活動事例

新しい方角(邦楽) 活動事例

「心を形にする笛の音」~心でつながる社会へ~

(2024年03月25日公開)

福原流笛方(横笛又は篠笛・能管奏者) 福原 寬(ふくはらかん) 愛知県 犬山市

小柴一良筆者
■活動テーマ:
「心を形にする笛の音」~心でつながる社会へ~
■目次:
■活動開始時期:
1990年~現在
■場所:
東京を拠点とした国内外
■対象:
一般
■活動内容

1.横笛との出会い

私が生まれた愛知県犬山では、江戸時代より続く犬山祭(ユネスコ無形文化遺産)というお祭りが行われています。町内から繰り出される13輌(りょう)の山車(だし)に子供たちが登り、笛を吹いたり太鼓を打ったりしながら町を練り歩きます。私の町内には山車はなく、子供の頃はとても羨ましく思っておりました。そのような環境の中で育った影響で笛の音は身近に感じていました。

私の師匠である長唄囃子方(はやしかた)(*1)・横笛演奏家の四世寳山左衛門(たから・さんざえもん)師との出会いは、父が師匠とのご縁を頂き東京まで稽古に通っておりましたところ、ある日突然「先生はとてもすばらしい演奏家で他では得にくい稽古をしてくださる。俺の代わりに稽古に行かないか?」と言い渡されました。今思いますと不思議なのですが、何の躊躇(ちゅうちょ)もなく面白そうなので習ってみたいと思い、寳先生に師事することになりました。
父の言葉通り先生はすばらしい方で、お稽古に通ううちに笛をもっと勉強したいと思うようになり、東京藝術大学で学びを得て今に至ります。

*1)長唄囃子方(はやしかた):長唄は歌舞伎の音楽として生まれ、現在は三味線音楽としても独立して演奏される。囃子方は三味線以外の笛・鼓等の打楽器類を演奏する人

2.具体的な活動

(1)ソロリサイタル

東京で開催させていただく「笛-福原寬の会」を中心に、各地で「笛の会」を開催しています。この会では、あらゆる三味線音楽における笛演奏と、囃子のみ(笛のみ、あるいは笛と打楽器のみ)による伝統的音楽表現の探究と新作発表を核とする他、師匠の故四世寳山左衛門師の作品の継承を旨と致しております。各地での「笛の会」では、伝統的な横笛の魅力の発信の場とし、幅広い演目を取り上げております。

(2)歌舞伎興行や日本舞踊などの会

歌舞伎の興行や日本舞踊、長唄の演奏会への出演を致しております。

(3)ジャンルにとらわれない競演

日本音楽、西洋音楽、各国の民族音楽等ジャンルにこだわらず、一流の演奏者の方々をお招きし、ジョイントリサイタルや企画公演を開催しています。
横笛の伝統的奏法を根底にし、様々な表現の模索と横笛の魅力の「垣根を超えた伝え」を目指します。

(4)ユニット「かぎろひの会」

唄方(*2)の杵屋巳三郎氏、三味線方の杵屋五吉郎氏、囃子方の田中傅一郎氏とともに「かぎろひの会」を立ち上げ、古典曲と創作曲による公演活動を行っております。

*2)唄方:三味線音楽で歌を専門にする人

YouTube動画
第1回「かぎろひの会」よりダイジェスト

(5)後継者の育成活動

A.音楽大学の講師として、音楽教育界に携わる人材の育成を致しております。

B.各地に稽古場を開き、演奏家を目指す人材の育成や、横笛の魅力を様々な層の方々に広める活動を致しております。

(6)譜面、CD、映像制作活動

篠笛(*3)・能管(*4)を中心とした音楽教材としての譜面や音源の他、公演映像やオリジナル作品のCDや譜面などの制作を致しております。

*3)篠笛:長唄囃子、歌舞伎、民族芸能で使われる篠竹で作られた横笛

*4)能管:主に能楽で使われ、歌舞伎、民族芸能でも使用される篠竹で作られた横笛

3.総括

(1)課題

伝統芸能の世界はとても狭く、広く一般には触れる機会も限られるため、その本質を理解していただくことはなかなか難しいようです。日本独自の美意識や物事に対する感覚から生まれ育てられてきた芸能ですが、現代はネットの普及により世界が近くなり、様々な文化の擬似体験がとても気軽にできるようになりました。
しかし良い反面、そこへ意識を深く向けることが難しくなっているように感じられます。日本で育まれてきた大切な心にもう一度目を向け直し、そこから改めて世界に視野を広げることが大切だと思います。

(2)抱負

私が横笛の演奏をするときに大切にしております柱が二つございます。①どのような演奏をするときにも必ず根底に伝統的な音楽表現が存在し、日本音楽の様式にのっとる、②演奏に心が宿っていなければならない、ということです。師匠の寳先生からの教えを自分の腑(ふ)に落とすために更に練り込んでまいりました。この二点は、伝統芸能の楽しさや心の普及活動の上で私の肝となるものです。たとえ西洋のクラシックやポップスなどを演奏する機会があったと致しましてもここが肝心で、これがなければ意味のない虚(うつ)ろな演奏となってしまうと考えております。
日本の伝統様式にのっとり、心のある演奏で多くの皆様方と心のふれ合いを持っていきたいと望みます。そして横笛の魅力をお伝えできましたなら、とても幸せなことと存じます。

第5回「笛―福原寬の会」より創作曲「月の道」

(2024年3月25日公開)

「新しい方角(邦楽)」は日本の伝統音楽の新しい道を探るコラムです。
新しく斬新な試みで邦楽(日本の伝統音楽)の世界に新しい息吹を吹き込んでいる邦楽演奏家の方やその活動などをご紹介し、邦楽の新しい方向性を皆さんと共に模索しています。

「新しい方角(邦楽)」

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