への芸能の普及・関心、実演家の地位向上などの課題があると考えています。この課題を解決する一つの策として昨年、舞踊の佐辺良和さん、歌三線の仲村逸夫さん、笛の入嵩西諭さん、私の4人で公演や指導を通じて琉球古典芸能をより多くの人へ届けたいという思いから「古典企画」という団体を結成しました。

昨年は舞踊や楽器の無料体験を主に行い、対面のみならずオンラインなどでも多くの方が琉球芸能に興味を持っていただきました。
「古典企画」立ち上げ前は、組踊研修の修了生で組織される「子の会」などで、県内外での各学校や施設などでワークショップなどを通じて琉球古典芸能の普及・発信を行ってきました。今回改めて4人で団体として形を作ることにより、より一層多くの人へ古典の魅力を届けることができると考えています。今年は活動を本格化させ、レッスンなどは勿論のこと古典企画での公演なども企画し、更に古典の魅力を発信していきたいと思います。

古典企画HP URL
https://kotenkikaku.com/

■総括

今回のテーマ「飛龍」ですが、私の芸能人生の一括りとして昨年、国立劇場おきなわ大劇場にて開催した「琉球箏曲 第一回池間北斗独演会 〜飛龍〜」のタイトルでもありました。
タイトルには、箏は龍に準えて各名称に龍の文字が当てられるということや、箏の音が龍の如く舞い上がり、会場を包むという意味が込められています。
そしてもう一つの意味として、小さい頃から師匠が「いつか自身の発表会を開催してほしい」「その際に一緒に演奏したい」という想いをよく話してくれましたが、残念ながら師匠は発表会の前に他界してしまいました。私の演奏が師匠のところまで届いて欲しいという願いが込められています。
これからがまた再スタートとして琉球箏曲の音を多くの人へ届けたいという想いを込めて今回のコラムタイトルとしても使用しました。
受け継がれてきた芸能を次の世代に残す想い、更に多くの人に琉球芸能や琉球箏曲の魅力を発信していきたいという想いを胸に、一つ一つの舞台に誠心誠意向き合い、琉球箏曲の未来へ向け精進していけるよう努めてまいります。


(2023年4月18日公開)


「新しい方角(邦楽)」は日本の伝統音楽の新しい道を探るコラムです。
新しく斬新な試みで邦楽(日本の伝統音楽)の世界に新しい息吹を吹き込んでいる邦楽演奏家の方やその活動などをご紹介し、邦楽の新しい方向性を皆さんと共に模索しています。

「新しい方角(邦楽)」

 

#海外活動
#日本の伝統音楽

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