活動事例

新しい方角(邦楽) 活動事例

ワークショップ『この音とまれ!』劇中曲作曲家 橋本みぎわ氏の指導を受ける

(2024年04月17日公開)

橋本みぎわ氏指導ワークショッププロジェクト「駒沢学園女子中学高等学校編」

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■活動テーマ:
ワークショップ『この音とまれ!』劇中曲作曲家 橋本みぎわ氏の指導を受ける
■目次:
■活動開始時期:
2023年7月~2023年11月
■場所:
駒沢学園女子中学高等学校
■対象:
駒沢学園女子中学高等学校箏曲部
■活動内容

1.プロジェクト内容

音楽文化創造の「新しい方角(邦楽)」プロジェクトの一つとして実施したもの。 伝統楽器である箏を将来に残すために何ができるかということを考える中で、高校箏曲部を題材として描かれたコミック『この音とまれ!』の劇中曲を作曲した橋本みぎわ氏が、実在する高校箏曲部に指導に行き、成長を記録するという企画が生まれた。 今回、音楽文化創造のスタッフの知人が指導する学校の箏曲部に参加の打診をしたところ、学校関係者及び部員から承諾が得られ、実施の運びとなった。

事前に指導講師が指導を行い、橋本氏には7月より4回指導を頂き、11月に当該学園の講堂にて演奏収録を行い、YouTubeにその成長の様子をアップした。

なお、以下の実施内容報告は指導講師である髙橋裕恵先生に執筆いただいたものである。

2.指導前の取り組み

音楽文化創造事務局関係者、箏曲部指導講師、箏曲部顧問との間でオンラインミーティングを実施し、実施時期や動画取扱い等についての詳細の打合せを行った。

打合せと平行して2023年1月後半から指導講師の元で、少しずつ譜読みを始めた。

懸念していたことは、十七絃を初めて演奏する生徒や箏を始めて1年にも満たない生徒がいるという点であった。

4月に新学期が始まり、まだ半分程度も進んでいなかったが、生徒たちはまだワークショップに参加するということにピンと来ていなかったため、あまり危機感がなかった。

5月にようやく最後まで演奏はしたものの、速度も遅く、全員でそろえるということは全くできない状況であった。特に十七絃パートは未経験の上、難易度も高く非常に不安が大きかった。その後も、体育祭や期末テストなどの学校行事により、部活動の回数が少なく、思うように進めることができなかった。

3.橋本みぎわ氏の指導

第1回目ワークショップ7月1日

最初に関係者全員で自己紹介を行い、その後橋本先生から曲の解説が行われた。

主人公である愛(ちか)の人生を象徴するような黒い空に龍が荒れ狂って飛んでいる情景や、十七絃ソロの愛の孤独な気持ちを表現している様子、その後仲間と出会って幸せを感じる心情等を説明し、イメージを作りやすくしてくださった。

十七絃は大変重要なパートなので、最初の1時間は個別に指導してくださった。

全体合奏は、完成度とは程遠く、最後までたどり着いただけでホッとする有様であった。橋本先生の指導は、全体のイメージを伝えながらも細やかな奏法や指遣いなどにも言及され、内容は非常に濃いと思った。

生徒たちの感想は以下のとおり。

  • ・みぎわ先生が思っていたより優しかった。
  • ・みんなの音をもっと聞かなくてはいけないと思った。
  • ・丁寧な指導で自分の勘違いがよくわかった。
  • ・直接細かく見てもらったところがわかりやすかった。
  • ・そろったときにとても気持ちよくて、その感覚を忘れないようにしようと思った。
  • ・十七絃を力強く弾けるようにしようと思う。

第2回目ワークショップ7月29日

音楽文化創造スタッフの一人が指導する文華女子高等学校箏曲部の生徒さんがワークショップ見学のため来校し、交流会を行った。ワークショップの合間に交流を行い、生徒同士も楽しそうで、とても和やかな交流になった。他校の箏曲部の生徒さんといつか交流したいと強く思っていたので、とてもうれしく思った。

第3回ワークショップ8月26日

先生からは「しっかりそろうこと」や「休符で音を消すこと」、「メロディや全体の流れ」等、更にもう一歩進んだ指導になった。

まだまだぎこちない演奏に「譜面を外して思い切って暗譜に切り替える」ことを提案いただき、生徒たちも多少の不安を感じながら挑戦することを約束した。

その後、9月に入ってすぐに生徒から「先生、楽譜を離さなくていいんですか?」と言われ、ワークショップから1週間しかたっていなかったので大変驚いたが、生徒の決意と努力を感じてとてもうれしく思った。

この頃から、それぞれに昼休みや部活動以外の日にも自主練習を行っていたようで、正に『スイッチが入った』ことを感じた。

また10月に開催される学校の文化祭に全員で着るTシャツのデザインを部員の一人が考えたこともあり、気持ちも盛り上がってきた。

第4回ワークショップ9月23日

暗譜に切り替えたことにより、迫力が出て、橋本先生がとても喜んでくださった。

生徒たちも周りの皆さんの驚く様子がよほどうれしかったようで日に日に成長しているのを感じた。先生の指導もエンディングに向けての迫力をもっと出せるように、後半にかけて細かく指導いただいた。

りんどう祭(文化祭)10月7日

特設ステージでは初めての経験で、お客様、友達、OGの先輩や先生方を驚かせたいという思いで臨み、演奏は荒々しさなどはあったものの、とても良い演奏であったと感じた。皆様から褒めてもらえて、今まで比較的地味な活動であった箏曲部の印象が一変したようであった。また他の先生方に呼び止められて興奮した様子で褒めていただくこともあった。

4.本番演奏

11月に本校講堂にて橋本先生立ち合いのもと、本番収録を行った。

1度きりの収録の予定であったが、どうしても最後のバラけ方が気になり、もう1度収録をお願いした。2度目はそつなく最後まで行ったが、やはり緊張感のある1度目もよかったと感じた。また、講師個人的にはりんどう祭のあの喧噪(けんそう)の中での演奏の方が更によかったと思っている。

収録後、懇親会を開催し、感想などを言い合い、また、橋本先生にサインなども頂き、大変充実した気持ちでプロジェクトを終えることができた。

5.指導講師総括

今回のお話を頂いたときはうれしく希望に燃える気持ちがある一方で、生徒たちに十七絃を弾かせたことがなかった上にただでさえ十七絃のパートも難しい龍星群という曲であるので、もしかしたら間に合うことができないのではないか?という不安が心を大きく占めていた。

しかし多少どころか幾重もの苦労を味わったとはいえ、その予想をはるかに超えて生徒たちが力を発揮する姿に少なからず驚いた。

今回見学してくださった演奏家の先生や私の師匠からも生徒の伸び代を信じることを聞かされていたのに、私自身が一番生徒たちを信じていなかったのではないかと大変反省した。

生徒たちも文化祭が終わって家族や友人たちから大きな声援と評価を頂いたことに大きな喜びと手応えを感じた様子で、自信を持ったことを強く感じた。

大変有り難い機会であったと、橋本みぎわ先生と音楽文化創造の関係者の皆様方に感謝申し上げるとともに、生徒たちと今後も精進していきたいと思っている。

(2024年4月17日公開)

「新しい方角(邦楽)」は日本の伝統音楽の新しい道を探るコラムです。
新しく斬新な試みで邦楽(日本の伝統音楽)の世界に新しい息吹を吹き込んでいる邦楽演奏家の方やその活動などをご紹介し、邦楽の新しい方向性を皆さんと共に模索しています。

「新しい方角(邦楽)」

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