地域音楽コーディネーター ピアニスト・作編曲家・音楽指導者 岩手県 川村友美さん
- ■活動テーマ:
- ピアノ旅物語コンサート~世界の景色が聴こえる!?~
- ■目次:
- ■活動開始時期:
- 2025年9月14日(日)13:30
- ■場所:
- 盛岡市都南公民館(キャラホール)小ホール
- ■対象:
- 一般
1.きっかけ
私はかねてよりピアノ演奏活動と並行して子ども・家族を対象に「音楽紙芝居」(音楽と絵本の読み聞かせ)他、社会貢献活動に取り組んできました。
▼第一話 ミーナ姫のねがいごと
2025年の春、公益財団法人盛岡文化振興事業団より、今までの私の活動が令和7年の公民館事業としてふさわしいとの理由で、お声がけを頂きました。公民館事業では毎年一般市民向けのサロンコンサートが開催されています。「音楽紙芝居」を用いたコンサートは以前学童クラブで行っており、今回2回目で新作品を作り上演しました。
2.具体的な内容
(1)目的
①地域の市民に広く音楽を届ける
コンサートを通して「もっと”生”のクラシック音楽を身近に、多くの人の生活に溶け込んだものにしていきたい」という思いのもと、終演後には子どもから大人まで「あー楽しかった!」と思ってもらえることを目標に企画しました。
②「コラボレーション」で他ジャンル同士の相乗効果を狙う
サロンコンサートは盛岡都南公民館で毎年行っている事業です。例年音楽家仲間または音楽家と他ジャンルの方(ナレーターなど)との「コラボレーション」をすることで、他ジャンルとの相乗効果を生み出しています。今回は、音楽・絵・語りを自ら融合させ、すべて一人での表現によるコラボレーションをお届けしました。
(2)内容
音楽の扉を開いて、いろいろな国や物語の世界へ旅をする…というテーマの基、4部構成で企画しました。
A.即興演奏
クラシック音楽は一般的に敷居が高いと思われていますが、曲の仕組みを知ればその面白さを身近に感じられるのでは…と考え、作曲の入り口である「即興演奏(*1)」をお楽しみいただきました。
*1)即興演奏:楽譜に頼らず、その場で即興的に演奏と作曲を行う。クラシック音楽ではバッハ、モーツアルト、ベートーヴェン、リストが名手であった。一方ジャズはミュージシャンがある曲(例えばシャンソンの枯葉)をテーマとして即興演奏でまとめあげる。ここではアドリブ(ラテン語が語源)やインプロビゼーション(英語)という言葉が使用される。
今回は、会場にいる5人のお客様から「ドレミファソラシ」の中からひとつずつ音を選んでいただき、選ばれた5つの音(例えばミーラーソードーレという並び)が何度も出てくるようにその場で曲を作り演奏しました。お客様には曲中でその5つの音が何回でてくるか数えてもらうようお願いし、ゲームをするような感覚で耳を澄ましていただきました。
B.音楽紙芝居
絵を描き、音楽を奏で、物語を読み聞かせる…という、一人で三つの要素を紡いだ大道芸のような楽しい演目です。ふだんは物語のストーリーから絵、音楽まですべてオリジナルで制作していますが、今回は今年がハンス・クリスチャン・アンデルセンの没後150周年であることを記念し、テーマの「いろいろな国や物語の世界へ旅をする…」に合わせ、少年が不思議な旅をする「空飛ぶトランク」を題材にしました。
ここでは、自作の絵本をプロジェクターで投影し、物語の展開に合わせて朗読を行います。またBGMには自作曲のエレクトーン音源を扱ってその上にピアノの旋律を重ねて演奏し音楽×物語×絵のコラボレーションをお楽しみいただきました。
C.ピアノ×小楽器のコラボレーション
コンサートの後半ではピアノを弾きながら鍵盤ハーモニカやカスタネットを同時に演奏し、ピアノ×小楽器のコラボレーションをお届けしました。単に「面白い!」だけでなく、独特の音色や楽器の仕組みから、音楽や楽器のルーツについての学びを取り入れたプログラムにしました。カスタネットを使った「ハバネラ」(*2)ではキューバやスペインの風を感じたり、鍵盤ハーモニカを篳篥やアコーディオンの音色に見立ててオーストリアや日本古来の情景を想起したりするなど、様々な国に思いをはせました。
*2)ハバネラ:キューバのハバナで生まれた2拍子の舞曲。G.ビゼーのオペラ「カルメン」の中の「恋は野の花」が有名
D.クラシック演奏
「音楽は、その背景となる国々や歴史に思いをはせたり、音遊びのように作曲家が凝らした工夫を味わったりでき、いろいろな楽しみ方がある!」という内容をちりばめたコンサートです。最後はF.リストのパガニーニによる大練習曲第3番「ラ・カンパネラ」をお届けしました。「ラ・カンパネラ」とは「小さな鐘」という意味で、きらめくような響きからはその名の通り鐘の音の鳴り響くヨーロッパの情景が思い起こされます。リストの生きていた時代(1800年代)の風を感じてほしいという思いを込めて演奏しました。
3.成果
(1)文化事業団との連携
公民館事業のため、集客については文化事業団の方でご協力いただき、定員先着80名のコンサートで、ほぼ満席となりました。約半数は小学生以下のお子さんにお越しいただきました。フライヤーに「音楽紙芝居」について記載していただいたこともあり、読み聞かせに興味をもっていただいたのではないかと思います。今回は音楽紙芝居があり、プロジェクターとスピーカー・マイクを同時に使用する内容だったので、ふだん1000人規模の大ホールでスタッフをしている専門の方々にご協力いただき、音響やバランス等納得のいく形でお届けすることができました。
(2)音楽紙芝居が特に好評
当日は予想よりも多くのお子様にお越しいただいたので、MCを簡潔にまとめ、視覚・聴覚で楽しめる時間を長くすることを心掛けました。一方で市民の大人の方にも「来てよかった」と思ってもらえるように、音楽のルーツ等学びのある場面では、様々な曲のフレーズを演奏しながら丁寧にお話ししました。その甲斐(かい)もあって、終演後は幅広い年代の方から「楽しい、学びのあるコンサートだった!」とお声がけを頂きました。アンケートでは「音楽紙芝居が楽しかった!」という声を頂きました。
4.課題
(1)機材の用意と扱い
「音楽紙芝居」の機材の使用等について、自分一人でも円滑に回せる方法の検討が必要だと感じました。今回は会場スタッフ・現地の機材に助けていただきましたが、プロジェクターを用いた規模の大きい演目を継続して行っていくために、必要な知識を得るとともに機材等も整えていきたいと考えています。
(2)広報
広報活動においても、文化事業団の方に多くご協力いただきました。今後は自分自身も発信力を高められるよう、より効果的な広報活動の方法を模索していきます。
5.抱負
「大好きな音楽の力でメッセージを届けたい」という気持ちが音楽紙芝居の原点です。この作品が誰かの生きる助けになれば…という思いを込めて物語を制作しています。今を生きる子どもたちを始め、多くの人に届けられるよう活動・発信していく予定です。現在は地元の保育園で次回の上演が決まっていますが、他にも幼稚園、小学校、医療施設など届けたい場所は多くあります。いずれは地元だけでなく全国の方に届けられるよう続けていきたいと思います。
クラシック音楽には人の心に寄り添える優しさ・発見が止まらない面白さが詰まっています。「クラシックって意外と面白い」と思ってもらえる気軽に楽しめるコンサートの機会を更に増やし、結果多くの人の人生がより喜びの多いものになることを音楽家・地域音楽コーディネーターとしての使命として、今後も続けていく所存です。
最後に、集客や会場設営、ひいては上演中のフォローなど、多大なるご助力いただきました公益財団法人盛岡文化振興事業団、盛岡市都南公民館の皆様に感謝いたします。誠にありがとうございました。
地域音楽コーディネーターや生涯学習音楽指導員として皆さまの活動を掲載しませんか?
活動紹介やイベント告知をご希望の方は、下記のページをご覧ください
音楽文化創造では、地域音楽コーディネーター資格取得の養成講座を実施しております。
詳しくは下記をご覧ください。